【インタビュー】Awich『8』 | 闇をも抱えて歌う

FEATURED  2017.08.18  FNMNL編集部

8/8にAwichがChaki Zulu全面プロデュースのアルバム『8』をリリースした。Awichは沖縄で生まれ育ち、その後アトランタに渡り、ファイブ・パーセンターズのメンバーの男性と結婚、長女を出産。家族で日本に戻ろうとしていた矢先に夫が銃殺されるという、壮絶な過去を持つ。

『8』はそうした自身と最愛の娘の波乱万丈な人生や、自らの土台と称する沖縄、さらには多面的なキャラクターや言語を使い分け恋愛について歌うなど、そのトラックのバリエーションと共に、Awichのポテンシャルをまざまざと感じさせられる作品となっている。

FNMNLではYENTOWNにも加入したAwichにインタビューを敢行、そのディープなリリックのルーツや、亡き夫のことなどについて話を聞いた。

取材・構成 : 和田哲郎

写真 : 横山純

 

- アルバムリリースおめでとうございます。サウンドのスタイルも幅広いですし、ボーカルもいろいろなスタイルを試してますよね。言語も日本語、英語も、あと沖縄語も使っていますよね。3つの言語を使い分ける理由を教えてください。

Awich - トピックにもよると思うんですけど、沖縄の言葉は沖縄のメッセージを伝えるための曲で使わないと適切じゃないし、全然違う曲に使ってもしょうがないので。英語はとってもあたしの性格に合っていて。言語にも性格があると思うんですけど、私の場合すんなり出てくるのが英語なんです。でも日本の人にも聴いてほしいから、日本語にしたり、日本語の音カッコいいから、入れておこうとか。1つの定型がなくて、その時々のケースバイケースで降りてくるインスピレーションで使い分けている感じですね。

- 言葉を曲のテイストに合わせて、選んでるなという感じがしたんですよね。

Awich - マジですか?それはありがたいです。

- あと歌い方もそうですよね、女性的なものにも様々な形があると思うんですけど、多面的なキャラクターが出ているなと。

Awich - すんなりそういうものが表現できる時もあれば、先生(Chaki Zulu)に指摘されたりするときもあるし。「もうちょい優しくやったら?」とか。例えば私の娘とやっている"Jah Love"って曲があるんですけど、最初はすごいゴリゴリの感じでラップしてたんですよ(笑)。そしたらChakiさんに「そんなんじゃないんじゃない?もうちょっとママっぽく、包容力のある感じでやったら?」って言われて、しっくりきたって感じだったり、かと思えば"Move Way"はすんなりストロングな感じが出てきたり、その時々ですね。Chakiさんがいなかったら消えてたフレーズとかもあるし、Chakiさんがいたから生まれたところもあるし。例えば”Remember"の「One Time fi ya Mind~」って最後のところは、最初はやめようと思ってたんですよ。でも「もう一回やってみなさい」って言われてやってみたら、めっちゃカッコよくなって、結局みんなあそこがフェイバリットになってる。

- なるほど、英語が自分にめちゃくちゃ合うっていうのはどういう部分が?

Awich - やっぱりカジュアルなところじゃないですかね。ストレートな表現が優れているというか、早いですよね。日本語だと初めて会うと敬語だったりするとか、あるじゃないですか。でも英語だと上下関係があったとしても、5秒後にはカジュアルな使いまわしができている。主語と述語も明確だし、私自身が曖昧な表現があまり好きじゃなくて。それは詩的な表現が好きじゃないとかではなく、誰が何をやるっていう表現が曖昧になるのが苦手で。それに合った場面もあると思うんですけど、私は明確にしたい派で。「私は」とか「あなたは」という表現が好きですね。英語だとそういう表現がとてもスンナリできるんですよね。例えば「私は私の心を守る」って表現だと「私」が多すぎるって感じるじゃないですか。でも英語だと「I Protect My Heart」でスンナリ表現できるので、そういうところがめっちゃ好きです。

- 元々子供の時から、詩を書いてたということなんですが、その時から言語に対する興味があった?

Awich - そうですね、言葉に対する興味はめっちゃありました。詩的表現もめちゃくちゃ好きで、どうして好きになったかは今となってはわからないんですけど。

Awich

- ルーツは?

Awich - うーん、私が小学校の頃はCocco、Charaとか不思議な表現をするアーティストが流行っていて、特にCoccoは沖縄だし聴いたりしてましたね。あとは沖縄の民謡も好きだったし、親に「この言葉どういう意味?」って聞いたり、そしたら結構すごいこと言っているのがわかったり、そういう色んなものの影響からですかね。

- ちなみにプロフィールに「夜が怖かった」と書いてあるんですが?

Awich - 夜に幽霊が出てくると思っていて、はははっ(笑)霊的なものが怖かったんですよ。なにかを見たとかはないし、なにがあったわけでもないんですけど、気配とかは感じてたり。太陽がなくなって暗闇に包まれると、自分が知らない世界が広がっている気がして、目をつぶるのが怖かったんですよね。それで夜ずっと起きてて、起きてると色んな思いが募ってくるから、何かを書かないと苦しくなっちゃう。書くと癒されるというか、和らいだんですよね。書いていたものは日記みたいなものでもあったし、取り止めのない詩みたいでもあったし、それはずっと書き続けてましたね。

- その書いていた詩はまだ持ってるんですか?

Awich - 持ってて、たまに読み返すんですよね。自分ってもしかしたら才能ないかもしれないとか思ったときに、9歳の自分の詩を読むと「お前すげえな、やっぱり才能あるわ」ってなるんですよ(笑)全然意味のない不思議な言葉の綴りのなかに、ハッとするような深いことが書かれてたりするんですよね。ずっと読み返してるから、今もその時の詩に影響されてる部分もあるし、成長している部分もあるし。ダサい英語が使われてたりとか。でも変な単語の組み合わせだからこそ、意味深なものが出てきたりするから、見返せばするほど、自信には繋がってきますね。ずっと書き続けてきたっていうものにもつながるし。今回のアルバムを作ってるときにも、日本語の可能性を追求しようっていうときには、当時書いていた方法を思い出したりしましたね。"Rainbow"とかはそうやって書いた曲です。日本語で意味がわかるような、意味わからないような、でもかっこいいものを目指しましたね。聴く人が何通りにも解釈できる表現の仕方をしましたね。Chakiさんにも、もちろん手伝ってもらったんですけど、そういえばこういうの昔やってたなって。

甘い声で戯れてくる野良猫みたい
100万回死んで来たのね
目を閉じる癖、夜中の電話も全部そう。
奪おうとしてるけれど
でもね、愛は与えるもの。("Rainbow"から)

- その夜が怖い頃からに比べると、今回のアルバムのAwichさんは闇をも肯定していますよね。

Awich - やっぱり経験値じゃないですかね、ある一時期はめっちゃ闇にいましたからね。終わりのない闇にドップリ浸かったのもあるし、物事を先入観でジャッジしていた時期もあったんですけど、そういうのを経て、物事をオープンに受け入れようっていう風に段々なってきた。夜もただ怖いだけじゃなくて、なんで不思議なパワーがあるんだろうって多面的に捉えられるようになってきたら、面白さがわかってきたというか。

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- なるほど、恋も大きなテーマの一つになっていると思うんですが、Awichさんの場合罪とか、堕落というワードとセットで出てきますよね。それって宗教的な感覚に近いかなと思うんですが。

Awich - 宗教的な感覚か..宗教的な感覚じゃないけど、スピリチュアルなものとか、人生の答えとか宇宙の真理とかはずっと考えてて、何か一つの宗教を信じてるわけじゃないんですけど、そういう模索のなかから出てきてる言葉なのかなとは思いますね。昔は歌詞で英語でも日本語でも難しい言葉を使うのが大好きだったんですよ。でも、そうしても意味ないやと思って、オーディエンスに刺さるように、深くて難しいことを、シンプルに喰らわすにはどうしたらいいかっていうのも常に考えていて。あと旦那がファイブ・パーセンターズだったんですね。だからそういうレッスンとか、supreme mathmaticsとかsupreme scienceとか、acutal factsとかの考え方を全部習ってドップリ浸かっていたし。Wu-TangとかRakimの言葉の使いまわしだったりとか、暗号も全部わかるし。でもそういうのを曲で使っても、みんなわからないから、それをわかりやすく伝えるにはどうしたらいいかとか、そういう生き方のかっこいいところを知ってもらいたいって気持ちもあるから。だから本当にそういうことばっかり考えてるんですね、でもそれをどういう切り口で見せるかってことですよね。遊びの一面で見せることもできるし、"Remember"もただのパーティーチューンじゃなくて、「自由な自分を持ってる誰もが、リミット外して思い出すコア」って歌詞にそういう考え方が入ってるし。ずっと自問自答してることを、色んな切り口でみせていますね。

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