【インタビュー】Yuna『Rouge』|世界に楽しさと共感を

マレーシア出身で現在はLAを拠点に活動しているシンガーのYunaが、ニューアルバム『Rouge』を7月にリリースした。9/1(日)に開催される『Local Green Festival』でも初来日を果たす彼女は、これまで流麗でチルなR&Bサウンドで知られてきたが、今回のアルバムではディスコやファンクなどをベースにしたアップリフティングな楽曲も収録されていて、より音楽性の幅を広げている。

また今作はTyler, The Creatorをはじめとして、G-EazyやLittle Simz、Kyle、Masego、Jay Park、MIYAVIなど個性的なゲスト勢も参加、FNMNLではYunaに今作にかけた思いやコラボレーターについて電話でインタビューを行った。

質問作成・構成 : 和田哲郎

通訳 : 渡瀬ひとみ

- アルバムの楽曲は、これまでのあなたのチルなイメージの楽曲も収録されていますが、“Blank Marquee”や“Pink Youth”のようにアップリフティングなものも印象的です。あなた自身はどのようなサウンドのアルバムにしたかったですか?

Yuna - 楽しいアルバムを作りたいと思ってと取り組みはじめたの。今まで私がリリースしてきたアルバムはすべて楽しいアルバムだけど、今までやってきていなかったことにトライしたかった。私はDaft Punkとか、Jamiroquaiとか好きでね。アナログ盤だった頃のアルバムにインスパイアされて今回のアルバムを作った。70年代とか80年代のアナログ盤でしか得られないような、豪華なサウンドを得たかったの。私がその当時感じたことと同じような感覚をリスナーの人達に感じてもらいたかったのよね。プロデューサーには、「クールで予想も付かないようなサウンドを作りたい」って言った。私のアルバムを聴いて「これは予想していなかった」って思ってもらいたかった。それって、Dollar Store(100円ショップ)で買ったアナログ盤のレコードが予想外のもので良かった!みたいな感覚かな?「カッコいい!」と思ってジャケ買いをして、帰って聴いてみたら、誰のアルバムなのかわからないけど、70年代とか80年代のすばらしいアルバムだったりすることってあるでしょう? そういったものがインスピレーションの源になっていた。あと、それ以外には、コラボレーションしたアーティストともいい感じで作るアルバムにしたかった。今回の共演者とは本当に楽しく共演させてもらったし、みんな素晴らしい仕事をしてくれたと思う。

- ファンクミュージックはあなたのお父さんの車でプレイされていたということですが、他にどのような音楽を子供の時に聴いていましたか?

Yuna - いろいろな音楽を聴いてきたわ。マレーシアで育ったから、マレーシアのポップでバラードっぽい音楽は聴いてきた。マレーシアでは、ヒップホップとかR&Bっぽいものはほとんどかからない。私がティーンエイジャーの頃にマレーシアにもMTVが入ってきて、Lauryn Hillのようなアーティストを知るようになったのね。「なにこの曲?かっこいい!」という感じの発見だった。No Doubtとか、Alanis Morissetteのようなロック系のアーティストもその頃知ったの。当時の女性アーティストにはいっぱい影響を受けてきたわ。

- “Pink Youth”について、あなたは「私は女の子であることを祝いたいと思ったの。もっと若かった頃、私が何かびっくりさせるような素晴らしいことをしようと努力していても、人々は全然信じなかったわ。女の子という理由だけでね。この曲はそんな女の子のためのもの」と述べています。マレーシアで過ごしたティーン時代について教えてもらえますか?またその状況は時が経つことにより変化したと思いますか?

Yuna - う〜ん、よくわからない。そうね、ここ最近はSNSとかの影響もあって、今のキッズ達にはまったく違う状況にはなっていると思うけど。今のティーンエイジャーはどうしているのかな。私は14、15歳の頃、学校でいじめられたりして酷い経験をしたの。今は、SNSが大事で、ティーンエイジャー達にとってそれが彼らのアイデンティティーになったりする。私はマレーシアで育っているけど、私が経験してきたことは、他の国の子達が経験していることと同じようなことだと思うの。友達関係は、尊敬できる人もいれば、本当に酷い扱いをされることもある。他の国の人達と話していても私が経験したことに共感してもらえる。「私もそういう感じの友達いるわ」みたいなね(笑)“Pink Youth”では、シャイなマレーシア人の女の子だった私の気持を表しているの。都会に住むマレーシアの女の子は、社交的で、クリエイティヴで、自分がやりたいと思ったことを目指したりするけど、郊外に住む子達は違っていて、後押しされないとなかなかできない。“Pink Youth”では、そういう自分の側面を歌った曲。同じような子達のことを念頭に置いて書いた。彼女達は自尊心みたいなものと常に戦っていて、そういう子達にメッセージを発したいと思ったの。

- Tyler, The Creatorはあなたにとって憧れのアーティストの1人だということですが、彼の魅力はどのような点だと思いますか?また今回のコラボが成立した経緯についても今一度教えてもらえますか?

Yuna - 彼のことを知った時からずっと一緒に仕事をしたいと思っていた。彼がもっと若い頃は、ちょっと怖かったな。彼が作る音楽とか、考え方について、あまりよくわからない部分が多かったけど、同時に彼は自分がやりたいことをしっかり把握している人なのではないかなと思って。実際に彼は、自分のアート作品を作るクルーがいたり、自分のファッションブランドを持っていたり、自分の思ったことを全部実現している。音楽ビデオも全部自分で監督しているしね。とても頭のいい人。今作で“Castaway”という曲に参加してもらいたいと思ったら、彼にLAで会うことができた。彼も私のことを知っていて、私も彼のことを知っていた。きっと彼に気に入ってもらえるだろうと思った曲がこの曲で、「きっとあなたに気に入ってもらえると思う曲があるんだけど」という感じで彼にお願いしたの。いろいろなネガティヴな意見を言う人もいた。その他の人達は、「この曲はTyler以外にあり得ないんじゃない?」と言ってくれた。この曲は、彼しかいないと思った。

- 今作にはJay ParkやMIYAVIというアジアをルーツに持つアーティストも参加していますが、あなた自身アジアをルーツに持つということは、作品制作において意識しますか?また意識しているとすれば、作品のどのような部分に表出しているでしょうか?

Yuna - もちろん自分がアジア人であることは考えるし、自分のルーツ、アイデンティティーを知ることは大事なことだと思う。マレーシアで生まれ育ったから、自分がどういう存在なのかはよく知っているつもり。そういった意味ではとても恵まれていると思う。マレーシアでは、中国人、インド人、マレー人が同じ環境の中で生きている。常に多文化を経験しているのよね。他人のルーツ、バックグラウンド、考え方をリスペクトするよう育ってきた。音楽活動を始める時にもうそういった部分は持ち合わせていたから。気分を高揚させてくれるようなポップミュージックは好きで、それは、インド人のコミュニティー、中国人コミュニティー、アジアのコミュニティー、すべての人達がそういう音楽に共感できると思う。私はそういう中にいたから。ツアーに出るとそれが実感できる。私の友達はほとんどアジア系のアメリカ人だったりするから、そういう人達がやってきて、「この曲すごくよくわかる。共感できる。」と言ってくれるの。自分達が共感できる部分を私の中に見つけることができると思うのね。大人になって、自分のアイデンティティーについて発言することに違和感を感じなくなったわ。例えば、“Likes“という歌では、そういうことについて触れている。音楽的には、ワールド・ミュージック的な、民族音楽っぽいものをやっているわけではないけど、私の文化のものを少しずつ織り交ぜていければと思っているわ。

- またアメリカに移住して10年弱がたちましたが、どのように自身をアメリカの環境になじませていったでしょうか?

Yuna - (笑)そうね、今でも、馴染んでいるという感覚はあまりないかも(笑)でも、楽しい。アメリカでクリエイティヴな活動ができるのは本当に楽しい。しかも私は世界中のクリエイティヴな人達が集まってきているロサンゼルスにいる。私のような人達が世界中から集まってきている。スウェーデンとか日本とか、香港とか。その人達と共感できるから、とても楽しい。同時にLAとかにいると、地元出身のミュージシャン達とも友達になれる。LAがどういった場所なのかをちゃんと把握している人達。LA出身、とか西海岸周辺出身の人達とも一緒に仕事ができるのね。それらの人達と一緒に仕事をするとLAの音楽文化みたいなものも学ぶことができる。自由に、しかも自分のやりたいことができると思ってる。

- 本編の最後を飾っているのはマレー語の楽曲“Tiada Akhir”ですね。マレー語の楽曲を収録した思いを教えてください。タイトルは「永遠」を意味している言葉だそうですね。

Yuna - “Tiada Akhir”は、“No ending(終わりがない)”という意味。アルバムの一つのアイディアとして、当初インタルード的なものを入れていこうと思っていたの。一分ぐらいのすごく短い、私にしかわからないものでインタルードを作る予定だった。でも、レコーディングしはじめたら、1曲フルソングとして出来上がってしまったの。とても、クールなマレー語の曲ができてしまった。それはそれで良かったから、それで一曲完成させようということになって。みんなそのアイディアがいいと言ってくれたし、プロデューサーも素晴らしい作品作りをしてくれた。レーベルの人間も気に入ってくれたし、そして、もちろんマレー語で歌っているから私の友人達はみんなすごく喜ぶなって思って(笑)

- このアルバムには多彩なコラボレーターが参加していますが、どのアーティストもしっかりアルバムのテイストにハマっていると思います。コラボレーションをする上で、気をつけている部分はどのような点でしょうか?

Yuna - まずは一緒にコラボレーションする人達を好きでいること。もちろん、一緒に仕事をしているこれらの人達しか好きじゃなくて、他の人達は好きではない、ということではないよ(笑)このアルバムで一緒に仕事をしてくれた人達はいろいろな世界の人達。ジャンルも違うし、出身地も違うけど、彼らとこうやってお仕事ができたのはとてもラッキーだった。例えば、今回G-Eazyと一緒にやっているけど、人によってはぜんぜん畑違いだし、まったく違うからよく一緒に仕事ができたわね、みたいなことを言う人がいるの。でも、彼らとは貴重な時間を一緒に共有することができたという感覚が私の中にはある。一人の人間として見ることができたし、みんなとてもピュアなの。みんないい人達なんだということがすごくわかる。

例えば、Tylerにしても、あるフェスティヴァルで会った時、彼が私の前にパフォーマンスしていて、その後私のステージだった。バックステージで、ちょうど彼のパフォーマンスが終わった時に彼に会ったんだけど、「ファンの人達が携帯とかをしまって、ただ単純にショーを楽しんで欲しい」というようなことを言ってくれて。心から言っているんだな、というのが伝わってくるの。純粋にファンの人達に音楽を心から楽しんでもらいたくて、もっとも素晴らしい体験をして欲しいと思っているのが伝わってくるのね。彼自身のため、というよりも、むしろファンの人達のために。そういう側面を見ると、このアーティストって本当に人間的だな、って。そういうことが私にとって大事だった。あとは、私の作品に参加したいと思ってくれることが大事。参加してくれた人達はみんな作品に無理矢理参加しているわけではなく、本当に心から関わりたいと思って参加してくれたと思うの。それはとても嬉しいわ。はっきり言ってオッケーしてくれることを期待していなかった人達もいる。(笑)例えば、Gにすごく参加してもらいたいと思っていたんだけど、彼に依頼したら、「イエス」って言ってくれた。Little Simzにしてもそうだし、多くの才能のあるアーティストと共演できて嬉しい。

- 話題は変わりますが、今年最もよく聴いている楽曲と、その曲が好きな理由を教えてもらえますか?

Yuna - 楽曲?楽曲ね〜?

- 何曲かでもいいですけど。

YUNA - う〜む…。Tyler The Creator の“Earfquake”かな? 私のプレイリストに入っていて、常に聴いている。あとは、Childish Gambinoの“Summertime”。これらの楽曲はフィール・グッド・ソングだし、90年代の懐かしいヴァイヴも持っているから。

- また、あなたがシンガーとして一番影響を受けている人物とその理由を教えてください。

Yuna - 聴いていてわかると思うけど、音楽的には、Lauryn Hillかな(笑)私が幼い頃からのフェイヴァリット・アーティスト。彼女のアルバムは何度も何度も繰り返し聴いた。でも、今のような独自のスタイルを持つことに影響を与えてくれて後押ししてくれたアーティストは、みんな覚えているかどうかわからないけど、Feist(ファイスト)。とても才能のあるシンガー・ソングライター。ギターをプレイしながら歌うんだけど、彼女がパリでやっているライヴがYouTubeで見れる。彼女の存在が、私の人生を変えてくれたわ。ギターを弾いてロック・スターみたいに、人前でパフォーマンスしよう、って思ったの(笑)19とか20歳の時にね。そう思った時期があった。

- 秋には来日も控えていますが、日本でしてみたいことはありますか?

Yuna - 日本食を食べることかな?(笑)日本食大好きなんだけど、今まで日本に行ったことなかったの。世界中いろいろ行ってきたけど、日本はまだ行ったことがない。成田でトランジットしたことあるけど、それだけじゃ不十分(笑)お寿司もうどんも好きなので、いろいろな食べ物を試したい。

- 素晴らしいアルバムをリリースして、次に挑戦したいことはどのようなことでしょうか?

Yuna - う〜ん…。パフォーマンスかな? 以前は、いいアルバムを出したら、それで満足してしまっていたから。もちろん、ツアーもそれぞれのアルバムでやってきてはいるけど、今作のアルバムのツアーに向けた気持ちとは違う。今回のアルバムのツアーは、とても楽しいの。全員女性のバンドだし、ダンサーもいるし。もっと大きなショーにしていきたいと、心から思う。日本でのパフォーマンスを本当に楽しみにしている。もっともっとパフォーマンスをしていきたい。このアルバムの曲をパフォーマンスするのは、とても楽しいので、本当に楽しみ。

- 今回のアルバムのバンドは全員女性なんですか?

Yuna - そうなの(笑)楽しみにしてる。同じような編成で日本にも行きたいけど、その辺は予算的にどうなのかな(笑)同じような体験を日本のオーディエンスにも体験してもらいたい。

INFO

ユナ『ルージュ』
Yuna / Rouge
発売中
品番:UCCB-1046
価格:\2,500(税抜)、\2,700(税込)

https://jazz.lnk.to/rougePR

01. キャストアウェイ feat. タイラー・ザ・クリエイター
02. ブランク・マーキー feat. Gイージー
03. ノット・ザ・ラヴ・オブ・マイ・ライフ
04. ティーンエイジ・ハートブレイク feat. MIYAVI
05. ピンク・ユース feat. リトル・シムズ
06. フォーゲット・アバウト・ユー
07. ライクス feat. カイル
08. エイミー feat. マセーゴ
09. ダズ・シー feat. Jay Park
10. フォーエヴァーモア
11. ティアダ・アヒール
12. レッスンズ*

*日本盤ボーナス・トラック

■来日情報
Local Green Festival
開催日程:2019年8月31日(土)・9月1日(日)※ユナは9/1(日)出演
開催場所:横浜赤レンガ地区野外特設会場
https://localgreen.jp/

RELATED

【メールインタビュー】SebastiAn 『Thirst』|心から好奇心を持つこと

00年代後半よりフレンチエレクトロの一大ムーブメントを起こしたレーベルEd Bangerに所属し、SAINT LAURENTのコレクション音楽でも知られるSebastiAnが、デビュー作『Total』から8年ぶりとなるニューアルバム『Thirst』をリリースした。

【インタビュー】石若駿 | Answer to Rememberはドラムをめちゃくちゃ叩くプロジェクト

元々のルーツであるジャズシーンではもとより、最近ではKID FRESINOのバンドやくるりの全国ツアーのドラムも務めるなど日本のポピュラー音楽界のキーパーソンになりつつあるドラマーの石若駿。 その石若がフロントマン及びプロデューサーを務める、新しいエクスペリメンタル・ミュージッ...

【インタビュー】NF Zessho × Aru-2 『AKIRA』|型にはまると面白くない

ジョイントアルバム『AKIRA』は、Aru-2が生み出す時代の最先端でもありオーセンティックでもある独特なグルーヴ感を持つビートと、NF Zesshoのスキルフルかつ鋭いラップとのコントラストが印象的な作品である。リリースを前にした2人に、今回の作品についてインタビューを行った。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。