『Astroworld』のプロデューサー陣が語るプロデューサーとしてのTravis Scott
Travis Scottがリリースした最新作『Astro World』は、その豪華な参加アーティストはもちろんのこと、多様なプロデューサー陣が楽曲制作に携わっていることも話題になり、各方面から高い評価を得ている。
実際のところ、プロデューサー達から見たTravis Scottはどのような人物なのだろうか?
Complexのこの記事を元に紐解いていきたい。
Travisの作品の大きな特徴としてあげられるのが、先述したように多くのアーティスト・プロデューサーが参加していることだ。その方針は2014年に発表された、彼のアイコニックなミックステープ『Days Before Rodeo』からすでに感じられる。
Travisと同じG.O.O.D.Musicの一員であり、『Astro World』にもプロデューサーとして参加しているCyHi The Prynceはこのように語っている。
「多くのコラボレーションをするという風潮は、ラッパー達がアルバムオブザイヤーでAdeleとかと戦うために、乗る必要がある風潮なんだ。この方法はKanye Westから始まったものだね」
確かに、Kanyeの作品も様々なジャンルからのアーティストが多く参加している印象がある。Kanyeも元G.O.O.D.MusicのボスであるだけにTravisが影響を受けているのは間違いないだろう。
Kid Cudi,Stevie Wonder,James Blakeが1曲に共存し、その後にTame Impala、Pharrell WilliamsそしてThe Weekndが同時にフィーチャーされた曲が収録されているということが『Astro World』の中で実現しているわけだが、Travisはそれらのアーティストを誰ひとり殺すことなく生かすことに成功している。
CyHiはTravisのこのプロデューサーとしての才能について、「事実として、彼はどんな思考を部屋に入れるかが、彼自身を素晴らしいプロデューサーにしているということを知っている。だが、そこで俺らが全てをやるわけじゃないし、Travisが全てをやるわけでもない。俺たちは彼に良い影響を与え、彼が彼自身を説明するより簡単な方法を提供しているんだよ」と述べた。
つまり、あくまでTravisが主体であり、アーティストやプロデューサー陣はTravisの手助けに徹するという形を取っているということだ。
“Goosebumps”のプロデューサーであるCardoはTravisについてこう語っている。
「Travisとコラボする奴らは彼と同調しなければならない。彼がしていること、彼が表現しようとしていること何でもキャッチする必要があるんだよ」
『Astroworld』に収録されている“R.I.P Screw”と“5% Tint”のプロデュースに関わったFKI 1stは“全ての楽曲がジェットコースターみたいなんだよ。”と語り、続けて、
「全部の曲が最初、頂上に登っていって、急降下してループするっていう感じなんだよ。3,4分の同じビートにはならないんだよ」と独特な言い回しでTravisの楽曲を表現した。
“Sicko Mode”など、まるで途中から違う曲が始まったのではないかと思う楽曲が『Astro World』には多く、FKIのこの表現は意外と的を射ているのかもしれない。
記事では他にもSonny DigitalなどのプロデューサーがTravisについて語っているのだが、全てに共通しているのが「Travisの音楽的才能が素晴らしい」ということと「音楽へのこだわりが凄まじい」ということだ。
普通、これだけ多くの有名で実力のあるアーティストをフィーチャリングに迎えたら、何曲か喰われてしまう曲が出てきそうなものだ。しかし、Travisはその圧倒的な才能とこだわりで『Astroworld』の主になることに成功している。
『Astroworld』の他にも、最近は、Kanye Westの『Ye』や『Kids see Ghost』、A$AP Rockyの『Testing』などジャンルに囚われないフィーチャリングアーティストを大勢迎えるのがラップアルバムの1つのトレンドだ。
しかし、そのアルバムが良いものになるかどうかは本人のキュレーター・プロデューサーとしてのセンスが重要になってくる。“Days Before Rodeo”ですでにそのセンスの一部を見せていたTravisが現在キュレーター・プロデューサー的な立ち位置で評価されているのはある意味自然な流れなのかもしれない。