【インタビュー】LANA 『19』| 自分のために作った曲がみんなのためにもなってる

先月末にLANAが10代最後の年齢となる『19』を冠したEPをリリースした。昨年本格的なキャリアをスタートさせたばかりのLANAは、"PULL UP"や"TURN IT UP (feat. Candee & ZOT on the WAVE)"、"L7 Blues"といったトレンドのビートの上でティーンらしい素直な気持ちを歌ったシングル群がスマッシュヒットとなり同世代からの大きな支持を集めている。

待望の1st EPには上記の楽曲をはじめ、AwichとJP THE WAVYを迎えた"BASH BASH"やMaRIとの"Huh?"などLANAの勢いを示すアグレッシブな楽曲が並んでいる。デビューからのLANAの動向を見つめてきた渡辺志保が、EPについてを中心に、現在のLANAの心境に迫った。

取材・構成 : 渡辺志保

撮影 : Uran Sakaguchi

スタイリング : Peter Gunn Sho

ヘアメイク: Mari Enda

- 今、ちょうど初めてのクラブツアーもひと段落したところという感じですよね?

LANA - そうですね。ツアー中は、もう目まぐるしくて。一言で表せないですけど、とにかく楽しかったですね。

- 以前、取材させてもらった内容を読み返したら、初めてのライブは2022年7月だったと書いてあって。わずか一年にも満たない間に、こんな状況になるとLANAさん自身は想像していましたか?

LANA - 想像してなかったって言うと嘘にはなるし、自分では常に未来を思い描いて、「自分はすでにそういうところにいるんだ」って気持ちでやってきたんですけど、実際にステージに立ってたくさんの人が並んでいるのを見ると、もうびっくりっていうか、「うわー!」みたいな感じですね。

- 私も、ツアーのファイナルとして行われた渋谷のasiaでの東京公演に足を運んだんですけど、お客さんもみんなギャルで。

LANA - マジでギャルでしたね。

- しかも、みんなLANAさんのスタイルに合わせて髪の毛がピンクだったり、服装を似せた感じの子も多くて圧倒されました。asiaのステージでは、LANAちゃんの目からはどんな光景が見えていましたか?

LANA - ティーンに一番必要な、なんていうんだろうな、すごくキラキラした子たちの姿が沢山見れて、すっごく嬉しかったですね。asiaのライブはプチワンマンと銘打っていたんですけど、(デビューから)1年経ったわけですし、「こんなにやったらここまで来れるんだ」って実感しました。全然まだまだだけど、1年前の生活とは180度変わってるんです。自分に対して「頑張ったね~」って感極まって、ウルっとしました

- ツアーや、POP YOURSでの大舞台を経験して、自分でも成長したと感じることはありますか?

LANA - (パフォーマンスの)見せ方に関しては、自分でもすごく成長したなと感じています。こうした見せ方については、私ひとりのアイデアというよりも、一緒にやっているチームの人たちと、話し合っていますね。一人で決めないで、みんなの意見を聞くようにしています。

- パフォーマンスには、実姉のLiLiさんがダンサーとして参加していますよね。お姉さんの存在も大きい?

LANA - お姉ちゃんが全部やってくれるんですよ。私に振り付けをしてくれたり、アイデアもいっぱい貰ったりしているので。ご飯を食べている時も、「LANAのこういうところ、こうしたほうがいいんじゃない?」とか話し合うんです。

- "BASH BASH"のリリックでも「ゴールない未来に Bet with my team」という箇所があるじゃないですか。LANAさん自身が快進撃を続けているように見えるけど、あくまでチームと言う視点を大事にしている様子が伝わってきて、この表現が印象的だったんです。

LANA - そうですね。チームは、私の家族――お姉ちゃんとかお母さんもそうだしみんな、結構クレイジーなんですよ。それに、常にそれぞれ何か言い合っている感じ。みんな同じ目線というか、「私が」ってわけではなく、「みんなで頑張ろうね、みんなで進んでいこうね」って言いながらやっていますね。

Tops: HYSTERIC GLAMOUR
Bottoms(denim): HYSTERIC GLAMOUR
Bottoms(outside): VINTAGE by mu
Headpiece: Stylist’s Handmade
Necklace: Models’Own
Ring(L⇨R): Montdocco

- そして、やっと初めてのEPがリリースされました。

LANA - はい、マジでやっとです(笑)。

- EP『19』に関しても、チームと話し合いながら作っていった?

LANA - はい、本当にその通りで。もともと私は、失恋ソングを並べて、一つのお話しみたいなEPを作りたいっていう思いがあったんです。でも、皆で話して、「今やるべきこと」、「19歳の今しかできないもの」をやろうということになって。そうして出来上がったEPです。

- ストーリー重視というよりは、今の等身大のLANAさんを表している。

LANA - そうです。なんかこう、クソガキって感じですね。

- 改めて、タイトルの『19』に込めた意味を伺えますか?

LANA - 自分の中で、19歳って子供でも大人でもないっていうか、すごく大切な年齢なんです。だから『19』にしました。18歳から19歳になった時、結構あっさり19歳になっちゃったんですよ。このままだと、あっさり20歳になっちゃうと思ってるので、この一年を大切にするようにしてます。

- 19歳のうちにやっておきたいことってあります?

LANA - 体力がある限り、動き続けることというか、それだけに集中してますね。できることはやるし、掴めるものは絶対に掴んでいきたい。

- EPに参加しているゲストアーティストも豪華で、一曲目の"BASH BASH"には、AwichとJP THE WAVYの二人が参加しています。

LANA - 私の曲でやってほしいってことを二人にお伝えして、快く受けてくださったんです。そういう意味では、スムーズに制作できました。この曲は、「とにかく忙しいけど、仕事しながら遊んでいこう」っていうのが、一番のコンセプト。二人にもそれを伝えて、レコーディングしてもらったんです。正直、こうした曲が自分にできるかどうか不安なところもあったんです。でも、完成したものを聴いた瞬間に「あ、ヤバ」みたな。自分がLANAじゃなくても、これを聴いたら絶対かっけえと思うはず、という感じでした。

- Awichさんは"Bad Bitch 美学"でも共演していましたよね。ヒップホップ・シーンで活躍する女性の先輩として、彼女から教わったことやインスパイアされたことはありますか?

LANA - 私がちょっと疲れている時なんかも、「全然、話聞くからね」と声をかけてくれるんです。本人も、考えられないくらい疲れているし辛い思いもしていると思うんですけど。皆さんが「姐さん」って呼ぶ理由が分かるというか、アーティストとしてもそうですし、人として、女性として、さらにかっこいいと思いましたね。

- "Huh?"にはMaRIが参加していて、お互いかなり強めなヴァースをキックしていますよね。

LANA - MaRIちゃんは、シンプルに仲良い友達なんです。「思ったことは言う」っていう、MaRIちゃんの感性が好きすぎて、「一緒にやりたい」ってお願いして、実現したんです。これもまた強烈な一曲になりましたね。

- 「女性代表」みたいな看板を皆さんに背負わせるつもりはないんですけど、ヒップホップの現場って、どうしても男性の方が多くなりがちですよね。そうした環境下において、女性同士、手を取り合っていこうとか、サポートしあってこうみたいな、そういう雰囲気ってありますか?

LANA - めっちゃあると思います。言葉にしなくてもお互いに伝わっていると思うし、これからやろうとしてることとか考えてることって、多分みんな一緒なんだろうな、という感じがします。女性にしかできないことをすごく大事にしていると思うし、男性に媚びるタイプでもないですし。

- さっきも言った通りなんですけど、実際にLANAさんのライブには女の子がたくさん観に来ていた、ということがとても嬉しくて。ここに来ているみんなが、LANAさんから元気をもらっているんだなと思うと、ちょっと感動的でもありました。ライブでギャルが多かったというのが私の中でめちゃくちゃデカくて、LANAちゃんの言葉にティーンの女の子たちがリアルに元気を貰っているというあの熱さ、本当に鳥肌というか涙出そうだったんですよ。

LANA - 男性も聴いているから、一緒に女性も聴いている、ということではなくて、女性だけに向けた曲や、女性だけで盛り上がる曲は絶対に作りたいと思っていたんです。だから、それがやっと形にできたというか。

- 個人的に、ここ一年のLANAさんの活動を見ていて思うのが、ファンの方との距離感というか、オーディエンスのみんなも巻き込んで、ムーヴメントを作っているような感じがするんです。それは世代的なものもあると思うんですが、ご自身の中で、同世代の女の子に向けたメッセージを歌う、ということは大きなポイントですか?

LANA - そうですね。

- そうした内容を意識しながら歌詞を書いている?

LANA - 自分も19歳でティーンなので、自分のために作った曲が、そのままみんなのためにもなっているというか。私が抱えている感情は、たくさんの女の子が抱えているものと大差ないのかなって。そういうふうに作っていますね。実際、ファンの子たちはなんか私に似てるんですよ。すごく似てるから、お互いに絶対に間違いないっていうか。

- アーティストとファンの境界線がある意味、とてもシームレスなんですかね。

LANA - 私も、「手の届かない存在」みたいになりすぎないように、あえて素の状態ででみんなとお話ししてるんですよ。(ファンとは)お互いに助けられてるというか。例えば、私が元気ないこととか悩んでることをツイートすると、ファンの女の子たちが長文で「その気持ちわかるよ。だからLANAちゃんも大丈夫」みたいな言葉をくれるんですよね。そういうのが、すっごく励みになります。

- ビートやサウンド面についても教えてください。"Pull Up"ではいち早くジャージークラブ系のサウンドを乗りこなしていて、"L7 Blues"はバイレファンキ調のアグレッシヴなビートですよね。ビートへのアプローチは、どんなプロセスで決まっているんですか?

LANA - 「これやりたい、これやってみようよ」っていう。感覚的な人間なので、音聴いて「こんなんがいいんだけど、どう?」って言いながら作ってますね。

- いつも、どこからインスピレーションを得ていますか?

LANA - やっぱTikTokじゃないですか?TikTokで全然有名じゃないラッパーの人がいたらフォローしたり。YouYubeも、全然再生回数がない、「自分たちでやってんだろうな」みたいな、MVを観て、「かっこいいやん」と思ったら、そこからちょっとだけ調べる…みたいな感じです。曲作りに関しては、あんまり悩まないですね。

- 制作中、スランプに陥ることはあるんですか?

LANA - いや、今はまだ無いですね。だし、今は凄く変化な年なので、常に言いたいことが溜まっているんです。それを曲にするだけだから、今はまだ全然スランプとかはないです。今は目まぐるしく、毎日が変わっていく。もちろん、同じ一日は無いし、それをちゃんと(曲として)残しておくというか。"L7 Blues"は、大人と子供が自分の中で一番分かれている時期というか、子供だから思うことや、大人に言っても分からないだろうなっていう気持ちをすごく感じていた時に書いたので、結構スムーズにできました。

- 昨年、LANAさんがデビューされた頃には「LEXの妹」というフレーズが付いて回っていたと思うんです。この1年間、LEXさんとの関係性にも変化がありましたか?

LANA - このあいだ、初めて二人でご飯を食べに行ったんです。お兄ちゃんが(デビューして)最初の1、2年で経験した気持ちだったりを、LANAも今、経験してて。それを伝えて、「分かるよ」とか「そういう時はこういう風にしたら楽になるよ」とか、アドバイスをくれたんです。共感しあえたり、意見をくれたりして。なんかすごく大人な兄妹の関係性みたいな感じになってきています。

- LEXさんは、今のLANAさんの成長っぷりをどう見てるんですかね?

LANA - 「LANA、すごいよ~」みたいな(笑)。この間のプチワンマンの感想は、直接じゃなくてお母さん伝えに教えてくれたんですけど、「クラった〜」みたいなことを言ってたみたいです。お兄ちゃんとは、「幸せになろうね」みたいな言葉を掛け合って、一緒に頑張っていくという感じですね。

- 今後のヴィジョンというか、LANAとしての方向性みたいなものはどのように考えていますか?

LANA - 今って、人間的な意味でファンの子に向けたエールを歌う曲が多いんです。でも、もうちょっと時間が経ったら、恋愛などの面も歌って行きたいなと思っていて。そうした楽曲は、結構溜まってるんです。ただ、出すタイミングを見計らっている感じですね。今回のEPに入ってる曲たちって、みんなチームの人たちといる時に作った曲なので、何ていうか、元気な曲なんですよ。悲しい曲っていうか、ゆっくりしっとりした曲を作る時は、ひとりなので。でも、タイミングを見て絶対に出したいし、(ファンも)そこで更にLANAが分かる気がするんです。

- 今月は、SUMMER SONIC2023への出演も控えています。

LANA - サマソニのステージも、結構面白いことを考えています。あと、多分、めっちゃかっこよくなる気がしています。

- 日本中を飛び回って超多忙な日々だと思うんですが、今、プライべートな時間で一番、楽しみにしていることとかって何ですか?一番、心が落ち着く時間というか。

LANA - やっぱり、地元の友達といると良い意味で子供に戻れるみたいな感じですね。子供が居る子も多いので、ちっちゃい子に触れながら、その子たちの感性を勉強するっていうか。子供の方が、すごく綺麗な伝え方も持ってるし、察する力もすごい。そういうところが、私にとってリフレッシュの場ですね。

- 最後に、LANAさんのファンに向けたメッセージを一言いただけますか?

LANA - みんなで明るい未来を作っていこうね、ってことを、一番言いたいですね。

Info

2023/7/26 配信EP「19」

lnk.to/oA9Rsz

RELATED

LANAが年末から全国5都市のZEPPツアーを開催

先日主催イベント『Already 20 Live』をZepp Shinjukuで開催したばかりのLANAが、ライブ終盤に自身初となる『Zepp Tour 2024 "20"』をアナウンスした。

【インタビュー】5lack 『report』| やるべき事は自分で決める

5lackが今月6曲入りの新作『report』をリリースした。

【インタビュー】BES 『WILL OF STEEL』| 初期衝動を忘れずに

SCARSやSWANKY SWIPEのメンバーとしても知られ、常にアクティヴにヒップホップと向き合い、コンスタントに作品をリリースしてきたレジェンドラッパー、BES。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。