【インタビュー】LANA × 7 | エロいとか可愛いだけじゃないギャル

LANAと7、いつかどこかで交わるだろうと思っていた新世代の2人によるコラボレーションが早くも実現した。しかも2曲で。2001年生まれの7の1stアルバム『7』に収録されたボーストチューン"Boss Bitch"にLANAとElle Teresaの2人が参加したリミックスが先週リリースされたかと思えば、LANAが20歳を迎える前の最新作『19.5』でも"WE WANT!!!"で共演が実現している。

アーティストとしての個性は異なる2人はどのように惹かれあっていったのか。まだ実際に会うのは3回目だというLANAと7に渡辺志保が話を訊いた。

取材・構成 : 渡辺志保

撮影 : Uran Sakaguchi

- 二人が初めて会ったのは?

7 - スタジオでしたね。

LANA - 1ヶ月くらい前ですよね?

7 - 同じイベントに出ていたこともあったんですけど、出番の時間が全然違っていたから会うことはなかったんですよね。

- 出会って短期間のうちに7さん名義の"Boss Bitch Remix"とLANAさん名義の"WE WANT!!!"の二曲でコラボしよう、ということになったんですね。お互いの第一印象はどうでしたか?

7 - ギャルやと思いましたね。

LANA - 初対面のとき、7ちゃんはピンクのジャージを着てましたよね…?

7 - そうだった!

LANA - それがちょっと意外でかわいいなって思いました。

- そもそも、"Boss Bitch"のリミックスを作ろうと思ったきっかけは?

7 - "Boss Bitch"を作った時から、(プロデューサーの)ZOT on the WAVEさんに「リミックスを作りたい」と相談していたんです。そのときにLANAちゃんとElle Teresaさんの名前を挙げたら繋いでくれて。もともと、「Boss Bitchといえば」と考えた時に、名前が出てきたのがLANAちゃんでした。ボス感があるなって。

あとは"Boss Bitch Remix"を作って、もっとフィメールラッパーたちを盛り上げたいという思いもあって。「全国にどんだけフィメールラッパーおんの?」みたいな感じを出したかった。それで、LANAちゃんとElle Teresaちゃんの二人に入ってもらったんです。二人ともそれぞれ違う感じだし、三人の色がよく出たリミックスに仕上がったんじゃないかと思います。他のラッパーの子たちにも、勝手にリミックスを作ってほしいですね。

LANA - 私は最初に、ZOTさんから「7ちゃんのEPが出るよ」っていう話を聞いていたんです。そこで、リード曲として発表される予定だった"Boss Bitch"を聴かせてもらった時に「うわ、私もやりてえ!」って思ったんです。インパクトもすごいし、7ちゃんのフロウで歌っているのがすごくかっこよかった。だから、話をもらった時は「もちろんです!」って即答しました。7ちゃんは曲もかっこいいんですけど、人柄に自分と近いものがあるんじゃないかって前から気になっていたんです。こうやって二曲も一緒にできて本当に嬉しいです。"Boss Bitch Remix"は、いい意味であまり考えず作りましたね。自分の曲だと言わないこととかも盛り込んで。7ちゃんの曲をお借りして言わせてもらった、って感じです。

- Remixでは最初の7さんのヴァースも録り直していますよね?

7 - 元々、録り直す予定ではあったんです。今回、フロウは(メンフィスのラッパーの)Project Patみたいな感じを出して、自分しか入れないようなワードを入れて、個性を出すことを意識して作っていきました。

- 7さんが思う「Boss Bitch」はどんな女性ですか?

7 - 強い女性、というイメージ。男の人の後ろに隠れてヘラヘラVIPとかで酒を飲んでいるような女性ではないです。

LANA - 的確だね。

7 - ちゃんと芯があるというか。自分を持っていて、やりたいことに向かってまっすぐ突き進む人ですかね。

- "Boss Bitch Remix"が完成した後に"WE WANT!!!"の制作に移った感じですか?

LANA - 二曲とも、ほぼ同時に作っていったんですよ。私もEPを制作するタイミングで、7ちゃんだけをフィーチャリング・アーティストとして呼びたいってチームに相談していたんです。

7 - 話をもらった時は「あつ!」と思って(笑)

LANA - "WE WANT!!!"は特に深くテーマを決めずに作った曲。ZOTさんが「7ちゃんと一緒にやる曲だったらこれだ」って二人に合うビートを作ってくれたんです。"Boss Bitch Remix"も出るので、違う感じは出したいと思っていましたね。

- "WE WANT!!!"のリリックには「上京Bitches」というフレーズもあって。

LANA - そうなんです。7ちゃんとは、ちょっと状況も似ているところがあるなと思って。私は昨年末に東京都内に引っ越してきて。

7 - 私は地元の和歌山から川崎に、去年の12月くらいに引っ越したんですよ。

- 他に、お互い似ているなと感じる部分はある?

LANA - 勝手に言わせてもらうんですけど、「女っぽさだけじゃない」っていうか、エロいとか可愛らしいだけじゃなく、「イケるよ!」ってエネルギーを持っている子なんじゃないかなと思っていました。私も、男性が多い環境で育ってきたし、7ちゃんもそうだったのかなって思うんです。だから「どんな子なんだろう?」ってずっと思ってましたね。

7 - 私は、LANAちゃんのことを「絶対ヤンキーやったろうな」って思ってましたね(笑)。男性が多い環境ってところもその通りだし、やっぱり似てるかもと感じる部分があるんですかね。

LANA - 多分、二人とも同じこと思ってたんですね(笑)。

- 逆に、お互いの”自分にはないキラキラした部分”ってどんなところがありますか?

7 - LANAちゃんの声じゃないですか?ハスキーな感じがめっちゃ好きだし、そこは私は持っていない部分なのでめっちゃ惹かれます。

LANA - やっぱりラップですね。私の頭の中には7ちゃんが使うような言葉のボキャブラリーがないので尊敬します。

- 先ほども7さんが「もっとフィメールラッパーを盛り上げたい」と仰っていましたが、現在の日本のヒップホップ・シーンにおいて自分の役割があるとしたら何だと思いますか?

7 - 難しいですけど、去年『ラップスタア誕生』で注目されてから、やっぱりこのまま止まりたくないなって思います。なので、走り続けて新しい世代のボスになりたいなとは思いますね。

LANA - 私は、「10代の女の子たちが生きやすい未来を」という気持ちを変わらず持ってます。今回のEPでも、みんなが言えないようなことをLANAが言う。それで、周りの人たちにも気がついてほしい、という想いがあるんです。あとは、LANAを通してヒップホップを聴く入り口になってもらえたらなとも思います。

- LANAさんは新たなEP『19.5』のリリースが控えています。ここ2年ほどの成長も目覚ましいですが、今回はどんなLANAが詰まっていますか?

LANA - 一年くらい前に作った曲もあるんですけど、今までの自分が詰まった作品ですね。みんなに寄り添えるような曲もいっぱい入っているし、ほぼギター一本で歌っている曲もある。「出したいけど、今じゃないよね」って温めていた曲もあるので、やっとみんなに聴いてもらうことができて嬉しいです。このEPが出て、世の中の風向きもちょっと変わったらいいなとも思うし、今年からはもっとこれまでとは違うLANAの色がどんどん出ていくと思います。

- 2024年のざっくりした動きはすでに決まっていますか?

7 - 今、まわっているツアーが終わったら制作をスタートする予定です。EPかアルバムのどちらになるか分からないんですけど、もうトピックは考えていて、今はビートを作ってもらっている段階ですね。

- 昨年の『ラップスタア誕生』を経て、経験値も上がってきたのでは?と思います。「ラッパーとしてレベルアップしたな」と感じることはありますか?

7 - 去年に比べたら確実にレベルアップしたと思うんですけど、実際、どこのレベルが上がってるんですかね?あまり自分では分からないんですけど、過去の作品より良いものを、ということは心がけています。

- LANAさんは、今後のヴィジョン見たいなものは見えていますか?

LANA - ちょっと変なことを言うんですけど、お騒がせ女になろうと思っていて。私、恋愛体質なんですよ。だから、そういうところもちゃんと表に出していこうと思っていて。そういうことばっかり考えています。うるさい女にならない程度に、うるさくしたいですね。

- LANAさんはもうすぐ二十歳を迎えるわけですが、今後、7さん&LANAさんが一緒にしたいことはありますか?

LANA - 成人したら、7ちゃんと一緒に「Madam Woo」に行きたいねって話してたんです。まだ行ったことないから。

7 - そうそう、一緒に行きましょう。LANAちゃんがお酒を飲んだらどうなるか分からないので、楽しみです。私は19歳の時が一番最低だったし、家も帰らんと仕事もしやんと、その日暮らしみたいな生活だったんです。今は今で焦りもあるけど、その頃と比べたら生活は変わったなと思いますね。「ちゃんとせな」と思うことも増えました。

- ちなみに将来、三十、四十代になってもラップしている自分を想像できますか?

7 - はい、ラップしていると思います。将来の自分のことは、結構想像できています。イカつい系のオバさんになりたいんですよ。和歌山にも家を建てて、地元の子達がみんな来れる場所を作りたい。

LANA - 私は逆かも。結構、いくところまで行ったら安室ちゃんみたいに引退したいんですよ。結婚して子供が欲しい。性格的に両立できないので、どれだけ綺麗に散ることが出来るかなって今から考えています。

Info

LANA - EP『19.5』

01. Almost 20
02. 24/7 YOU...
03. WE WANT!!! (feat.7)

04. 99
05. New Recording#31

06. For bbys

https://lnk.to/w72kbFWE

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