【対談】上野伸平 × マヒトゥ・ザ・ピーポー 「BREAKSTAR SK SHINPEI UENO OX +」 | 本能的に惹かれあったスケートと音楽

TIGHTBOOTH PRODUCTIONを主宰し、Evisen Skateboardsのプロライダーとしても国内外から高い評価を受けている上野伸平。CONVERSE SKATEBOARDINGからこの度発売される上野のシグネイチャーシューズ「BREAKSTAR SK SHINPEI UENO OX +」は、彼らしいスタイリッシュでありつつも細部までこだわった一足となっている。

「BREAKSTAR SK SHINPEI UENO OX +」の発売を記念してFNMNLでは、上野と親交が深いGEZANのフロントマンであるマヒトゥ・ザ・ピーポーとの対談を公開。初対面の時から瞬間的に距離が縮まったという2人はお互いの表現についてどのように考え、どのような共通点を見出しているのだろうか。

取材・構成 : 山下丸郎

撮影 : HOUMI SAKATA

取材協力 : Veronique

初めて会った時に瞬間的に距離が縮まった

- 先ずは2人の出会いから伺いたいのですが。

上野 - マヒトは、Whimsyをやってる後輩の宗太が仲が良いのを元々知ってて、その頃からGEZANて名前が滅茶苦茶頭に残ってた。何かでビジュアル見たときに、真っ赤やんってなって、名前、マヒトゥザピーポー。ツッコミどころむっさあるから記憶の片隅に常にあった。どこでどう会ったのかはハッキリ覚えてないんやけど、それこそここ(Veronique)ちゃうかな?

マヒト - ここかもしれないですね。

上野 -ドアを開けたらバーカンに真っ赤なやつがいて。これ、マヒトゥザピーポーちゃうか? て思ったら、マヒトも俺のことを知ってくれていて、伸平くんですよね? って声をかけてくれた感じかな

マヒト - 俺も宗太とか、Tightboothの写真も撮ってるマサとかと喋ってたから、伸平くんとは会ったことはなかったけど、彼らが話してる背景にいるっていうか、肉体は確認してないけど存在が持ってるエフェクトを裏で感じてるみたいな感じで。それはリスペクトだと思うんだけど。輪郭はあるんだけど、まだ肉体は出会ってないくらいのイメージ。それで、ここで会ったんですよね。

上野 - マヒトは元々大阪やったっけ?

マヒト - 出身は島根なんですけど、10回くらい引っ越したりしてるから、あんまりどこが地元みたいのがなくて。けど、大阪が長いですね。

- 会ってすぐに意気投合みたいな感じだったんですか?

上野 - そうっすね。共通の仲間もいるし、今ってSNSとかでGEZANて検索したら色々出てくるから。俺はバンドもしないし、普段あまり聴かないけど、マヒトがどういう奴で、どういうことを言いたいかっていうはなんとなく分かる。マヒトが俺を見たら、スケートはしないかもしれないけど、なんとなくは感じるもんみたいのがやっぱりあると思うし。そういう人って何人かいて、会うと瞬間的に距離が縮まる。はじめましてっぽい会話が少なくて、すぐに本質の話になったりするんですよ。

マヒト - 俺の伸平くんの印象は、夜遊んでいるとそれこそ芸能っぽい人とか色んな人と会うし、その場所に変なものが渦巻いてるときとかがあって。そこにいること自体がプロップスや目的になってる人がいるんですけど、そういう中で、なんかギラついてる印象がありましたね(笑)。鈍色一色のトーンが全体に流れている中で、虎一匹混ざってるみたいな。そういうギラつきみたいのを、ここで初めて会ったときにも感じたっすね。

上野 - マヒトは表現者っていう部分で同業だし、マヒトが俺に感じたことは俺もマヒトに感じてた。分かり易く言うと、その場に溶け込んでいるようで、いつでも消えそう(笑)。

マヒト - 滅茶苦茶わかる。皆、人の皮をかぶってるけど、結局本質的には動物じゃないですか。その辺の匂いなんだろうね、やっぱり。共通の友達がとか、そういう切っ掛けはあるけど、本能的に惹かれてるんですよ。恋に落ちるときとかもそうじゃないですか。この人可愛いなとか、性格が良いなとか理由があるけど、もっと本能的なものが。

上野 - 俺的には、自分が他人に聞かれたら嫌なこととかをマヒトには言える。なんて言うんだろ、嫌なところ突かれたなってことってあるじゃないですか。そういう部分を突っ込むのって、同じくらいの土俵にいないと言えへんと思うんですよ。例えば、マヒトはこう言ってたけど、こういう考え方もあるけどどうなん? とか。そういうのを、俺はマヒトには言えるっていうか。

マヒト - まぁちょっと言い合いみたいになったこともあるっすけどね(笑)。K-BOMBが間に入ってなだめてくれた(笑)。

上野 - でも、そういう話を出来る人って少ないから。マヒトは、あんまり深く遊んでないのにそういう話を出来ちゃうちょっとスペシャルな人ですね。それはK-BOMBも一緒なんだけど。

伸平くんの滑りはデザインとして見える

- 予定を合わせて飲みに行ってっていうよりかは、たまたま会ったタイミングで話すみたいな距離感ですか?

マヒト - 最近は道で会ったりとか。

上野 - この前は、俺が撮影してて若い奴らを車に乗せて表参道で停まってたら、後輩が、伸平くんあそこに全身真っ赤な人がいますって言ってきて。真っ赤なやつ、あいつしかおらへんやろって(笑)。

一同 - (笑)

上野 - で、やっぱりマヒトで。おーって一瞬すれ違った。若い子らはGEZANを聞いたことがなかったんやけど、ちょうど賢人(注: Evisenのライダーの吉岡賢人)がGEZANの"EXTACY"っていう曲をどうしても自分のフルパートで使いたいって言ってて。賢人はマヒトにBONOBO(※原宿にあるDJバー)で会ったみたいで。「めっちゃ格好良い人でした、僕この曲毎日聴きながらスケートしに行ってるんでLENZ3で使いたいです」って言うから、もう一回パートをイメージしながら聴いたら、いける。これは来たなって。これでエンダー(ラストトリックからエンドクレジットまでの流れ)までいけるイメージが出来たから、使わせてくれって話をしていた後に遭遇したから若手たちに車内で"EXTACY"を爆音で聴かせたら、うわーカッケー! これさっきの赤い人ですか?! って。

マヒト - (笑)。多分そんときも着てるのはTightboothだったけどね(笑)。

- マヒトさんは、伸平くんの表現、スケートもそうだし、洋服のデザインとかを見てどう感じていますか?

マヒト - ある種のダンス、舞いというか。トリックを見て、こんな技が出来るんだ!とか、そういうのって多いと思うんですけど、伸平くんのスケートは街の画角が視覚から入ってきてデザインとして見えるみたいのが俺の印象で、風も感じるし、空間が涼しいっていうか。ヒップホップでも凄いラップ上手いけど、けん玉が上手い子を見ているみたいで、上手いだけで別にはいってこないっていうのあるじゃないですか。けど、伸平くんのは、季節感があってとにかくデザインが涼しいっすね、自分には。

上野 - 20年以上スケートしてて、自分が今やりたいスケートスタイルっていうのは、ファッションも重要なピースになってる。マヒトが言うようにスケートボードのスタイルとかトリックって、スキルでみせるものってのは勿論前提としてあるけど、圧倒的な個性とか、ビジュアルが大切なんですよ。例えば、スポットチョイスって言うんですけど、スケーターは自分がスケートするところを自分で探す。

上野 - グレーの背景のところやったら、グレーの服じゃなくてネオンイエローのTシャツを着て青いニット帽合わせてとか、想像するから、先ずスポットチェックの時点で、自分がどんなスタイリングでスケートするかまで考えるんですよ俺は。夜やったらよりこういう色合いでのぞまないと映えないなとか、そういうことを計算しながら。あと、トリックも、たとえばフリップの方が難しいけど敢えてオーリーでスピード速くいく方が格好良いとか、そういうのもあるね。難易度を高くすればそれだけで格好良い映像になるかっていうと違う。なので、そこの見せ方には凄いこだわってます。

マヒト - 技術至上主義みたいなところって、バンドとか音楽も全部一緒だと思うんですけど、やっぱり一つの答えではあるから、思考停止して技術をどんどん磨いていくのって確約された答えではあるじゃないですか。でも、それって格好良いかどうかっていうのと全く別の話だっていうのは、意外と分かってる人ばっかりじゃないんだなって思うっすよね。

BREAKSTAR SK SHINPEI UENO OX +

- この度、伸平くんのシグネイチャーシューズがConverse Skateboardingからリリースされる訳ですが、シグネイチャーを出すのは、契約したときから決まってたんですか?

上野 - いや、そんなことなくて。元々はConverse Skateboardingのライダーとしての契約から始まって。自分の活動とか、やってることの実績とかも評価してくれてて、それで出して頂けることになったみたいな流れですね。

- なるほど。どのような点にこだわりましたか??

上野 - 実は拘ったポイントは滅茶滅茶あって(笑)。一番こだわったのは、ソールの硬度。ボードコントロールがし易いように柔らかくしました、ソールが柔らかい靴が好きなんですよ。ブーツでスケートに乗るのと、スニーカーで乗るのじゃ違うじゃないですか。俺は柔らかければ柔らかいほど調子いい。今回リリースするシグネチャーモデルのアウトソールの硬度は柔らかく調整してもらいました。あと、アッパーは全部スエードを使ってるけど、タンの部分は自分がよく着ているTシャツと同じベロアを使ってたり、ゴールドの箔プリントに合うようにシューレースの先端もゴールドにしたり。あと、プッシュするときに足の裏が見えるから、差し色でオレンジとパープルにしたり。

- ムービーではそこがしっかりとフィーチャーされてましたもんね。

上野 - そう。あとこだわった部分は、自分がお客さんの立場になって買うときのことを考えたら、よりシンプルに作りたいし、プロモデルだからといってShinpei Ueno!! って感じで名前も表に入れたくない。大体シグネイチャーモデルって入るんですよ。それはそれで俺も好きなんですけど、俺だったらなるべく外側はシンプルな方が良いから、インソールに自分の顔がイラストで入るくらいに留めようって。あと、フォームが入った厚みのあるシュータン、太いパンツを履くことが多いので、パンツのシルエットに合うようにボリュームを出してるんですよね。あと、まだありますよ(笑)。このインソール。靴下が滑らないようにインソールに滑り止めを付けてるんですよ。新品の靴下でも滑らない。

- 一見シンプルに見えるけど、伸平くんにとってはとても滑り易い一足なんですね。

上野 - 俺にとっては、今までで一番調子良いスケートシューズになりました。

- ちなみに、スケートボード用のシューズをファッションとして履くことに対してはどうお考えですか?

上野 - いや、もう最高だと思う。やっぱ音楽とかって、その人の生活の一部に入り込むやん。気分が上がらんときにマヒトの曲を聴いて、学校行ってる子もいるだろうし。あらゆるシチュエーションで人を勇気づけているのが音楽だと思ってる。でもスケートってそういうのが余りなくて。まぁまぁ自分の為だけにやってるっていうか。間接的に勇気づけられましたっていうような人は凄く一部。だから、スケートのマーケットってデカくなりづらいんですよ。けど、スケートシューズってのは靴なんで、みんな買えるじゃないですか。デッキは買わないけど、洋服と同じように靴は買える。スケシューを買ってくれてるだけで、スケートシーンに貢献してるんですよ。だから凄い嬉しい。自分も報酬を貰えたりするのは、スケーター以外の人たちにも買って貰えている部分がデカいから。ファッション好きな人には、スケシューを格好良いなと思う感覚って、昔あったと思うんですよ。そういう位置にまたスケシューを持っていけたらなって思いますね。

- 公開されたムービーについても伺いたいんですが、コンセプトから伸平くんが考えているんですか?

上野 - よく一緒に作ってる、鯨井って映像監督と一緒にやろうって話をしたときに、彼が書いてきた案が、16mmフイルムでの撮影、足跡でスケーターがいた痕跡を残すっていうコンセプト。俺も今まで普通のフルパートみたいのは散々作ってきたから、より作品ぽいものに挑戦したかったんですよね。足跡をCGで表現したり。撮影は正直、滅茶苦茶大変やったっすね。16mmフイルムのカメラを使ったんですけど、25kgくらいの重さなんですよ。普通に追いかけながら撮れないから、カメラマンが車椅子の上でブレないように拘束具みたいのでガチガチに固定されて、もう一人が俺のスケートのスピードに合わせて、車椅子を押しながら追いかけてくる。セッティングも大変だし、滅茶苦茶目立つし、16mmフイルムカメラだからモニターもないから映像の確認も出来ないし(笑)。だから、通常のスケートビデオみたいにトリックで魅せる感じはな出来なかったっすね。

マヒト - フイルムって、その場の光が焼き付いてますよね。デジタルと違ってね。

2人で何かをするとしたら?

- 2人で何かを一緒にやるとしたら、何をやりたいですか?

上野 - 一緒にやるって話でいうと、賢人が曲を使わせてもらうってのがあったから、今年出る『LENZ 3』では、一番良いところ持っていくはずですね。

マヒト - うわー、それヤバいな。生演奏しているところで滑るのとかも良いですよね。
バンドの良さって、存在しかないんですよ。ぶっちゃけ音のレンジとかも、どう考えてもパソコンで作った方が広いし、俺らが週に3回も4回もスタジオに入ってやることって、パソコンですぐに出来ちゃうことなんですけど、圧倒的にその空気の中で存在するっていうことがバンドやアーティストの強みだと思ってて。そういうのがちょっと具現化したような形が、未来的にあったら面白いだろうなって思う。

上野 - インスタレーションやね。凄い体感的なGEZANのライブに、最新のデジタルも入れたりしたら、そのギャップが面白いと思う。たとえば、真っ白なセクションを全部作ってそれにプロジェクションマッピングで赤い虎とかを投影したりとか(笑)

Info

BREAKSTAR SK SHINPEI UENO OX +
PRICE:¥14,300(include tax)
COLOR:ブラック / オフホワイト
UPPER:スエード / ベルベット
OUTSOLE:ラバー
RELEASE:2021年2月
SIZE:23.0〜28.0、29.0cm

販売リンク

BREAKSTAR SK SHINPEI UENO OX +  /ブラック

BREAKSTAR SK SHINPEI UENO OX +  /オフホワイト

お問い合わせ先

コンバースインフォメーションセンター / 0120-819-217

月〜金曜日(土日・祝日を除く)9:00〜18:00

converseskateboarding.jp

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