【コラム】田我流の城崎温泉紀行 with master-piece

兵庫・豊岡にある関西屈指の温泉街・城崎温泉。志賀直哉や有島武郎といった文豪も愛した温泉は昨年2020年に開湯1300年を迎えた。同じ豊岡市に自社ファクトリー「BASE TOYOOKA」を構えるバッグブランドmaster-pieceが、1300年を記念して湯巡りをテーマにし、いつでも城崎温泉を身近に感じられるコラボバッグを発表した。

そんな記念すべき心も温まるようなアイテムの発表を記念して、大の温泉好きである田我流が旧友のKANEと共に城崎温泉への旅に出る。志賀直哉が投宿し名作『城の崎にて』を執筆した旅館「三木屋」と温泉街を堪能した田我流からのレポートと共に名湯を追体験してみては。

取材・文 : 田我流

撮影 : KANE

まさかのまさか。大の温泉好きを自負する俺に、FNMNLさんから兵庫県の城崎温泉に取材に行ってきてもらえないかという話が舞い込んだ。その時点では俺は城崎温泉の存在を知らなかったのだが、送られてきた資料を読んでみると開湯1300年の歴史を持ち、かの志賀直哉が大傑作『城の崎にて』、『暗夜行路』を書いた温泉宿があるというではないか。俺は直ぐにOKを出し、SDPのKANEさんにカメラマンとして同行してもらい(KANEさんはライターだが写真も非常に素敵だし、何より旅の同行者としてこれ以上頼もしい人はいない)、新幹線とローカル線を乗り継いで城崎温泉に向かった。

城崎駅に到着すると、master-pieceの方が駅前で待っていてくれた。宿までの道すがら街の歴史や、今回の温泉街とのコラボレーションに至る理由などを聞いた。歩きながら驚いたのは宿の多さと圧倒的な景観だ。木造3階建ての風情ある旅館が所狭しと軒を連ね、道の真ん中には小さいが風情のある川が優雅に流れ、その両脇にはライティングされた枝垂れ柳が植わり(まるで倉敷の美観地区のようだ)、浴衣姿で温泉客が下駄を「カツカツ」鳴らし歩く姿に、一瞬昔の日本にタイムスリップしてしまったような感覚を覚えた。

そして10分程歩くと、あの志賀直哉が執筆をしていたという旅館「三木屋」さんに到着した。門構えからはそこに宿る歴史と格式の高さが一眼で感じられた。そして女将さんや番頭さん、仲居さんの細やかなサービス。俺はいちいち宿の素晴らしさにぶち上がった。着いてすぐに夕食をいただく。懐石のフルコースだったが、どの料理も信じられないほど美味しくて独創性に溢れ驚きに満ちていた。料理はアートだとこの日ほど強く感じたことは無い。FNMNLさんマジでありがとう涙。食後にはほろ酔いで軽くなった足取りで、俺は早速master-pieceの温泉バッグを片手に夜の街に繰り出した。

この温泉街の凄いところは、76軒も旅館やホテルがあるのに、どの宿の風呂も小さい作りになっているところだ。何故なら城崎温泉街には「7つの外湯(公衆浴場)」があり、駅が「⽞関」、道は「廊下」、宿は「客室」、 そして外湯は「⼤浴場」と、まち全体が⼀つの⼤きな温泉宿に例えられているのだ。そうする事で温泉客達は街に繰り出し、そこで食事やお酒を飲んだり、お土産などを買ったりして、街全体が潤うようなMONEY FLOWが生まれている。個人の利益ではなく、皆んなで街と文化と歴史を守る。そして共生していくという城崎の先人達の考え(UNITY)に、俺は深く感動した。これこそまさに分断の進む今の日本人に足りないものではないかと。

二日間で三つの外湯を楽しんだ。どの温泉も海の近くとあって、舐めてみると塩の味がし、非常にいい温泉だった。(個人的には我が海なし県・山梨の硫黄泉などとの違いを強く感じた、海に近い温泉はダウナーではなくどれもアッパーな感じだ。湯上がりも汗がどんどん噴き出してくる。そしてその後凄い元気になる。)コーヒーを飲んだり、お土産や伝統工芸の店を見たり、気さくに話しかけてくる城崎の人たちと語らったり、気がつけばあっという間に帰りの電車の時間になっていた。あと一日あったら良かったなーなんて思いながら、俺とKANEさんは長い長い電車旅を、これからの人生について語りながら帰路についた。

Info

志賀直哉をはじめ多くの文人に愛され、開湯1300周年を迎えた兵庫県豊岡市の温泉街「城崎温泉」。同じ豊岡市に自社ファクトリー「BASE TOYOOKA」を構えるmaster-piece。この度、開湯1300周年の記念事業として、両者による湯巡りをテーマにしたコラボレーションが実現し、 温泉旅行の際、着替えやタオルなどの持ち運びに適した、浴衣や普段着にもフィットする湯巡りバッグが完成しました。 このアイテムには、「温泉体験」のきっかけづくりとして、5年間有効な城崎温泉の外湯巡り 1 日フリーパス交換券(2026 年迄有効)が付属しております。温泉だけではなく、デイリーユースをはじめ、銭湯などでも活用でき、いつでも城崎温泉を身近に感じていただければ、という思いが詰まったアイテムです。

YUMEGURI BAG

BLACK BEIGE

YUMEGURI BAG S No.43441 9,900yen(tax in) W250 H240 D240mm

SAX NAVY WHITE(※城崎温泉限定販売)

YUMEGURI BAG L No.43440 12,100yen(tax in) W340 H320 D280mm

1DAY FREE PASS

https://master-piece.co.jp/kinosakionsen/

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