【ミニインタビュー】Sharda aka Murlo | イギリス北部のダンスミュージックを作りたかった

UKガラージ/ベースラインに特化し、2017年から不定期で開催されてきたDJイベント『RIP』にUKからShardaの出演が決定した。前回、Shardaもリリースを重ねる新興UKGレーベルKiwi Rekords主宰のConductaを招いた、2019年以来の海外アーティストの招致になる。

Murloとしても知られるShardaは、この名義ではより自身が生まれ育ったイングランドのミッドランド、北部のダンスミュージックにフォーカスした作品をリリースし続けている。インタビューでも言及しているように、Murloとしては何度も来日している彼だが、Sharda名義では初となり、本国のUKガラージシーンを牽引する彼とのパーティーは日本のUKガラージシーンにとっても試金石となるようなイベントになるだろう。

取材・翻訳: Genick

- Shardaを始めたきっかけは?

Sharda - 2013年頃からShardaの曲を作り始めましたが、当時はベースラインとオルガンガラージの別名義として秘密裏にやっていました。私はミッドランド東部で育ったので、もっとミッドランドや北部の音楽に傾倒したダンスミュージックの別名義を作りたかったんです。

- MurloとShardaはどのように使い分けているのですか?

Sharda - Shardaのプロジェクトは、当初はMurlo名義と大差なく、ワブリーなベースラインとカットアップされたサンプルばかり使っていましたが、しばらくしてMurloのプロジェクトでもっと音を探求したいと思うようになりました。また、音楽と一緒に自分のビジュアルアートをもっと紹介したいと思った時期でもあったので、時間が経つにつれて2つの名義のスタイルがどんどん分かれていったんです。最終的にShardaはダンスミュージックのプロジェクトに、Murloはアートのプロジェクトになりました。

- 最新シングル"It's A Love Thing"の制作エピソードや、所属レーベルのCoil Records、Conductaが主宰するKiwi Rekordsとのコラボレーションについて教えてください。

Sharda - 7月にConductaと一緒に『Outlook Festival』に出演した時に、その1週間の間に何度もこの曲をかけたんだけど、彼の心にすごく響いたみたいで、リリースにあたって両レーベルをコラボさせたら面白いんじゃないかってことになったんです。

- Shardaのビジュアルイメージについてお聞かせください。 2022年4月20日にリリースされたEP『Unreality』では、ローポリ3DCGを使用したMVが公開されていたり、世界最大級のメタバース空間「VRCHAT」で目撃されたりと、日本のビデオゲームやネット文化からの影響を感じますが、Shardaが表現したいビジュアル面について教えてください。

Sharda - "Let It Go"は、鉄拳のような格闘ゲームをイメージして、キャラクターやシーンをデザインしているうちに、ミニバックストーリーができて、プロデューサーから見た音楽業界を描いたようなビデオになりました。"It's Alright"のビデオは、佐藤修氏が開発したプレイステーションのゲーム『LSD』に強くインスパイアされました。最近またこのゲームをプレイしたんですが、EPを作るときにちょうど頭の中に残っていたんです。VR Chatに関しては、0b4k3とGHOSTCLUBのクルーに大きな賛辞を贈りたいです。彼らがVR Chatで作り上げたものは素晴らしく、クラブ自体もとても美しいです。

- 2009年にMurloとして活動を始めてから、UKガラージ/ベースミュージックシーンに起こった変化について教えて下さい。

Sharda - UKのシーンはとても変化していて、数年ごとにその時流行っている支配的なサウンドがクラブを支配したり、かつて大きかったラジオ局での選曲にもそれが投影されるから、とても周期的なプロセスになっている。ガラージ、グライム、ベースライン、ジャングルといったジャンルのファンが完全にいなくなることはないんだ。

- 最初に好きになったスピードガラージの曲は何ですか?

Sharda - 一番最初!?おそらくクラブで最初に聴いたのは他の多くの人と同じくDouble 99の"Ripgroove"だと思います。それか187 Lockdownの"Gunman"。

- 日本のクラブシーン(特にUKガラージシーン)については、どのような印象をお持ちですか?

Sharda - 日本でプレイするのはとても楽しいよ。観客はいつも超熱心で、ジャンルにも精通している。2015年にDeadboyと渋谷でやった『VOID』というガラージパーティーはとても楽しかったし、それ以来MurloとしてCircusに何度か出演したけど、どのパーティーも印象に残っているね。今年の初めにコンピレーション『J-Organs Vol1』を聴いてとても気に入ったので、それ以来、日本を拠点とする多くのガラージプロデューサーを紹介してもらい、ほぼ毎回その曲をプレイしているよ。

- 今回のライブではどんなプレイをするのでしょうか?

Sharda - UKガラージ、スピードガラージ、ハードコア、ジャングルなど、自分の作品をたくさんプレイする予定なので、最後にはスピード感あふれるものになると思います。Shardaとしてプレイするのは今回が初めてなので、皆さんの前でプレイするのがとても楽しみです!

Info

360°取り囲めるDJブース配置とVoid Acousticsのサウンドシステムでお送りするUKG/BASSLINEの祭典RIPがMurloとしても知られるDJ/ProducerのShardaをUKから迎え開催。RIPを知り尽くしたトラックメーカーを中心としたローカルアクトにも注目。

RIP with Sharda

2022年9月16日(金)
23:00~5:00

CIRCUS TOKYO
http://circus-tokyo.jp

DOOR: ¥2,500(+1D)

ROOM1:
GUEST: Sharda

DJ :
Dayzero
Genick
Jacotanu
kyo
melo & Oblongar

VJ : KillU/Photone

ROOM2:
Aki Dolanikov
audiot909
IX/ON
Nizikawa
oddrella
Takaryu
That Fancy I

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