【インタビュー】山田ギャル神宮『刹那流想i』 | 良くも悪くも自分は普通の人間
ロン毛に鼻ピアスという迫力のある姿の男から「山田ギャル神宮」というツイッタラーだか2ちゃんのコテハンのような名前が飛び出した時、「えっ?」とひどく気が抜けたのを覚えている。「山田でもギャルでも神宮でも好きに呼んでください」。野球部出身だという彼が微笑混じりにそう答えたのは、パンデミック以降のSoundCloud出身アーティストが集う『Demonia』というイベントでのことだった。
その後の活躍は『ラップスタア誕生 2023』の視聴者であればご存知の通り、「SELECTION CYPHER」の彼の参加するグループBはYouTubeで80万回近く再生される話題作となり、惜しくもファイナリストに選ばれることはなかったが、視聴者投票では4位を記録した。キャッチーに歌い上げるオートチューンド・ボイスはチョけた名前以上の印象を残したのだ。
そして6月、『刹那流想i』というロック的な"キメ"を駆使し、独特な言葉遣い、あるいは中二病的な戯れに満ちたアルバムをリリースした。今回、彼がいかにして脚光を浴びるに至ったか、またはこれから先に見据える未来について──"アリアドネの糸"に導かれ"ラグナロク"を超えた山田の"レゾンデートル"──を、やはり野球少年だった頃の生真面目さを名残らせつつも語ってもらった。
俺、よくも悪くも「普通の人間」で
- たしかギャル君とは『Demonia』がまだRラウンジでやっていた頃、safmusicと一緒に会場の外で見かけたのが初めましてで。
山田ギャル神宮 - そうっすね、yo君(safmusicの旧名義)とコラボしたばっかの時。今日一緒に来てもらったHIGH-TONEさんはDENYEN都市とかも関わりがあって。
HIGH-TONE - 自分は一応、山田ギャル神宮のサポートみたいなことをしてます。
- なるほど、よろしくお願いします。まずは山田ギャル神宮として活動するに至る経緯から聞けたらなと。
山田ギャル神宮 - 自分のキャリアを思い返してみると、音楽を始めるために「山田ギャル神宮」って名前にしたんじゃなくて、俺、コロナで暇すぎてTikTokやろうっていうのでこの名義を作ったんですよ。「目立ちたい」じゃないですけど、当時すっげえ奇抜な格好していてファッションも好きやったんで自分のスタイリングを載せたり、野球部で坊主やったから昔と今の比較動画作ったりとかして(笑)。その時から逆張りやったんで流行りの音源使わずに自分の好きなアーティストを選んでたんですけど、TikTokで3000人近く、インスタも1000人近くフォロワーがおって。音楽始める時もちょっとした土台があった感じですね。
- それから音楽を始めたきっかけは?
山田ギャル神宮 - コロナの給付金で10万円支給されたんで、パソコンは持ってたし他の機材揃えたら音楽やれるなっていうのが最初です。当時からヒップホップは好きやったし。
- TikTokも含め、なんらかを発信してみたいという思いがあった?
山田ギャル神宮 - 大学で東京に出てきてから話合う人が一切いなくて。それなりに人付き合いはしてたんですけど趣味の合う友達もおらんし、表面上って感じで、浮いちゃってたんですよ。だから大学の外部の友達がほしいなと思ってこの名義の活動を始めたフシがあるっすね。ライブとかも一人で行ってたし、正直寂しかった。最初の動機はホントに誰かに見られたいっていうか、チヤホヤされたいっていうか(笑)。
- ギャル君は石川県出身ですが、地元には気の合う友達がいたんですか?
山田ギャル神宮 - 自分含めて5人ぐらいの友達のグループがあるんですけど、そいつらとずっと一緒におるって感じっすね。自分が高校3年生の時に母親がガンになって、ステージ4やったんですよ。で、一緒におる友達にだいぶ救われた。もう家族っていうくらいに自分は思っていて。石川から離れる時もキツかったし、東京おる間も1ヶ月に1回くらいは帰るくらい、今でもよく遊ぶメンバーです。だから、対比するもんやないけど、大学での表面的な付き合いと比べると、本当心のめっちゃ奥で繋がっとる友達ですね。こういう人らがおったからこそ、大学の外に同じ趣味とか似た思考の人らを求めたんかな。
- ちなみに今は大学は?
山田ギャル神宮 - 今5年生っす。
- (笑)。アーティストとしては順調な中、大学を辞めようとは思わなかったですか?
山田ギャル神宮 - やっぱ親にお金も出してもらったし、卒業はしないとなって。母からも、石川県の閉鎖的なコミュニティにおるよりヨソを見たほうがいい、それで結局地元が好きなら帰ってくればいい、とりあえず一回出ていけって、遺言でもあるので……留年してて顔向けできないっすけど(笑)、秋にはちゃんと卒業します。
- ひとまず話を戻して、コロナ禍をきっかけに始めた音楽活動について伺いたいです。当初の主な活動場所はSoundCloudですよね。
山田ギャル神宮 - そうですね。中高生の頃にEDMが好きでめっちゃ聞いとったんですけど、高1の同じクラスに自分よりもっとディグっとるやつがおって、「サンクラってアプリにEDMのマッシュアップがめっちゃ転がっとるから絶対入れた方がいいよ」って言われて。そっからEDM熱が冷めてヒップホップにハマった時期が来て。釈迦坊主さんとGokou KuytくんがYouTubeに出てきて、これどこで聞けるんやろと思ったら、またサンクラで。戻ったんですよね。サンクラ垂れ流しにしとったら全然自分のライクしてないやつも流れてくるじゃないですか。それでサンクラのアーティストも知るようになりました。
- 最初に出たライブは『Demonia』ですか?
山田ギャル神宮 - いや。友達の客演でステージあがったのが一番最初ですけど、自分がひとりでブッキングされたのは埼玉のヒソミネっていうライブハウスですね。とりあえず若手がめっちゃブッキングされるところで、いわゆるヒップホップの箱って感じじゃなくて。ミュージックバーみたいなところで。
- どのように声がかかったんですか?
山田ギャル神宮 - TwitterのDMで依頼がきて、「出ます!」って舞い上がって。それが2021年の最初の方です。次のライブがUNDERBARの『Re:raise』っていうイベントで、それからEBISU BATICAとか。それこそHIGH-TONEさんが繋げてくれたりして。
- 勝手ながら、SoundCloud上のhyperpop/digicoreシーンから出てきたのかと思っていました。当初からフィジカルな活動が多かったんですね。
山田ギャル神宮 - やっぱhyperpopって言われることあるっすけど、それだけじゃないんで。『Demonia』はもちろん居心地いいし自分のステージを上げてくれた大事な場所ですけど、なんていうか、俺はみんなほど尖ってないっていうか……俺、よくも悪くも普通の人間で。
- ええ(笑)。
山田ギャル神宮 - むしろそれでいいって自分では思ってるんですけど。トラック作ったりミックスやったりっていうのは俺わかんないし、耳も普通なんですよね。いい音かどうかってわかんない。そこが違うんかなって。
- たしかに『Demonia』ではサウンドに対するこだわりの強いアーティストが多い印象はあります。ナードとしての姿勢がそのまま音に反映されているような。
山田ギャル神宮 - でもそれこそ、主催のfogsettingsとかは『Demonia』に出る前からTwitterで知り合って喋っとって、意気投合したんですよ。アニメとかボカロとかサンクラが好きっていうルーツは近いのかなと思うし。lilbesh ramkoも、音楽だけ聞いたら俺の想像の範疇に収まらん、とんでもないとこにおる感じがするけど、話してみたらお互い『日常』が好きで盛り上がったんすよね。自分がオタクかって言ったらもっとオタクがおるんでわかんなくなるっすけど、アニメが繋げてくれたところは結構あるのかなって。
- それこそ、名義のギャルの部分は「自分が根暗だから」ということですよね。
山田ギャル神宮 - 二次元のギャル、めっちゃいいなって。
- ネットのハンドルネーム感めっちゃありますよね。
山田ギャル神宮 - そうっすね(笑)。やっぱ自分がオタクやからつけたフシはあるっすね。
ロックとヒップホップとリトルトゥース
- あらためてギャル君のルーツについて伺っていきたいです。
山田ギャル神宮 - 自分やっぱロックがでかくて、マキシマム ザ ホルモンとか、RADWIMPSとか。野田洋次郎の使う日本語がめちゃめちゃ好きで、いい意味で回りくどくて気持ち悪い、けど艶っぽい感じの歌詞に影響されてる部分があります。だからルーツっていうとRADWIMPSが大きいっすね。
- 初めて聴いたのはいつですか?
山田ギャル神宮 - たしか中学校の頃、友達の家で「これ聞いてみて」って言われたのが"有心論"だったかな、めっちゃ食らって。当時は歌詞も正直理解できん部分もあったと思うんですけど、年重ねていくにつれて自分でも解釈できるようになってきたし、今もずっと聞いています。
- ヒップホップはいつから聞くように?
山田ギャル神宮 - 一番初めは『高校生ラップ選手権』ですね。自分が中学1年か2年の時、先輩がYouTube見せてきて、それが高ラのT-Pablowと誰かの試合やって。うわすげーってなって自分でも見るようになった。それから自分でも動画を探したり、さっき話した地元の5人組の奴らとパソコンでバトル見たりしとったんですけど、その友達のひとりがスケーターの人と仲良くなって、そこ経由で「tofubeatsがヤバい」とか「唾奇がヤバい」とか教えてもらったんですよ。高校2年生くらいで。そこから自分でもヒップホップの音源を探すようになって、YouTubeのおすすめに釈迦坊主さんとかGokou Kuytくんが出てきて、っていう感じですね。
- 自身での音楽活動を始める際にも、サンクララップを参照した?
山田ギャル神宮 - 音楽始める時はKuytくんのキャッチーな感じとナードっぽい感じが自分と通づるものがあって……キャッチーやけどちょっと薄暗い感じ、イナタい感じっすね。釈迦さんはめっちゃ食らったっすけど、自分は普通人間なんで真似できないなって。だからRoko Tenseiとかのかわいい感じのタイプビートを使ってたんです。それから、sic(boy)が自分の中でバーンと来た時に、俺のバックグラウンドと重なったんですよね。それでポップパンク系のビートで歌ってみたらいい感じにマッチして、今の方向性になっていったっす。
- その方向性での最初のヒット作が"My Story"ですね。
山田ギャル神宮 - その辺りですね。
- それこそ、初めて『Demonia』でギャル君のライブを見た時、"My Story"がほとんどアンセム化して大合唱になっていたのを覚えています。
山田ギャル神宮 - 作った時は「これあんまかな?」ってizolmaに聞かせたんすよ。そしたら「めっちゃいいやん、これリリースした方がいいよ」って言われて、いざサンクラに出したら一気に聞かれるようになって。シドくん(sic(boy))が"Hype's"でハネてストリーミングに行ってから、サンクラシーンでミクスチャー系誰がやるんっていう中で"My Story"が噛み合ったんかなって。
- こうして着実にリスナーを増やした後に『ラップスタア誕生2023』に出場されましたが、そもそもどういった経緯で出ることに?
山田ギャル神宮 - いつか出たいなとは思ってたんですけど、前回までオートチューンが使えなかったんですよ。自分のオートチューンがかかった声が超好きで、使えんのならいいかなって思ってたところ、今回から使用可能になって。それやったら出るわって。"Crayon"に使われたZOT on the WAVEさんのビートも前回から出てきとったんで、今回も自分がノリやすいビートあるやろうなって思って聞いてみたら、やっぱりメロ系でも攻められるなってことがわかって。通過するところまで見えていたからエントリーしたっすね。
- 反響も大きかったですよね。「SELECTION CYPHER」後の視聴者投票では30名中4位という好成績でした。
山田ギャル神宮 - これまで結構ライブもさせてもらってきて場慣れしとるし、こんな見た目やし映像的にも映えるやろなと。自信はありました。でもやっぱ反響が自分の想像超えてきましたね。サイファー動画が出てからのフォロワーの数字がエグくて、1ヶ月で5000人くらい伸びたんで、そんな行くんやとは思ったっすね。Spotifyの月間リスナーもそこで跳ね上がって。
- 審査員だったR指定との対談も公開されていますが、リトルトゥース(お笑いコンビ・オードリーのオールナイトニッポンのリスナーの通称)の話題もありました。
山田ギャル神宮 - そうっすね(笑)。俺、大学で昼夜逆転してて「明日一限なのにヤバい寝れん」ってなった時に、入眠用に1時間くらいあるオードリーの漫才をぶわーっと繋げただけのやつとか聞いたりとかしてて。Kuytくんもオードリーが好きなんすけど、ラジオがめっちゃ面白いって言っとったから聞いてみたらハマっちゃって。で、ラップスタアの時のリリックにラジオネタを入れたのは、R指定さんならわかると思ってたところはあるっすね(笑)。抽象的な歌詞も好きなんですけど、やりすぎるとボヤけちゃうっていうか、クスッと笑えるネタを入れることで、自分の人間としてのエッセンスが明瞭になるじゃないですけど、キャラクターがわかってもらえるかなって。
「月に触れる(ファーカレス)」はヤバい
- 『ラップスタア誕生』の終了後、6月にデビューアルバム『刹那流想i』がリリースされました。これ、「セツナルソウアイ」……読み方はどのように?
HIGH-TONE - (笑)。
山田ギャル神宮 - 「セツナルオモイ」って読みます(笑)。
- なるほど!
山田ギャル神宮 - 自分は刹那主義っていうやつやなって思っていて、音楽もその時のノリとかテンションでやっちゃう癖があって。そんな自分の刹那的な思いを込めたアルバムやし、それこそが自分だっていうので"刹那流想i"。そもそも自分がTwitterで造語をつくっていて……。
HIGH-TONE - いや、こっち見るな(笑)。じゃあちゃんと説明すると、山田とizolmaとバックDJのLeisuっていう3人が中二病みたいな造語がめっちゃ好きで。ふとタイムラインを見た時に、アニメの魔法の言葉だか必殺技だかの名前がどんどん出てくる「刹那i」っていうアカウントを発見して。これ何だと思ったら、こいつが「僕です」って。
山田ギャル神宮 - リリックノートじゃないですけど、自分の中二病エッセンスを残す場を作ろうと思って。『メイドインアビス』ってアニメで「月に触れる」と書いて「ファーカレス」と読ませる物体があるんですけど、ヤバすぎるじゃないですか。そういうのを全部メモ代わりに書いていて。
HIGH-TONE - で、ちょっと脱線しちゃうんですけど、自分が今EBISU BATICAのブッキングとかいろいろやってるもんで、仲がいいのに一緒のイベントに出られないような奴らを集めて、カルチャーの垣根とか壁とかそういうめんどくさいものを取っ払った緩いイベントを開催しようってなった時に「これでいいじゃん」ってこの中二ワードを使ったんですよ。『刹那iゴッドフェス』っていう名前で。
山田ギャル神宮 - 勝手に使われました。
- (笑)。
山田ギャル神宮 - それで「刹那i」が使われちゃって、アルバムタイトルと被っちゃうから変えなきゃなと。「切なる思い」っていうワードが自分の中にあったんで、「切なる」は「刹那流」に、「思」は木に目に心でカッコいい方の「想」。その時々の感情が自分を作っているという意味を込めて「i」をつけて"刹那流想i"っていう。文字で「めっちゃカッコいいやん!」って決まりました。
- こういう中二病的な当て字って、なんでしょう……どこまでネタなんでしょう?
山田ギャル神宮 - え、ネタ?
HIGH-TONE - (爆笑)。
山田ギャル神宮 - 本気っすね。本気でカッコいいと思ってるっす。
HIGH-TONE - 山田と一緒に歩いてると、いきなり「血潮と鮮血、やばいっす」とか言い始めることがあって。意味わかんないじゃないですか。何がやばいのかもわかんない。「鮮血もやばいけど血潮の方がなんたらかんたら……」って。日常的にそういうことがある。「烏」とかさ。
山田ギャル神宮 - 「烏」、カッコいいっすね。
HIGH-TONE - 字がカッコいいらしいです。
山田ギャル神宮 - 日本語大好きやし、普段からカッコいい言葉探しちゃうっすね。
HIGH-TONE - 自分は最近、山田とizolmaとLeisuの4人で動くことが多いんですけど、あいつらが同類なんですよ。確実に2人が助長してる。izolmaも「575ってヤバくないすか、俳句ってフリースタイルじゃん」みたいなことを言っていたりして。
- (笑)。
山田ギャル神宮 - 地元の友達といたころはそういう会話ってなかったっすけど、やっぱizolmaとLeisuと一緒にいて内側にあった感性が表に出てきた感じがありますね。
- アルバムでも独特な言葉遣いが随所に見られますね。"THE BLADE is ME"でも「暗、憂いwith ME」と、"AfterBurner"でも「白蓮の花弁 白ゆえの翳り」など、一見難しいけれど意味は伝わるような。
山田ギャル神宮 - ストレートに言っちゃうより中二病的な伝え方の方がいろんな含みをもたせられるのかなと思います。自分の中ではひとつの答えがあるっすけど、それよりもっと大きな余白ができるというか。俺はそれを洋次郎にされてめっちゃ食らっとった人間だから、俺もそれをしたい(笑)。
- なるほど。今作はジャケットも不気味さがあって、解釈の幅がありそうです。
山田ギャル神宮 - ファーストアルバムだし気合入ったジャケにしたいなと。「NULL」っていうブランドが俺めちゃめちゃ好きで、そこのグラフィックやデザインを担当しているnyuってやつの作品を見た時に超食らったんで頼みました。テーマとしては「刹那」、瞬間の連続というのをイメージしていて、連続しとるもの……たとえば背骨とか、そういうイメージをメカニックな感じで表現してもらいました。「NULL」で自分のグッズとかも一緒に出したいなって。
- 刹那的な思い、というのは歌詞にあらわれていますよね。二曲目の"人間"などは『ラップスタア誕生』で不特定多数のリスナーからあれこれ言われた経験が反映されているんじゃないかと。それこそアンチに対するアンチテーゼのような。
山田ギャル神宮 - 俺Twitterやってるっすけど、もう正直見たくなくて。辞めたいんすよ。誰かの粗探しでしかないじゃないですか。もちろん面白いツイートとか他のアーティストの情報とかあったりするんすけど、心荒むようなやつばっか流れてくるし、「別にええやん」みたいな、なんでみんな人傷つけたがるんやろ……と、言っておきながら、自分もやっぱ気になってエゴサしちゃうんすよね。ラップスタアに出て自分がその対象になって、嬉しいコメントよりもアンチみたいなやつの方が目についちゃう。この思いをどう消化するかっていったら、やっぱ曲しかないんで。アンチへの反論をTwitterで呟いたらもったいない、ツイートするくらいなら歌詞に書いた方がいい、それがアーティストやしラッパーやと思うから、曲にしたっすね。
- "人間"はじめポップパンクやオルタナロック的な曲調がありつつ、アルバムの中にはデジタルなエレクトロ系のビートもあり、かわるがわるテンションが変わっていきますね。
山田ギャル神宮 - 音楽聴くのも作るのも、フェーズごとにいろんなジャンルに興味持っちゃうんすよね。だから一個のアルバムにするとなると、テーマとしてまとまっていないこと自体をテーマにするしかない。それこそ「刹那」なんです。自分の中ではロックが主軸ではあると思っているけど、変化球的なやつもいけるし、どっちにも重心をおける。一つのことを突き詰めるのもめちゃめちゃかっこいいけど、その時々の感情に合わせて曲を作れる、いろんな表現ができるというのが自分の強みなのかなっていうのはありますね。
- ビートに合わせて刹那的な思いを吐き出していく、というのがテーマになっているんですね。
山田ギャル神宮 - やっぱりリリックが他のラッパーと差別化できるポイントかなって思っていて。耳が普通だって言いましたけど、そっち方面で突き詰めるよりは歌詞で勝負したい。中二病のエッセンスもそうっすけど、歌詞に深みをもたせて簡単には解釈できないっていう、いろんな役割を担ってる節はあるっすね。
- たとえばですけど、メディアが「中二病ラッパーの山田ギャル神宮です」って紹介するようになったら、どうですか?
山田ギャル神宮 - ええ、それはどうなんだろう。
HIGH-TONE - 無理だろ(笑)。
山田ギャル神宮 - そうなんすよね、喋った感じも中二っぽくなくないすか。
- 初対面の時から思っていましたが、めっちゃ好青年(笑)。
山田ギャル神宮 - ですよね。
- でも、これだけ社交的な人でも中二病なんだっていう、逆に好感みたいなところはあるかもしれないです。
山田ギャル神宮 - そうなんすかね(笑)。野球部やったんで、板についちゃってるんすよね。自分ひとりでものを考えている時は中二なんすけど。
縛られずにできたらカッコいいよな
- 『ラップスタア誕生』、ファーストアルバムときて今後が期待されますが、これからの目標は?
山田ギャル神宮 - 最近になってようやっとライブ用の音源を作り直したりとかしていて、ライブの質をもうちょい上げたいなと思ってて。自分、歌う時に喉を締めて歌うんでライブの途中には声枯れちゃって、"My Story"とかガスガスの声で歌っとるのやめたいなって(笑)。ボイトレにも行きたいですね。
- ライブを強化していきたいと。
山田ギャル神宮 - 中野サンプラザでライブやってみたいんすよ。『たりないふたり』の聖地だから、Kuytくんとふたりで出たいなって。
HIGH-TONE - 閉まったよ。
山田ギャル神宮 - えっ。
- 中野サンプラザは6月末でクローズしましたね。
山田ギャル神宮 - えっ、マジっすか。Kuytくんと出たかった。
HIGH-TONE - 前話したじゃん。
山田ギャル神宮 - 絶対俺じゃないっす。
HIGH-TONE - いや、おまえが『たりないふたり』の話を俺にしたんだよ(笑)。だから閉まるよって。
山田ギャル神宮 - えー……じゃあ別のところっすね。東京ドームかも。
- いずれにせよリトルトゥースとして後を追いたいと(笑)。
HIGH-TONE - 前座とか。
山田ギャル神宮 - マジっすか、それやりたいっす。将来の夢かもしれないっすね。とりあえず認知してもらいたいっすね。でも、とにかくライブの質をあげるっていうのが今一番の目標っすね。
- リリパも目前に迫っていますね。
山田ギャル神宮 - それもあるっすけど、大きめのイベントに呼んでもらえたりすると、もっとライブ上手くならなきゃって思うんすよね。売れてる人ってやっぱりライブの盛り上げ方がめちゃめちゃ上手いから。俺がもっと伸びるためにはライブっすね。
- その先に見ているビジョンというのはありますか?
山田ギャル神宮 - ええ、うーん……わかんないっすね。どうなるんやろ。想像つかなすぎて……あ、でも、車欲しいかもしんないっす。東京で車乗りたいっすね。満員電車とかめっちゃキツいし、普通に友達とドライブしたい。駐車場も必要だし、それぐらい稼ぎたい。
- めっちゃ具体的な(笑)。でも、これまでの成長が急すぎて先が予測できないというのはあるかもしれませんね。
山田ギャル神宮 - これまでトントン拍子に来とるっていうのはありますね。それこそサンクラで燻るっていうのもあんまなかったんで、正直。"My Story"がサンクラでパーンと伸びて、そこからサブスクからリリースして"GAL"がハネて、いつの間に俺がヘッズだったライブのアーティストらと一緒に曲作れて。それこそ俺がシーンに入るきっかけになったのはKuytくんです。自分まだ音楽始めて2年くらいっすけどブワーッときちゃって、考える暇もなかったんすよね。最初の頃の「音楽で飯を食う」って目標も、カツカツではあるけどクリアできたんですよ、ラップスタアやアルバムのおかげもあって。だから次っていうと難しいっすね……あ、でもシドくんと曲やりたい。今それです。
- 認知度も一気にあがって、憧れのアーティストとのコラボもこれから増えていきそうですね。
山田ギャル神宮 - やりたいことはいっぱいあるんですよ。MV撮りたい、ほかのアーティストと音源作りたい、とか。でもバーンっていうデカい目標って、失礼かもしんないですけど、俺できるなって思ってるんで。
- 呪文のようにわざわざ目標を立てて祈るというよりは、「いくっしょ」みたいな感じ?
山田ギャル神宮 - 俺めっちゃ自己肯定感高いんすよ。自分かっけーしって思ってるんで、なんでも実現できると思ってる。
- サポートをされているHIGH-TONEさんからすると、今後の展開など考えていますか?
HIGH-TONE - サポートっていうか、仲のいい先輩後輩関係って感じで、ほんと流れでサポートらしきことをしているって側面が強いんですけどね。自分がGokou KuytのライブDJをしてるもんで、山田らがやりたいことをGokou Kuytが先にやっていたりするのもあって、連絡がくるんすよ。Gokou Kuytは全くLINE見ないんで(笑)。で、「アルバム出したいんですが出し方がわかりません」とか、「リリパをしたいんですがやり方がわかりません」とか相談されて、流れで。
- なるほど(笑)。
HIGH-TONE - ただ、山田はデカくなっていきたいっていう、その途中途中で「渋谷WWWに立ちたい」とか「LIQUIDROOM」に立ちたいとか、やっぱあるっぽいんで、一個一個叶えられる手助けはしていきたいなって。あとお前、11月頃にリリースするizolmaとLeisuとのジョイントEPも制作中じゃないか。
山田ギャル神宮 - あ、はい。作ってます。てか集まるごとに勝手に出来上がってます。コンピレーション・アルバムみたいなものを今年中に出します。
HIGH-TONE - izolmaとLeisuと山田の3人はクルーとかコレクティブっていうよりは仲いい奴らって感じで、お互い客演したりされたりしていて。その3人の作品のリリパが今年のクリスマスにCIRCUS Tokyoでやるっていう。去年のクリスマスに"pureheart"っていうシングルを出していて、その伏線回収みたいな。
山田ギャル神宮 - そこまで年内駆け抜けようと思ってますね。あと、目標ですけどWWWでもやりたいです。
HIGH-TONE - ほら、お前それさっきの質問で言うんだよ。
山田ギャル神宮 - 絶対WWWでやりたいっすね。
HIGH-TONE - やっぱ『Black File』に上がってる『TOKIO SHAMAN』の映像を見て育ってるんで。
- なるほど(笑)。
山田ギャル神宮 - 俺映ってますよ、ちなみに。
HIGH-TONE - バックDJしてる俺の方が映ってるから。
- (笑)。
山田ギャル神宮 - WWWは約束の地ですね。自分が初めて行ったイベントがTohji主催の『Platina Ade』だし、いやマジで超食らったんすよ。思い入れがめっちゃ深いところ。
HIGH-TONE - いつこれを言うのかなって思ってたよ。
山田ギャル神宮 - 教えてくださいよ、変なこと言っちゃったじゃないですか。
- おかげで「マイカーが欲しい」というほのぼのした夢を(笑)。
山田ギャル神宮 - また次のアルバムなりで自分のイベントを打ってWWWを満員にできればめっちゃいいっすね。
- 来年ぐらいには達成していそうですね。
山田ギャル神宮 - いけます。
- 最後に、『ラップスタア』に出場しながら、ギャル君はヒップホップに限らないポップな面もあるように思いました。自身ではどういうふうに自己認識をしていますか?
山田ギャル神宮 - 自分ではヒップホップの土俵っていうかシーンにはいると思ってて、それこそ今回のアルバムでも"THE BLADE is ME"はラップスタアでできんかった捲し立てるようなラップをやっていたり。やっぱルーツとしてヒップホップがデカいように思います。
- その大きな枠組みは変わっていかないと思いますか?それとももう少しポップな方に行きたいという思いなどはありますか?
山田ギャル神宮 - いやー……自分の軸は曲げずにオーバーグランドに行けたらアツいなとは思います。自分めっちゃアニメ好きなんで、アニメの主題歌とかできたらめちゃめちゃ嬉しいし。それこそ「NULL」のやつらとも「ゲームのサウンドを作りたい」って話をしとったりして。自分は自分の作る曲が好きだし、縛られずにできたらカッコいいよなと。
- やはり自己肯定感が高いというのが繋がってくるのかなと。
山田ギャル神宮 - やっぱ、よくも悪くも自分は普通の人間なんで(笑)、爆尖りみたいなものがないんすよね。
HIGH-TONE - やりたいことやりたい!みたいな感じ。
山田ギャル神宮 - ほんとそうっすね。自分がかっこいいと思えるものはやりたいですね。判断基準が全部自分がかっこいいかダサいかで、自分がかっこいいって思えたものは揺るがないっていうか。
- それは昔からそういう性格だったんですか?
山田ギャル神宮 - うーん……やと思うっすね。難しいですね、自分めっちゃ卑屈かって言われると超卑屈なわけじゃないですけど、ネアカかって言われるとネアカでもない。でもどっちの要素もちょっとずつあるみたいな。難しいっすね。やから、いろんな音源も作れるのかもしれないです。
- ギャル君自身のあやふやな部分がむしろ、いろんな人にリーチできる強みなのかもしれません。今日はありがとうございました。
Info
Artist: 山田ギャル神宮
Title: 刹那流想i
配信リンク: https://linkco.re/YePeuy7X
Release Date : 2023.6.20(火)
Track List
1.BLADE is ME
2.人間 Prod. ATSUKI
3.try
4..jibojiki (feat..Gokou Kuyt)
5.kanjo Prod.AZ
6.17 (feat.izolma)
7.AfterBurner Prod.ATSUKI
8. 刹那i Prod.201