KOHH 『Live in Concert』直前特集 | 常に新しい姿をみせてきたアーティスト

KOHHの公式ツイッターアカウント@kohh_20は2014年ごろまでKOHH本人が運用しツイートしていたが、2013年の時点で彼はこんな投稿をしている。

何をするべきで何をしないべきかの判断。一つ一つの判断で人間は成り立っていると言えるが筆者がKOHH(と彼のチーム)に惹かれるのはこの「判断力の正確さと表現に対する真摯さ」ではないかと思っている。

ざっくりとではあるが近年のKOHH活動の変遷について書いていきたいと思う。活動の初期こそ日本語ラップの界隈で活動していたが2015年にアルバム『梔子』とKeith Apeの"It G Ma"へのフィーチャー、そして立て続けとなるアルバム『DIRT』の発売を境に徐々にシーン全体とは距離を置いて、独自の方向性で活動していく。

2016年以降の音源をまとめていくと2016年にはよりロック/ゴシック寄りになった『DIRT Ⅱ』 を経てシングル"MITSUOKA"、"働かずに食う"、ミックステープシリーズ 『Yellow Tape 4』を発表後は、単独音源としてはしばらくリリースが途切れる。その後2019年2月に、サプライズリリースされた『UNTITLED』は2017年の長野のライブで1度だけ収録曲の"Imma Do it"を披露していることからその時期の楽曲が多いと思われる。最新音源としてはMONSTERのプロモーションにも使用された理貴とのタッグの"I Think I'm Falling"がある。

しかし頻繁に海外アーティストともレコーディングを行うなど、リリースしていないだけで夥しい数の未発表音源があると思われる。その他客演に関しても厳選されたもの以外は辞退していると思われる。2016年以降だとFrank Ocean、宇多田ヒカル、Skrillexがトラックを提供したMariah Careyの楽曲へのリミックス参加、Higher Brothers、CA$HPASSION、Xavier Wulf、Loota 、5lack、Y's、TeddyLoid、Justin(黄明昊)などと共作している。活動初期よりは楽曲のリリース数が少なくなってしまい、寂しいファンは多いとは思うが、近年のKOHHは常に新しいアーティスト像としての自分を模索し続けているように見える。次の楽曲はどのような形のものとなるだろうか。

主催イベントでも常にお客さんを驚かせる表現を追求してきたのがKOHHだ。2015年以降の主催ライヴは2015年の『DIRT Tour』、2016年の『LIVE IN OJI』、2017年には『LIVE17』、古巣である池袋BEDでの無料ライブ『IKB CONNECTION』そして今回の『UNTITLED TOUR』となる。国内のヒップホップのイベントではライブはほとんど行なっていないが、それ以外ではフジロックやwired music fesをはじめとするフェスや異ジャンルの音楽家とのツーマン(UA、GEZAN、yahyel、Crystal Lakeなど)、NikeやFacetasmなど親交の深いブランドのパーティー(シークレットで出演したClarksのイベントではブルーハーツの"青空"をカバー!)、中国や88risingのUSツアー、フランスなど海外でのライブも精力的に行なっている。

昨年11月に渋谷VISIONで行われたNike×Facetasmのイベント『UNITE』はKOHH本人によるブッキングだったそうで、ある意味本当に彼のやりたい事をやったイベントだったのかなとも考えられる。ライヴにも趣向を凝らしているのもKOHHらしい。『DIRT CONCERT』での友人達にインタビューするドキュメンタリー映像(ぜひもう一度見たい)、ライブ中に生でタトゥーを入れ、そして最後はKOHHがライブ後に倒れておわる不穏な映像。地元である王子駅前北とぴあホールでの『Live In Oji』での生ピアノからのスタート、そして第2部のLIL KOHHはじめ地元の友人たちによるカラオケ大会。2019年のフジロックでのライゾマティクスによるリアルタイムエフェクトを施したライブ映像配信など、常に新しい角度からのライヴを行なってきた。今回もバンド編成とオーケストラ編成でのパフォーマンスが行われると発表されているが、一体どのような演出が行われるのかワクワクしてしまうだろう。

そういった演出はもちろん、KOHH自身のパフォーマンス能力の凄みは近年増してきているように思う。「Mind Trippin (最近ではMURVSAKIによるリミックスであるⅡが使われる)のオートチューン越しにも溢れ出す、絞り出すような叫び(と書くとまた語弊を生みそうだが)を見ると「エモい」の一言で片付けたくない何とも形容し難い気持ちにさせられる。

KOHH自身も「ラッパーなんかじゃない」と歌っているが、これは「枠に囚われた人達」には響かないかもしれないなとも思う。

音源はもとよりライブにおいても彼(ら)の作る作品に心躍らされてきた1ファンとして『Live In Concert』に期待しつつ当日を待ちたいと思う。(荒川テスラ)

Info

東京 1/16(木) LINE CUBE SHIBUYA
open18:00/ start 19:00 全席指定 ・ S 席 ¥10,000(前売)特典付き ・ A 席 ¥7,500(前売)
・ B 席 ¥6,000(前売)
チケット発売
一般発売: 12/14 (土) 10:00 ~
・王子復興財団 http://www.ofz.tokyo
・Smash https://www.smash-jpn.com/live/?id=3299
クレジット
主催・企画 : BM Inc. / 日本コロムビア
制作:SMASH
運営:HOT STUFF PROMOTION
総合問合わせ:SMASH 03-3444-6751 smash-jpn.com
:HOT STUFF PROMOTION 03-5720-9999 red-hot.ne.jp

RELATED

KOHHの『The Lost Tapes』がリリース | 未発表曲や"Is This Love"、"ロープ"のデモ、V6に提供した"雨"のセルフカバーも収録

昨年末に開催されたザ・クロマニヨンズとの2マンライブを最後に活動を停止していたKOHHが、本日『The Lost Tapes』をリリースした。

ザ・クロマニヨンズとKOHHの最初で最後の2マンライブが12月に開催

ザ・クロマニヨンズとKOHHの最初で最後の2マンイベントが音楽イベント『BADASSVIBES』として12/28(火)にTokyo Dome City Hallで開催される。

KOHH、LEX、漢 a.k.a. GAMIらが地元の飲食店を紹介する トークバラエティ『BLOCK DINER』がZAIKOプレミアムにてスタート

ヒップホップアーティストが地元にある行きつけの飲食店を紹介するトークバラエティシリーズ『BLOCK DINER』が、サブスクリプション型プレミアム会員サービス「ZAIKOプレミアム」にて11月1日(月)0:00(日曜日の深夜)より配信される。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。