【コラム】清水翔太 『WHITE』 | 自身のスタイルを貫く彼を支持するのは誰か?

清水翔太というと、バラードを歌うJ-POPの人、という印象が強かった。ちょっと前にKEIJUやIOと共演していたことは知っていたけど、自分の時間を割いてまで聴こうとは思わなかった。むしろ「メジャーの人特有の、流行りを上澄みだけを安易に取り入れるやつでしょ?」くらいに斜に構えた目線で彼を観ていた。

『WHITE』はアンビエントなR&Bやトラップを全面に取り入れたアルバムだ。インタビューでは影響を受けたアーティストを強いて挙げるなら、Frank Oceanと明かしていた。実際、上手いはずの歌にあえてオートチューンをやリバーブを強くかけたり、キックやベースの低音を強調して歌が埋もれるバランスの音像に仕上げた楽曲もある。個人的には"Good Life"、"Friday"、"踊り続けよう"、"alone feat. SALU"が好きで、純粋に歌の上手い人がメロディではなくリズムを優先するとこんなフロウができるのか、と驚いた。私は『WHITE』を聴いて、自分の無責任な先入観を恥じた。

彼が路線変更したのは、2016年に発表した『PROUD』から。本人曰く、いわゆる「ラブバラード期」はレコード会社の意向に沿っていたとのこと。だが徐々にセールスが落ちていったことで、精神的に追い詰められてしまい、一念発起して本当に自分のやりたい音楽を作ることにした。『PROUD』以降の彼は世界と対等に渡り合えるヒップホップを日本で表現しようと奮闘している。とはいえ客観的に考えて、それまで清水翔太のラブバラードが好きで聴いていた人が、いきなりFrank Ocean的な音楽を聴くとは思えない。逆にFrank Oceanを聴いてる人には「ラブバラードの人」という先入観があるから聴いてもらえない。

だが2016年に発表した"My Boo"という楽曲は、Apple Musc、LINE MUSIC、AWAなどサブスクリプションサービスでロングランヒットを続けている。2017年にはLINE MUSIC全体で4番目に聴かれた楽曲となった。さらに新作からのミュージックビデオ"alone feat. SALU"は公開から約1週間で41万回、1月に公開された"Good Life"は435万回も再生されている。CD売り上げチャートでは清水翔太の名前をあまり見かけないが、あちらは握手券ビジネスに席巻されているので音楽な部分での評価基準にはならない。

 

清水翔太がアンビエントなR&Bやトラップを志向するようになったことを大々的に報じるメディアは少ない。さらに『WHITE』の収録曲にはCMやドラマのタイアップもない。だが支持されている。なぜなのか? 確かにラブバラード期の根強いファンもいるだろう。だがそれだけではない。現に、2015年のベストアルバムでは結果が出なかったからだ。

つまり清水翔太は新しい音楽性で新しいファンを増やしている。それがサブスクリプションサービスでの好調に繋がっているのではないか? 新しいファンはどこにいる誰なのか? それはどこにでもいる普通の人たちだ。YouTubeで動画を観て、Twitterでつぶやいて、Instagramに写真をアップして、LINEでコミュニケーションをとる当たり前の人たち。

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清水翔太の新作『WHITE』のリスニングパーティーに参加したファンたち

そんな人たちが信用しているのは、既存のメディアではなく、SNSでつながっている友人たちだ。もはや自主規制や芸能界のしがらみだらけのテレビや、そこに連なる「釣り見出し」の芸能ニュースはオールドメディア。情報供給過多の現代において、そのすべてをインプットするのはできないから、みんな自然に必要ないものを切り捨てる。現に自分自身がそうだ。やはりメディアの意見より、友達のピュアな「これ面白いよ」「これカッコいいよね」を信用するし、重視している。

テレビやCMの大きなタイアップなどの動きがなくても、"My Boo"がサブスクリプションでのロングランした要因は「これカッコいよね」が連鎖した結果だと思う。清水翔太は先日ニューアルバム『WHITE』のリスニングパーティを行った。これはKanye Westが最新作『YE』発表時に行ったリスニングパーティをに通ずるものを感じる。Nas、Kid Cudi、Lil Yachty、2 Chainzからジョナ・ヒルやクリス・ロックまで、錚々たるVIPたちが集結したイベントの模様は、一般人を含む参加者によってSNSで拡散された。

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リスニングパーティーでの一幕 左 : 清水翔太 中央 : SALU 右 : 青山テルマ

清水翔太のパーティにも、Taka(ONE OK ROCK)、加藤ミリヤ、青山テルマ、SALU、KEIJU、IO、TAKUYA∞(UVERworld)ら音楽仲間から、宮川大輔、アントニー、プラスマイナス岩橋、りゅうちぇる、IVANといったタレントまでさまざまなゲストたちが集まった。

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りゅうちぇる
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加藤ミリヤ

確かにハイプなパーティかもしれない。だが、前作『FLY』以上にエッジの効いた最新作『WHITE』を広めるには、テレビや雑誌などに広告を出すよりもよほど効果があるように思える。メジャーにいる中堅クラスのアーティストが、世界の音楽トレンドを意識した作品を作ることはとても大事なことだ。

日本は中途半端に市場が大きいから、しばしばガラパゴス化してしまう。K-POPに初めて触れた時、そのクオリティの高さに驚いた。だがあれが世界標準で、むしろJ-POPが独特すぎる。日本で普通に暮らしているとその当たり前に気付きづらい。世界中とリアルタイムに繋がっているSNSがインフラ化したことで、状況は変わった。価値のあるものが正当な評価を受けるようになってきた。清水翔太が再評価されているのは、その証左のように思える。消費者だってバカじゃない。こんな不景気な世の中から良いものを選ぶために、こっちも必死なんだ。(宮崎敬太)

 

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