【ライブレポート】Daichi Yamamoto 『Radiant Tour 2023』東京公演 | 大きなステップアップを感じさせた「I Let It Shine」な30曲

Daichi Yamamotoが5月20日にSpotify O-EASTでツアー「Daichi Yamamoto Radiant Tour 2023」の東京公演を開催した。チケットは前売りで早々にソールドアウト。フロアは開演前からパンパンで、ライブのスタートを待つを観客の期待感が熱気として場内に立ち込めていた。なお今回のツアーの場内BGMはDaichiのレギュラーラジオ番組『Beyond The Dial』の特別版。ツアーに込めた思いや、影響を受けた楽曲やライブについて飾らない言葉で話しているので、これから遊びに行く人はちょっと早めに会場に足を運んでみるのもいいかもしれない。

取材・文 : 宮崎敬太

撮影 : Shuhei Kojima

Phennel Koliander

ライブはDaichiの鼻歌から徐々に「I Let It Shine」という歌詞が浮かび上がるイントロからスタート。1曲目はデビュー曲の“上海バンド”だ。バックDJはおなじみPhennel Koliander。Daichiはステージの真ん中にどっしりと構えて歌う。声量は増し、音程も安定した。そのせいかこれまでより立ち姿が大きく見えた。

今回のライブを三幕構成に当てはめると第一幕のセットリストには“Splash”や“One Way”、“PLAYER”などノリの良いヒップホップが並ぶ。最初のハイライトはゲストにSEEDAとHenny Kを迎えた“Bussin 2”だ。なんとSEEDAは最初のフックで客席にダイブ。ギュウギュウのフロアからラップを続けた。先輩のフォーエバーヤングなバイブスに刺激を受けてか、Henny KとDaichiもエネルギッシュなラップを聞かせた。

SEEDA
HENNY K

トークボックスのKzyboost、コーラスの有坂美香、Bobby Bellwood(sauce81)は第二幕から登場。ライブ冒頭で流れたイントロを、今度はDaichiも含めた4人で歌唱した。このパートはミディアムテンポの楽曲が中心で、バンドメンバーの持ち味も存分に堪能することもできた。“Ajisai”のアウトロではPhennel KolianderがSP-404を使ってサンプラーソロを披露。“MYPPL”にはKzyboostがトークボックスがプラスされた。さらに“Netsukikyu”はgrooveman Spotによるエレクトロニックブギーなリミックスバージョンで、“Blueberry”では有坂美香とBobby Bellwoodがソウルフルでゴージャスなヴォーカルでセクシーな色を添えた。そこからKzyboostが大活躍するドープなウェッサイゾーンへ。紫の照明の中、人気曲“Wanna Ride”や、リリースされたばかりの“Zero”を歌った。

Kzyboost
左 : 有坂美香 右 : Bobby Bellwood

ライブのクライマックスである第三幕は“Ego”から。ゲストのJJJが現れると観客が絶叫する。タイトなドリルビートに乗って合唱も生まれた。熱気の包まれた中で曲が終わると、Daichiは「実は(JJJと)もう1曲一緒にやりたくて。新しい曲なんですけど」と新曲を歌唱した。この曲は重いダウンテンポのビートに切ないピアノフレーズが乗るナンバーで、一番をDaichiが、二番をJJJがラップする。「Love Yourself」というメッセージがとても印象に残った。

JJJ

Daichiが「いま作品を作ってて。(いま歌った曲も)入る予定です。(次の作品は)全部プロデュースJJJです」と話すと観客から驚きと喜びの歓声があがり、「作ってる作品の中から何曲かやるんで、知った顔して聴いててください」と続けた。ツアー直前に発表された“ATHENS”を含む5曲をブルーを基調とした照明で歌った。曲名を含めて詳細はあえて書かない。ただどのビートも繊細かつパワフルで、Daichiのラップも歌もリリックもさらに進化し、客演にCFN MALIKを招いた曲もあったとだけ記しておく。そこから人気曲“Let It Be”と“Paradise”で本編を終えた。

CFN MALIK

演奏が終わると万雷の拍手が湧き上がり、それはすぐにアンコールの手拍子に変わった。少しするとDaichiは「初めて早着替えしてみました」とアパレルブランド・BROCHUREと制作したパンツと今回のツアーTシャツに身を包んで再びステージに登場した。

「ひとつの音楽を好きでみんなこの場にこうやって集まってライブを作るっていう。裏方も人も、客演の人も、お客さんも、みんなの力で(このライブが)できたなと思う」と話して「まじでありがとうございます」と挨拶した。実際、とても雰囲気が良かった。観客にとっては“Paradise”のリリックにあるように「お前がお前でいられる場所」だった。このピースな空間は、シンプルだが効果的な照明と演出、ダイナミックだがクリアな出音など、細部まで気を配られていたからこそ生まれたように感じる。

アンコール1曲目は“Gimme Some”。ゲストはCrystal Kay。KMプロデュースによるクレイジーなナンバーをハイテンションに歌った。Crystal Kayは「一緒にこの曲をやれて嬉しい!」とDaichiに声をかける。「今日はCrystal Kayさんがアメリカから来てくれました。あ、このライブのためだけ(に来日したわけ)じゃないですよ」とDaichiが言うと、すかさず「このためだよ!」と笑顔で話した。Crystal Kayは「わたし、一人っ子なんだけどなんだか弟ができたみたい。ほんとおめでとう」とライブにダイナミックな花を添えた。

Crystal Kay

次はSTUTSが登場。STUTSのアルバムの収録曲“Expressions”をDaichiのバンドでプレイする。オリジナルでCampanellaがラップしていたパートをKzyboostが、鎮座DOPENESSのパートをBobby Bellwoodと有坂美香が歌う、ソウルでスペイシーでセクシーなスペシャルアレンジ。STUTSもハイテンションなMPCのドラムパフォーマンスを披露した。STUTSが「Daichiくん、Andless(の立ち上げ)おめでとうございます!」と祝福すると、Daichiのアルバムの収録曲“Cage Birds feat. STUTS”をプレイした。最後のゲストはMIYACHI。浮遊感ある“CHILLIN”を二人で届けた。

STUTS
MIYACHI

東京公演のアンコールを締めくくったのは、DaichiがDaichiが自らのトラウマを楽曲に消化し、新しい一歩を踏み出した“EVERYDAY PEOPLE”と“Afro”。全30曲のステージは、Daichiがアーティストとして大きくステップアップしたとを感じさせる素晴らしい内容だった。輝く準備はできている(I Let It Shine)、そんな言葉がぴったりとハマる。なおツアーは6月1日に福岡・BEAT STATION、6月2日に大阪・BIGCAT、6月16日に札幌・cube gardenにて開催される。

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