Lapaluxインタビュー

昨年リリースした2枚の傑作EPで一躍注目を集め、今年3月には待望の1stアルバム『Nostalchic』をFlying LotusのBrainfeederからリリースしたロンドンのビートメーカー、Lapalux!6月にBrainfeeder3で待望の来日を果たした彼に自身の作品、レーベル、そしてビートシーンの現在について聞いた。

取材 和田哲郎 写真 寺沢美遊 取材協力 Beatink,UNIT

- アルバム『Nostalchic』リリースおめでとうございます。とてもエモーショナルなメロディーとソリッドなビートが同居していて感情を揺さぶられるすばらしいアルバムだと思います。制作している時はどのようなことを思い浮かべながら作っているんですか?

Lapalux - 僕は感情を基盤として音楽を作っているよ。影響を受けるのは日々の出来事、人生で起こる色々な出来事からインスピレーションされるんだ。でも今の音楽市場には僕が考えている音楽とギャップがあって(UKではテクノやハウス、いわゆるダンスミュージックがとても流行っているから)魂をゆさぶられるような、感情をちゃんと表現した音楽があまりないように感じているんだ。まあ僕はニッチかもしれないけど僕なりの、感情や考えをちゃんと表現するような音楽を作っていきたいと思っているよ。

- 前の作品に比べて、ボーカルをfeat.したトラックが増えていると思うんですがそれはR&Bの影響ですか?

Lapalux - 確かにそうだね、以前と比べて他のアーティストとコラボレートする機会が増えたのもあるし、元から色んなアーティストと一緒に曲を作りたいと思っていたし、それで今回のアルバムにはボーカルが増えたんだ。特に女性のボーカリストはエモーショナルな音楽と合うと思っているし、それに最近だとプロデューサーという役割に重点を置いていて、他のラッパーとかと一緒に音楽を作って行く上でプロデューサーという立場にいるのが自分にとっても良いのかなと思っているよ。
自分とPCや楽器だけではなくて他の人と、アイディアをぶつけあって幅を広げてきたいんだ。

Lapalux
Photo By Miyu Terasawa

- 前どこかのインタビューでR.Kellyからすごい影響を受けているという発言を読んだのですがコラボレートしたいR&Bシンガーはいますか?

Lapalux- それはたくさんいるよ!最近はほんとによくR&Bを聞いているから、Ciara、Mary J Brigeとか言い切れないね。ラッパーだと、Danny Brownと一緒にやってみたいかな。

- 最初にUKで今テクノやハウスなどダンスミュージックが流行っていると言っていたと思うんですが、あなたの音楽もスロージャム的なある種ダンスミュージックとして捉えることはできますよね。

Lapalux - まず僕はスタジオに入って曲を作るっていうときにダンスフロア向けの曲を作ろうと思って作り始めるわけではないんだ。でも仕上がった曲を聴いたときに、時々満足がいかなくてその曲をダンスフロア向けのリミックスにして完成させるということもあるよ。いつも考えているのはダンスフロア向けの音とリスニング向けの中間地点にあるような部分を探り当てることなんだ。それにツアーとかで、世界中を回ると色んなアーティストの影響を受けるから、そういうときはダンスフロア向きの曲が生まれやすくなるかな。あと自分はテクノプロデューサーと一緒に住んでいたことがあって、その時は24時間テクノ漬けみたいな生活をしていたから4つ打ちの影響もとても大きいかな。

Lapalux
Photo By Miyu Terasawa

- そうだったんですね、いまジュークやフットワークにハマっていると聞いたんですが自分で作ったりもしてみたいですか?

Lapalux - そう凄い大好きなんだよね、それでもう自分で作ってみたんだよ。自分のスタイルとシカゴのスタイルを混ぜた感じでやってみたよ。

- いま日本でもジュークがめちゃくちゃ流行ってるので今日もしプレイしたらフロアはすごいことになるでしょうね(インタビューはBrainfeeder3開催当日に行われた)

Lapalux - じゃあ今日のセットに入れてみようかな(笑)

- ジュークにハマったのはPlanet Muのコンピレーション『Bangs&Works』がきっかけですか?

Lapalux - Planet Muのコンピレーションはとてもいい内容だよね、でもそれよりもっと前にDJ NateのmyspaceかFacebookかを友達に紹介されて、それで聞いたのがきっかけかな

- ずっとロンドンに住んでいると思うんですがレーベルはLAのBrainfeederからリリースしてますよね。でもとてもBrainfeederからリリースしているのが自然な感じがします。自分ではBrainfeederに所属しているのはどう感じていますか?

Lapalux - 自分でもすごいBrainfeederに所属しているのが自然なことだと思うよ。Flying Lotusからはとても影響を受けているし、昔からBrainfeederの音がとても好きだったし、Brainfeederの一員になるのが夢だったからね。でも同時にAphex TwinとかUKの音楽からも影響を受けているけどね。だからロンドンのテイストとLAのテイストを混ぜて自分なりの音にしていきたいと思っているよ。

Lapalux
Photo By Miyu Terasawa

- いま次の作品の構想ってありますか?

Lapalux - そうだね、アイデアはたくさんあってまずは今年中にEPをリリースして、来年にはアルバムをリリースしたいと思っているよ。あとはシンガーとかとコラボレーションする作品を作れたらいいね。

- Teebsにも聞いたんですがいまビートシーンはどんどん大きくなっていってると思うんですが、あなたはその理由をなんだと思いますか?

Lapalux - ビートミュージックのシーンが大きくなったことはとても嬉しいことだと思うよ。メジャーなシーンとアンダーグラウンドなシーンが混ざるのはいいことだしね。ただそれには少し変な影響もあって、Kanye Westのアルバム『Yeezus』を聞いたんだけど、Hudson Mohawkeが手掛けたトラックには変なエフェクトがかかりすぎていて、Hudsonの元のトラックが持っていたマジックが消えちゃってると感じたんだ。そういう疑問に残ることもあるけど、ベッドルームで1人で音楽を作っていたプロデューサーがKanyeとかとコラボできるのはすごいことだよね。それからビートミュージックシーンが大きくなった理由としてはサウンドクラウドの影響がとても強いと思うんだ。誰でも曲をアップできるツールが出来たことがビートミュージックの拡大には貢献したと思う。ただ誰でもできるようになると良いものを見つけ出すのが難しくはなるけど、みんなが自由に色んな音楽をリリースできるのはすばらしいことだよね。

- ビートミュージックシーンが大きくなっていくなかで、あなたは自分の音楽をどのようにしていきたいですか?

Lapalux - 時代はどんどん変化していくからそれについていくのがとても大変なんだけど、まずやりたいことは他のアーティストのプロデュースだね。個人的にはもっと実験的なことをしたいんだ。例えば映画とかTVのサントラとかやってみたいね。でも今はやっぱりプロデューサーとしての仕事に重点を置きたいかな。自分も常に変化して行きたいと思っているし、それが結果的に良くても悪くても、学びの場だと考えてまだ若いし常に変わっていきたいよ。

Lapalux
Photo By Miyu Terasawa

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