【メールインタビュー】CYK | 若きハウス・コレクティヴが作り出す新しいグルーヴ

活動から2年弱、今旬なアーティストを招聘し続けているハウス・コレクティヴ CYK。若手ながらもruralやソウルのローカルラジオ Seoul Community Radioに出演したりと精力的に活動し、常に成長し続ける彼らのパーティーは、世代関係なく東京の新しいダンスミュージックコミュニティーを作り上げている。そして次に彼らがしかけるパーティーは、Baba Stiltz、C'est Quiを迎えた、東京・大阪・韓国のアジアツアーである。

そこでFNMNLでは、ツアーを控えたCYKにメールインタビューを行い、彼らのルーツなどを紐解いた。

質問・構成 : 高田 崚

写真 : Marisa Suda

- まずCYKの結成のきっかけを教えてください。

CYK - DJやパーティーをオーガナイズしている先輩が、アムステルダムのDJ/プロデューサーであるNachtbrakerをゲストに迎えてパーティーをやらないかとNariを誘ったのがきっかけでした。Nariと当時同じ大学に通っていたNaoki Takebayashiと、その時期に徐々に距離を詰めはじめていたKotsuとDJ No Guaranteeが、一同に渋谷のカフェに会した時に生まれたのがCYKです。

- 4人の音楽のルーツなど教えてください。

CYK - 「ダンスミュージック」の共通言語は結成当時も持ち合わせていましたが、そもそもルーツは各々が異なっていて、Nariは父親がJAZZドラマーだったことがあります。幼少期から元々黒い音が日常にあり、それが今のDJスタイルに色濃く出ていると思います。音楽に大きな情熱を注ぐ事になったのは、19歳の頃実家にレコードを持ち帰り、父親のプレイヤーでこっそり聴いている時「お前もこの曲好きなのか!」と急に部屋に笑顔で飛び込んできた父親と、その曲の良さについて語り合ったことが大きなきっかけです。(実は父親が若い頃にコピバンをやっていたPat Methenyの"Slip Away"が元ネタの曲でした。)世代を超えて、音楽の良さをシンプルに共有できた経験は忘れられないですね。

Naoki Takebayashiは高校卒業後の浪人中に、今は無き千葉PARCO内のタワレコにて、視聴コーナーの端から端までひたすら視聴する日々を過ごしていました。大学進学後に出会ったNariに様々なパーティーに連れ回され、solfaでのCherryboy Functionさんのエモーショナルなライブがダンスミュージックへと没頭させるきっかけとなりました。

DJ No Guaranteeは元々パンクバンドばかり聴いていて。その後、10代の頃に観たTheo Parrishに音楽観をひっくり返され、以降某ストリーミングメディアでのインターンを経て、毎日毎週のようにダンスミュージックに限らず多様な音楽を浴び続けた結果、特定のジャンルにはこだわらないDJスタイルになっていきました。

Kotsuは今思えばNew Orderなどに代表されるニューウェイヴや、10代後半に聞いていたインディーロックやドリームポップなどのバンドサウンド及びシンセサウンドには影響があり、一種のドリーミーさが埋め込まれたローファイハウスにはだいぶ魅了されましたし、他方でロシアのプロデューサーbuttechnoを経由してL.I.E.SやLobster Thereminなどに代表されるロウなサウンドに出会った頃は勝手に「ダンスミュージックにおけるコンセプチュアル・アートだ!」と思い込んで没頭していきました。

- 先月CIRCUS TOKYOで開催したパーティー『CYK ALL NIGHT LONG』ではたくさんの同世代のお客さんが遊びに来てましたが振り返ってみてどうですか。

CYK - 以前までは若い人たちにどうアプローチするかばかり考えていましたが、今ではいい意味で考えなくなりました。逆に今は遊び方を知っている大人にもっと遊びに来て欲しいと思っていて、年齢とか分け隔てなくフラットに混ざり合うことで面白い空間になっていくと思っています。でも僕らがそうした考えに至れるのは、若い人たちがクラブでの遊び方を、みんなで作り上げてきたからです。その遊び方は多くのパーティーを介して構築されたものであって、その中にCYKも含まれているのであれば嬉しいなと思います。

- ALL NIGHT LONGがフリーで開催されることになった経緯など教えてください。

CYK - 多くの人に遊んで欲しかったからという理由が大きいです。結果的にエントランスフリーでの開催は話題にもなりましたし、そもそも「来て欲しい」という言葉には主客的な構図が存在しますが、この日ばかりは「一緒に遊ぼう」という気持ちで開催したつもりです。主語を「私達」にすることで見える何かがあると思っていましたし、実際にそれを掴めたような気がします。

- 東京のクラブシーンにおいてどのような魅力または課題など感じますか。

CYK - 東京のクラブシーンの魅力はある程度の土壌がある上、オルタナティブな動きも同時に生まれていることだと思います。パーティーだけでも色々な形態があり、DJにおいても様々で本当にカッコいいベテランのDJも沢山いる。自分達の立ち位置や、やりたい事をある程度規定するための比較材料が多様にあることは、ある種幸せなことなんじゃないかなと。一方、そうしたアーカイブがありすぎてしまうため、熱が分散しやすい状況もある気がしていて、その分散をどう統合していくかは、積極的に多様なシーンを経験して自分達のパーティーに還元させていく姿勢が重要かなと思っています。

- ここ最近で東京のクラブカルチャーにおいて若者を中心とした盛り上がりが起きていますが、CYKもその一端を担っていると思います。CYKが同世代を中心としたパーティーを作り続ける理由を教えてください。

CYK - 「若い人たち」は僕らと同世代にあたると思いますが、単純に興味の対象や熱量の度合いを共有しやすいのは大きなポイントだと思います。あとは、僕らが先輩達のパーティーで体験させてもらったことを、僕らを介して同じように体験してもらいたい気持ちはあります。

- CYKが始動してから2年弱様々なパーティーを開催し、Mall Grabをはじめ様々な若手アーティストをサポートしていますが、若手アーティストにこだわる理由を教えてください。

CYK - 先ほどの話にあったように、僕らがやるべき意味をいつも考えて動いています。過去のCYKは全てにやるべき理由がありました。逆に、例えばMall Grabは同世代である僕らとやることに意味を見出してくれてたようで、それは非常に嬉しいことですし、今後招聘するアーティストも、“サポート“ではなく共にパーティーを行う仲間のような関係性を作っていきたいと思っています。その結果として若手アーティストが多くなった、ただそれだけの事な気がします。

- 海外のアーティストを呼ぶ時には何を意識して決めていますか。

CYK - 一番は一緒に楽しめるかどうかです。音楽的な部分を考えていないというのは嘘になるけれど、パーティーである以上一夜を共に過ごした結果生まれる関係性に大きな魅力を感じますし、音楽的に縛られない動きが結果的にCYKの音楽的な要素をその都度アップデートさせてくれている気がします。ただ、「ハウス・ミュージック・コレクティブ」と銘打っているのは、音楽的に自由でありながらも一定の物差しとして機能する上、「ハウス・ミュージック・カルチャー」の概念的な部分に僕らが共感しているからだと思っています。

- そして10月12日と翌13日にはUK老舗のレーベルXLからリリースを果たしたBaba Stiltz、韓国のソウルを拠点にBoiler Roomに出演したC’est Quiとともにパーティーを開催しますが、どのような一夜になると思いますか。

CYK - 正直想像はあまり出来ていません。ただ、CYKが結成してから2年が過ぎた中でメモリアルな日になることは間違いないです。また、Baba StiltzとはNariがスウェーデンツアーを今年の8月に行った際、現地で会えましたし、C’est Quiは以前韓国でCYKと共演し何日間か共に遊びました。まだ一同に会したわけではありませんが10/12及び10/13に向け色々コミュニケーションを取れてるのは良いことですし、国境を超え一つのパーティーを作り上げてる準備は出来ているので今から武者震いがします。Baba StiltzがポッドキャストやBoiler Roomで披露するミニマルな「ハウス・ジャーニー」と破壊力のあるパーティートラックが炸裂する一夜となるのか、又はXL Recordingsのリリースを通しより新しい次元に到達しているのかは必見ですし、WWW Xの雰囲気とサウンドシステムとがどう化学反応を起こすかも楽しみです。

- 今後の目標を教えてください。

CYK - 国内・海外アーティストの垣根を越え、僕らの目線でピックしたアーティストと共に良いパーティーを作り上げる事。C’est Quiとはそうしたいい関係性でパーティーが出来ているいい例だと思っています。加えて今年は京都のToreiやToshiki、北海道のTomokiやUMIなど世代の近いローカルの素晴らしいDJにも出会えました。“アジア“や”日本“などの括りも前向きに考えつつ最終的にはパーティーにおける体験を最高なものにするべく走り続けて行きたいです。並行して、僕らの本質的な活動に還元されるような動き(CYK RADIOの運営やマーチャンダイジングの企画など)もして行きたいなと思っています。何はともあれ最優先なのは目の前のパーティーをみんなで全力で楽しむこと。CYKの2nd Anniversary是非みんなで遊びましょう!!

INFO

CYK Feat. Baba Stiltz with C’est Qui

Date:10月12日(金)
Venue:CIRCUS Osaka
Open:23:00
Door:2,500yen
Adv:2,000yen
Line up:
Baba Stiltz
C'est Qui
CYK TOKYO(Nari,Kotsu,DJ No Guarantee,Naoki Takebayashi)

More info:
CIRCUS Osaka
http://circus-osaka.com

Date:10月13日(土)
Venue:WWW X
Open:23:00
Door:2,500yen
Adv:2,000yen
U-23:1500yen
Line up:
Baba Stiltz
C'est Qui
CYK TOKYO(Nari,Kotsu,DJ No Guarantee,Naoki Takebayashi)

More info:
WWW X
http://www-shibuya.jp/

Date:10月20日(土)
Venue:CONTRA Seoul
Line up:
Baba Stiltz
CYK TOKYO(Nari,Kotsu,DJ No Guarantee,Naoki Takebayashi)

RELATED

【インタビュー】DYGL 『Cut the Collar』| 楽しい場を作るという意味でのロック

DYGLが先ごろ発表したニューEP『Cut the Collar』は、自由を謳歌するバンドの現在地をそのまま鳴らしたかのような作品だ。

【インタビュー】maya ongaku 『Electronic Phantoms』| 亡霊 / AI / シンクロニシティ

GURUGURU BRAIN/BAYON PRODUCTIONから共同リリースされたデビュー・アルバム『Approach to Anima』が幅広いリスナーの評価を受け、ヨーロッパ・ツアーを含む積極的なライブ活動で数多くの観客を魅了してきたバンド、maya ongaku

【インタビュー】Minchanbaby | 活動終了について

Minchanbabyがラッパー活動を終了した。突如SNSで発表されたその情報は驚きをもって迎えられたが、それもそのはず、近年も彼は精力的にリリースを続けていたからだ。詳細も分からないまま活動終了となってから数か月が経ったある日、突然「誰か最後に活動を振り返ってインタビューしてくれるライターさんや...

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。