【インタビュー】BLYY 『東京無宿』| 続けないとなにも残らない

SIMI LABやPUNPEE、CreativeDrugStore、C.O.S.A.などが所属し、今や大人気ヒップホップレーベルとなったSUMMIT 。そんな中でも一際謎が深く、独特の存在感を放つヒップホップ・クルーが、AKIYAHEAD(アキヤヘッド)、alled(オールド)、CLAY(クレイ)、DMJ(ディムジェイ)、Dzlu(ディージーエルユー、DJ SHINJI(DJシンジ)によって構成されたBLYY(ブライ)である。目まぐるしく変化する日本のヒップホップシーンと適度な距離を保ち、独立独歩の足取りで活動を続けてきた彼らが、先日EP『東京無宿』をリリースした。

今回は、1stアルバム『Between man and time crYstaL poetrY is in motion.』のリリース時のインタビューから約3年ぶり。新作EPや、コロナ禍が徐々に明けた現在の彼らの活動などについて、SUMMITの代表でありBLYYのA&Rを務める増田岳哉氏にも同席していただいて、話を聞いた。(メンバーであるCLAYは今作には不参加のため、インタビューも5人で行っていることをご了承いただきたい)

取材・構成 : MINORI

撮影 : 横山純

- 前作『Between man and time crYstaL poetrY is in motion.のときは20周年だったので、今年で活動23年ですか。みなさんはどういう経緯でラップを始めたんですか?

AKIYAHEAD - 高校生パーティーの延長って感じでイベントをやってて、ちゃんとラップを始めたのは高校を出てからですね。渋谷のVuenosでちょっとでかいのをやろうって形でイベントを始めたのが、Dzluとさとし(alled)の2人。そのとき僕とたくや(DMJ)は別のグループでやってて。Vuenosが終わって、マダムカラスっていう池袋の小さいクラブでレギュラーのイベントを始めて、そのときに今のBLYYの形ができました。

- DJ SHINJIさんは2010年頃にメンバーになったんですよね。

Dzlu - 池袋のknot(当時の店名はCOLOR)って箱があって、そこで知り合ったんです。

DJ SHINJI - knotにDJをしに行ったら、さとしくん(alled)がDJやってて僕の好きな曲かけてて、話しかけたのがきっかけで仲良くなって。知り合って結構経ってから入った感じですね。

- アンダーグラウンドな活動を続けてきて、途中でSUMMITに入って、なにか変化などはありましたか?

Dzlu - 最初の作品を出してから前作のアルバムをリリースするまでに7年も空いちゃったんです。ライブはずっとやってきたんですけど。

AKIYAHEAD - やっぱり活動の根っこがライブだったんですよね。BEDの『MONSTER BOX』ってイベントに出てて、そこでSHINJIの膨大なレコードから毎回違うインストでライブをして。オリジナルトラックがないっていうのはやっぱり大変じゃないですか。そうやって今のBLYYの形が出来上がっていったのかなと。

alled - 当時は自分たちだけじゃなくて、制作環境的にちゃんとオリジナルの音源でライブをできる人なんて、本当に有名な人たちくらいだった。

- そういうライブが普通の形だったんですね。

Dzlu - ヒップホップって、元々有りものの音源、例えばアメリカのラッパーのインストを使ってライブをすることが多かったんです。

- ビートジャック的な感じってことですか?

Dzlu - そうそう。ビートジャックをずっとやってたんですよ。

alled - むしろそっちが普通だったんだよな。

- じゃあ今のヒップホップのライブはすごく形が変わりましたね。

alled - そうですね。俺も気づいたのはここ数年ですけど。我々からしたら逆にオリジナルトラックでやる方が難しい。

増田 - 今度リリパのときに、元のスタイルでやってみますか。というのも、最近わざと封印してもらってた部分もあったんです。自分はやっぱりCDとか配信音源をリリースしてて、新しい層の方たちがBLYYの音楽を聴いてライブに来てくれたときに、どの曲がどれなのかが分からなかったら家に帰って聴こうってなかなかなりにくいかな、と思って。「しばらくオリジナルトラックでやってみてくれませんか? 」って昔言ったことがあったんです。

- なるほど。それは今のシーンだったらなおさらそうですね。活動を長く続けてる上で、今みなさんが今どんな音楽を聴いてるのか気になって。何を聴いてるんですか?

alled - 自分はちょっと前まで本当にジャズしか聴かなかったんですけど、ここ2、3年は意識して新しいものを聴いてますね。Toosonっていう自分が一緒に作品を作ったビートメーカーとか、Ullahっていうその作品のジャケをデザインしてくれた方は現行のUSをずっと聴いてる人で、教えてもらってチェックしてます。A$AP RockyとかFutureとか聴きますね。リスニングしてるってよりは、リサーチしてる感じですね。踊ったりはしない、カンニングしてる。

alled - みんなレコードディガーなんで、新しいものというよりは、過去の音源を掘り起こしてるんじゃないですかね。とくにDzluとかは。

Dzlu - 最近は減りましたね。レコード屋に行くのも体力がいりますし。まず、あの体勢がもう腰に来ますし、最近は足が遠のいてます。

- 腰ですか(笑)。

alled - そういう理由(笑)。意外と分かる人いるかもな。 確かに、あんまり下には置かないで欲しいよね。

alled

- SHINJIさんは膨大な数のレコードをお持ちですが、今でもレコード屋さんには結構行かれるんですか?

DJ SHINJI - 元々よく行くわけでもなかったので、時間が空いたときに行ったりはします。あんまりレコードを買いに行ったりしてないんで。

alled - 買うだけじゃなくてもらったりもしてるし。前なんて箱1つ分くらいもらってて、もはや仕入れみたいな感じで。

DJ SHINJI - あれはなんか多く入荷しすぎて裁ききれないとかで、車で行って持って帰りましたね。

alled - 新潟の人があんまり米に困らないみたいな。自然に入ってくるんだろうね。

- DMJさんはどんなアーティストが好きなんですか?

DMJ - そうですねえ…。全然聴いてないんですよね、音楽を。

AKIYAHEAD - そんなわけないでしょ(笑)。

DMJ - まあ、レコーディングが最近多かったので、そのチェックが多かったですね。バージョンアップとかもしてると、ひたすらそれを聴いてることが多い。でも、未だに毎日ぐらい聴いてるのは、スタン・ゲッツ。

- スタン・ゲッツ…。

AKIYAHEAD - そうなんだ…。

Dzlu - ジャズの中でも相当渋い。

alled - 人生疲れてるんじゃない?スタン・ゲッツばっか聴いてるって結構心配するよ(笑)。

DMJ - 休みの日の朝はあれって決まってますね。

Dzlu - 初耳だよ、聴いたことなかった。

alled - 不思議な人ですからね。

DMJ - 家に電波もないんでね。

- 電波がないんですか。どういう…。

AKIYAHEAD - そこ触れますか(笑)。彼の家はスタジオなんで、今回のEP『東京無宿』も1曲以外全部そこでレコーディングして。

増田 - DMJさんがその環境を作ってなかったら、こんなに早く制作が進まなかったと思うんです。すごい貢献されてます。

- DMJさんは、なんでスタジオを作ろうと?

DMJ - 昔から曲作りには興味があったんですよ。レコードも「ここをサンプリングしたいな」って思いながら買ってたんです。でもどうやったらいいんやろうなって思ってて。きっかけとしては、2021年に開催予定だったAVALANCHEのツアーがなくなって。

増田 - ああ、そのキャンセルにあたっていただいた給付金をみんなにも分けたんですよ。

 - なるほど、給付金。

DMJ - それがきっかけでしたね。なんかやっぱり音楽で頂いたお金ってことで、有効に使いたいなって。Amazonとかでポチポチして、いろんな機材が届いて作っていったって感じです。壁にダンボール貼って、その上に吸音材貼って。

- すごい。じゃあDIY的な感じで作られたんですね。今回の作品はそこで出来上がったと。

DMJ - 最初はプリプロ感覚だったんですけど、いつのまにか本録になってましたね。

DMJ

- 『東京無宿』、聴かせていただきましたがめちゃくちゃかっこよかったです。先行シングルの"東京無宿"はSHINJIさんの初めて音源として使われたビートなんですよね。ビートはいつから作り始めたんですか?

DJ SHINJI - コロナ禍の少し前ですね。みんなでうちの実家にキャンプみたいな感じで集まって制作したことがあって。

- 前作『Between man and time crYstaL poetrY is in motion.』の制作時ですよね。

DJ SHINJI - そうですね。そのときに結構バーって作って、それをきっかけにその後も作り続けてて。だから"東京無宿"のビートも実際はコロナの少し前くらいに出来てたビートなんです。

- 長くDJもされてると思うんですけど、その時期になってビートを作り始めたのは?

DJ SHINJI - すげえくだらない理由で。もともと機材もあってちょこちょこ作ってたんですけど、データが一回飛んだんですよ。で、ネタとかも全部把握してたんでもう一回作り直そうと思ってやってもあんまり上手くいかなくて、完全に不貞腐れたっていう。で、ちょっとずつ遠のいて、たまに気が向いたら作るって感じだったんですよ。

- なるほど。そのキャンプをきっかけに、またビートメイキングを始めたと。ちなみに"東京無宿"のタイトルは、ビートができたときはなかったんですか?

Dzlu - そうですね。元々は、そのネタになってるジャズアーティストのイニシャルだったはずです。キース・ジャレットの"Death And The Flowers"って曲が元ネタで。

DJ SHINJI - 要はデータをセーブしないといけないので、タイトルをアーティストと曲名のイニシャルで「KJD」と付け替えて。

alled - "瞼"でも「KJD」って出てくるけど、それはこのことで。

- KJDってなんだろうと思ってました。そういうことなんですね。

Dzlu - "東京無宿"というタイトルは確か増田さんのアイディアなはず。

増田 - そうですね。BLYYの活動は東京がベースだと思うんですけど、今はSUMMITからリリースさせてもらってるけど、元々はいろんな方々と一緒に幅広く活動していて。独特のマイペースさっていうか、カテゴライズしづらい活動をしているなっていう印象があったんで、どこにも縛られないという意味での「宿なし」みたいな雰囲気がしっくりくるなと感じました。

alled - あの笛の音がそういう雰囲気にさせるよね。

- 確かにあのイントロとか、侍が刀抜いてそうな感じがしますよね。

増田 - 派手すぎないけど雰囲気あるよね。俺はBLYYにめっちゃ合うなと思ったんで、あのビートを聴いたときに、絶対やって欲しいってみんなに言って。

alled - 最初からずっと増田さんが推してましたよね。異様なほどに。

Dzlu - ちょっと俺らが引くぐらい。

増田 - 申し訳ないです。自分は好きですね。かっこいい。

AKIYAHEAD

- ビートもさることながら、リリックの表現とか言葉遣いにBLYYの独特の世界観があると思うんです。小説を読んでるみたいな、客観的な感じというか…。本とかよく読まれたりするんですか?

alled - 最近僕は日経新聞を毎日読んでますね。朝起きて最初に読むのが、日経新聞の「私の履歴書」っていうコーナー。あれ結構人選がおもしろくて、ファンの人多いんですよね。今月もやばいですよ。震えましたもん。元財務次官の武藤敏郎さん。

増田 - それは自分語り?

alled - そう、一ヶ月ごとに執筆者が変わるエッセイの連載。12月が倍賞千恵子さんだったんですよ。それでハマって。でもそれ読みだしたの最近なんで、あんまりリリックの糧にはなってないな。

増田 - でも活字好きですよね。

alled - 時間があったらもっと読みたいです。そういう意味ではちょっと難しい文章の方が気分が落ち着きますね。無心になれるっていうか。Dzluも読むんじゃない?

Dzlu - 俺はもう読まないよ。子供のときの方が読んでましたね。

alled - 中学生のときから、学校で顔隠してるくらい読んでましたよ。

Dzlu - スポーツ新聞じゃないそれ?

AKIYAHEAD - あれスポーツ新聞だったの?(笑)

-リリックはメンバーで見せ合うんですか?

alled - いや〜。ほとんどしない。

Dzlu - 触れないですよ。これなに言ってんのかなって思っても、もう付き合いが長すぎて聞けない。

AKIYAHEAD - リリースした後に「こういうことだったんだ」って分かるみたいな。

- それで言うと、PUNPEEさんがXで触れてた"東京無宿"でのalledさんの「氷の鳴く声maah maah」っていうバースはどういう意味なんですか?

alled - 「maah」はインドの昔の言葉で“月”ですね。どこで知ったのかな。「氷が鳴く」っていうのはウイスキー飲むとき、氷が溶けるときに音が鳴るじゃないですか。それで、月が出てるから、夜に一人で飲んでるみたいな情景です。

- いやあ、すごい、そういうことだったんですか。

増田 - 氷が鳴くってそういうことだったんですね。めちゃくちゃ詩的な表現。

AKIYAHEAD - 確かに「キィ」って音鳴ることある。

alled - もっと言うと、ロックで飲むから音が鳴るんですよ。ハイボールは鳴かないから。 で、ロックはみんなで飲まないでしょ。だから一人。

増田 - で、「疲れ果ててまた眠れ」なんですね。

- なるほど。すごい、全部のリリック解説してほしいくらいですね…。

alled - もう俺、今日これでいいんじゃないかな?アイツはこれだけ言って去っていった。みたいな感じで。

増田 - あれも自分聞いたんですよね 。「立ってるものが横になったら幸せからも目をそらすな」ってライン。

alled - あれは、例えば結婚したりとか、夢を諦めたりとか、本当の意味で落ち着くっていうんですか、そういう意味で横になってるとき。そういう時期を、「負け」だったり「終わり」だったりっていう表現でなく表してて。そういう状況も別に幸せというか、受け止めるってことですね。

増田 - そこがすごいいいと思いましたね。

alled - やっぱ今日もう帰ろうかな。

AKIYAHEAD - なんですぐ帰ろうとするんだよ(笑)。

alled - また来てそれだけ言って帰ったってことにしてくれないかな(笑) 基本的には、書いたときにはすごい意味を覚えてるんですけど、終わったら結構忘れてるんで。言われて「ああ、そういう意味だったな」って気づくんですよ。

Dzlu

- "東京無宿"はMVも世界観が印象的でした。タイトルから映像のイメージを着想したんですか?

増田 - そうですね。曲ができてから、堀田さんに、シンプルに『羅生門』とか『七人の侍』とかを送って。映像が滲んでるような、昔の日本の映画みたいなものを撮ってほしいって伝えて。あのビデオも2年前くらいに撮ったんですよね。

- そう考えるとリリースまでに結構時間がかかったんですね。映像では白い息が出てたり、雪が残ってたりして…。

Dzlu - 本当に過酷で。

- あとちょっと気になったのがMVに入った英語字幕なんですが、あれはどういうアイディアだったんですか?

増田 - 結構前にPUNPEEに、こんなん作ってんねんな。って見せたことがあって。「こういうのって海外の人が見たら独自性を感じそうだから英語の字幕あってもいいんじゃないですか」って意見をくれて。

alled - そうだったんだ。

Dzlu - 今回のアルバムに参加してもらってるイギリスのYoung EchoにもこのMVを送らせてもらって、かなり評判良かったんで。Manonmarsもツイートしてくれて。

増田 - さっきManonmarsからDM来た。ドープやったって。

Dzlu - 日本人よりも、もしかすると外国の人にウケそう。

- 今話にも出たYoung Echoとはどうやって共演することになったんですか?

Dzlu - 僕らの友達で、今作以前のBLYY関連作品のマスタリングをしてくれてるenaさんという方がいて。音響音楽をやってる人で今度のリリースパーティーも出てもらうんですけど、日本より海外の方が有名みたいな人で、Young Echoの人たちとも結構仲良くて。その人を通してお願いした感じですね。

Young Echoのコレクティブ名義でのアルバム『Young Echo』。このアルバムを聴いたことが、制作のオファーを出す大きなきっかけになったという。
 

- Manonmarsさんのバースは聴いてみてどうでしたか?

alled - やっぱり力の抜け方が違くて、こういうのできねえなって感じでしたね。クールだな、と。

Dzlu - 確かに、かなり力みがなかったですね。あんまり日本人であの感じ、ないですよね。

- 確かにそうですね。あとManonmarsさんの部分だけトラックの雰囲気が変わってたのも印象的でした。

alled - そうですね。元々そういう曲だったんですけど、こっちのアイディアでビートが変わってから入ってもらったほうがいいんじゃないかって言ったら、すぐ録ってくれましたね。しかも結構バースが長いんですよ。なかなか海外の客演であんなに長くラップしてくれるのも珍しい。

Dzlu - プロデュースしてくれたビートメーカーのO$VMV$Mは、日本国内の別のアーティストでFriday Night Plansっていう方がいて、その人のRemixアルバムが最近出たんですけど、そこにも一曲提供していて。Friday Night Plansもenaがプロデュースをしてるんですけど、メジャーのアーティストと俺らみたいなインディーで同じ時期に同じ海外のプロデューサーに頼んでるっていうのは結構おもしろいと思いました。

- 他にも印象的だったのが"膝栗毛"で。あのビートは新鮮で個人的に好きな曲でした。RamzaさんがプロデュースされててK-BOMBさんが客演で参加されているんですね。

Dzlu - K-BOMBさんは直接の知り合いではなかったんですが、隣町の先輩って感じでしたね。僕の実家の隣の駅がK-BOMBさんの実家だったんで。

- その後BEDで知り合われたんですね。一緒に曲を作るのは初めてですか?

Dzlu - そうですね。やってもらえると思ってなかったんで、光栄ですね。Ramzaさんは僕と増田さんで話してたときに頼むことになって。イベントで何度か会ったことはあったので、面識はありました。

- K-BOMBさんとRamzaさんのあの殺伐とした雰囲気もすごく合ってましたね。"どぶねずみ"に参加されているCOBA5000さんや、"瞼"をプロデュースされたdopeyさんもBEDからの知り合いですか?

Dzlu - COBA5000はもう23年くらいの付き合いですね。出会ったのが21くらいだったので。

AKIYAHEAD - BEDにたどり着く全然前のマダムカラスからの仲ですね。お互い大学生くらいだった。

Dzlu - dopeyは自分達の二十歳くらいからの友達のKING104ってラッパーがいて、彼に昔「隣町の後輩でビート作ってる」みたいに紹介されて。曲を聴かせてもらったらあまりにかっこいいから頼ませて頂いた感じですね。以前も一度一緒に作ったことはあるんですけど。

alled - 自分はソロの作品でも一緒に作ってますね。

DJ SHINJI

- 今までのBLYYの作品ではalledさんがメインでプロデュースをしていたり、客演もほぼ入れていなかったと思うのですが、今回はなぜ外部のラッパーやプロデューサーが参加することになったんですか?

alled - 単純に差が出るじゃないですか。今まで自分が作ってきただけに、他の人にお願いするだけで違うものが生まれる。別に自分のトラックなしでいこうって決めたわけではないんですけど、dopeyとか"どぶねずみ"をプロデュースしてるNaBTokとか、元から一緒にやりたい人で、あとはSHINJIが今回2曲やってるんで、単純に自分はやんなくていいじゃん、みたいな感じでしたね。

- 今までの作品との差を出すためっていうのもおもしろい考えですね。

alled - そうですね。逆にその方が前作も際立つと思ってて。ずるい考えですけどね。やらずして目立とうという(笑)。そういう魂胆です。

- 今までの作品とガラッと雰囲気が変わって新しい一面が見れた気がしますね。

alled - でも逆に自分が思ったのは、同じクルーのSHINJIのトラックは自分の作品と近いものがあるような気がして、そういうのがちょっと嬉しかったですね。クルー内の作品でちゃんとBLYYの音出してるなっていうのが。「瞑僧 」とか、もしかして俺が作ったと思ったりするかもって。

- それはめちゃくちゃおもしろいですね。一緒に活動する中で共通するものが生まれるんですかね。

alled - そう。DMJも曲作ってるんですけど、3人ともBLYYの色があると思ってて。だからかっこいいって言われると、普通に自分が作ったかのように嬉しいんですよ。作り方も似てるし影響しあってるんで、自然といい意味で似てる部分があるのが嬉しいです。

- プロデュース面の話で言うと、先程話に出てきたRamzaさんやYoung Echoのお二人や、前作までミキシングをされていたenaさんもそうなのですが、BLYYはもちろんヒップホップが根幹にありつつ、ベースミュージックとかダンスミュージックの要素ともうまく絡み合ってますよね。

alled - でも、本当は日本人でヒップホップをやってる人って、ここは本場のアメリカじゃないので、本当は“音楽が好きな人”がやってるはずなんですよ。その中でも特にラップとかヒップホップっぽいことを好きでやってるだけであって、だから自然と日本人がかっこいいヒップホップを作ることに真剣になってくると、どっか途中でアメリカのヒップホップに対して挫折感を味わうはずなんですよ。僕は味わってるんで。だからこそ追うし、自分なりのやり方を探そうと思うんです。でもやっぱりオリジナリティだけでもヒップホップじゃないと思うんで、そういう部分で、enaさんとかYoung Echoの人たちと共鳴しやすくなるんじゃないですか。

増田 - Ramzaくんとかもブラックミュージックがベースにはあると思うけど、アウトプットはまた違う形だったりするし。自分はBLYYも共通してるものを感じてて。地道に自分たちの音楽を追求してるけど、なんかドライな感じというか。歳を重ねていくと割とエモいことを歌ったりもしやすくなるし、自分はそれも好きなんですけど。さっきのリリックの話みたいに、自分も尊重してもらう分、他の人も尊重するっていうか、一人ひとりがある意味ドライで自立しているように感じますね。そういう部分がサウンドにも現れてて、例えば"精神の光"とか、ドラムとかベースがヒップホップだけど、聴いたときの印象としてはコズミックな音響感が強く残って不思議な感覚になるんですよね。"Papersoul"や、今作の"膝栗毛"とかもそうですけど、そういったサウンドはBLYYのシグネチャーなのかな。とか感じたりしています。

alled - やっぱり現地の人には勝てないですよ。思いっきり声出したときの声量とか。単純にフィジカルで圧倒的な違いがあるはずなんで。でもそれと同時に日本人の良さもあるはずなんで、そこを尊重すると、結局音楽だけじゃなくどの表現方法でも「日本人のやり方」っていうのは見えてくるんじゃないですか。でもアメリカのヒップホップにはめちゃくちゃ憧れますけどね。あれに近づきたいと思ってやってますよ。

増田 - さっきのさとしくん(alled)のリリックを紐解くと、気持ちはすごい熱いのに、アウトプットはすごいしれっとしてるというか。自分はそういう感じが好きなのかもしれない。人のことを尊重しようとしたら、究極放っといてあげられるっていうのも、愛情なのかなって思います。

- そのドライさは活動する上で大事なのかもしれないですね。BLYYの活動が長く続いている理由ってなんなんですかね?

Dzlu - みんな家が近いからじゃないですか。

alled - でもそれは確かに。

Dzlu - なんかやろうぜってなったらすぐ集まれるんで。

- でもメンバーの生活の変化とかモチベーションでも変わってくるんじゃないですか?例えば家族が出来たり。

AKIYAHEAD - 自分は子供が生まれたばっかりのときは2年くらいやってなかったですからね。ただそういうときも普通に飲み友達ではあるので、飲んでるときにいきなりケツ叩かれて、「それでいいのか」とか言われてまた始めて。まあ家族も100%理解してるわけじゃないけど、自分的にやっぱそこで止まらなくてよかったなっていうのは思う。

Dzlu - 俺らってある時期ドンって売れて、そこから浮き沈みがあるわけではなくて、こう20年ずっと平行線な感じで。逆にズドンと落ちたこともなくて。ただクオリティーを少しずつ上げてるだけで。

- それが一番難しそうではありますが。

Dzlu - でもお金のこととか、これで食おうとかも思ってないので。別に昼間の仕事は仕事で、音楽は好きなことをやるっていう。

- なるほど、生活の中に自然と音楽があるんですね。今の若いアーティストだと、音楽で飯を食いたいって人が多いですよね。

Dzlu - 分かりますけどね。可能性があるから。俺らのときは雲の上の話だったので。

alled - 変に人気があると、これ続くのかな?って思いますよね。怖いと思うんですよ。でもやり始めて、続けてるから今があって、続けないとなにも残らないってだけで。

AKIYAHEAD - ただ、ライブを絶対にかましたいっていうのはあって、そこをハズしたら落ち込みますね。でもそれで大金が欲しいとかじゃなくて、客が3人でも300人でも、絶対ぶちかましたいと思ってやってますね。

Dzlu - 今度やるリリースパーティーでは、増田さんの推薦でBYORAっていう僕らの20個ぐらい年下の子が出てくれるんですけど、そういうのもめちゃくちゃいいなと思って。俺たちのパーティーに20歳下の子にでてもらうっていうのが、今までなかったから。そういうのを今後もやっていけたらいいなって思いますね。

alled - 若い人は自然と新しいものを取り入れるじゃないですか。僕らくらいだと、少し頭を柔らかくして考えないといけないから、それが意外とおもしろくなってきてて。失敗しても痛くも痒くもないんで、結構前向きですね。

Info

BLYY - 『東京無宿』

https://summit.lnk.to/SMMT181

1. 東京無宿

Produced by DJ SHINJI

Lyrics by Dzlu, alled, DMJ, AKIYAHEAD

2. どぶねずみ feat. COBA5000 

Produced by NaBTok

Lyrics by alled, COBA5000, DMJ

3. 瞼

Produced by dopey

Lyrics by DMJ, Dzlu, alled

4. 膝栗毛 feat. K-BOMB

Produced by Ramza

Lyrics by alled, Dzlu, K-BOMB, AKIYAHEAD, DMJ 

5. 瞑僧

Produced by DJ SHINJI

Lyrics by AKIYAHEAD, Dzlu

6. 迎撃 feat. Manonmars

Produced by O$VMV$M

Lyrics by Dzlu, alled, Manonmars

All Recorded by DMJ @ 1on1 Studio

Except M-1 Recorded by Seiki Kitano @Bang On Recordings

Mixed by The Anticipation Illicit Tsuboi @ RDS Toritsudai

Mastered by Colin Leonard at SING Mastering, Atlanta, GA using SING Technology® (Patented). 

Artwork by JELLY FLASH

Photo by cherry chill will.

A&R : Takeya "takeyan" Masuda (SUMMIT, Inc.)

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