【ミニインタビュー】Toru | トップDJが称賛する重要人物がロンドンで過ごした20年間

「Plastic Peopleでの思い出の曲はToruがアーリーでプレイしてたFunkadelicの"Tales of Kidd Funkadelic"だ」

FACT 誌による、ロンドンの2000年代を支えた伝説的なクラブ、Plastic Peopleの歴史を振り返るインタビューでそう語ったのはJohn Rustだ。彼だけでなくJoy Orbison、Will Bankhead、DJ Nobuをはじめ、あまり表舞台には姿を見せないイギリス在住の日本人DJ、Toruを尊敬する大物DJはシーンの中に数多く存在する。

Toruは90年代中頃、まだインターネットもない時代に単身ロンドンへ渡り、レコード・ショップVinyl Junkiesに勤務、歴史的なパーティーやシーンの移り変わりを目撃しつつ、Plastic Peopleでレジデントパーティーを持ち、アンダーグラウンドを支えてきた。現在もWill BankheadやPalaceのスケーターであるRoly Miranes等と人気イベント『Ditch Party』を主催する彼が11月に日本ツアーを行う。日本に到着したばかりの本人に話を訊いてみた。

取材・構成 : 高倉宏司

- ロンドンに渡った時期と、キッカケを教えて下さい。

Toru - ロンドンに渡ったのが96年ぐらい。子供の時から海外へは行きたいと思ってたのですが、その当時あまりヨーロッパの文化に興味がなくて、アメリカに行こうと思ってました。だけどその頃は周りの人たちが、ほとんどアメリカに行っていたので、もし僕もアメリカに行ったら、結局また同じ環境になっちゃうなーっと思って、じゃあ知り合いのいないイギリスに行こうと決めました。

- 90年代当時はどんなイベントに行っていましたか?

Toru - 当時は平日のパーティーが面白くて、月曜、水曜のBar RumbaとかVelvet Room、それからまだ、Oxford StreetにあったPlastic People、そしてレコ屋のHonest Jonsが月曜日にやってたNet Barかな。それと、HoxtonにあったBlue Note。Velvet Roomではカウンターにアシッドが入ったフルーツパンチのボトルが置いてあって、皆それを飲んでたりした。

週末は大箱のThe Endや99年ごろにオープンしたFabric、そして郊外のウエアハウスでやってたLostのパーティーとかかな。で、2000年初頭になるとOld Streetに移った、Plastic People。そこには、本当によく入り浸ってました。

- レコード屋で働く事になったのは?

Toru - 毎日レコード屋に行っているうちに、お店の人たちと顔見知りになっていって感じ。そして、ちょうどViny Junkiesがウェブストアとレーベルを始めるということで、それを手伝う仕事を始めたのが98-99年ぐらいかな。それから、13-14年ぐらい、クローズする半年前まで働いてました。

- ロンドンの伝説のレコード屋Vinyl Junkiesについて、どんなお店だったか教えてください。

Toru - とにかく社長のキャラがとても強いお店でした。もともとデトロイトのアーティスト達と親交があって、他のお店では買えないようなプロモや未発売の12インチを扱っておいて、ローカルのDJだけじゃなくて、海外のDJ達もよく来るようなお店でした。とにかくエクスクルーシヴのレコードが沢山ありました。2000年代の初期は、ブートのレコード、R&Bのアカペラを使ったハウスミックスやディスコネタにフィルターをかけたいわゆる2ステップ/ファンキーハウスみたいなやつ とか、西ロンドンのブロークンビーツ系のプロモがすごかったですね。DJフレンドリーのお店で、そこらへんの小箱のクラブよりいい音のサウンドシステムを組んで、爆音でレコードを売ってました。

- Plastic Peopleでイベントを始めたのはいつですか?

Toru - Plastic PeopleがOld Streetに移った2000年初期にたまたま僕も近所に住むようになって、本当によく遊びにいってました。オーナーのAdeとも仲良くなって、彼が毎週土曜日のレジデントだったんだけど、会うたびに「DJやらせてくれ」って言い続けた結果、少しだけやらせてもらえるようになって、自分でもたまにパーティーをやらせてもらい、それから、Steve BcknellがLostのオフシュートのパーティーSpace Bassをはじめてからは、一緒によくやるようになりました。フロアーが真っ暗でとにかく音が半端なくて、あそこでDJできたのは、本当にラッキーでした。

- 現在のロンドンと日本のクラブシーンをどう思いますか?

Toru - 日本のクラブシーンはわかんないけど、もっと遊んでいいんじゃないかと思います。ただ単純に楽しいパーティーが増えてくれればね、DJの知名度とかじゃなくて。

- 所属されているバンド、Blocked Toiletについて教えて下さい。

Toru - Blocked Toiletは僕とSean(90年代にUKのCreation Recordsに所属していたギタリスト)のユニットで、完璧にインプロのバンドで、現在進行形で活動中です。今年は、あまり活動できなかったのですが、来年初頭には、何かの形でリリースできたらと考えてます。

- Joy Orbison, John Rust等ToruさんをリスペクトするDJは多いのですが、逆にToruさんが好きなDJを教えて下さい。

Toru - 一番影響をうけたDJは、Derrick May、そして、Plastic PeopleでレジデントをやってたTheo Parrishかな。最近は、やっぱりLil Mofoちゃんは本当に好きです。あと、Changsieも。あーいう感じのDJは貴重です。ロンドンでは、Ditch Party( Will BankheadやToru氏周辺のDJがプレイする不定期パーティー)でやってるDJ達はみんな好きです!純粋に音楽好きの人達なんで。

- 今の新世代のDJやプロデューサーに期待してる事はどんな事ですか?

Toru - 好きなことをやり続けて欲しいです。

- 今回はどんな内容のプレーを準備していますか?

Toru - どうなるかわかんないけど、グチャグチャ、ガチャガチャできたら、いいかなって思ってます。

今回のツアーに向けてToruを良く知る音楽ライターの浅沼優子からもコメントが届いている。

音楽に関わる仕事や活動をしていく中で(それ以外の世界でも同じだと思いますが)、瞬時に「こいつは本物だ!」と分かる人に時々出会います。それを感知するアンテナに関しては、自分はかなり自信あります。Toruさんは、まさにそんな人物の一人で、もうかれこれ8~9年前になりますが、ロンドンで初めて会ったときから、一目もニ目も置いております。私が最もリスペクトする音楽スペシャリストの一人で、たまにロンドンを訪れた際は、なるべく機会を作って会ったり、Reckless Recordsに会いに行ったりしています。

Toruさんが、ロンドンという常に音楽の「今」をリードし続ける街の、レコード屋という最も神聖で最も最前線な音楽の「現場」で見聞きしたり感じたりして得た知識は、本当に貴重だからです。音楽そのものの知識に関しては、私などでは逆立ちしてバック転して5回転くらいしても全く足元にも及ばないので、ただただいつも新鮮な情報を教えてもらうばかりです。DJとしては、今では伝説となったロンドンの最も愛された小箱、Plastic PeopleでSteve Bicknellと共にレギュラーを務め、かつてDJ NOBUのロンドン初ギグを、Toruさんに頼んでここでオーガナイズしてもらったこともありました。ロンドンでディープに音楽に関わっている人でToruを知らない人はいないと言っても過言ではないでしょう!Toruさんが知る膨大な数のレコードから何をプレイするのか、ぜったい聴きに行った方がいいし、私も行きたいヨ。(浅沼優子)

保有しているレコードは2万枚を超えるToru氏がどんなプレイを見せてくれるのか、ツアーの日程は下記の通り

東京11/3 ( Sat ) Ditch Party at Shibuya Bridge
open 20:00 close 5:00 ¥1,000 (1 ドリンク別)

大阪11/10 ( Sat ) ACID PUNCH at Club STOMP
open 23:59 close 6:00 ¥1,500 (1 ドリンク別)

東京11/17 ( Sat ) Party with Toru #2 at Grassroots
open 23:00 close 6:00 ¥1,000 (1 ドリンク別)

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