月間韓国音楽2017年8月編 Selected by stttr & DJ DJ機器

K-Popだけでなくヒップホップ、エレクトロニックミュージックまで、独自の発展を遂げている韓国の音楽シーンから生まれる良曲をピックアップする人気連載。

今月も選曲を担当するのは、もちろんstttrとDJ DJ機器の2人の韓国音楽愛好家。

stttrの2017年8月オススメ曲

1. NCT DREAM - "We Young"

コメント

NCTの10代ユニットNCT DREAMの新曲が出ました。レゲエですね。レゲエって、今のチャートに通用するポップスとして現代風にアップデートするのが難しいジャンルだと思います。K-Popにおいても、若いリスナー層に馴染みが薄い音楽ということもあり、制作サイドから敬遠されがちなジャンルではないかと。ただ、アップデートに成功した場合とても印象深い曲になっている場合が多いです。

思いつく範囲だと2NE1 - "FALLING IN LOVE"、miss A - "I don’t need a man"、Wonder Girls - "Why So Lonely"、直近ではEXO - "Ko Ko Bop"もありました。NCT DREAMのこの曲は2NE1やEXOのようにベースやヒップホップに接近してヘビーな音に仕上げるのではなく、レゲエの明るいリズムとマリンバの音色を活かして軽快に仕上げています。そしてサビではトロピカルハウスに展開。素晴らしいアレンジです。

トロピカルハウスは去年あたりからずっとK-Popで大流行していて、同じような曲ばかりで飽き飽きしていたのですが、こういう試みは大歓迎ですね。むしろ「トロピカルハウスブームに対するSMからの回答」という裏コンセプトがあるんじゃないかという気すらしています。ビジュアル面はどうですか皆さん?私の友人間のLINEでは「鳩山郁子」「長野まゆみ」といったワードが飛び交ってました。私は門外漢のため多くを語ることができませんが、このカムバックステージのでたらめなセーラー服アレンジはさすがにどうかと思いました。

2. CLC - "어디야? (Where are you?)"

コメント

CLCがミニアルバムとともにカムバック。”어디야? (Where are you?)”のMVを公開しました。前回の活動曲と打って変わってスローテンポのバラードです。冒頭フィルターがかかっているところとか、ピッチダウンしたようなドラムやベースの音色とか、完全にVaporwaveマナーですね。しかし決して奇をてらっているわけではなく、シンセを重ねた曲の作りや展開は基本に忠実かつ丁寧で、聴けば聴くほどいい曲。作詞作曲はアルマジロというJYP周りの人ですが、Vaporwaveという捉えどころのない音楽をうまく消化してオーソドックスなポップスの構造に落とし込んでいます。離れていく恋人に「(あの時の)あなたはどこ?」と語りかける歌詞も、もう決して戻ることはできない過去への郷愁や諦念がベースにあるVaporwaveの世界観に合っています。

Vaporwaveといえば、5月編で紹介したJazzyfactもそのようなサウンドでした。ネタ元の杏里の”Last Summer Whisper”はVaporwave界隈で何度もサンプリングされている曲です。JazzyfactはVaporwave経由で杏里を発見しサンプリングしたのでしょうか?ちなみにVaporwaveがその空気感を取り込んだ80年台の日本産シティポップは、今韓国のカルチャー界隈で大流行しています…。話を広げすぎて完全にまとまらなくなりました。とりあえず2017年はJazzyfact、CLC、シティポップブームの3つをセットで記憶しておきましょう。

3. SAAY - "CIRCLE ft. Tish Hyman"

コメント

元EvoLメンバーのSayがSaayと改名してソロデビュー。デビュー曲”Circle”のMVを公開しました。EvoLというグループがあったことは、ほぼ忘れかけていましたがこういうグループでした。グループ解散後のメンバーはそれぞれソロになったり新しいグループのメンバーとして再デビューしたりしています。さてこのSaayですが、K-Popのガールズグループにいた人が、このようにサウンド的にも人脈的にも、韓国色皆無の領域で曲を出しているというケースはなかなか珍しいのではないでしょうか(ちなみにレーベルはユニバーサル)。Youtubeを検索するとドイツでこの曲をライブしている映像が見つかったりします。何にせよ、グループが解散した後もまだ活躍する道があるのは良いことです。ちなみにSaayはDEANやCrushなどのクルーClubeskimoと繋がりがあるらしく(メンバーではない模様)、彼らのライブに客演したりもしていますね。

stttr

stttr

プロフィール

DJ。新旧韓国音楽。
韓国や日本など東アジア各国のポップミュージックを比較研究しています。

https://soundcloud.com/stttr

DJ DJ機器の2017年8月オススメ曲

総評

Red Velvetの単独コンサートを観に韓国に行ってきました!単コンで泣きましたし、"Zoo"を目の前で見てしまったのでその後2週間くらい聴くと泣きそうになってしまいました。Channel 1969、Cakeshop 、The Hens Clubなどのクラブにも遊びに行ってきました!楽しい旅でした。また行きたい!!!!
今月もHoodyPrimary(SOLJI is back!!うれしい!)、GFRIENDPRISTINMonoi ProjectCLC少女時代DIAMomolandVICTONが大変良かった。Primaryは来月にまるっと紹介したいです…。

1. SUNMI(선미) - "Gashina(가시나)"

コメント

元Wonder Girls、ソンミがJYPからMAKE USエンターテインメントにレーベルを移籍して初のソロ作品。タイトルの"가시나"は、「가시」は花などに生える棘の意味、「行ってしまうの?」のような別れを問う意味、そして「美しい花の群れ」という3つの意味が込められているそうです。パフォーマンス動画はこちら

サビ前の「왜 예쁜 날 두고 가시나」の笑顔からのキメ顔のところがとてもかっこいいですね。振り付けは1MILLION Dance StudioのLia Kimが担当したようです。Lia Kimは「Twice - TT」「BoA - FOX」「A.C.E - Cactus」などの振り付けに関わっています。かっこいい

そしてこの曲の振り付けを男女問わず他のアイドルが真似するようなことになっており、とても面白いです。性別問わずかっこいい人にはとても憧れますし、歌詞にあるような自分らしく生きる強い人間になりたいものです。

余談ですが、元4minute、そして元Wonder Girlsのヒョナが同時期にカムバックして同じ番組に出たりしており、感慨深いものがありました。こちらも良い曲です。ほぼmura masaです。

2. 조우찬 - "VVIP feat. Sik-K"

コメント

Show Me The Money 6 セミファイナルでDynamic Duoチームのウチャン(12歳!2005年生まれ!!!)が披露した曲。聴いている途中から「VVIP〜VVIP〜」と口ずさみたくなる爽やかな曲です。
ウチャンはCUBEの練習生とのことで、そりゃ顔面も整ってたり、ラップもうまかったりするわけですね…。いずれデビューするでしょうし、将来が楽しみです。Sik-Kのパートは自身の曲である"Ring Ring"や"party(SHUT DOWN)"から引用していてぶち上がりました。HIP HOPの楽しいところです。
ウチャンはノクサルと一緒に出ていたこちらの曲もかっこよかったです!一緒に聴いてみてくださいね。

3. uju (우주) - "Flash"

コメント

7月リリースで、たまたまApple Musicで見つけた曲なのですが、ものすごく良いポップスでしたのでこちらでご紹介。が、ujuについての情報が殆どありません…。"#Outfit"という曲も4月にリリースされています。インディーの方なのでしょうか…?情報を知っていらっしゃる方がいらっしゃいましたらぜひとも教えて頂ければと思います…。

 

DJ DJ機器

DJ DJ Kiki

プロフィール

Hi! I'm KIK!?

過去の連載分

RELATED

今月の25曲 | 2019年4月編 Selected by stttr、高橋アフィ、CH.0、鳥居真道、Lil Mofo

昨年よりスタートした好評の連載企画「今月の25曲」。様々な形で音楽に携わるレビュアー陣が、その月に聴いた音楽から5曲を紹介するコーナー。

今月の25曲 | 2019年3月編 Selected by stttr、高橋アフィ、CH.0、鳥居真道、Lil Mofo

昨年よりスタートした好評の連載企画「今月の25曲」。様々な形で音楽に携わるレビュアー陣が、その月に聴いた音楽から5曲を紹介するコーナー。

今月の25曲 | 2019年2月編 Selected by stttr、高橋アフィ、CH.0、鳥居真道、Lil Mofo

昨年よりスタートした好評の連載企画「今月の25曲」。様々な形で音楽に携わるレビュアー陣が、その月に聴いた音楽から5曲を紹介するコーナー。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。