Cardi B | スーパーマーケットの店員からストリッパー、そして全米1位のラッパーが誕生するまで

Cardi Bの『Bodak Yellow』がフューチャリングなしの女性ラッパーとして約19年ぶりにHot 100の1を獲得したことが話題になっている。

曲のヒットもさることながら、「お前らの好きなラッパー全員のフロウ奪って、ぶっ飛ばしてやるよ」(Kodak Blackのフロウをパクっているのではないかという意見に対して)、「彼氏(Offset)とセックスしてお祝いした」(Billboard Hot 100にてチャートを上昇し続けるBodak Yellowについて)など自由奔放な発言が目立つ彼女。一体どこからそんな発言が出てくるのか、そのルーツを振り返る。

生い立ち

Cardi Bは1992年の10月11日、ドミニカ系の父とカリブ系の母の間にサウスブロンクスで生まれBelcalis Almanzarと名付けられた。Cardi Bというステージネームは彼女のニックネーム「Bacardi」からきている。(ちなみに姉はHennessyという名前)

幼少時代は、おばあちゃんの家で大半の時間を過ごすこととなる。そこでの暮らしは非常に暖かいもので、部屋はとにかく狭かったが楽しい時間であったようだ。のちにマンション暮らしに移った時のCardi Bはその時の思い出をこう語っている。「今私はとてもいいマンションに住んでいるわ。とっても広くて美しいところに。でもここは空っぽでつまらない。おばあちゃんの家は本当に狭かったけど確かにそこに幸せはあったの。本当馬鹿げてる、おばあちゃんの家にはたくさんの人がいて、みんなお金に困ってた。でもとても楽しかったわ。」

その後Renaissance High Schoolに進学し音楽について学ぶ。彼女が在学中に披露したLady GagaのパフォーマンスはCardi Bの片鱗を見ることができるだろう。真っ赤なスーツを着てBad Romanceを歌う姿はまさに圧巻だ。

在学中にお金を稼ぐためスーパーマーケットの店員をやっていたのはちょうどこの頃である。ここでの仕事がのちにストリッパーへと結びつけることになるとは。

ストリッパーへ

大学に進学してからは、ボーイフレンド関係で多くのいざこざが多発する。彼氏とその母親と暮らしていたことで、多くの問題が起こったようだ。彼氏がCardi Bを拒絶し始め、彼氏の妹はマリファナとお金を盗み、彼氏の友達は彼女の家でビデオゲームをするだけのライフサイクル。そんな日常に嫌気がさしたCardi Bは貧困と多くの犠牲から逃れるためにストリッパーを始めることを決意する。

貧困とはつまり彼女のスーパーマーケットでの収入のことで、一週間で200$の賃金では到底大学に通えない。しかしストリップクラブではその額を1日で稼ぐことができる。一日に2万円稼げるバイトなどそう存在しない。

運のいいことにスーパーマーケットから道を挟んだ反対側のストリップクラブはお互いマネージャー同士知り合いで、「ストリップクラブが裸でセックスをやるだけではない」と大衆との齟齬を丁寧に説明されたことがCardi Bに新たな人生を進む手助けをしたようだ。

ストリッパーについてCardi Bはポジティブな発言をしている。

「みんなストリッパーにネガティブなイメージを持つけど、私はそんなことはないわ。ストリップクラブは私にたくさんのものをくれたわ。おかげで大学に戻ることもできたしね」

Love & HipHop時代

Cardi Bはストリッパーを始め、大学に通うことができることになったが、最終的には途中で中退してしまう。しかし彼女のキャラクターはSNS上で人気を集めていき、ついにはNYの若手代表格のラッパーで現在収監中のBobby Shmurdaがインスタグラムでリポストするまでに。「モデルかコメディアンか、はたまた違う職種なのか、彼女は一体誰なんだ」と世間から騒がれる中ストリッパーと公表することで完全にSNSの注目の的になり、最終的にはリアリティーショウ『Love & HipHop』のプロデューサーと連絡を取るまでに至るのだ。

『Love & HipHop』とはR&BやHipHopについてのドキュメンタリー番組でアメリカの人気番組だ。スピンオフとしてアトランタやハリウッドのバージョンも撮られている。『Love & HipHop』の30秒の濃厚なCardi Bのプロモーション動画がこちらだ。こうしてCardi Bはシーズン6、7のメイン出演者の座をつかんだ。

 

Bodak Yellow 

Love & HipHopのメインキャストでの彼女のキャラが人気が出てくるに伴い彼女の音楽キャリアもどんどんと成功していく。

まずは2015年にShaggy, Popcaan, Cardi Bによるレゲエソング"Boom Boom"のリミックスで音楽キャリアをスタートさせる。この曲は既に25万再生を記録している。

さらに間髪入れずミックステープGangsta Bitch vol.1をリリース。このミックステープからは『Foreva』がヒット。この曲はPliesの"Ran Off On Da Plug Twice"と酷似しているという指摘もあるが、彼女はパクリなど全く気に留めていないようだ。

Cardi Bは徐々にレーベルの注目も集め、Jay-Z やWiz khalifa、Kodak Black、Lil Uzi Vertらを擁するAtlantic Recordsと2017年の2月に契約した。Cardi B曰く最も良い条件を出してくれたのがAtlanticだったようだ。

契約を結んでからのCardi Bはさらに勢いを増した。Marc Jacobsがスポンサーについたi-Dの『A-Z of Music』のプロモーションに参加、BET Award of Best New ArtistではChance The Rapperや21savageらと受賞を争い、Hot97 Summer Jamへの参加も果たした。

そんな一種のCardi B旋風が巻き起こる中発表した"Bodak Yellow"は全米で大きなムーブメントを起こす。Kodak Blackの『No Flockin』を模倣したこの曲はKodak Black本人によってさらにリミックスされ大きな話題を呼んだ。

『I don't dance now, I make money moves』(今はダンスをしない。金を動かすの)

この強烈なリリックは彼女のこれまでの人生の歩みを思わせる象徴的なリリックだ。

 

 

(Yoshito Takahashi)

RELATED

ReebokとCardi Bのコラボコレクションから初のウェアが登場|コラボClub Cも

Reebokグローバルアンバサダーを務め、世界的に活躍する新進気鋭のラッパーCardi Bとのコラボレーションコレク ショ『Reebok × Cardi B』より、初のアパレル展開となる『Summertime Fine Collection』と、人気シューズClub C Cardiの新作モデルが、4月24 日(土)より発売される。

Cardi Bがコメディ映画『Assisted Living』の主演を務めることが明らかに

昨年もMegan Thee Stallionとの“WAP”が大ヒットするなど大活躍を見せたCardi B。そんな彼女が、映画界でも大スターになろうとしているようだ。

トランプ支持者が連邦議会議事堂に侵入したことについてCardi Bが「皮肉が効いてる」とリアクション

アメリカでは今日、バイデン次期大統領の当選を承認する手続きを行なっていた連邦議会議事堂に多くのトランプ支持者が乱入するという前代未聞の騒動が起こった。トランプ支持者たちは警備を破って建物内に侵入、議事堂内では一人が銃撃を受け死亡するという事態にも発展。現在は暴徒たちが排除され審議が再開されたと報じられているが、この一件について、以前よりドナルド・トランプを一貫して批判してきたCardi Bがリアクションしている。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。