インディアナポリスのラッパーが自身のリリックを証拠に殺人罪を立証される
数多くのラッパーが存在するヒップホップシーンの中には、強盗や殺人などの凶悪犯罪に手を染める者も存在する。そのような実体験をリリックに落とし込みリアルな表現を追求していたことが、自らに不利益をもたらすこともあるようだ。
強盗殺人の容疑で逮捕され2018年に有罪判決を受けていたインディアナポリスのラッパーT Wardが、ラップのリリックを証拠に罪を立証されていたことが判明した。Complexによると、彼は2018年に2 Chainzの楽曲“I’m Different”のビートジャックをSoundCloud上で発表。
そこで歌われていた「I creep up to the door silently and slow / I opened up that bitch and now we clashing poles / Two shots to the body two shots to the dome / Finesse the fucking stash and then I took it home(静かに、ゆっくりドアへと近づく / そいつを開けてライフルを撃つ/ 体に二発、頭に二発ぶち込む / ブツを家に持って帰る)」とのリリックが、2017年に殺害されたDominique Miller、Jordan Wright、Justin Crowderという3人の若者が死亡した状況と一致していることが検察によって主張されたという。検察官のRyan Mears氏によると事件はT WardのほかMartell Williams、 Stanley Williamsを含む三人によって起こされたもので、ドラッグの取引の行き違いが原因とのこと。
Mears氏は問題のリリックについて「これは他の出来事についてたまたま歌っていたものではありませんでした。全て照合すると事件の状況とかなり一致するのです。私たちは歌詞を一つずつ分解して検証しました」と語っている。一方でT Wardの弁護士を務めるCharles White氏は「似たような内容の楽曲は数多く存在する」とした上で、ラップは芸術作品であるため証拠として使用すべきではない、との主張を行っている。
昨年にはTay-Kが自身の代表曲“The Race”のリリックを証拠に有罪判決が下され話題を呼んだ。ラップをどこまで事実として捉えるか、また証言として取り扱うことが可能なのかどうかについては議論の余地があるが、今後も裁判においてラップを証拠とするケースが増えそうな気配だ。