【インタビュー】Mogwaa | 韓国のムーディーなモダンファンク求道者

スタンダードなモデルから簡易的なバージョンまで、ソウルの永登浦(ヨンドゥンポ)エリアにあるこじんまりとした規模のMogwaaのスタジオは、様々なシンセサイザーとドラムマシーンなどの音楽機材でいっぱいだった。長い間ファンクに携わるMogwaaは、多様なジャンルのミュージシャンとコラボレーションを続けながら、幅広いジャンルの音楽を披露している。バンドのギタリストとしての長いキャリアは、現在彼が行うプロデュースの仕事の基盤となった。ソロで活動して5年目になるMogwaa、彼にインスピレーションを与える過去のファンクミュージックを再解釈する過程から、自身の話までじっくりと聞いていった。

取材・構成 : Junyong Lee

写真 : Chosen 1

翻訳 : akari

- 簡単に自己紹介をお願いします。

Mogwaa - シンセサイザー、ドラムマシーンを主に使ってシンセファンクとモダンファンクをやっているMogwaaです。去年初のEPアルバム『Déjà Vu』を出しました。

- SoundCloudのアカウントで「Representing YDP(永登浦 ヨンドゥンポ)」と紹介してますよね。

Mogwaa - 永登浦で生まれ育ったからです。プロフィールに書くことも特に無いし、あちこち出かける性格でも無く、永登浦一帯が活動範囲ですね。よく行く居酒屋も永登浦にあります、はは(笑)

- シンセファンクやモダンファンクを簡単に説明すると?

Mogwaa - 簡単に噛み砕いて言うと、シンセ/モダンファンクは言葉の通り、80年代のファンクを基盤にシンセサイザーとドラムマシーンを多く使う音楽ジャンルです。多くのミュージシャンがこれを現代的に再解釈する場合があるんですが、その当時のミュージシャンがやっていた方法を、自分なりに解いていくのが僕ならではのシンセファンクだと思ってます。

- 80年代のファンクに、違う楽器を使って近づけていくということですか?

Mogwaa - 楽器は当時のものと似たものを使うのが好きだし、特に違う機材を使用しているわけではありません。当時のアーティスト達が感じた感情や生活様式は、正直今とは明らかに違うので真似できる部分ではありません。なので、その時代とは変わった僕の生活様式と態度を入れ込んで、音楽的には同じ形で再解釈しようとしています。まるで同じ鉛筆で違うものを表現するみたいに。

- 大きく影響を受けたアーティストは?

Mogwaa - Princeの音楽は現在のファンク音楽をやってる人達にはいわゆるバイブルのように感じます。さらに具体的に言うと、やはりKashifの名前はかかせません。Kashifの様々な仕事は、今日ファンクミュージシャン達が追求するモダンファンクとかシンセファンクの基本となっていて、僕には一番大きなインスピレーションの対象です。

- プロデューサーとして本格的に活動を始める前、バンド Funkafric Boosterで数年間ギタリストとして活動していましたよね。バンド活動とソロアーティストとして活動する上で違う点はありますか?

Mogwaa - 1人で作業するのが好きなんですよね。バンドのように誰かと一緒に作業する時お互いの意見が衝突してストレスを感じたことがあります。どうしても不便で。1人の時はもっと上手くできるという意味ではなく、少なくともストレスはないですよね。

- バンド活動時代から個人での仕事も念頭に置いてましたか?

Mogwaa - 置いてませんでした。バンド活動とソロの間には数年間のギャップがあります。留学から帰って兵役を終えるまで、4〜5年かかりました。その頃音楽的に1人でやってみたいと考えるようになったと思います。

- 留学はどこへ行きましたか?

Mogwaa - 21才でペルーの音楽学校で勉強しました。元々はキューバに行きたかったんですが、共産主義国家だからと両親の反対が強くて。その後兵役の代わりにベトナムに行ってきたから全部で4年ほど海外生活をしました。

- PrinceとKashifという抜き出たミュージシャン以外にも、Mogwaaさんの音楽に影響を与えたミュージシャンを挙げると?

Mogwaa - 80年代のバンド「愛と平和」のキーボーディストとして活動したキム・ミョンゴン。シンセサイザーを主に使い、洗練された音楽を披露しました。愛と平和のベーシスト、ソン・ミョンソプにもインスピレーションを受けました。

- 曲でもアルバムでも、「All Time Favorite」はありますか?

Mogwaa - 物凄い難しい質問ですね。あえて選ぶとすればPrinceの『1999』。いや、『Sign 'O' the Times』。

- 2017年、一番大きく感銘を受けた作品を5つ紹介してください。

Mogwaa - 毎日音楽を聴くからどれが去年のものか分からないですね。シングルではSASACとDreamcastの7インチが出ましたが、その中の”Liquit Deep”と”Summer Love”が一番良かったと思います。アルバムはXin Sehaの『7F, the Void』です。ハハ

- ソロの他に、コラボレーションもやっていますよね。Xin Sehaのアルバム『7F, the Void Remixes』に収録された”Tell Her"のリミックスについてはいかがですか?

Mogwaa - Xin Sehaが連絡してきたんです。『7F, the Void』でリミックスするトラックを直接選ぶ機会があったんですが、"Tell Her"を選びました。

- DJも並行してやってらっしゃいますね。DJはもっとしていきたいですか?

Mogwaa -  確かにDJは楽しいですが、もし副業みたいになってしまったらストレスになりそう。今はたまにバイト感覚でやっているけれど、本格的にやるとなれば相当エネルギーを使うだろうなと思います。時々周りの友達が開くパーティーでゲストとしてプレイするのは問題ないです。

- Mogwaaさんなりのモダンファンクの集大成であるアルバム『Déjà Vu』が誕生した過程が気になります。製作した経緯についてお願いします。

Mogwaa - これまでに作った曲達を集めました。人と頻繁に会って出かけるタイプじゃないので発売を前にしてリリース元を悩みました。そしたらClique RecordsのAntoineと偶然出会いました。Antoineは前に僕が働いていたレコードバー「コプチャン鍋」の常連で、DJ Airbearと一緒によく来てました。時間が経ち自然と仲良くなって、作ったトラックをカセットテープで売りたいと彼に伝えました。Antoineとは音楽の趣味がよく合うからか、リリース順調に進んでアルバムはClique Recordsを通して去年の3月に発売しました。

- Clique Recordsを通してカセットテープを出した少し後に、シカゴのStar Creature RecordsからLPを発売されました。これも予期してなかったことですか?

Mogwaa - そうです。DJ AirbearがシカゴがベースのNumero RecordsのA&Rを紹介してくれて、その方と韓国のレコードを見て回ってすぐ仲良くなりました。僕の音楽に関心を持ってくれそうなレーベルを紹介すると言ってくれて、そのうちの1つだったStar Creatureから発売することにしました。

- 韓国のレコードは主にどこでディグしますか?

Mogwaa - 黄鶴洞(ファンハクトン)によく行きます。でも最近韓国のレコードはあんまり買ってなくて、海外からDJの友達が遊びに来る時に、主に韓国のレコードを選んであげます。韓国歌謡をかける店で働いていたからか、どんなものを求めているか分かります。この機会にAirBnBのツアーをやるか真剣に悩んでますよ、ははは(笑)。

- 名前を世界に知らしめたいといった思いは無さそうですね。

Mogwaa - 知らない人との出会いも面白いけれど、毎日のように会う友達との付き合いもいつも楽しいですしね。自分の性格のせいです。

- 少し前にHeadroom Rockers(韓国を拠点にするDJやプロデューサー、ビートメイカーのためのプラットフォーム)で開催した『profile』で伏見稔に言及しながら、伝統楽器の音を入れた音楽に関心を示してました。Mogwaaさんの音楽にも韓国の伝統楽器を取り入れる考えはありますか?

Mogwaa - それは簡単にやっていける自信が無いです。僕の能力ではまだできないと思います。伏見稔は日本の伝統楽器をよく使い、ファンクに乗せます。前にキム・スチョルさんもギターを散調でやってましたが、個人的には試しに伝統楽器を活用したファンクをやってみたいと思いますね。

- 直接楽器を触ると創作欲求やインスピレーションが湧くと言ったことがありましたよね。音楽ではないものからインスピレーションを得られる時はありますか?

Mogwaa - 映画を見たり本を読んだりするより、特定のムードを思い浮かべてインスピレーションを受けます。抽象的だけど僕が住む街もインスピレーションの源になります。家からスタジオまで歩くのに20分くらいかかるんですが、音楽を聴きながら少しずつ歩いてみると特別に感じる時があります。

- Mogwaaさんの音楽はヘビーなアナログシンセサウンドとドラムマシーンが特徴です。曲作りの流れを教えてください。

Mogwaa - 楽器をコンピューターに接続できるようにしてくれるMIDIを通じてコントロールします。ドラムマシーンと繋がっているので音を選んでから始める方です。途中でドラムのビート等のサウンドを選んでゆっくり重ねていく場合もあります。

- シンセサイザーごとに特徴は違いますが、いくつモデルを持ってますか?

Mogwaa - シンセサイザーごとに音が出る形も全て違います。スタジオには全部で6個置いています。JUNO-6はシンセ演奏者や多くのバンドが必ず1つは持っているスタンダードなもので、80年代のレコードでLPのクレジット欄によく使用楽器として記載されてます。

- JUNO-6の次によく使うのは何ですか?

Mogwaa - DX-100というモデルで80年代半ばから後半、YamahaがFM方式で作りました。Herbie HancockとKashifもよく使っていたし、後にRoger Troutmanのような人物もトークボックスをプレイする時によく使ってましたね。昔のモデルの新しいバージョンも持っています。Minimoogが簡略化された「Moog Sub 37」、シンセサイザー系のスタンダードなモデルのProphetの2000年代バージョン「Prophet 08」を使っています。

- 新都市(乙支路にあるライブやDJイベント、上映会なども行われるスポット)でライブを行ったことがありますが、自身の楽器を持って行きましたか?どんなモデルを使っていたのでしょうか。

Mogwaa - ライブセッションの場合、バンドではないので個人でできる最大限のパフォーマンスを見せようとします。シンセサイザーを2台持って行ったんですが、たまにトークボックスをしたりギターを弾いたりする時もあります。

- ギタリストとして音楽を始めていますが、ギターはシンセサイザーの演奏に役立ちましたか?

Mogwaa - はい。特にベースラインを書く時やリズムを打つ時にそう感じます。もちろんピアノから始めてはいないので比べることはできませんが、ギターの影響でリズムやライン部分でアプローチする方法も新しいかなと思いました。

- 学んでみたい別の楽器はありますか?

Mogwaa -  フルートです。今度またバンドをやるとしたら、フルートを吹こうかなと。昔のソウルやジャズを聴くとBobbi HumphreyやHubert Laws、Herbie Mannが演奏するフルートの音がとても清らかで人間的に聴こえるんですよね。息の音がたくさん入ってるからかもしれないです。

- LPはいつから集めていますか?どのくらい持っているのか気になります。

Mogwaa - 300〜400枚くらいで、高校の時から集めています。海外にいる時はあまり集めなかったですが、韓国に帰ってから本当にお金を使わないようにしなきゃと思っていたのにレコードバーで仕事していたせいか自然と買うようになりました。

- LPを集める若い世代が増えました。この流れをどう見ていますか?

Mogwaa - トレンディな人達はそれをトレンディだと感じてますよね。でも僕は個人的な趣向、趣味だと思っています。LPのリリースが多くなったと言っても、海外では以前からミュージシャンがこつこつとLPで発売していたので特に興味は無いですね。

- またStar Creatureからのアルバム発売は計画されていますか?

Mogwaa - Star Creature Recordsで7インチ、12インチをそれぞれ発売する予定で、他のアーティストと12インチLPの発売のために作業しています。おそらく4月にClique Recordsから新しいカセットテープも出ると思います。2枚目のEPアルバムですが、『Déjà Vu』がメロディー部分が目立っていたとしたら次回作はサウンドトラックのように家で横になって聴くのに良い音楽です。(追記: Mogwaaは6月、Clique Recordsから永登浦を舞台に製作した仮想のサウンドトラック『07307』を発表し、9月には新しいEP『Mi Mdle Curiosity』をドイツのレコードショップ Redseal Recordsから発売した。)

- Mogwaaさんが追求するジャンルはシンセ/モダンファンクですが、さらにはハウスやバレアリックにもなりうると仰っていました。それはどのような意味ですか?

Mogwaa - 自己紹介の時にはシンセファンクをやると言いましたが、僕の音楽はシンセファンクの方向だけで作っているわけではないですね。ハウスもよく聴くしたまにアンビエントなものも聴くのでそれが当たり前だと思います。発展とまでいかなくとも、ずっと変化するものなので。他の人達は僕がなぜこんな事をしているんだろう?と思うこともありそうですね。ハハ。

- ハウス、ファンクは大衆的に知られていますが、バレアリックは韓国では聞き慣れないですね。

Mogwaa - バレアリックはジャンルというより、一種のムードだと考えています。説明がとても曖昧です。僕の仕事をあえて区分するとしたら、多少実験的な音楽やハウスなどの他ジャンルではコラボレーションでたくさんやりましたし、ファンクはこれから8BallTownで出す計画があります。今はKirinと作業しています。

- 個人的な計画や望みはありますか?

Mogwaa - 機会があれば海外ツアーをやってみたいです。中国に1回行ってみたいです。周りの友達も面白いって言ってました。台湾?最近そっちのシーンも活発なようですね。それかインドネシア、香港などアジア方面ですかね。

※この記事はFNMNLと提携関係にある韓国のカルチャーメディアVISLA Magazineに掲載された記事を翻訳したものです。VISLAのオリジナル記事はこちらから。

RELATED

【インタビュー】EDCの創設者 Pasquale Rotellaが望む日本での理想的なフェスの形

日本でも高い知名度を誇るビッグフェスEDC(エレクトリック・デイジー・カーニバル)。日本では2017年に初上陸したEDCは、本国アメリカではEDCの一般的なイメージとなっているEDMのトップアーティストを含め、ヒップホップのアーティストなども登場する総合的な音楽フェスとして名を馳せている。

【インタビュー】Awich 『Beat』『Heart』| ヘイターも愛せる

昨年傑作アルバム『8』をリリースしたAwichが『Beat』と『Heart』の2作のEPを同時リリースした。今回の2枚のEPも『8』と同じくChaki Zuluがメインプロデューサーとなっているが、2作は好対照となっていて、『Beat』がアグレッシブなビートの楽曲が多いのに対して、『Heart』はメロウなテイストの作品となっている。

FNMNLが韓国のカルチャーメディアVISLA Magazineとコンテンツ連携をスタート

FNMNLは新たに2013年に韓国・ソウルで誕生したカルチャーメディアVISLA Magazineとのパートナーシップを結んだ。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。