BADBADNOTGOODインタビュー!ジャズを基盤にするオールマイティーバンドが傑作を届けてくれた

元々Odd FutureやKanye WestなどのヒップホップからJames Blakeの大胆なカバーで注目を集めたカナダのバンド、BADBADNOTGOOD。その後初のオリジナル・アルバムとなった前作『III』やGhostface Killahとのコラボ作『Sour Soul』をリリースした。そんな彼らが4人組になりニューアルバム『lV』をリリースした。今回はボーカリストを迎えたトラックを始めとしてKaytranadaなども参加し、よりサウンドの幅を広げた彼らにメールインタビューを行った。

質問・構成 : 和田哲郎

取材協力 : Beatink

- 自分たちに出来ることは全てやろうという姿勢はそのまま -

Alex - ハロー!元気?

- ありがとうございます。元気です。あなたは?

Alex - 元気だよ。

- 以前の来日のことは覚えていますか?

Alex - もちろん!すっごく短い滞在だったけどね。

- すごく良いショーだったのを覚えています。

Alex -  ほんと?ありがとう。俺たち、すっごく疲れてたんだよね(笑)なのに本当に楽しかったし、会場のエナジーがすごかった。終わったあとシャンパンを開けてお祝いしたんだ(笑)

- そして今年、2年ぶりの来日が決まっていますが、日本で楽しみにしていることはありますか?

Alex - とにかくもうすこし長く滞在してゆっくりできたらいいな。次回は2日間くらいだったから。前回も楽しかったんだけど、今回はもうちょっと観光したい。前回はレコードを買ったりはしたんだけど、次は日本の美しい部分や田舎が見たいね。まだスケジュールも何も決まっていないから、過剰に期待しないようにしてるんだ(笑)でも、他では出来ないような経験をしたり、素晴らしい時間がすごせたらいいなと思ってる。2日間であったとはいえ、前回も楽しかったしね。

- 前作から2年のスパンを経てリリースされる『Ⅳ』ですが、どのタイミングでアルバムにしようときめたんですか?

Alex -  曲自体は既に出来ていたんだけど、そのマテリアルを自分たちが納得のいくもの、満足出来るものに仕上げるまでに時間がかかったんだ。2013年に前回のアルバムがリリースされて、2014年もショーなんかでスタジオから離れていたし、2015年もGhostface(Killah)との共演があったりで、スタジオでまとまった期間でレコーディングすることがなかなか出来なかった。だから、今年リリースするのが良いタイミングだったんだ。共演者には皆それぞれトロントにある俺たちのホーム・スタジオに来てもらったから、全てのセッションを自分たちのスペースでレコーディングすることが出来た。本当にクールだったよ。ソングライティングからセッションまで全てを同じ空間で行えたことで、それぞれのプロセスから生まれるヴァイブをまとめることが出来たからね。

- 以前より経験を積んでいる分、スタジオでのレコーディングはスムーズでしたか?

Alex -  どちらとも言える。前よりももちろん成長はしているから、やり方が把握できていて作業をスムーズに行える部分もあったけど、同時に以前よりも自分たちが求めるハードルも高くなってもいるから、そこを達成するのは簡単ではなかったな。

- バンドはどう成長したと思います?

Alex - 人間としてもミュージシャンとしても、ソングライターとしてもすごく成長したと思う。色々なことを試してきたから、キーボードのループやシンセサイザーで曲作りを始めたり、曲の構成の仕方や曲作りのプロセスに変化が出て来た。未だに開拓中なんだ。ショーの数をこなしてきたことで、即興がより心地よくなってきたのも成長の一つだと思うね。

- 今回からサックス奏者、Leland Whitty(リーランド・ウッティー)が加入したのはなぜですか?彼はずっとツアーに帯同していたんですよね。

Alex - 彼には、俺たちがヘルプを必要としていて、且つ彼のスケジュールが開いている時に手伝ってもらっていたんだけど、彼が周りにいることが多くて、段々曲作りの過程でも一緒に活動するようになっていったんだ。曲作りの過程での彼がもたらしてくれるものは大きかったし、そこで、彼にフルタイムでバンドに参加してもらうことにしたのさ。

- 4人になって最も変わったところはどのような部分でしょうか。

Alex - そんなに変わったところはないよ。でも、特にショーでは4人いると質感やトーンが変わるよね。それによってヴァイブも変わってくるし。

- サックスの他に、彼がバンドにもたらしてくれるものとは何でしょう?

Alex - 彼はクラリネットも弾くし、フルート、ベースクラリネット、バイオリン、ビオラ、ギター、ベース…なんでもプレイできる。彼って本当に幅広く活躍出来るミュージシャンなんだよ。だから、バンドのサウンドに新しい質感やレイヤーをもたらしてくれている。アルバムのストリングスもほぼ全部彼が担当しているんだけど、それによってすごく良いレイヤーが加えられているんだ。確実に、俺たちの音楽の新しい一面を作り出してくれているね。

- 別のインタビューで自分たちのことを何でも屋と言ってましたけど、その意識はまだ変わってないですか?

Alex - 変わってないよ。自分たちに出来ることは全てやろうという姿勢はそのまま。新しいアルバムではアートワークもデザインしているし、レコーディングも全て自分たちでやったし、全てのプロセスを出来るだけ自分たちでやるのは今でも変わらない。そうすることで、沢山のことが学べるんだよね。新しい経験が出来るし、成長出来るんだ。

- 私の印象ではピュアなジャズバンドとしての強度も上がりつつ、オープンになんでもやっているというところも変わらないという感じがしますが。

Alex - ジャズはもちろん基本だけど、その中で色々な要素を取り入れて試してる。サイケロックとかブラジリアン、ヒップホップ…本当に何でも。俺たちは幅広い音楽を聴くんだけど、自分たちが良いと思う音楽とは繋がっていたいと思うし、それがどうクレイジーになろうが、取り入れることが出来るなら取り入れたいと思っているんだ。ごめん。ちょっとトイレにいきたいからChesterにかわるね(笑)

- Kaytranadaと作った作品はあと30~40あるんだ(笑)-

- わかりました(笑)Chester、元気ですか?

Chester - 元気?

- 元気です。Chester、元気ですか?(笑)

Chester -  元気元気。ここからは俺が答えるよ。

- では質問の続きを。例えばSam Herringとの”Time Moves Slow”やCharlotte Day Wilsonが参加した”In Your Eyes”の2曲のボーカルチューンは新境地かなと思いましたがいかがでしょう?

Chester -  その通り。前のアルバムでは、ボーカルとのコラボレーションはなかったからね。だから俺たちにとって新しい経験だったし、2曲ともすごく才能のあるボーカリストで素晴らしかった。すごくソウルフルな音楽を作り上げるのは、本当に面白かったよ。

- 前作がインストアルバムだったのにたいして今回はボーカリストやラッパーのMick Jenkinsも参加していますね。今回はボーカルを入れようとなったのは、なぜですか?

Chester -  ここ数年で色々な人たちに出会う機会があって、彼らとスタジオに入るチャンスがあったからさ。素晴らしいボーカリストやラッパーが身近にいるなら、もちろんそれを要素として使いたいとは思うよね。自分たちの音楽と合わせることでどうなるかはわからなかったけど、やってみて良いものが出来ればいいなと思って(笑)

- レコーディングは順調でしたか?Studio 69での印象的なエピソードがあれば教えてください。

Chester -  共演者たちも皆スタジオに来たし、レコーディングは全て自分たちのスタジオでやったんだ。最高だったよ。エンジニアも含め、全部自分たちでレコーディングした。エピソードは思いつかないけど、レコーディングのプロセスで皆(共演者たち)と仲良くなれたのは良かったな。Samがスタジオで作業する様子を見れたのも良かったし、あの曲は彼と一緒にスタジオで書いたんだけど、すごく美しい作品が仕上がったからすごく嬉しかったのを覚えてる。才能あふれる人たちばかりだったし、全てが最高だったね。

- Kaytranadaとのセッションについて教えてください。”Lavender”はどのように出来上がりましたか?また彼の魅力はどのようなところでしょうか。彼との楽曲はまるで宇宙空間で演奏してるかのようなトリッピーなグルーヴの楽曲になっていますね。

Chester -  彼は俺たちの友達でもあって、素晴らしいアーティストなんだ。1年半くらい前に出会って、それからずっと友達。彼がトロントにいるたびにスタジオに来てもらって、アイディアを交換し合ってゆっくり出来上がったのが"Lavender"で、そのアイディアをもとに色々試して音を重ねていったんだ。ヴァージョンはいくつか作ったね。彼が持ってくるアイディアって、本当に驚きなんだよ。彼って、即座に何でも思いつき、作り出すことが出来るんだよね。サンプルの操り方も素晴らしい。本当に才能あふれるアーティスト。シンセやタンバリンなんかもプレイしているよ。実は、彼と作った作品はあと30~40あるんだ(笑)これから徐々にリリースしていけるといいけど。

 

- Colin Stetsonが作品に参加してくれたことはあなたたちにとってどういった経験になりましたか?

Chester -  最高だった。彼と共演出来るなんて、本当に光栄だった。恐れ多かったね。最初はすっごく緊張したよ(笑)でも実際に会ってみるとすごく優しい人で、もちろん素晴らしいサックス奏者だった。とにかく素晴らしかったね。

- 彼との楽曲”Confessions Pt ⅱ”はとてもスリリングな楽曲に仕上がっていると思います。セッションの時からそう感じていましたか?

Chester -  そうだね。結構スリリングだった。もちろん少し音を加えたりはしたけど、セッションの時からその雰囲気は漂っていたと思う。

- わかりました。少し急ぎますね。自身名義の作品に加えて2015~2016においてもRihannaやKali Uchis、Wale、Mac Millerなどの作品にも参加していますよね。これらのアーティストの作品に参加することでバンドにどういうフィードバックがありますか?

Chester -  自分たちで意識はしていないけど、自然に自分たちの音楽を進化させてくれていると思う。他のアーティストと共演することで、様々な要素をまとめられるようになったというのはあると思うね。それは大きな一歩だと思う。アレンジもそうだし。よくわからないけど、そんなところかな(笑)

- 昨年はGhostface Killahともツアーを回りましたよね。ラッパーとツアーを回ることでどういった変化がありましたか?

Chester -  彼のエナジーをこの目で見れたことは、すごく刺激的だった。そこには自分たちと通じる何かがあるようにも感じたし、彼は最高だよ。

- ジャケットの写真はなぜあれに決まったのですか?

Chester -  あれは去年の夏のツアー中に友達が撮った写真なんだけど、あの写真のヴァイブが好きだったし、前回のアルバムジャケットとも全く違う雰囲気だから今回のアルバム・カバーに使うことにしたんだ。ごめん!もう行かなきゃ。

- ギリギリまでありがとうございました!来日を楽しみにしています。

Chester -  ありがとう!久しぶりに皆に会えるのを楽しみにしてるよ!

<Release Info>

BADBADNOTGOOD -『lV』

BADBADNOTGOOD

2016/07/08 FRI ON SALE

日本限定盤CD: ¥2,200+tax
日本限定盤特典: ボーナストラック追加収録 / 解説書封入

Tracklist

01. And That, Too.
02. Speaking Gently
03. Time Moves Slow (feat. Sam Herring)
04. Confessions Pt II (feat. Colin Stetson)
05. Lavender (feat. Kaytranada)
06. Chompy's Paradise
07. IV
08. Hyssop of Love (feat. Mick Jenkins)
09. Structure No. 3
10. In Your Eyes (feat. Charlotte Day Wilson)
11. Cashmere
12. Up *Bonus Track for Japan

詳細はこちら

RELATED

【インタビュー】5lack 『report』| やるべき事は自分で決める

5lackが今月6曲入りの新作『report』をリリースした。

【インタビュー】BES 『WILL OF STEEL』| 初期衝動を忘れずに

SCARSやSWANKY SWIPEのメンバーとしても知られ、常にアクティヴにヒップホップと向き合い、コンスタントに作品をリリースしてきたレジェンドラッパー、BES。

【インタビュー】CreativeDrugStore 『Wisteria』| 11年目の前哨戦

BIM、in-d、VaVa、JUBEEのMC4名、そしてDJ/プロデューサーのdoooo、ビデオディレクターのHeiyuuからなるクルー、CreativeDrugStore(以下、CDS)による、結成11周年にして初となる1stアルバム『Wisteria』がついに発表された。

MOST POPULAR

音楽を聴いて鳥肌が立つのは特殊な脳の構造を持つ人だけが経験できるという研究結果

音楽を聴いて鳥肌が立つ、という体験をしたことがあるだろうか。もしあるならば、あなたはとてもラッキーな経験をしている。

大人になってからの音楽の好みは14歳の時に聴いた音楽で形成されている

私たちの音楽の好みは14歳の時に聴いた音楽によって形成されていると、研究により明らかになった。

Appleの重役がiTunesの音楽ダウンロードが終了することを認める

ついにその日が来てしまうのだろうか。先日発表されたアメリカレコード協会(RIAA)の2017年末の収入報告でもデジタルダウンロードの売り上げが2011年以来6年ぶりにCDやアナログレコードなどの売り上げよりも少なくなったと発表されたが、ちょうどそのタイミングでApple Musicの重役のJimmy Iovineが、iTunesストアの音楽ダウンロードが、終了する見込みであることをBBCの取材に対して認めている。