【インタビュー】土谷正洋|10周年を迎えたRainbow Disco Clubが世界にかける虹
新緑と太陽の光が爽やかな風に踊る4月下旬、海と山に囲まれた伊豆に3日間だけ現れる楽園を目指して世界中から個性豊かな人々が集い踊っている。ダンスミュージックに特化した野外フェスとして、名実ともに国内トップと言えるRainbow Disco Club (以下、RDC) の光景である。
今年の開催で拾周年を迎えたRDC、悪天候の中でDJブースに降り立ったDJ Harveyと共に雨が止み、虹がかかった奇跡的な光景は間違いなく今年のベストな瞬間のひとつだった。しかし彼らはその後も止まることなく、『10th Anniversary of Rainbow Disco Club』と銘打ったスピンオフパーティーをバリ、神戸、アムステルダムと開催し、11月の末から年末にかけては上海、名古屋、タイ、札幌と怒涛の開催スケジュールを発表、さらに今月にはレーベルBeyond Space and Timeの設立も発表。DJ NOBUを筆頭に日本のDJが世界に出て行くことは増えてきた昨今、しかしパーティー基準で世界中をまたにかける動きを見せるRDCは、低迷する日本のクラブシーンにおいて雨上がりの虹のような存在になるのか? FNMNLでは、そのあたりにフォーカスしてオーガナイザー土谷正洋に話を伺った。
取材・構成:FNMNL編集部
- 土谷さん、こんにちは。今年もRDC遊びに行かせていただきましたが本当に最高の3日間でした。当初の晴海埠頭での開催から10年ということで改めておめでとうございます。でも今日は伊豆でのRDCの話ではなくて、その後に続くスピンオフパーティーのお話を伺いたいと思い、連絡させていただきました。宜しくお願い致します。
土谷 - ありがとうございます。今年の伊豆は雨も降って気温も低く、ハードな環境下での開催になりました。それでも過去最高と胸を張れる内容になったのはアーティストはもちろん、お客さんの気持ちやスタッフの成長なしには考えられません。改めて感謝の気持ちでいっぱいです。スピンオフパーティーの件、ぜひ聞いてください!!できれば上海公演の前にUPしてほしいな(笑)
- 頑張ります。まず最初に伺いたいのは、もともとアムステルダムや上海では過去にもRDCを開催してきたと思うのですが、今年はそれに加えてバリ、名古屋、タイ、札幌と怒涛の開催スケジュールですよね? 10周年の記念すべき年ということも背景にはあると思うのですが、一連の流れにおける想いやコンセプトを教えてください。
土谷 - 正直なところ、5年目くらいから10周年というところを1つの大きな目標に掲げていたんです。で、実際そこにたどり着いた時に自分がどう思うかってことが本当に分らなくて…。開催前は準備も大変だし、ナーバスになることも多いので、本当にこれが最後になるんじゃないかと思ったりもしていました。でも、実際に終わってみたら自分でも信じられなかったんですけど、やっとスタートラインに立った、始まったんだって感じて頭と身体が動き出した。終わった時に自分がそんな風に思うなんて全く考えてもいなくて、急にアイデアが溢れ出してきて、そこからはもうこの周年期間中に色々なところでやりたい!今からやれること全部やろうって、全力で走り出しました(笑)
- ありがとうございます。国内外含めてこれだけの開催はかなりのハードワークだと思うのですが、どんな体制で動いているのでしょうか?若いオーガナイザーを始め、皆気になっているところかな?と。合わせて伊豆での開催とスピンオフパーティーでは、野外と屋内というロケーションの部分以上に何が違うのでしょうか? ローカルの方々との関わり合いなども含めて教えてもらえますか?
土谷 - 国内に関してはローカルの方々に協力してもらってブッキングやデザインなどのパーティーの中身はRDCクルーで動いています。今回は物量がとにかく多かったので自分でやることも多かったです。海外に関してはパートナーのCarlosと一緒にやった感じでしたね。
- ありがとうございます。スピンオフ開催ならではの苦労だったり、思い出のエピソードなど何かありますか?
土谷 - バリでは自然のものをできるだけ使ってほしいということで竹でステージを作ったりして、丈夫だけど柔らかいからタンテのハウリング処理が大変だったんですよね。でも地元の人たちがものすごい人数で手伝ってくれて、RDCのキービジュアルとも言えるネオンサインも竹で作り変えたりして大変だったけど最高の思い出になりました。そういうのは既にたくさんありますねー。神戸はおじさん10人くらいで車で自走してったんですけど、修学旅行みたいでした笑。淡路島に宿泊したんですけど、初めて行ったんで油断しちゃって。神戸からあんなに遠いとは思わなかったんですが、泊まったところがまた本当に素敵なところで….。神戸での寺田創一さんのライブがエモーショナルで最高だったんですよー。あ、これ語り出したらインタビュー終わらないっすね(笑)
- いろいろ出てきそうですね(笑)これから年末にかけて怒涛の開催スケジュールですが、それぞれの見どころを教えてもらえますか?
土谷 - 中止になってしまった2012年、復活の2013年と晴海で行われたRDCのヘッドライナーとして登場したDIXONが上海に登場します。上海はRDCのファウンダーの1人Carlos Gibbsが中心になって活動しています。年々大きくなる上海のシーンの中でも彼の尽力は素晴らしく、RDCはとても高く評価されています。
上海 11月29日
RDC x Alter. × Redbox presents DIXON (Innervisions/Berlin) at Fallout ClubLineup:
Dixon (Innervisions/Berlin) / Donn / Knopha / Tobias Patrick / AltieriMore Info : https://www.residentadvisor.net/events/1345469
静岡で開催するようになってから年々名古屋からの来場者も増えてきていまして、僕らにとってとても重要な場所の一つになっています。初回のRDCに出演してくれたNick The Recordを筆頭に海外アーティストも多くブッキングさせていただきました。また現在の東京のシーンの中心であると言っても過言ではないCYKのみんなにも参加してもらうことになりました。Magoという日本を代表するクラブで、名古屋のローカルチームともご一緒できてアツい一夜になりそうです。
名古屋 11月30日
10th Anniversary of Rainbow Disco Club in Nagoya at Club MagoLineup :
Nick The Record / Sassy J / Umfang / CYK / Conomark / TANAKADISCO / Sisi / Kikiorix and More….More info : https://www.residentadvisor.net/events/1337168
昨年もレジデントのSisi / Kikiorixが出演させていただき、高評価をいただけたWonderfruits Festivalに今年も参加します。今年はRDC Takeoverと題してForbidden Fruitsというステージを1日ジャックします。日程は12/15、RDCレジデントの両名にStanislas Tohon - Owhaaou ! のリエディットで一気に名を馳せたRaphael Top Secret、Music From MemoryからリリースされたコンピレーションOutro Tempoで大注目となったJohn Gomezがクレジット。また照明にYAMACHANG(RRD)も参加してくれることになり、アジア最大級のフェスの中でもRDCらしさがしっかり演出されると思います。
タイ 12月12-16日 ※RDCは12月15日のFORBIDDEN FRUITステージをテイクオーバー
Wonderfruit 2019 / Rainbow Disco Club
Lineup :
JOHN GOMEZ / RAPHAEL TOP-SECRET / Kikiorix / SisiMore info : https://wonderfruit.co/
10周年ツアーの最後を飾るのは聖地Precious Hall. 日本のクラブシーンの中でも稀有な存在のこの場所で、『Kuniyuki and Floating Points ”perform an improvised live set together..”』と題したスペシャルライブが披露されます。これはまだ誰も見たことなない、そして次があるかも分からない本当に貴重なライブになると思います。そして過去にRDCにもModern Deep Left Quartetで出演してくれたMathew Jonson、地元北海道からはSYNAPSE/PROVOのチームに参加していただき、Naohito Uchiyama / DJ GAKが登場します。
札幌 12月20日
10 years of Rainbow Disco Club in Sapporo at Precious HallLine-up /
Kuniyuki and Floating Points”perform an improvised live set together..”
Mathew Jonson (live) / Naohito Uchiyama (live) / GAK (DJ) / Kikiorix (DJ)
- ありがとうございます、どの公演も素晴らしいラインナップですね。土地土地におけるブッキングにおいて意識していることはありますか?
土谷 - 僕らは基本東京をベースにしているスタッフが大多数で、色々なところでパーティーを開催するってことは容易ではないんですよね。なので、色々な場所でやらせていただけるということを念頭に置き、中にはRDCに来たことがないお客さんが多い地域もあるでしょうから、今までの10年を振り返りつつ、未だRDCに来たことのない地方の方々に自分たちの10年を感じてもらえるようなブッキング、そしてこの先の未来に向け広げていけるようなことを意識していました。過去にRDCに素晴らしい音楽をもたらしてくれたアーティスト達を軸に、そこに新たな広がりを作っていけるアーティスト達も加えて、新たなコミュニティが生まれ、日本全国の方々にRDCを知っていただけるようにできたらいいなと考えています。
- 確かにCYKなど若い世代もブッキングされていますね、またローカルのアーティストもしっかりラインナップされている印象です。最後の質問になりますが、レーベルもスタートさせましたよね? こちらに関してもレーベルのコンセプトや今後の展開などお聞きしたいのですが。
土谷 - レーベル名はBeyond Space And Timeというんですが、これはRDCのサブタイトルにずっとついていたもので、僕らのアイデンティティーだったりしています。無意識に深層にずっとあるような感覚の言葉なので、レーベル名は悩まずに一発で決まりました。僕らは頭文字をとってBESTと呼んでいます。このインタビューが掲載される頃にはきっと日本でも発売されているはずなんだけど、第一弾はRDCにとって最も大切なアーティストの1人、DJ NOBUのコンピレーションをリリースします。これはDJやってる人なら本当に気になる、「彼のレコードバッグの中身を垣間見るような作品」がコンセプトになっています。今後もこのように様々なコンセプトを持った作品をリリースしていうこうと思っています。今月の27日には代官山でNOBUさんにも参加してもらう形のリスニングイベントも開催します。
- NOBUさんのコンピレーション、Twitterなどでは世界中から反応がありますね。和物ブームなどもありますが、これはまた違った切り口。代官山のイベントとても気になりますね。そして来年、2020年の開催も発表されています、こちらはまだラインナップ発表されていませんが非常に楽しみです。楽しみにしている皆さんに何か一言お願いできますか?
土谷 - 来年への準備は既に始まっています。必死にジタバタしながらやっているんですが、今までのように来場者の愛で溢れるような空間作りはそのままに、より一層深く、広く、大きな志を持って臨んでいきたいと思っています。出演者の発表等はこれからになりますが、どうぞ僕らを信じて4月の半ばのスケジュールを空けておいてください!素敵な春の始まりになることをお約束します!
- お忙しい中、ありがとうございました!!
10年という節目を迎えて尚、加速するRDC。世界中の音楽ファンを惹きつけるトップクオリティーを保ちながら、極東アジア発信という地域性もしっかり感じさせるパーティーが日本にあるという事実は暗いニュースが蔓延する中で、雨上がりの虹のような輝きを放っている。参加すること自体がカルチャーの一部になっていくような感覚だ。
年末にかけてのスピンオフパーティー、そして来年4月の伊豆での本祭に参加しない手はないだろう。
FNMNLでは、引き続きRDCの動向に注目していく。
Info
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