【直前特集】butaji、Le Makeup、SPARTAの歌詞の書き方と歌詞が印象的な楽曲

FNMNLによる主催イベント『3S』が、いよいよ今週末5/23(日)に東京・渋谷のWWWで開催。異なる個性を持ちつつも、共鳴する音楽性を持ったアーティストをFNMNLがキュレーションするイベントシリーズの『3S』。初回にはbutaji、Le Makeup、SPARTAというスタイルは異なりつつも、特別な「うた」の力を持った3組が登場する。

イベント開催前に3組に自身の楽曲の中で歌詞に思い入れがある楽曲と、他のアーティストの楽曲で歌詞に影響を受けた楽曲を挙げてもらい、「うた」の魅力に触れる企画を敢行した。

butajiがチョイスした自身の1曲

"acception"

butaji - 2018年にリリースしたアルバム『告白』から”accepstion”を比べると歌詞に対して明確に違いがあって、客観視ができるようになったというのはあるので1個のターニングポイントなのかなという気はしていますね。『告白』の時に書いていた歌詞は寓話性というか、人から少し離れたところで書いていたものだったんですけど、ようやく人側に戻ってきたというか。その変化はとても複合的な要因があって、『告白』の時に自分がバイセクシャルであることをカミングアウトしたんですね。そこからLGBTQのメディアの方や、そのシーンにいる人たちとのコミュニケーションが増えてきたことで、僕自身もそのシーンにコミットしたい気持ちが出てきたというのもあるかもしれないですね。ざっくりしたものをフワッと曲にして届けるのではなくて、もう少し人に近づいた表現をできるという気持ちが上がってきたのかもしれないですね。

- "acception"はかなり踏みこんだ1曲ですよね。

butaji - あの曲の1つのきっかけは友人のお子さんが亡くなってしまったということがあって。そのお話を聞いた時に、亡くなったお子さんに対して「ずっと愛し続けていいんですよ」ということをパーソナルに捧げたくて書いた曲ですね。この曲を書いていく過程で、元々僕が潜在的に持っている愛情の多義性/可能性と関連づけられるなという予感があったので、ジャケットも新地健郎さんというLGBTQのメディアなどに作品を提供している方に書いてもらいました。あと歌詞が変化しているなと思うのは、肉体的な表現があったりするところかもしれないですね。そういう部分ではコロナの影響もあるんですよね、人に触れられない状況なので。

- 特に歌詞の中で気に入っている箇所は?

butaji - 成長だと思っているんですが、「先の読めないこんな日々で、間違いなんてあってないもの」という所は、軽いスタンスで厳しい方を促してる感じがして。前ならもっと重い感じになったんだと思うんですけど、こういうのをラフに書けるようになったんだなと思いますね。新曲の”free me”でも「できあい お惣菜 今宵 トライ」で踏んでいるんですけど、お惣菜とかを歌詞で出せるようになったんだなというのは自分の好きな所ですね。

- 前はなぜ書けなかったと思いますか?

butaji - やっぱり客観視できてなかったからということですかね。取り憑かれたように書いていた時期もあったし、自分の作品と自分自身に距離を置いていなかった。その中でも精一杯距離を取ろうとはしていたんですけど、心血注いで、悩みに悩み抜いて、生死の境で出した作品が正しいと思っていたんです。それもアリだとは思うんですけど、そうではない作り方を一つ覚えたのかなという気はしますね。

- それはより社会性を持ったということでもあるんでしょうか?

butaji - 確かにそうかもしれないですね。音楽自体がメディアだと思っているので、そこに何を流し込むのかということだと思うんですよね。フォーマットがある音楽については、何を流し込むかが重要だと思っていて、僕が関わっていく方向の1つにLGBTQのマターがある。さらに言えば根本には人との関わりづらさ見たいのがあるので、それをよりラフに書けるんじゃないかなと思いますね。

butajiが選んだ歌詞に影響を受けた1曲

Joni Mitchell - "The Last Time I Saw Richard"

butaji - 歌詞について考えていく時に、シンガーソングライターの歌詞はフィクションかノンフィクションなのかという捉え方ってありますよね。ノンフィクションとして見られがちだとは思うんですが、僕はあまりそうは考えていない。その理由はどこに共感の余地を置いているかということで。僕は言葉にしている時点で、少なからずブレはあると思う。それでこの曲を聴いてみると全編にわたって具体的なモチーフばっかり出てくると思うんですけど、どういう構造でこの曲が響いてくるんだろうということを考えたいんですよね。言うまでもなく卓越したボーカルだし、それで十分とは言えるんですが、どこか歌詞をわかってしまう部分もある。ボーカリゼーションについても響くところがあって、この歌詞のラインについてはこの声の震えを当てるとか、とても勉強になった曲ですね。初めて聴いたのは20代前半で、それくらいからずっと聴いています。要約すると愛情におけるロマンチックな部分を信じきれなかった男性と、その人のことが好きだった女性のこと。この曲で一番好きな部分は、やっぱり最後じゃないですかね。2人の運命をごく個人的に歌っているんですけど、個人的になればなるほど、普遍性に近づいていくようなものってありますよね。その1つの例なんだろうなと思いますね。

Le Makeupが選んだ自身の1曲と歌詞に影響を受けた1曲

"Ray"

GOING UNDERGROUND - ”東京”

Le Makeup - GOING UNDERGROUNDの”東京”って曲を選んだんですけど、歌詞って音楽の一部、文章である前に音だから。そういう点で自分の”Ray”だと「変わっていく街と 首筋のほくろ 今までの君と 僕を試してるみたいだ」で韻を踏んでる感じやし、変わっていく街と変わらない自分の対比を言いたかったけど、そのまま言うんじゃなくて、ほくろで言い表している。「今までの君と 僕を試してるみたいだ」も一緒に選んだGOING UNDERGROUNDの"東京"の「最近じゃ道に迷うこともないけど 最近じゃ道を選ぶこともしないんだよ」と「たぶん僕らにきっと必要なのは ガソリン代と少しの休日でナビに頼らない旅にでてみようぜ」という部分と共通しててラップじゃないけど韻が心地いいなと思ったんです。歌詞って音とハマることで意味が強まってドライブ感が出てくるのが一番大事だと思うので、その点でいうと”Ray”のこの部分の歌詞が音と意味の両方を入れられているから選びましたね。書くときは、自分が発したい言葉をどうやって歌詞として歌えるのかというところを考えています。難しい言葉を使うと音楽も聴かれ方が変わるじゃないですか。安直にいうとポップソングってわかりやすい言葉がいっぱい入ってると思うんですよ。自分としても、どこまで簡単な言葉でいけるか、もしくは難しい言葉を使ったとしてもむずかしく聞こえないみたいなところと、韻は考えますね。

- 歌詞を書くのは時間がかかりますか?

Le Makeup - スピード自体は割と早いと思う。何回も書き直していくということじゃなくて、元々自分の中にレパートリーとしてある単語を膨らませようとしているんですよ。その中から選んでいく。歌詞は曲を作りながら自然に出していきたいと思ってますね。フリースタイルじゃないけど、そういうやり方をしている。

- 挙げていただいたGOING UNDERGROUNDの"東京"もそうですし、Le Makeupさんの曲にも街の風景が出てきますよね。

Le Makeup - アルバム『微熱』に関していうと、色々な引用元があるんですよね。例えば川端康成の『伊豆の踊り子』とか、色んな土地をタグ付けしていくような感じなんです。歌詞サイトのGeniusで、キャプションが出てくるじゃないですか。ああいうものを自分の作品でもしたくて、誰も気づかないと思うけどいろいろな引用とか、発想元があるものを入れるようにしましたね。そういう実験をしてるんです。あと自分のアルバムでいうとスラングとかは使わないと制約をかけてやったんですね。自分の音楽を作りたいから、そういうものにはあまり頼らないようにして。

自分のこととして歌詞にしたいけど、それよりも音楽が優先というか。歌詞で「悲しい」と歌ったとしても、そのシーンで自分が本当に悲しいと思ったかは言い切れないですよね。だから自分のことを歌ってるかもしれないけど、赤裸々に歌っているわけではない。映画でも好きだなと思う作品は、画面の外が見える作品で。音楽でも街と自分を歌っていても、その裏にいるような人のことを想像できるものが良いと思っていて。だから一個引いた目線かもしれないですね。エドワード・ヤンの映画、例えば『牯嶺街少年殺人事件』って画面における建物の写っている割合が大きい。ラストシーンでも出来事が起こっている中でも、裏にマンションがあるっていうのがわかる。感情移入もできるけど、登場人物を写す目線じゃなくて、世界を丸々写そうとしてるんじゃないかなと思うんですよね。『牯嶺街少年殺人事件』で卒論を書いていく中で、自分もこういうものが作りたいなと思ったんですよね。音楽についても最終的にはただ音でしかないというのが自分の中にあるんです。

- 他に歌詞で影響を受けたアーティストや作品はありますか?

Le Makeup - tofubeatsの『Fantasy Club』は自分でアルバムを作る上ですごい参考にした作品ですね。しっかり研ぎ澄まされた統一感がある作品で、歌詞もすごい一貫している。さっきのGenius的なアノテーションをつけるということでいうと、Frank Oceanの歌詞はそういう楽しみ方ができて影響を受けてますね。

SPARTAが選んだ自身の1曲

"Jungle feat. anddy toy store"

SPARTA - "Jungle"のリリックは全部好き。特に好きなところは二つあって、「知識、理屈超えた先で会う」のところと、2バースめの「俺らふるい落とされた中の1人」というところ。個人的には音楽は理屈や知識より直感が大事だと思っているから、直感的に聴いて欲しいなと思って書いたバースです。次の部分はみんなチャンスがあると思って書いた。自分は何もできないけど、音楽は少しできる、みんなもできないと思ってることでも、意外とちゃんと手を伸ばせばできると思うから、ワクワクしてチャレンジに臨んで欲しいと思って。今の自分のアーティストとして見えている景色を歌った曲。他にも「歌と舞う」とかの言い回しも自分が作った音楽と共に舞っていく感じは気に入ってる。
書き方を変えていて、前はトラックを聴いて感じた言葉を出していたけど、最近は「歌と舞う」もそうだけど、好きなワードとかをメモして着想するようになった。作文から、今は音楽的であることを重視するようになったから、そうやって単語をメモするようになったんです。

SPARTAが選んだ歌詞に影響を受けた1曲

KOHH - "Super Star"

SPARTA - スケボーしつつ聴いていた曲で、「KOHH vs KOHH」というワードが自分と闘うという意味でかっこいいなと思ってました。「しょうもねえ嫉妬や妬む病む気持ちより目線はもっと上」というところには勇気をもらっていたな。昔は自分に照らし合わせやすかったから、わかりやすいリリックが好きで。遠回しで構えてる表現は嫌だった。でも佐々木くん(KID FRESINO)、Jさん(JJJ)とかのリリックは自分でリリックを書くようになってから、凄さを知った感じ。KOHHのわかりやすさとは対照的に、解読するのが楽しいリリックで、また別の面白さを知った感じですね。自分は影響を受けやすくて、その両極からの影響を受けているんだと思いますね。

Info

タイトル:FNMNL Presents 3S

日程:2021年5月23日(日)

会場:WWW

出演:butaji / Le Makeup / SPARTA

時間:OPEN 16:30 / START 17:00

料金:¥3,000(税込 / ドリンク代別 / オールスタンディング)

問合:WWW 03-5458-7685

チケット:4月19日(月)19:00〜 e+

https://eplus.jp/sf/detail/3415470002

※本公演は「ライブハウス・ライブホールにおける新型コロナウイルス感染拡大予防ガイドライン」に基づいた対策を講じ、開催いたします。チケットのご購入、ご来場の際は「新型コロナウイルス感染拡大予防対策の実施について」を必ずご確認いただき、ご同意の上でチケットのご購入とご来場をお願いいたします。

公演詳細:

https://www-shibuya.jp/schedule/013505.php

related

butajiの最新作『RIGHT TIME』のリリース記念番組がYouTubeで放送 | 奥冨直人がAマッソにbutajiの魅力を解説

butajiの最新作アルバム『RIGHT TIME』のリリースを記念した番組がスペースシャワーTV公式YouTubeチャンネルにて12/2(木)に放送される。

【ライブレポート】SPARTA 『兆し』Release Tour In Tokyo | 「ちっちゃい奇跡みたいのを積み重ねてここに立ってる」

SPARTAが11月3日に東京・WWWでワンマンライブ「SPARTA『兆し』Release Tour In Tokyo」を開催した。10月24日の熊本・NAVARO、30日の大阪・CIRCUSに続く、3rdアルバム『兆し』のリリースツアーのファイナル公演となる。この日のWWWはソールドアウトとなった。

JJJの1年ぶりのワンマンライブにDaichi Yamamoto、KEIJU、KID FRESINO、SPARTAのゲスト出演が決定

11/27(土)にTSUTAYA O-EASTで開催されるJJJのワンマンライブ『JJJ LIVE 2021.11.27』の追加のゲストアーティストが発表となった。

most popular

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。