【インタビュー】ILL-BOSSTINOが語るライブの魅力 | 最小の単位で最大を目指す
THA BLUE HERBが、2023年10月18日に2本のDVDをリリースした。
最初の一本は、2022年末9月から10月にかけて行われたTHA BLUE HERB結成25周年ツアーの各地の模様を選りすぐり、セットリストに沿って編集した『YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL』だ。こちらは、ほぼ全編にわたって1MC1DJ編成。
もう一本は、2023年5月31日に行われたILL-BOSSTINOがソロ名義:tha BOSSで発表した2ndソロアルバム「IN THE NAME OF HIPHOP II」のリリースライブを収録した『続・ラッパーの一分』。アルバムにゲストとして招いたJEVA、SHINGO★西成、YOU THE ROCK★、ZORN、そしてMummy-D(from RHYMESTER)との感動的な共演も含め、一夜の熱狂を余すところなく封じ込めている。
一足先に両作を視聴させてもらったが、ツアーの積み重ねを収録した『YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL』と切れ味鋭い一夜のライブを記録した『続・ラッパーの一分』は、全く異なる魅力を持った作品だ。が、重厚なメッセージが込められた、同時に「聴かせてくれる」作品であるという点は共通している。この機会にさまざまなジャンルの音楽を飲み込みつつ、現在進行形のヒップホップを作り続けるILL-BOSSTINOの、そしてTHA BLUE HERBの確信に満ちたライブパフォーマンスを堪能してほしい。
さて、今回のILL-BOSSTINO(以下BOSS)へのインタビューでは「ライブ」をテーマに話を聞きつつ、リリースされた2作のDVDに込めた思い、そして制作の背景についてもうかがった。話題は、ライブの音響を司るPAエンジニアとの関係性、そしてBOSSが考えるヒップホップの本質などにも広がっている。じっくりご一読いただきたい。
取材・構成 : 吉田大
撮影 : 雨宮透貴
「RUN-DMCにはフィジカルの強さ、プロとしてのライブを見せつけられた」
- 今回は「ライブ」をテーマに話を聞いていこうと思います。早速ですが、初めて足を運んだのは、どなたのライブだったのでしょうか?
BOSS - 本当の意味で「初めて」ってことになると、確か中学校1年生の時だね。函館市民会館で観たアルフィーのコンサートだった。会場に着いてみたら、ちょっと信じられないぐらい音が大きくてさ。もちろんガキだったからってのもあるんだろうけど、もう耳を押さえるぐらいの大音量。とにかく音のデカさだけが印象に残ってるよ。
- 中高時代は多くのライブに足を運んだのでしょうか?
BOSS - 函館はライブが沢山見られる場所ではないから、ライブは音源やVHSで楽しむことが多かった。目の前でパフォーマンスをしているアーティストを沢山見られるようになったのは、札幌に出てからだね。それまで触れてきた音源や映像を通じて、少しはライブの良さってものを分かってるつもりになってたけど、やっぱり当の本人が目の前にいるって状況は魅力的だった。
- 札幌で見た中で印象に残っているライブはありますか?
BOSS - 本当に多くのアーティストを見たけど、キングムーで観たRUN-DMCのライブには大きな忘れがたい衝撃を受けた。というのも、それまで見たラッパーとは、発声、声量のレベルが全然違っていたんだ。彼らには、フィジカルの強さ、プロとしてのライブを見せつけられた。「到底こんなことできない」って感じたのを覚えてるよ。
- やはりHipHopアーティストを見ることが多かったですか?
BOSS - そんなことはないよ。ロックのアーティストもたくさん見てきたし、KANKAWA(※)さんというジャズ・オルガン奏者のライブにはガチ喰らいした。流行りの音楽とは少し違う場所にいる人だけど、とにかく格好良かった。トラウマ級にやられた。
※KANKAWA:a.k.a Blue Smith。70年代から2020年まで活動していた日本のジャズ・オルガン・プレイヤー。ハモンドオルガンの名手として知られ、The RootsのMalik B、DJ Kensei、ビル・ラズウェルともコラボレーションしている。
「初期のライブは、曖昧なコミュニケーションだった」
- 初めて人前でライブした時のことを覚えてますか?
BOSS - ラップってことで言えば、俺は始めるのが遅かった。確か22〜3歳の時だったと思う。GHETTOでO.N.Oがプレイするってことで、マイクを持たせてもらったのが最初だね。俺たちが、まだ「THA BLUE HERB」と名乗る前の時代の話。軽くフリースタイルしながら、ちょっと書いてたリリックを歌うくらいのノリだった。自分の思いをカマすこともできたし、とにかく楽しかったのを覚えてる。
- 初ライブから大成功だったんですね。
BOSS - まあ「普通にできた」くらいの感覚だよね。こう言っちゃなんだけど、ラップってそんなに難しいことじゃないからさ(笑)
- そんなことはないでしょう!
BOSS - いやいや。楽器と比べれば、すぐに出来ることなんだよ。ラップって本来そういうもので、誰だって出来るし、だからこそ誰でもやるべきだと思う。もちろん俺が今やっているクオリティのラップを明日できるかって問われれば、それはやっぱり線を引かざるを得ないけど。でも「入り口」っていうことであれば、今すぐできる。
- なるほど。そこから5〜6年に渡って、北海道で地道な音楽活動を続け、1999年5月に六本木COREで東京初公演を行っています。「節目」となるライブだったのでは?
BOSS - 「THA BLUE HERBの歴史」という視点から見るとそうかもね。「アンチ東京」と見られてた俺たちが、その東京に出てきてライブをカマした。それを観た東京の人たちは衝撃を受けた。一方、俺たちは色んな人と知り合うことが出来た。そこから始まったことは、確かに沢山ある。
- 後々まで語り草になる、いわゆる「伝説のライブ」となったわけですが、やはり「会心の出来」という感じでしたか?
BOSS - っていうかいつも札幌でやってることを、そのままやったら、俺たちのことを知らなかった人の間で評判になったってだけ。それまで見たことのないものを体験したら、そりゃ衝撃を受けるよね。
- 翌2000年7月には、まだヒップホップアーティストの出演が珍しかった『フジロック・フェスティバル』の大舞台に立っています。
BOSS - あれに関しても似たような感じだった。当時の俺は、フジロックがどんな場所なのか、どれぐらいの人数を相手にやるのか、正直よくわかってなかった。会場に足を踏み入れて初めて、「うわ!思ってたよりデカいじゃん!」って感じたのを覚えてるよ(笑)。当時はSNSどころか、インターネットも普及してなかった。だから俺は本当に何も知らない奴だった。今にして思えば、その「何も知らない」ということが、ある種の強さに繋がっていたんだと思う。 だからこそ、フジロックみたいな大舞台にも緊張せず、本当にいつも通りのライブをやることができた。
- フジロックでは、1MC1DJで観客を盛り上げて、話題をさらっています。フェスに出るにあたって、ライブの編成を変更しようとは考えませんでしたか?例えば、サイドMCやベースやギターを加えたり。
BOSS - 最初の時は確か後半にボーカルとパーカッションも入れてたような気がするな。でもそれも含めて本当にいつもと同じ態勢、選曲、同じ順番でやったよ。 そうしたら、やっぱり世の中から大きなリアクションがあった。「札幌で自分たちがやっていることは間違ってなかったんだ」と分かって本当に嬉しかった。
- 同時期になりますが、2000年9月に雨の代々木公園で行われた野外イベント「HAPPERS ALL STARS」への出演も印象に残っています。フジロックと並んで、ヒップホップシーンの外部からも評価を集めるようになるきっかけとなったライブだったのでは?
BOSS - あれはAudio Active(※)に誘われたんだ。あそこでも色んな人と知り合うことができたし、確かに「あの時に初めてTHA BLUE HERBを見た」っていう人も多いよね。まあでも、あの頃のライブは全部「ただ勢いでやってたな」って感じだね。
※Audio Active:1980年代に結成された日本のダブ〜レゲエユニット。2000年にBOSS THE MCをフィーチャーした名曲「スクリュードライマー/elements of rhyme」をリリースしている。
- Lamp Eye"証言"のビートで"RAGING BULL"をやっていましたよね。
BOSS - あれも札幌でのライブでいつもやってたことでさ。 東京で、俺たちを初めて見た人にとってはメモリアルな場面になったとは思う。
- 今のライブの方が圧倒的に質が高い。
BOSS - だね。 もちろん、初期衝動の中で無我夢中でやっていたからこそ、世の中から良い評判を得られることが出来たんだろうとは思ってる。そこは素直に「思い切ってやってみて良かったな」と感じてる。たださ、今の俺から言わせると「まだまだ若いよな」って感じ。
- そこから四半世紀ライブを続けてきました。ライブに対する向き合い方というところで、多くの変化があったのでは?
BOSS - 大きく変化してきているね。 20代の時に比べれば、例えば基礎体力だって変わってきてる。だからこそライブのために毎日体を鍛え、メンバーやスタッフとの連携の精度を高め続けている。一方、昔のライブは本当にノリだけでやっていた。思いつきで、やりたいようにやっていた。
- 常に真剣な態度でライブに臨んできた印象があります。
BOSS - もちろん俺たちは、いつでも全力でライブに取り組んできたよ。けどヒップホップって、根本的には「適当」って言ったら言葉が悪いけど、まあ「フリースタイル」が重要なんだよ。それはMCバトルみたいなことを言いたいわけではなく、もっと手前の話。その場の空気を自分の中に取り込んで、お客をうまく調整して、その場をまとめ上げると言うか。少なくとも俺は、そういう初期からあるマナーに忠実な形でやってきてる。そこに関しては今も変わらないんだけど、昔は大して練習もせずに、ただただフリースタイル的にやってた。加えて言うなら、俺たちが1stとか2ndを出した頃って、ライブをやるってだけでお客が入ったし、何か言えば盛り上がるような状況でもあった。ビギナーズラックみたいなものに後押しされてる側面も少なからずあったように思う。
- アンダーグラウンドヒップホップ、ひいてはTHA BLUE HERBのブームがありました。
BOSS - 「ブーム」かどうかは知らない。けど、そういう純粋な音楽以外の力で広がっていく雰囲気があったのは確かだと思う。当時の俺たちは、そういう勢いに乗っかって大いに楽しんでたし、面白い経験もたくさん出来た。だからそんな時代を否定するつもりもない。
- 現在のように計算された、つまり確信に満ちた表現ではなかった。
BOSS - そう。で、俺たちもキャリアを重ねていく中で「ノリだけじゃ駄目だ」って気付く。決定的な変化が訪れたのは、アルバムで言うと『LIFE STORY』(※)前後になるのかな。「もっとちゃんと音楽と、お客と向き合わなきゃ続けられない」と思うようになった。正直それまでやってたことに飽き始めてたし、「1MC1DJというスタイルって、もっと突き詰められるんじゃないか」と考えるようにもなっていった。ライブへの取り組み方が、大きく変化するきっかけだったね。
※『LIFE STORY』:THA BLUE HERBが2007年にリリースした3rdアルバム
「状況に合わせて、変化していくのが俺たちのライブ」
- 2022年秋から行ったTHA BLUE HERBの25周年ツアー、2023年夏に行ったソロツアーの手応えはいかがですか?
BOSS - 良い感じだったよ。どこでやってもバッチリだったし、どこのお客も最高だった。 とにかく楽しくやれたね。
- とりわけ25周年ツアーは、パンデミックの影響が大きかったのではないでしょうか?
BOSS - お客がマスクをするようになり、声を出せなくなったのは大きな出来事だった。「だったら(観客が)声を上げられないこの状況を踏まえての構成でやろう」と思って、本当に色んなことを試したね。そうやってライブを重ねていく中で、自然と(パンデミック下におけるライブの)スタイルが出来上がっていったように思う。でも考えてみれば、俺たちのライブって、いつだって変化してきているんだよ。時代だけでなく、その都度、その場に対応してきてる。だからある意味、いつものライブやツアーと何ら変わらなかったとも言えるよね。
- セットリストは全国共通だったのでしょうか。
BOSS - すべての会場で、同じセットリストでやった。なぜかというと、今回のツアーは「25周年」ってテーマにこだわって、ガッチリ構成を組んでいたから。 もちろん、それぞれの街と俺たちの間にはそれぞれの長い付き合いってものがあり、俺たちと名古屋、俺たちと広島、俺たちと北見では、経てきた関係や歴史が違っている。だから必然的にその場の雰囲気は大きく変わってくるけどね。
- どのようにライブの構成を決めたのでしょうか?
BOSS - DJ DYE(以下、DYE)と2人でスタジオに入って、一ヶ月くらいかけて、じっくり25年分の曲を再構築して行った。今回は全てオリジナルトラック。 インストにも基本的には手を加えてないというコンセプトだった。一番力を入れていたのは、やっぱり曲順だね。 ちょっと変えるだけで、曲自体の印象やライブ全体の空気が随分変わるんだよ。「曲順の妙」で、その夜を仕上げていくのは、今も昔も楽しい。 26年間にわたって、飽きることなくライブを続けられている大きな要因だと思ってる。
「最小の単位で最大を目指す」
- ライブへの向き合い方は大きく変化しつつも、1MC1DJというスタイルは変わりません。
BOSS - THA BLUE HERBに関して言えば、フィーチャリングなしの1MC1DJでしか成立しない表現だからね。他の形でやろうとは考えたこともない。そもそも俺がヒップホップを知った時から「MCとDJ」という形こそがヒップホップだった。俺は「最小の単位で最大の効果を目指す」という、そのスタイルが好きで忠実にやってきている。今だって「まだまだ1MC1DJで面白いことはできる」って思っているし、日々新しい発見があったりもする。「やり尽くした」とは全く思っていない。奥は深い。
- 1MC1DJというスタイルに確信を持っている。
BOSS - 厳密に言えば、今の俺たちのライブは基本「1MC1DJ1PA」で成り立ってる。 PAを担当する専属のエンジニアがいて、彼女が第3のメンバー。 ライブをやるに当たっては、その人の存在がものすごく大きい。さらにもう少し大きな会場になると、専属の照明の人が来る。それで基本の1個小隊。信頼してるPAと照明がいれば、あとは俺とDYEの1MC1DJで大丈夫。どこであろうと相手が誰であろうと余裕でヤバいライブができる。さっきも言ったけどバックを変えようとか、何か楽器を入れようとかは全く考えたことがない。
- 「1MC1DJ」と並列に「1PA」を置く姿勢は、ミキシングエンジニアの存在を重んじるダブに通じます。
BOSS - ダブに関しては俺の中でずっとある物だし、ダブの手法はライブでずっと取り入れてきてるよ。
- 衝撃を受けたダブエンジニアを教えてもらいたいです。
BOSS - もちろんKing TubbyとかLee Perryみたいな先達を上げないわけにいかない。彼らがいなかったら、ダブというユニークな手法は存在していないわけだからね。レコーディングの場面じゃなくて、ライブという場でダブという手法が有効なのかもしれないと気づいたのは、さっき話に出た初めてフジロックに出た時のことだった。当時の俺たちは、よくDry&Heavy(※)と仕事をしてたんだけど、そこでのウッチー(内田直之氏)との出会いは大きかったね。
※Dry&Heavy:日本のダブ〜レゲエユニット。メンバーだった内田直之はミキシング〜レコーディング・エンジニアを担当していた
- Dry&Heavyと共演する時は、内田さんがTHA BLUE HERBのPAを担当されることも多かったみたいですね。
BOSS - 当時の俺には、そもそもPAやダブエンジニアがライブでエフェクトを担当するという発想がなかった。だからキャリア初期の俺って、マイクに繋いだエフェクターを自分の足で踏んで、声を飛ばしていたんだよ。それはそれですごく面白かったんだけど、そこを全てウッチーに統括してやってもらう中で「こういうやり方もあるのか」って気付かされた感じだったね。
- 今回のDVD、とりわけ『YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL』中盤のパフォーマンスには、大胆なダブワイズが施されています。例えば、ビートを抜き差ししたり、音にエフェクトをかけたり。
BOSS - エフェクトは基本的に全てリアルタイムで、映像化にあたって追加したりということはもちろん一切していない。俺のヴォーカルに関してはPAが全て統括している。ビートに関してはDYE。PAとの打ち合わせはツアーの間、常にやっている。毎回リハーサルをやって、本番をやって、その後にライブでやったことを検証して、次の会場のリハーサルで試してる感じだね。その繰り返しで、常に精度を高めていってる。
- THA BLUE HERBのPAとしては、2代目に当たる方だと聞きました。
BOSS - 初代は、YMOとかサカナクションはじめビッグネームも数多く担当してる大ベテランの方だった。音響に限らず、ツアー全般のいろんな事をその人から学んだ。俺たちのために地方の小さなクラブにも来てくれていたんだけど、残念ながらスケジュールの調整が難しくなってきた。で、困っている時に手を挙げてくれたのが、今やってくれてる人なんだよ。すごくガッツのある女性でさ。俺のリリックを一言一句ノートに書き写してきて、全てを把握した上で、言葉を飛ばしてくれてる。それはもう半端じゃなく細かいところまで没頭してやってくれているんだ。今はもう彼女抜きではパフォーマンスのクオリティが維持できない状態だね。それは照明も同じ。今の俺たちは1MC1DJ1PA1照明のチームなんだよ。
- THA BLUE HERBがライブで「音を鳴らす」にあたって、最も重要視している事は?
BOSS - 歌詞を伝えることだね。ビートを統括してるDYEにしろ、PAさんにしろ、照明さんにしろ、俺のリリックをどう伝えるかっていうことのために仕事をしてくれている。曲順も何もかも、歌詞をお客さんに届けるために、チームとして一丸になって作ってる。
「ライブは消えていくもの。だからこそ残したい。」
- これまでに多くのライブDVDをリリースしています。どういうタイミングで制作しているのでしょうか。
BOSS - 「自分達が大きく変化していく直前」だよね。「俺たちの1つの時代を残しておきたい」っていう感覚が生まれて、それで作っているんだと思う。例えば、 東京で初めてやったライブ(※)は残しておきたかった。震災の後に東北でやったライブ(※)を残しておきたかった。 20周年の時に野音でやったライブ(※)も残しておきたかった。ライブって、本来はその場で消えていくものなんだよ。でも、だからこそ形にして残しておきたいとも思う。もちろん撮影してないけど、超良かったライブなんて山ほどあるし、そういうライブだってお客さんの心には残っているわけなんだけどね。
※東京で初めてやったライブ:2003年5月30日に1stVHS「)演武」としてリリース
※震災の後に東北でやったライブ:2013年8月14日にDVD『PRAYERS』としてリリース
※20周年の時に野音でやったライブ:2018年4月11日に DVD『20YEARS, PASSION & RAIN』としてリリース
- 今回リリースされたリキッドルームでのライブを収録した『続・ラッパーの一分』、そして25周年ツアーの模様を収録した『YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL』は、いつ頃から作ろうと考えていたのでしょうか。
BOSS - 『続・ラッパーの一分』は、ソロアルバムを作っている時から。『YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL』に関しては、ツアーを回っている時からだね。
- 『続・ラッパーの一分』には、各方面から絶賛の声が聞こえて来た、リキッドルームでの名演の熱気が封じ込められています。
BOSS - あれは「ワンナイトの中でどこまでできるか」をコンセプトにしてる。
- 逆に『YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL』は、およそ1ヶ月にわたるツアー全体を見渡せる構成です。
BOSS - 今回の25周年ツアーでは 11都市13公演をやった。我ながらヤバいと感じるライブもたくさんあった。その一夜だけで1本のDVDをつくることも出来たとは思う。でも、それじゃツアー全体は見えてこないよね。俺たちにとっては「ツアーの中で成長する」というのも重要なことでさ。 今回は沖縄からスタートしたんだけど、その時点でライブは完成していた。 でも、そこから公演を重ねていく中で、 PAや照明とも常に話し合いをして、ブラッシュアップを繰り返していたんだ。そういう段階を経て、最終的につかみ取ったものをDVDに記録しておきたかった。俺たち自身が楽しみながらライブを磨き上げていくプロセスを感じてくれたら嬉しいね。
- 今回リリースするDVDにはMCもしっかり収録されていますよね。
BOSS - MCもライブと同じで、本来はその場にいた人しか知り得ない、その場で終わる事なんだ。ただ、今回に関しては「25周年ツアー」ってテーマの中で喋っている。だから記録として残しておいてもいいかなと思った。話してる内容は、まだ俺の中で歌詞にすらなっていないようなこと。でも、そこにも何かあるんじゃないかと思ってるし、観た人が歌詞を超えた何かを感じてくれたら面白いなとも思ってる。
- ライブでのパフォーマンスが2時間半に及ぶことが増えています。今回リリースするDVDの収録時間も、ともに2時間半。今のTHA BLUE HERBを見せるにあたってベストなボリュームということでしょうか?
BOSS - 俺たちだって最初からライブを2時間半やるつもりはないんだよ。でも、お客さんが俺たちを本気にさせる。 今回入れたMCにしたって、喋らせてるのはお客さんだからね。周りから「2時間半のライブは凄いですね」ってよく言われる。「我ながら凄えな」って思う瞬間はある。でもさ、一番凄いのは、俺たちを使って、演奏させて、遊んでるお客さんたちなんだよ。それは 26年間ずっとそうだった。その間にはコロナも含めて本当に色んなことがあった。けど、全ての会場に俺たちを待ってくれている熱心なお客さんたちがいて、いつでも俺たちを良い感じに上げてくれた。その事実をこのDVDに残したかった。『YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL』というタイトルには、そういう思いが込められてる。
「目の前の山の頂上まで登ってはじめて、次に目指すべき場所が見えくる」
- BOSSさんは五十路に足を踏み入れました。この先、60代、70代になってもライブもやっていると思います?
BOSS - 今の見解だけど、やっていたいね。もちろん、これからもライブのあり方は大いに変わっていくと思う。その時の年齢と体力とお客さんとの関係性の中で、その時の最善を選んでやり続けると思う。
- 変わり続けることに躊躇がないですよね。
BOSS - そうありたい。 俺は事務所とかレコード会社に所属せず、全てを自分でやってきた。「どうやったらお客さんが楽しんでくれるかな」「どうやったら自分が退屈せずに自分の音楽と向き合えるかな」とかって考えながらそこに向かって変わり続けてきた結果が今なんだよ。「やってないことに挑戦したい」っていう気持ちは常にあって、幸運にも今のところ尽きる気配がない。かと言って、明確なロードマップみたいなものがあるわけでもなくてさ。アルバムの制作にしろ、ライブにしろ、ツアーにしろ、とにかく目の前の山の頂上まで登ってはじめて、次に目指すべき場所が見えてくる。この26年、その繰り返し。
- 最後に、今回リリースする2本のライブDVDをどんな人に見てほしいですか?
BOSS - まず最初に俺たちのライブにいた人たち。若いラッパーのライブを見てると、お客さんの大半がスマートフォンで映像を撮ってるよね。俺の好みじゃないけど、全否定はしない。それぞれの楽しみ方ってもんがあるだろうし、「そこにいたことを証明する何かが欲しい」って気持ちはわからなくもないからさ。でも、俺らのライブのお客さんって、本当に誰一人としてステージを撮ってない。彼らは後で見るとかそこにいた証明を残すとかってよりもライブという「今」にガチで向き合ってくれてる。だからこそ、そこも含めて、プロが撮影して、編集したあの夜を、その人たちに戻したい。もちろんTHA BLUE HERBを知らない人にも観てもらいたい。観れば、俺たちがすげえことやってるって、絶対わかるはずだから。俺たちみたいなのがいるって事を知ってもらいたい。そこはずっと変わらずだね。
Info
▼THA BLUE HERB「YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL」▼
アーティスト : THA BLUE HERB(ザ・ブルーハーブ)
タイトル : YOU MAKE US FEEL WE ARE REAL(ユー・メイク・アス・フィール・ウィー・アー・リアル)
(結成25周年TOUR 2022)
レーベル : THA BLUE HERB RECORDINGS
発売日 : 2023年10月18日(水)
フォーマット : DVD(片面2層、144分収録)
品番 : TBHR-DVD-010
税込価格 : ¥4,500(¥4,091+消費税)
バーコード : 4526180659679
購入店URLs : https://tbhr.lnk.to/youmakeusfeelwearereal
▼THA BLUE HERB「続・ラッパーの一分」▼
アーティスト : THA BLUE HERB(ザ・ブルーハーブ)
タイトル : 続・ラッパーの一分(ゾク・ラッパーノイチブン)
(tha BOSS「IN THE NAME OF HIPHOP II」RELEASE LIVE)
レーベル : THA BLUE HERB RECORDINGS
発売日 : 2023年10月18日(水)
フォーマット : DVD(片面2層、157分収録)
品番 : TBHR-DVD-011
税込価格 : ¥4,500(¥4,091+消費税)
バーコード : 4526180659686
購入店URLs : https://tbhr.lnk.to/zokurappernoichibun