【インタビュー】Peterparker69 | もっとラフに、もっとデカく
奇妙につるつるしたテクスチャーで、彩度の高い無重力空間を演出するポップアンセム“Flight to Mumbai”がリリースされてからおよそ1年。2022年に結成されたユニットPeterparker69による1st EP『deadpool』が2月にリリースされた。
遊び心たっぷりに、テキトーに非現実に連れ出してくれるこのユニットは、ソロ活動では「hyperpop」や「Planet Rave」といったSpotify公式プレイリストに選出されるなどグローバルにも注目を集めるJeterとY ohtrixpointneverの二人組。活動一年目にして成し遂げた実績としては、「App Store」のCMソングに抜擢されたことが挙げられるだろう。
今回は、そんな二人が揃う初めてのインタビューということで、結成までの経緯や彼らの醸し出す「ネトフリ感」について、また音楽観やアティテュード、1st EPについて、やや暗い部屋で伺った。
取材・構成 : namahoge
撮影 : 盛島晃紀
結成までの長い前夜
Y ohtrixpointnever - あの……申し訳ないんですけど、電気消してもらってもいいですか?
Jeter - え、なに。
Y ohtrixpointnever - 緊張するから暗くしてもらいたい。
Jeter - えっ。
- 全然大丈夫ですよ(笑)。
(電気を消す)
- まずは結成した経緯について伺いたいです。
Jeter - eijinっていうヤツと俺が最初仲良くて。eijinが「このY ohtrixpointneverってヤツよくね?」ってWATER DAWGSの動画を見せてきたので初めて知りましたね。そこからコンタクトを取って。
Y ohtrixpointnever - 連絡が来てから一回も会わない状態でとりあえず曲作ろうってなって、その時できたのが“Flight to Mumbai”。できあがった瞬間に電話きて「やばくね」って言われて、俺も「やばいね」って。
- その時点ではPeterparker69の名前もなかったんですか?
Y ohtrixpointnever - なかったですね。
Jeter - そもそも“Flight to Mumbai”をリリースできたのが制作が終わった1年後とかで……マジでごったごただったよね。どこからリリースするのかっていう話があって。
Y ohtrixpointnever - Blood Orangeとかが入ってたレーベルから「うちからリリースしよう」って連絡がきてて、ちょうど曲が出来てからそのまま契約するところまでいってたんですけど、急に連絡とれなくなって。後から話聞いたら、俺らに声かけた人がその直後にトんで転職するって(笑)。それで宙ぶらりんな期間があって、じゃあ俺とJeterで出すか、みたいな。
- そもそもなんですが、WATER DAWGSの解散(2022年2月)をきっかけに二人でユニットを組んだのがPeterparker69なんだと思っていました。
Jeter - てか、俺はそもそもちゃんと入ってたのかわからん(笑)
- WATER DAWGSのメンバーではなかったのですか?
Y ohtrixpointnever - "Mumbai"ができた段階でWATER DAWGSのメンバーに聞かせたら「Jeterってやつ絶対いれたい」ってなったんですよ。で、Powerってやつが説得しにいって、一応入ったみたいな。
Jeter - まあ、ちゃんと入ってるか入ってないかわかんない状態で普通に仲良くしていて。
- なるほど(笑)。WATER DAWGSは人数もかなり多かったですよね。ちなみに当時のメンバーとの交流はあるんですか?
Y ohtrixpointnever - もともとWATER DAWGSの家にみんな集まっていたから、解散して家がなくなったから遊ぶ機会もないです。
Jeter - Powerは今、山奥にいるらしい。
Y ohtrixpointnever - 1日10時間ぐらい立ってラップしてるらしい。
Jeter - hanoi shashi frank houseも無限にトラックだけを作り続けている。
Y ohtrixpointnever - みんな元気にやってます。
ポップスは一番闘っている気がする
- 二人で何かひとつのプロジェクトをやろうと組んだというより、バイブスが合いそうだから一緒に曲を作って、という流れで活動を始められたんですね。
Jeter - “Flight to Mumbai”ができて、「これ二人でやった方がよくないか?」ってなったっすね。
- それはお互いのどういった部分でフィールしたんですか?
Jeter - なんていうんだろう……。
Y ohtrixpointnever - たぶん、俺らが思う「めっちゃ最高なポップス」が、一般の人たちが思うポップスとはちょっと違うのかもしれないけど、ここは同じものを目指してるなって感覚があったんだと思います。一応、二人ともストレートなポップスを目指しているんですけど、なんかキモくなっちゃうというか。知識のなさとか人間性によってちょっとキモくなってしまうけど、そのキモさも含めて一致したっていう感じです。
Jeter - “Flight to Mumbai”も本当はポップスを目指してたのに、なんかキモくなったし(笑)。でも逆にそれが面白いなって。
Y ohtrixpointnever - 本当はJustin Bieberみたいにしたいんですけどね。
- ポップスへのこだわりについてもう少し伺いたいです。
Jeter - やっぱ、他のジャンルと比べてポップスってスケール感が全然でっかいというか。そのスケール感がかっこいいなと思う。
Y ohtrixpointnever - ポップスって一番闘ってる感じがする。
Jeter - あと、曲を作ってて思うんですけど、一番気持ちいいものを作るのが一番難しい。キモいことはすぐできる感じがするんですけど、気持ちいいのってめっちゃ難しい。
- “Flight to Mumbai”は実際にすごくポップですよね。リスナーからの反応はどうだったのでしょう?
Y ohtrixpointnever - TohjiとかkZmくんとか、以前から「おもろそう」と思ってくれていた人たちが、やっと「こいつらいいよ」って言えるものができたというか。
Jeter - 反応して欲しい人が反応してくれた。
- ここまでのスマッシュヒットになると考えていましたか?
Y ohtrixpointnever - そういう想像はあんまりしてなかったな。でも、友達にデモを聞かせた段階でみんな「やべえ」って言ってたから、誰に聞かせてもヤバいだろうなとは思ってた。
Jeter - Peterparker69の結成より先にリリースすることになるんですけど、“FANTASMA feat. SEEDA”は、俺がニートtokyoに出た時にSEEDAさんがいて、“Flight to Mumbai”を聞かせたら「いいねー!」って言ってくれて、曲を作ることになったんですよ。
- あれもかなり驚きのリリースでしたね。"FANTASMA feat.SEEDA”の時点では「Jeter & Y ohtrixpointnever」名義だったところから「Peterparker69」というユニット名に変わるわけですが、その名前の由来を教えていただけますか。
Jeter - 何やっても許されるようなアホな名前にしたくて、本当は最初、「PeterPan69」だったんですよ(笑)。でも、名前決めようっていう日にたまたま『スパイダーマン』の新しい映画を見に行って、「Peterparkerの方が語呂よくない?」って。
Y ohtrixpointnever - パンだったんですよ、最初は。
- なるほど(笑)。楽曲のタイトルでも"spiderman4”があったり、今度出るEPも『deadpool』だったり、MARVELオマージュが常にありますよね。お二人が好きなんですか?
Y ohtrixpointnever - まあ、一般教養として好きみたいな。
Jeter - 一応、シリーズは全部見てます。
- 特に思い入れがあるわけでも……?
Jeter - 特段好きとかいうわけじゃなくて。
Y ohtrixpointnever - めっちゃ詳しいとかないっす。
- (笑)。
Y ohtrixpointnever - “spiderman4”については、『スパイダーマン』の架空の4作目の主題歌っていう遊び心ですね。
ネットフリックスの中の青春を送りたい
- そういう遊び心が散りばめられていることも、Peterparker69の魅力になっていると思います。昨年行ったプロムになぞらえたイベントも非常にユニークだなと思いました。普段どういうところからインスピレーションを得ているのでしょう?
Y ohtrixpointnever - どこだろ……生きてて面白いなって思うものとか。
Jeter - いやでも、ネットかもしれない。一時期、「ネット感」って言ってたことあったよね。
Y ohtrixpointnever - あったな。現実と空気違うよねって。
- ネット感というと、プラットフォームによっても空気感は違いますよね。
Jeter - 決まった何かがあるわけじゃなくて、ネットの感触というか、肌触り。ネットを触ってる時の、この感覚(スマホをスワイプする動作)。
Y ohtrixpointnever - なんすかね、脳みそがデバイスと直接くっついている感じというか。こう、ネットに脳みそがある感じ。身体から離れてるというか、そういうのかもしれない……いや、あんまわかんないかも……。
Jeter - キモッ!
- (笑)。それこそVaporwaveの始祖的存在の名前にあやかるY ohtrixpointneverさんにとって、ネット感は重要そうです。その感覚は電脳世界みたいなことですか?
Y ohtrixpointnever - そういうのは憧れますね、『レディ・プレイヤー1』の世界みたいなものは生きている間に経験してみたいなって思います。
Jeter - まあでも、今は「ネット感」はそんなハマってない(笑)。“spiderman4”の頃によく言ってただけで。
- そうなんですか。
Y ohtrixpointnever - 個人的にですけど、現実から離れた感覚といえば、アメリカで可愛い女の子として生まれて10代を過ごしてみたいなって……もう叶わない夢だけど、ネットフリックスの中みたいな青春を送りたい。
Jeter - ああ、ネトフリって結構言ってるよね。ネトフリは大事かも。
Y ohtrixpointnever - 共通言語になってるね。ネトフリのエモさ。エモさって言葉使う代わりにネトフリって言ってるみたいな。
Jeter - プロムもネトフリイメージだし。ネトフリはずっと考えてるな。
- 考えてみれば、ムンバイというチョイスも日本人が普通に遊びに行く感覚ではないですよね。そうした些細な非現実感は、ネトフリ的かもしれません。またプロムのコンセプトもそうですが、2010年代っぽい底抜けなパーティの空気感も大事にされていますね。
Y ohtrixpointnever - やっぱり振り返った時に、2010年代半ばの、まだ今みたいな閉塞感がない弾けてる感じとか、好きかもなって思いますね。
Jeter - 俺は中高生の頃にEDM大全盛期みたいなのが来ていて。AviciiとかOne Directionとか、SkrillexとDiploがJustin Bieberに曲作ったりとか、マジでEDMの時代に青春を送ったので、その感覚が自然に出てんのかなって。eijinとかも同い年だけど同じ感覚あるし、やっぱ俺らはこういうの好きやな、みたいな。
- なるほど。具体的に、二人で一致して好きなアーティストっていますか?
Jeter - むずいな、なんだろね。
Y ohtrixpointnever - いっぱいありますよ。出しちゃって。
Jeter - ああ、ずっといいなって思ってるのは88RISINGの“Midsummer Madness”とか。あとPost MaloneとSwae Leeの“Sunflower”。『スパイダーマン』の主題歌の。
Y ohtrixpointnever - あと、A$AP NASTとD33Jの“Designer Boi”。ああいう軽い感じがいい。
Jeter - Lauvとかもね。
Y ohtrixpointnever - Deb Never。
Jeter - そんなだっけ?好きやけど(笑)。
Y ohtrixpointnever - デカいところだとCashmere Catの『Princess Catgirl』っていうアルバムは、俺ら的にはパーフェクト。
Jeter - あんなの作れたらもう音楽やめる。
Y ohtrixpointnever - やめる。
Two Shellパイセンとバキバキの俺ら
- 具体的にアーティストの名前を挙げてもらいましたが、アティテュードの観点で尊敬しているアーティストやクルーはいますか?
Jeter - めっちゃ最近だけど、Two Shell。
- WWWの年越しパーティで一緒でしたね。でも、意外なチョイスです。「Planet Rave」にも常連となっているクラブミュージック寄りのユニットですよね。
Y ohtrixpointnever - 年が明けてから一緒に合宿したんですよ。そこで彼らを見て思ったのが、めっちゃ自分たちと近い感覚の人たちと初めて会ったなって。しかも自分たちより先にいる。
Jeter - Two Shellのトラックに乗せるメロディの感覚が、俺とめっちゃ似てるなって思ったんですよね。いいのか悪いのか分かんないけど、でもそれがめっちゃ嬉しくて。超感覚似てるわ、みたいな。パイセンやん、パイセン。
- 近い感覚、というのをもう少し教えていただけますか?
Jeter - Two Shellは超ラフなんですよ。どこでも曲を作っていいし、マイクもスマホでいいし、でも、できあがる曲はめっちゃいい、みたいな。そのラフさにめちゃくちゃ食らったんですよね。
Y ohtrixpointnever - 二人のどっちが作ったトラックなのか、自分たちでもあんま分かってないんじゃないかな。お互いのセンスをごちゃ混ぜして作っていて。俺らめっちゃさ、他のアーティストに比べたら超ラフだなって思ってたけどさ。いや全然固かったな、みたいな(笑)。
Jeter - バキバキやった、俺ら(笑)。
Y ohtrixpointnever - 俺らも今回のEPまでは、シンプルに俺がトラックを作ってJeterが歌うというやり方だったんですけど、今後はもっとラフにごちゃ混ぜしていきたいですね。EPの1曲目の“loloi”にはJeterが作ったシンセが入っていたりはするんですけど。
- 一方、Two Shellはジャンル的には遠い存在のように思えます。ジャンルが特定できないことがPeterparker69の魅力とも考えられますが、たとえばヒップホップシーンについてはどのような距離感で見ていますか?
Jeter - ヒップホップは聞いてたけど、目指そうと思ったことはなくて。音楽を始めて曲出していたら自然にここにいた、みたいな。
Y ohtrixpointnever - たぶん、日本の音楽状況的にヒップホップシーンの受け入れ幅が広いっていうか。何をやっても「カマしてる」っていう単位で見てる感じがします。
- たとえばですが、Y ohtrixpointneverさんが作っているのは「ビート」なのか「トラック」なのか、どういう自認なんですか?
Y ohtrixpointnever - 正直、ビートメイカーって思われるのも嫌だし、DJって思われるのも嫌だし。ポップスを作っているわけだから、そこはちょっと違うかもしれない。
Jeter - でも、俺らのやってることはJポップではないし、ヒップホップとも違うし。まあシーンはないんかな。
- たしかに若手のヒップホップイベントはあっても、若手のポップスイベントはないですね。それこそJポップを聞いていたことはあるんですか?
Jeter - 『君の名は』とかでRADWIMPSは聴いてましたね。
- そういえば野田洋次郎がPeterparker69のDJをリツイートしてザワついていましたね。
Jeter - Jポップも普通に好きだけど、そこを目指しているわけではないなー。
- それこそハイパーポップというシーンはどう考えているんですか?Jeterさんはソロ楽曲“Mallowball”がSpotify公式プレイリストの「hyperpop」に選出されていました。
Y ohtrixpointnever - 好きなアーティストは多いですよね。
Jeter - でも、ハイパーポップを目指そうと思ったことは一回もなくて。“Mallowball”も普通に気持ちいい曲を作ろうと思ってて。リリースするかどうか結構悩んだんですけど、周りから「出した方がいい」って言われて出した曲なんですよ。だから、ハイパーポップは好きなんだけど、目指してはいないです。
Y ohtrixpointnever - ビジュアルイメージも含めて定形化されてるっていうか、音楽とか展開とか、分かりやすく「こうです」っていう像がある気がしていて。あんまりそことは密接になりたくないですね。
ラフでサグで気持ちいい
- ヒップホップについて、ループで成り立っている音楽という点では共通していますよね。こうしたトラックを作るのに、Y ohtrixpointneverさんはどういったことを考えていますか?
Y ohtrixpointnever - だいたいワンループの積み重ねで曲ができるじゃないですか。そのすべてのループでブちかましたいみたいな感じがありますね。
- とにかく強いループを作ると。
Y ohtrixpointnever - それでいて、こういう感じで……(歩くジェスチャー)。
Jeter - (怪訝な顔)。
Y ohtrixpointnever - 歩いてたら自然と周りの景色が変わってく、みたいな。その自然さは重要ですね。いきなりグウェーン、じゃなくて。それができればその逆もできるし。
- なるほど……。ちなみにJeterさんは、Y ohtrixpointneverさんの作るトラックに対して、歌を乗せやすいとか乗せづらいとかありますか?
Jeter - いや乗せにくい。
- (笑)。
Jeter - 一番乗せにくいかもしれない。でも普通にトライしてる(笑)。
Y ohtrixpointnever - 乗せやすくしているつもりなんですけどね。Jeterに送ろうとする段階で、「やっぱりこれは乗せられないわ」って時があるんですよ。たとえば、俺はよく歌ネタをシンセみたいに使うんですけど、やりすぎるとメロディーの入る隙間がなくなる。だからデモの雰囲気を壊さずに余白のある状態まで減らしていく、みたいなことはしていますよ。自分なりに頑張っています、Jeterが乗せられるように。
Jeter - でも乗せづらい。
- Jeterさんはどういうアプローチで歌を乗せるんですか?
Jeter - 音楽始めた時からあんまり歌詞の内容は気にしていなくて。それよりも音の方が大事だから、メロディーを考えてからそこに歌詞を当てるようにしています。
- ボーカルの処理も特徴的ですよね。過剰にピッチアップしたり、逆に下げたり。
Jeter - 別に気持ちよければ何でもいいんですけど、結果的に声のピッチを上げた方が気持ちいいなって感じるんですよね。でも最近、普通に地声もいいなって思うようになってきたから、どうなっていくかわかんないですけど。気持ちよさが優先です。
- Peterparker69は音像の気持ちよさを追求しているように思います。Y ohtrixpointneverさんは基本的にサンプリングから曲を作っていると耳にしたのですが、そうなんですか?
Y ohtrixpointnever - もともと僕の使っていたパソコンがオンボロで、低スペックすぎてシンセを2個入れるとガビガビしちゃって超遅くなるんですよね。だから消去法なんですけど、サンプリングだとそれが起こらないことを発見して。でも、サンプリング自体がサグくて好きっていうのはあります。その姿勢がイカしてんな、みたいな。もうパソコンは買い替えたんでシンセを入れられるようにはなったんですけど、それでもやっぱり、サンプリングしたいですよね。
Jeter - 俺ら、ポップスとか言ってるんですけど、サグさは結構好きで大事にしてる。
Y ohtrixpointnever - 一番かっこいいなって思うのが、ヤンキーみたいなやつが適当に「エイッ」て作ったものが最高じゃん、みたいな。だから、そういう感じっす。
- Two Shellはそういうバイブスがあったということなんですか?
Y ohtrixpointnever - ヤンキーとは違うけど、めっちゃラフではあった。
オンラインコミュニティ〈CHAVURL〉
- Discordコミュニティ〈CHAVURL〉についても伺いたいです。ある種のファンコミュニティを自主的に運営して、シーンを作っていく気概を感じるのですが、いかがでしょう?
Y ohtrixpointnever - うーん、たぶん自分たち起点でシーンを作りたいみたいなのはあんまないです。浮いてたいっていうか、自由にしてたいから。〈CHAVURL〉の場所は、Kanye WestのファンサイトからBROCKHAMPTONが生まれたっていう話を聞いて、そういうことが起きたら面白いかなって思って始めていて。
Jeter - 今、〈CHAVURL〉は主にeijinが回しているんですけど、あいつは本当に誰にでもラフなやつだから、Discordで知り合った人にDJを教えるとかやっていて。それでいま実際にDJやってる子もいますね。
- それはすごいですね。実際にDiscordコミュニティの中でジャケットを作るビジュアルアーティストを探したり、リスナーと二人三脚な印象があります。
Y ohtrixpointnever - うん。
Jeter - ……でも俺、Discordやめたんだよね。
Y ohtrixpointnever - 俺もやめたよ。
- えっ、二人とも。
Jeter - いやなんか(笑)。近くなりすぎて、距離感が。
Y ohtrixpointnever - そうなんすよね。入れ込みすぎると、自分たちの活動に回すエネルギーがなくなるから。
Jeter - 一旦eijinに任せようって。
- そうだったんですね。
Jeter - それと、いろんな価値観が飛び交うからあんまり自分的に良くないなって。
Y ohtrixpointnever - 俺らはあんまりリスナーの趣向とか知らないでやっていた方がいいよね。でも、バイブスで交流できる場所があるのはいいかなと思います。
- そもそもの〈CHAVURL〉の成り立ちについて教えていただけますか?
Y ohtrixpointnever - 〈CHAVURL〉は名前だけあって、もともと。自分の幼馴染が二人いるんですけど、ほんとマジ変な動画作って楽しむみたいな普通の内輪の集まりに名前をつけていただけで。で、今の活動をやっていこうって時に、この名前かっこよくねって、そのまま使ったみたいな感じです。
- なるほど。
Y ohtrixpointnever - リーダーみたいなのもいないし、ただ場所としてある、みたいな。
Jeter - でもなんだっけ、D33Jの入ってる……。
Y ohtrixpointnever - 〈WEDIDIT〉。
- ShlohmoやRyan Hemsworthも参加しているクリエイティブコミュニティですね。
Jeter - そう。あの感じはかっこいいなって、そうなれたらいいなと思いますね。別にクルーではないけど、コミュニティみたいな。
Y ohtrixpointnever - で、そいつらの感じ全部イカしてるみたいな。
水のないプール
- 2月1日にリリースされたEP『deadpool』についても伺いたいです。どういう経緯でEPをリリースすることになりましたか?
Jeter - “Flight to Mumbai”を作った時にEPも出そうって言って、特にコンセプトとかも考えずにやっていたんですけど、思ったより制作が進まなくて……結果、2年くらいかかった。
Y ohtrixpointnever - 思ったよりお互いに怠惰だった。
- (笑)。Peterparker69結成前からEPのリリースを考えていたんですね。
Jeter - そうですね。でもお互い全然曲を作らないタイプで。マジで怠惰で。
Y ohtrixpointnever - シンプルに怠惰で2年かかった。
Jeter - 1年に2曲くらいしかできなかったな。
Y ohtrixpointnever - 今年(2022年)はやっぱライブが多かったから、忙しい気がしてたんだよね。けっこうやってんな感が。
Jeter - やってんな感はあった。
Y ohtrixpointnever - でも振りかえったら、「あれ、2曲しかできてない」って。
- 曲を作ってない時は何をしていたんですか?
Y ohtrixpointnever - ゲームとかしてます。
Jeter - 友達と遊んだりとかしてます。
- シンプルに遊んでいた(笑)。
Jeter - でも逆に言ったら、本当に作りたい時にしか作っていないから、逆におもろいというか……これはこれでいいんかなって。
- 本当にやりたいことを、ラフに作った作品であると。
Y ohtrixpointnever - ラフなんですけど、ラフなりにきっちりしてみた結果、みたいな。
Jeter - テスト前日にヤバいって気づいて急いで仕上げたみたいな。
Y ohtrixpointnever - 締め切りの1日前にできた。
- なるほど(笑)。全体を通してどういうものになったと思いますか?どういう人に聞いてほしいとか。
Jeter - 全然理想だけど、マジで普通に大学生とかティーンネイジャーに聞かれたい。
Y ohtrixpointnever - そこにも聞かれつつ、逆張りBoys&Girlsに「クソ...!いいな......」みたいな感じに思われたい。全員に聞いてもらって、全員に好きになってもらいたいですね。
- 聞いてほしいシーンやシチュエーションなどは考えていますか?
Y ohtrixpointnever - デカいところでかけたいな、ということは意識していましたね。“Tours pt.2”とかは特に、デカい会場でやるとめっちゃよく聞こえる。
- “Tours pt.2”は既にリリースされていた“Tours”に、ドロップが追加されていましたね。
Y ohtrixpointnever - そこはphritzくんがアイデアを出してくれて。
- ミキシングとプロデューサーのクレジットにphritzさんが入っていますね。意外なつながりのように思えます。
Y ohtrixpointnever - phritzくんはSPREADのイベントで一緒だったんですけど、帰りに電車に乗ってスマホ弄っていたら、ほんと目の前に、俺に気づかないで立っていて。だから「phritzくん電車乗ってますか?」ってDMをして。それからですね。
- 目の前にいるのにDMで(笑)。今回のEPは客演は誰も入っていませんね。
Y ohtrixpointnever - 基本的にコラボみたいなことは今あんまり考えていなくて、一旦二人で積み重ねたいなって思っているんです。でも、ミックスやマスタリングは職人的っていうか、自分の適当な感じだとゆくゆく後悔すると思うんですよね。phritzくんに頼んでみてすごくよかった。
Jeter - マジで最高。
- ちなみにタイトルの『deadpool』は、もちろんMARVELの『Deadpool』がオマージュされていると思うのですが、その意図を教えていただけますか?
Y ohtrixpointnever - そうですね……。「水のないプール」みたいなことがないかなってJeterとマネージャーの和田と3人で話して、今のタイトルになって。
Jeter - 違う、水のないプールまでの過程があったじゃん。
Y ohtrixpointnever - 恥ずかしいんですけど、俺はTwitterで情報を集めるアカウントを持っていて。そこで誰かが「今流行っているシティポップに求められているのは、80’sの当時の再現ではなくて、水のなくなったプールなんだよ」みたいなことをツイートしていて、俺はめっちゃわかるーって思って。自分たちが作っている音楽も、生きていて、今日ここから家まで帰る時に聞く音楽だったりするから、その感じを目指したいなって……わかります?
- もう少し説明をお願いします(笑)。
Y ohtrixpointnever - 言っちゃえば、新しい形のシティポップみたいな。
- 皮肉めいた意図もありますか?それこそサンプリングのサグさとも繋がってくるような。
Y ohtrixpointnever - まあ、今回のEPはそれでまとまったかなって感じです。Peterparker69的にはMARVELノリもあるから、『deadpool』でいいかなって。
- EPタイトルについて、Jeterさん的にはいかがですか?
Jeter - 僕わかんないです。
- (笑)。
Y ohtrixpointnever - 俺もその態度でいきたかった。恥ずかしいです。
Jeter - いや、Yに今の話を言われて、適当に「たしかにたしかに」って言っただけです。なんで普通にわかってないです(笑)。
ポップすげえ
- 今後の展望があれば教えてください。
Y ohtrixpointnever - 個人的には海外に引っ越したいです。個人的に。
Jeter - 俺関係ないやん(笑)。
Y ohtrixpointnever - 二人で行けたら最高ですけど、人の人生のハンドルを握るわけにはいかないので。
Jeter - でも俺も、今年はTwo Shellスタートな感じがあったし、グローバルに活動したいなって。Princess Ketamineっていうアーティストもリミックスをやってくれているし、海外との絡みを増やしたいですね。海外にも行きたいし。
- グローバルといえば、Appleの件についても伺いたいです。2022年末にApp StoreのCMソングに“Flight to Mumbai”が起用されていましたね。一体どういう経緯で?
Y ohtrixpointnever - いきなりメールが来たらしいです。
Jeter - マネージャーの和田がめっちゃソワソワしていて。ずっと「言いたい言いたい」みたいな、「なんだよ早く言えよ」って(笑)。で、最初知らされたのは、「某世界的家電メーカー」からCMのオファーが来ているって。え、SONY?みたいな。
- 家電メーカー(笑)。
Jeter - それが本決まりになってようやく、Appleでしたって。「ええええっ?」みたいな。ネトフリの音楽に使われるっていうのが夢だったんですけど、Appleも同じくらい夢だったから、すげえ、みたいな。ポップすげえ、みたいな。
- CMを見てどうでした?
Jeter - めっちゃ普通に感動した。え、見た?
Y ohtrixpointnever - 見た見た。「2023は、一歩先へ」みたいな言葉でできて、マジAppleじゃんって。
- CMきっかけでPeterparker69のリスナーもこれから増えていくかと思います。
Y ohtrixpointnever - そうですね。福岡に行った時も「CMで知りました」って人が結構いて、ちゃんと効果あるんだって。もっとそれが増えるといいですね。
- 最後に、抱負などあれば。
Y ohtrixpointnever - もっとラフに、もっとデカくやっていきます。
- 今後もポップスで闘っていくお二人を応援しています。本日はありがとうございました!
Info
アーティスト:Peterparker69, Jeter, Y ohtrixpointnever
タイトル:deadpool
トラックリスト:
1. loloi
2. Flight to Mumbai
3. Tours pt.2
4. fallpoi
5. pp home session
6. deadpool
リリース日:2/1
クレジット:
Music
Produced by Y ohtrixpointnever
Song & Lyrics by Jeter
Mix/Mastering by phritz
PM/A&R by Tatsunori Wada
Artwork
Creative Direction by Jeter & Y ohtrixpointnever
Art Direction by Hajime Matsuo, Heijiro Yagi
Photo by Kanade Hamamoto
CG by N3V3R3NDINGSTORY
Special thanks to Rintaro Fuse, gillochindox, Masami Kato
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各種配信サービスにてリリース