三浦大知『HIT』リリースインタビュー | 僕の一番の理想は流行りすぎないこと

FEATURED  2017.04.04  FNMNL編集部

歌って踊れるアーティストという一貫した姿勢を示してきた三浦大知が、3/22にニューアルバム『HIT』をリリースした。『HIT』にはヒットシングル"Cry & Fight"や"EXCITE"、"(RE)PLAY"を収録している他、トレンドのトロピカルなテイストを三浦流に解釈した楽曲もフィーチャーされている。

常に浮足立たずじっくりとだが着実に進化してきた三浦大知に、今作『HIT』についてや、トレンドについて、そして自分の理想とするアーティスト像などについて話を聞いた。

取材・構成 : 和田哲郎

- 1年半ぶりのアルバム『HIT』リリースおめでとうございます。タイトルがすごいシンプルじゃないですか、このタイトルの意図は?

三浦大知 - ありがとうございます。そうですね、今までも『The Entertainer』とか自分で大風呂敷を広げることがあったので、『HIT』って自分で言ってしまう面白さがあってもいいなと思いました。2016年は今まで以上に三浦大知のことを知っていただける機会が多かったので、今まで応援してくださった方たちと初めて三浦大知のアルバムを聴く人たち、どちらにも楽しめるものがいいなと思ったんです。

だから自分の中で『HIT』した曲をたくさん詰め込んで、その中からみなさんの心に1曲でも『HIT』する曲があったらいいなという意味で、このタイトルにしました。

そして、アルバムの最後の曲が"Hang In There"という曲なんですが、"Hang In There"は踏ん張るとか踏みとどまるとか、ただの励ましの言葉じゃなくて、辛い状況を打破するときにかける言葉なんです。この"Hang In There"の頭文字が"HIT"でもあるんですよ。みなさんが三浦大知のアルバムを聴いて、辛い瞬間を乗り越えられたり背中を押せるアルバムになったら最高ですね。

- 歌詞の中にも光と影という対比がよく出てきていて、暗いところにいるんだけど常に前を見るという点は三浦さんも大事にしてきた部分なのでしょうか?

三浦大知 - そうですね、なんでも表裏一体だと思っていて。良いこともあれば悪いこともあるし。頑張った分だけ悪いことがあっても良いことがあるような気がしていて、そういう両面を歌えるのがいいのかなって、いつも思っているので。真っ白な部分だけじゃなくて黒があるから白が映えるじゃないけど、そういうことが歌えたらいいなっていうのは、いつも思ってますね。

- 歌詞が難しい言葉使いとかはしてなくてシンプルですよね、そこらへんは常に意識されていますか?

三浦大知 - ある程度何を言ってるかわかる形にはしたいですよね。普遍的なこととか問題提起とかについて書いていけたらいいなと思っています。

- ミュージックビデオが公開された"Darkest Before Dawn"も曲調自体は軽快で明るいんですけど、夜明け前の一番暗い時間のことを歌っていて、それも三浦さんのバランス感覚なのかなと。

三浦大知 - そうですね、それは作詞・作曲のNao’ ymtさんの世界観でもあるんですけど、元々Naoさんもそこに近い感覚を持っているというか。一番暗いときが夜明けに繋がっていて、だからこそ希望を感じられるというか、そういう切り口は素敵だなと思ったし、自分の気持ちにもフィットしてると思いました。

- "Darkest Before Dawn"のビデオはかなり危なそうな岩場でダンスをやってますよね。

三浦大知 - 危なかったですね。岩場は平らな部分はなくて、全部斜めになってたし、踏んだら欠けるところもあったり。できたというよりはとにかくやったって感じですかね。映像を見て思ったよりもダンスになってたので、よかったと思いました。

 

- 普段の三浦さんってテンションの差ってあったりするんですか?

三浦大知 - どうなんですかね、僕は良いことにもネガティブな要素があると思うし、悪いことにもポジティブな要素があると思うんですよ。全然アイディアが出てこないとか、人に上手く伝わらなかったとか、日々上手くいかないときに、自分は音楽に救われてきたなっていうのがあるので、作品自体が救いになったらいいなとは思いますね。

- サウンドの話に移りたいんですが、いまトレンドのトロピカル感がそのままではなく上手く昇華されて使われてるのが、良いなと思ったんですが、どのような形で取り込もうと思いましたか?

三浦大知 - そうですね、トロピカルな感じって音色で出ると思うんですよ。印象的なシンセの音が入ってるといまっぽくなるのかなと思いつつ、僕がいまっぽさの取り入れ方として、一番大事にしたのは欲張らないってことなんです。EDMの流れが一通り終わって、EDMはパーティーアンセムとして残りつつ、ダンスミュージックは移り変わってきていて。そういうところで僕が思うのは、みんなサウンドに余裕があるし欲張ってないよな、それがいまっぽいんじゃないかなと思って。自分自身、うるさいのに疲れたというのもあって。でも、もちろんその良さもあるんですよ。

三浦大知 - 例えば"EXCITE"とかは、『仮面ライダー』ありきだったんで、逆に盛り盛りでやることで、面白いというのがあるんですけど。アルバム全体のイメージ像としては軽やかな方がいいなっていうのと、必要なものしかない感じがいいなって。ここ最近のシングルが"Cry & Fight"にしても、"EXCITE"にしても、"(RE)PLAY"にしても力が入った曲が多かったので、アルバムとしてはちょっと肩の力が抜けた、お腹いっぱいになりすぎない感じだと心地よく聴けるのかなとは思ってました。

 

- 肩の力が抜けすぎるとグルーヴ感がなくなっちゃったりもするじゃないですか?

三浦大知 -そこはクリエイターがすばらしい方が揃っていますし、その方たちの好きな曲を選んだので大丈夫でしたね。

- ゲストにSOIL&”PIMP”SESSIONSをチョイスしたのは?これまであまり交流はないですよね。

三浦大知 - SOIL&”PIMP”SESSIONSが福原美穂ちゃんとコラボしている"Bon Bon Villa"って曲があるんですけど、それがすごく好きなんですよ。あと椎名林檎さんとやっている“殺し屋危機一髪”も好きですね。美穂ちゃんとの曲がすごい土着感があって、埃っぽい感じもあって全部生楽器でっていうのが良くて。三浦大知が踊るダンスミュージックを全部生音でどうしても作りたくて、そしたらSOILさんしかいないって思ったんです。ダメ元でオファーさせていただいたら、快くOKしてくださったんですよ。「Folderの頃からずっと好きだったからぜひ」って言われて。楽曲制作は去年のリオ・オリンピックの少し前だったので「ブラジリアンが面白いんじゃない?」という話になり、「非公式オリンピックソングだ」とか言っていたら、フタをあけてみたら公式の方もSOILさんが参加されていたんですよね。

今までの僕の曲だとトラックはPCで作って、レコーディングは歌を録るものだったんですけど、自分だけじゃ体感できないトラック録りの部分を今回は見学させてもらって、すごく楽しかったですね。

- 個人的にK-Popアーティストに曲を提供しているLDN Noiseが2曲参加してるのが気になったんですが?

三浦大知 - 単純にデモを聴いていて、LDN Noiseがいい曲がいっぱいあったっていうのもあるし、"EXCITE"とかに参加してくれているKanataさんも、LDN Noiseと仲良くて、Kanataさんも元々スウェーデンとかで出会ったのかな、それで一緒に作れたらいいよねみたいなところからですね。LDN Noiseはガンガンうるさくないというか、バランスの取り方がうまいですよね。そこはすごく日本人の肌にあってる気がしますね。

- トレンドの話になりましたけど、どんどんトレンドも移り変わっていくじゃないですか。そういう新しいトレンドが出てくるときに三浦さんはどういうリアクションをとられますか?

三浦大知 -どんなエンタテインメントでもそうだと思うんですけど、100%新しいものってないような気がしているんですよ。やっぱり何かの影響があったり、どこかの時代のものが巡ってきたりとか。

普通に受け入れられるというか面白いなって思えるのは、多分どこかにそのムーブメントのルーツがあって、歴史の中の1ページがまた戻ってきてるみたいに思うからかなと。そうじゃない全くの実験的なものもあるじゃないですか。そこって結構難しくて、クリエイターの方ともよく話をするんですけど、新しければいいのかみたいなのってあるじゃないですか。その線引きは難しいところですよね。

なかなかKanye Westみたいにはいかないと思うんですよね。あれって稀有なパターンだと思うんで。KOHHのアルバムもそうだと思うんですけどね。KOHHは歌詞の世界観とか、自分じゃ絶対できないことをやってて、すごい聴いてますよ。そこは羨ましさもあり、今の新しいラップを作ってる人だと思うんで。日本語を日本語らしくのせて海外でも評価されるって素敵だと思います。ルーツがわからないものを作って、ちゃんと音楽的に成功するって相当難しいと思うんですよね。アートに寄りすぎると結局理解できなかったりというのはあるので。そこに感動が入ってくるのは難しいですよね。

 

三浦大知 - 1リスナーとしては、音楽に対しての愛っていうか、自分が影響を受けてきたものやストーリーを感じるといいなって思いますね。これまで自分が歩んできたストーリーと、新しいものが化学反応を起こしたらいいですよね。

- 前回のインタビューでも聞かせてもらったんですけど、アルバム制作中によく聞いていたアーティストはいますか?

三浦大知 - そうですね、Francis The Lightsとかかな。Suchmosさんもよく聴いてたし、Lidoとか、Bruno Marsのアルバムも良かったし。あとはChainsmokersとかも今っぽいと思うし。トロピカルじゃないけどトロピカルな音色が入ってるものとか。そこの線引きも難しいですよね。トロピカルな音色が入ってるからといって、それがトロピカルかというと違うし。

 

- 三浦さんの場合トロピカルな音を使っても、組み合わせたサウンドで意外性を生み出してますよね。

三浦大知 - なんとなく雰囲気は聴いたことあるけど、でも新しい感覚。デモとか聴いたり、曲作りするときとかに、そういうのが好きなんでしょうね。心地いい違和感があるなみたいなのが好きなんだと思います。

- あとドラムのパターンのバリエーションとかもすごい幅広いなと思ったんですがいかがでしょうか?

三浦大知 - 今回はいろんなジャンルをやるというよりは、自分が好きなものの中でやるという感じだったので、その中でバリエーションが色々あるって感じですかね。そういうところでビートの多彩さが際立ったのかなと思いますね。

- 今回の1つのテーマとして抜け感もありつつ、曲調はいろんな曲が入ってますよね。アルバムをどういう風に聴いてほしいというのはありますか?

三浦大知 - もちろん1曲目から順番で聴いてほしいっていうのもありますけど、僕のなかでは聴きやすいアルバムになったらいいなと思っているので、あまり気にせず好きなときにどの曲からでも聴いてもらえたらと思いますね。

- 去年はすごいファン層が広がった実感があったとおっしゃってましたけど、今年はさらに広げていきたいですか?

三浦大知 - そうですね、でも自分は飛び級するタイプではない気がしていて、ここからドンっていうよりは、今まで自分が続けてきたことをやるというか。2016年に色んなところで見ていただけたのも、ずっと自分が続けてきたからだと思うんですよ。歌って踊ってきたからこそ見てもらえる機会が増えたんだと。今までと変わらず自分が続けてきたことや、もちろんチャレンジすることもたくさんしつつ、着実に一歩一歩進めたらいいなと思います。

- アルバムと同時発売されたLIVE DVD / Blu-ray『DAICHI MIURA LIVE TOUR (RE)PLAY FINAL at国立代々木競技場第一体育館』ですが、1月22日に会場で生でライブを拝見させてもらいましたが、ライブを構成する上で一番気にするところはどういう部分ですか?

三浦大知
『DAICHI MIURA LIVE TOUR (RE)PLAY FINAL at国立代々木競技場第一体育館』

三浦大知 - やっぱりバランスじゃないですかね。僕が作って僕がやっているので完全な客観視はできないんですけど。できるだけ客観的に三浦大知のライブを見たときに、ここはダンスが多いかなとか、ちょっとソロが長いなとか、バラードがもう1曲あったほうがいいのかなとか。自分が三浦大知のライブを体感した気持ちになって考えていますね。

- 自分で構成して、自分で決めるわけじゃないですか、それってすごいプレッシャーじゃないですか?

三浦大知 -これ本当にいいのかなとか、本当にこの流れで正解なのかなとか思うことはありますよ。ただ僕がすごい恵まれてるのは、周りにたくさん人がいて、ダンサーだったりスタッフだったり、みんなに意見を聞くことができるんです。

「こういう意図があるんだけど、どうかな」とか、それに対して「全然わかるよ」って言ってもらえたり、「だったらこういう順番にしたら?」とかみんなも一緒に作ってくれるというのがあるので、今回の"Darkest Before Dawn"の歌詞じゃないけど、「一人でも一人じゃない」んですよ。

もちろん最初に生み出すのは一人かもしれないけど、最終的にはみんなでってところがあるので、自分でジャッジはするけどみんなに正解をだしてもらってるような気持ちになるときのほうが多いですね。もちろん責任はありますけど、みんなで作っていくのは楽しいので、あんまり不安はないですね。

- それは三浦さんが全体に気を使ってるからなのかなって思いますね。

三浦大知 - でもそれはKREVAさんに教わったことという感じですね。僕はまだまだですけど、座長としてというか、現場のトップとして現場を盛り上げたり流れを作って、みんながモチベーション高く本番に臨む空気を作ったりとか、そういうのはKREVAさんから学んだことが、すごい多かったので。まだまだですけど年齢的にも、そういうことができるようにならないといけないと思いますね。

- 自分の環境の変化が曲作りに影響を与えたりすることもありますか?

三浦大知 - 多少なりともあるんじゃないですか。もちろん僕はフィクションの歌詞も書くし、ノンフィクションで日常思ったことも書くし、どっちもやるからやっぱり思ったことだったり、生活する中で感じたことが歌詞になったり演出の一部分になるっていうのはあると思いますね。

- この1年はどのように過ごしていきたいですか?

三浦大知 - ライブもして、制作もしっかりやっているので色々発表していきたいですね。

- 常に浮足立たないでいられる秘訣は?

三浦大知 - 浮足立つのが怖いんだと思います。自分は自分でいたいなという部分もあるし、自分が自分でいたから今注目してもらえてると思うから、そこで調子に乗って自分のキャパオーバーになって三浦大知らしさがなくなるのが怖いんだと思います。三浦大知らしさはコツコツやることだと思っているんです。

やっぱり流行りたくないんですよ。旬になりたくないというか、旬じゃなくなった時に流行り終わったよねって思われちゃうじゃないですか。でもそうじゃなくて、僕は長く歌いたい、少しでも長く歌っていたいという気持ちがあるので、そこなんだと思います。流行りものになっちゃうとブームが終わったら終わりだと思われちゃうし。そうじゃなくて常にいるっていうか、その感じで今までもやってきたから。物作りしてる人はどこかでそう思ってるんじゃないですかね。もちろん一発当てることの凄さってあると思うんですけど。僕の一番の理想は流行りすぎないっていうか(笑)、上手く言えないですけど、ちゃんと常に作り続ける。そういう風に浮足立たずにやれたらなってすごく思ってることですね。

- ありがとうございました。

Info

三浦大知

三浦大知 - HIT
2017-03-22
CD
01 Darkest Before Dawn
02 EXCITE
03 (RE)PLAY
04 Neon Dive
05 Body Kills
06 Darkroom
07 Can’t Stop Won’t Stop Loving You
08 Rise Up feat. SOIL&”PIMP”SESSIONS
09 Star
10 誰もがダンサー
11 Cry & Fight
12 Hang In There

http://avex.jp/daichi/

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