【インタビュー】Iann Dior 『I'm Gone』|音楽を作ることは癒し

1999年にプエルトリコで生まれ、テキサスで育ったIann Dior。高校生の時に、友達から楽曲を作って欲しいと頼まれたことがきっかけで楽曲制作をしてはアップロードすると、口コミで広がり、Internet Moneyの創設者のTaz Taylorの耳に届きLAに移住。Juice WRLDやXXXTENTACIONの作品を手掛けたプロデューサーのNick Miraと"Cutthroat"を2019年12月にリリースするとSoundCloud上で大きな話題を呼ぶ。Trippie Reddや 6IX9NEなどが所属する10K Projectsと契約し6月には『I’m Gone』をリリースした、俊英のインタビューをお届けする。

質問作成:YOSHI

通訳 : 渡瀬ひとみ

 - 今回のEPはいつ頃から作り始めたのですか?

Iann Dior - 『I’m Gone』は3、4ヶ月ぐらい前から作り始めたかな。プロジェクトのコンセプトとかいろいろなものに本格的に取り組み始めたのはそれぐらいの時期だね。

 - ロックダウンやBLMと、多くのアーティストがリリースを延期しました。それでもリリースしたのには何か特別な思いはあったのですか?

Iann Dior - 僕のアルバムもリリースは遅れたんだ。(プロテスト運動とか)いろいろなことが起こっていた時期だったからね。6月5日にリリース予定だったんだけど、実際には、6月12日にリリースされた。ファン達は僕の音楽を待ち望んでいたわけだから、みんなに聴いてもらうために早く出したかったんだ。

 - ロックやヒップホップ、ポップ、パンクと、様々な音楽的テイストを混ぜ込んだアルバムのように感じます。今回のコンセプトなどはありますか?

Iann Dior - 全体のコンセプトは、自分のいる場所が気に入らない若者の話。『I’m Gone』は、実は僕のストーリーなんだ。この世を去り、何でもできる世界に行く。何でも可能にしてくれる世界にね。なぜロックやったり、ポップやったりいろいろな音楽を作るかというと、スタジオの中で作業する上で、常に同じタイプの曲、同じジャンルのものを作るのは嫌なんだ。飽きてしまうから。常に新しいことにチャレンジしていきたいんだよね。

 - The Strokesに影響を受けているそうですが、このアルバムに彼らの影響を受けた曲はありますか?

Iann Dior - 『I’m Gone』では、影響が感じられる曲はない。でも、今取り組んでいるアルバムでは、おそらく彼らの影響は聴き取れると思う。そのアルバムは、The Strokesの影響は感じられると思うよ。

 - すごいですね。もう既に新しい音楽に取り組んでいるんですね。

Iann Dior - 僕にとって音楽を作る事は、癒しになるので、常に作っている。あまり仕事とは感じていないんだよね。アルバムは、半分ぐらい完成しているんだ。

 - そうなんですね! すごい! 新作はどんな感じになるのでしょうか? もう既にお話しできたりする?

Iann Dior - いいよ。『I’m Gone』に関連したアルバムになる。『CHEMICAL DIARY』 というタイトルにする予定。曲のリストを作っていて、それぞれの曲がどうして僕が去って行ったかを説明しているんだ。

 - “Prospect”からはアジアのバイブスを感じたのですが、この曲はどのように製作されましたか?

Iann Dior - KBeaZyとWheezyが制作にかかわっている。KBZはこの曲をレコーディングした時に僕のマンションにいたんだけど、彼があるビートをプレイしてくれて、僕がそれに興味を持った。とても独特でユニークなメロディーだったので、この曲ができあがったんだ。

 - アルバムの制作陣がこれまでと比べかなり変更があったようですが、なぜ変更を加えたのでしょうか?

Iann Dior - 僕自身ここ一年でものすごく成長したし、変わったんだよ。人としても成長したし、アーティストとしても進化したと思う。それが音楽でも伝わってくると思うんだよね。人として常に変わっているから、音楽も常に変わっていくのさ。

 - これまで数多くのヒット曲がInternet Moneyとの間で生まれています。今回Taz Taylorとの曲は“Good Day”のみになりますが、何か環境の変化があったのですか?

Iann Dior - 僕は常に新しい人と仕事をしたいんだ。いろいろな人と仕事をすると、さまざまなスタイルの音楽を紹介してもらえるから。僕にとってビートがすべてになる。また、いろいろな人と仕事をすると、あらゆるストーリーを作ることができるよね。

 - 10kprojectとは、どのような関係なのですか?

Iann Dior - 僕のファミリーだよ。Elliotとは仲がいいし、生涯僕のビジネスパートナーだ。

 - そのような関係を築く方法はなんだと思いますか?

Iann Dior - とにかくフレンドリーな仲。僕とElliotは友人同士なんだ。仕事の話しもそんなにしない。お互いに違う分野で仕事をしていて、仲良くしているよ。

 - ドラッグに関する描写がいくつか見られますが、ドラッグを使うことについてはどう考えていますか?

Iann Dior - ドラッグは使うべきものではないと思っている。でも、他の人達には理解できないことを経験している人達がいるわけだから、そういった人達の体験を音楽にしたまでだよ。

 - “Good Day”のリリックではLAでのライフスタイルが綺麗なメロディーラインとともに描かれています。MVではGTAをオマージュした形になっていますが、どのような意図があるのですか?

Iann Dior - GTA5って僕らが住んでいるLAが舞台になっているんだよね。ゲームでドライヴするとサンセット(ブールバード)に行く事ができる。だから、MVにあのシーンを取り入れたんだ。誰もGTAをMVに取り入れたことなんてなかったから、僕が一番最初にやったのさ。

 - “Psycho”のイントロでは、1st EPの『A Dance with the Devil』についてラップしたり、最後は電話が繋がらなかったりと、独特な表現がされています。これは自身の過去と関連づけているのですか?

Iann Dior - その通りだよ。ある女の子がキレちゃったんだよね。以前は、みんなの電話に出たりしてたけど、今はそんな時間がない。仕事とか、やらなければならないことがいっぱいあって、時間がないのさ。そういう状況を歌にしたんだ。僕を傷つけた女の子が今では僕に電話をしてくるようになった。でも、僕はそれに対して答えられないんだ。

 - 3曲目の“sickness”のフックでは、「everyone’s the same」などJuice WRLDを思い出すようなリリックがありました。今回のアルバムを作るに当たってJuiceの影響を受けた部分などありますか?

Iann Dior - 僕のキャリアにおいて、Juiceは大きな影響になっている。今存在するラッパーの中でも最高だと僕個人としては思っているんだ。でも、『I’m Gone』の制作中はJuiceを聴いていなかったよ。実際には、このアルバムの制作中は何も聴いていなかった。僕自身は、まったく違う境地にその時にいたから。一人で部屋の中でこのアルバムについていろいろ考えていたのさ。

 - 最近日本カルチャーで影響を受けたものはありますか?日本の音楽には?

Iann Dior - 実は、日本のアニメ大好きなんだよね。京都はいつか行ってみたいと思っていたし。美しい景色がいっぱいあるようだね。建物も歴史があるし、文化も含めてすべて興味深い。絶対に行ってみなければ、と思っている。でも、音楽的にはあまり日本の音楽にはまだ触れていないんだよね。ツアーには行くつもり。日本も含めてアジアをツアーして、いろいろなところへ行ってそれぞれの国の文化を学びたい。

 - では、日本に来ようと思ってらっしゃるんですね?日本のカルチャーで体験してみたいものなどありますか?

Iann Dior - 予定じゃなくても、絶対に行く!

 - (笑)なるほど。来日したら、何を体験したいですか?

Iann Dior - スケート・パークには行ってみたい。街中を探索したい。日本のすべてが好きだよ。写真とか良く見るし。村上隆のデザインとか好きだし、村上のプラッシュ・バックパックが欲しい。ひまわりの花のいろいろな花びらの色がついているバッグあるでしょ? ほら、ポケモンのバックパックで、綿で作ってあるものあるでしょう?(編注:これのこと?)あれって、プラッシュって言うんだけど、ああいうもの。

- そうですか〜。今日は、ありがとうございました! 世の中がまた安全になったら、ぜひお会いしたいです。また来日するのを楽しみにしております。

Iann Dior - みんなには、近いうちに会えると思うよ!

 - 今日はありがとうございました!

Iann Dior - インタビューしてくれて、ありがとう!

Info

『I’M GONE』
トラックリスト
1. Paradise
2. Pretty Girls
3. Sickness
4. Shameless
5. Psycho
6. Sick And Tired Ft. MGK and Travis Barker
7. Runaway Kid
8. Good Day
9. Prospect Ft. Lil Baby

https://ianndior.lnk.to/imgone

related

【インタビュー】SITE 『少年イン・ザ・フッド』|「死んだまま生きてて楽しいか?」本当のB-BOYが描く“混ぜ物なし”のヒップホップコミック

80年代に音楽〜ファッション業界の人々、都市の不良たちによって種がまかれ、90年代後半に「さんピンCAMP」世代が花咲かせた「ジャパニーズ・ヒップホップ」ムーブメント。2010年代に、いくつかのTV番組がフリースタイル・ラップのブームを作り出すと、ヒップホップ・シーンを飛び出した「日本語ラップ」は、猛スピードで社会のオーバーグラウンド・サイドに浸透していく。その一方、2010年代末からは、それまで身バレや顔バレを嫌ってきたアンダーグラウンド・サイドの人間たちまでもが、こぞってマイクを握り始め、いわゆる「半グレラップ」のシーンを形成している。いまや「日本語ラップ」は、日本の表と裏を両面から覆い尽くしていると言っていいだろう。

【インタビュー】LEX 『LiFE』| ゲストアーティストが聞きたいLEXのこと

LEXが8月にリリースした3rdアルバム『LiFE』の勢いが止まらない。

【対談】BIM × STUTS|ヒップホップから広がっていく

昨年、RYO-Zも参加したコラボ曲"マジックアワー"を機に親交を深めたBIMとSTUTS。8月にBIMがリリースしたばかりの2ndアルバム『Boston Bag』には、昨年リリースされていた"Veranda"をはじめ、"Tokyo Motion feat. 高城晶平"、"想定内"とSTUTSがビー...

most popular

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。