【インタビュー】thisisneverthat | 韓国と日本のカルチャークロッシング

韓国のストリートブランド・thisisneverthatが10月15日に東京・原宿に上陸した。thisisneverthatは現在世界を席巻する韓国カルチャーの中心。彼らは海外進出のファーストステップに裏原宿を選んだ。今回はthisisneverthat Tokyo Flagship Storeのオープンを記念して、ブランド立ち上げメンバーであるChoi JongkyuとPark Inwookにインタビュー。thisisneverthatと日本の深い関わり、韓国カルチャー、デザイン哲学などさまざなテーマについて語ってもらった。

取材・文:宮崎敬太

通訳:Takato Suzuki(thisisneverthat)

Special Thanx:Hisashi Kiyota(Monkey Timers)

原宿の駅で待ち合わせました

- Tokyo Flapship Storeのオープンおめでとうございます。thisisneverthatとして初の海外路面店ですね。なぜローケーションに原宿を選んだのでしょうか?

Choi Jongkyu(CEO)-(日本語で)海外なら一番最初は日本の東京の裏原が一番良いんじゃないかなと思って。

Park Inwook(CEO/Creative Director)- 僕たちは日本の洋服やカルチャーにとても影響を受けたからです。それに僕とモモ(Jongkyu)さんは20代の頃、日本に留学していました。だから親近感があるんです。自分たちのお店が原宿にできるなんて夢みたいです。

Jongkyu - ナイナ(Inwook)さんとは日本で出会ったんです(笑)。

Inwook - そう(笑)。原宿の駅で待ち合わせました。

- そうなんですか!

Inwook - はい。thisisneverthatを一緒に立ち上げた(Cho)Nadanさんがキーマンでした。彼はモモ(Jongkyu)さんと中学の同級生で、僕とは大学の同期なんです。Nadanさんを通じて、僕とモモさんは日本で会いました。その時、Nadanさんはニューヨークに留学していました。

Jongkyu - ニューヨークから日本にいる私とナイナさんに「今日本にこういう人がいるから会ってみて」って連絡してくれて。

- 面白い出会いですね。

Jongkyu - 僕とNadanさんの夢は自分たちのブランドを作ることでした。同じ夢を目指して私は日本に、Nadanさんはアメリカに行きました。ナイナさんの存在は韓国にいた頃から知ってました。でも実際に初めて会ったのは原宿。私たちは大学を卒業してそれぞれ韓国に帰ってきた時、thisisneverthatを作りました。

- お二人は日本で何の勉強をしてたんですか?

Jongkyu - 日本の文化と語学です。(留学中は)しょっちゅうInwookさんと会ってました。日本のブランドを2人でいろいろ調べて。

Inwook - 日本にはたくさんブランドがありますからね。コムデギャルソンやアンダーカバーは常にチェックしてましたね。

Jongkyu - デパートにも行ったけど、私たちは本店を見たかったんです。Cosmic Wonder、N-Hollywood、NUMBER (N)INE……。お店を見つけて実際に見に行って。ネットでもいっぱい買い物しました。あの頃は私とナイナ、Nadanはいつも「あれ買った?」みたいな話をメールでしてましたね(笑)。

thisisneverthatが韓国のトレンドを作ってきた

- ブランドはいつ設立したんですか?

Inwook - 開始したのは2010年の春からです。準備は2009年からしていました。

- その当時の韓国のストリートカルチャーはどんな状況でしたか?

Inwook - 自分たちで洋服を作る人たちはあまりいなかったですね。

Jongkyu - 洋服に関してはthisisneverthatが(韓国のストリートブランドの)始まりです。それまではなかった。

Inwook - そうですね。最初は何もわかりませんでした。服を作るための工場、できた服を保管する倉庫。そういうのを全部自分たちでちょっとずつ調べていきました。なので時間がかかりましたね。当初は2009年からスタートさせる予定でしたが、準備に時間がかかってしまい2010年の春になってしまったんです。大変でしたよ。

- Nadanさん、Jongkyuさん、Inwookさんの役割分担を教えてください。

Inwook - 僕はデザイン。モモさんは営業。ナダンさんはそれ以外の全部(笑)。

Jongkyu - 信頼できる3人だったからここまで(ブランドを)続けられました。

- ブランド名の意味を教えてください。

Inwook - 最初にデザインしようとしたイメージと、実際に出来上がったものは違う。でもそれはそれで素晴らしい。自分のデザイン哲学みたいなものですね。

- 韓国は音楽もファッションもトレンドの移り変わりがとても早いですよね。そういった社会の中で、トレンドに流されることなくブランドの一貫したカラーを10年以上も維持し続けるのは非常に難しいと思います。

Inwook - 確かに韓国は移り変わりが早いですが、私たちは(トレンドに)流される/流されないではなく、私たちがトレンドを作ってきたような気がします。作りたいものを作ってるだけです。

Jongkyu - 私たちが作るものが流行になるべきだという自信がありました。だからずっとそうやってきました。

90年代のファッションやカルチャーから大きな影響を受けています

- ではみなさんが影響を受け、thisisneverthatに落とし込まれているものを教えてください。

Inwook - 90年代のファッションやカルチャーです。今日、モモさんもNikeのAir Max 1を履いてますが、僕たちは90年代から大きな影響を受けています。と同時に時々の世界のトレンドも取り入れています。我々のデザインチームには若いメンバーもいます。各々が違う人間なのでやりたいことも違う。みんなの個性は尊重して自由に作ってもらっています。それらを最終的に僕がルックにまとめます。

- なるほど。thisisneverthatからはSupreme、Palace Skateboardsをはじめとしたスケートブランドの雰囲気もありますが、同時に木下孝浩氏が編集長を務めていた時代の雑誌「POPEYE」などからの影響も感じていました。ただ最終的にはどれとも違う。それはInwookさんのクリエイティブ・ディレクターとしての編集力なんですね。

Inwook - ルックが重要なんです。昔はデザインの一貫性を意識していました。例えば1シーズンに明確な1ストーリーを作る、みたいな。でも最近は柔軟になってきて、1シーズンに複数のストーリーがあってもいいかな、と思っています。違ったストーリーを持ったアイテムでも、スタイリングでうまく組み合わせれば自分たちの世界観を作ることができる。

- 個人的にthisisneverthatの肉球ロゴが好きです。

Inwook - 韓国の事務所は動物を連れてきていいんです。犬を連れてくる社員が結構いるんですね。thisisneverthatのロゴは長いので、シンボル的なものを作りたいと思ったんです。あの肉球ロゴに関してはまだ試してる段階です。

- 自由な雰囲気の会社なんですね。みなさんは藤原ヒロシさんを中心とした日本の90年代の裏原カルチャーの本質を正確に理解されているように感じます。ちなみに、現在は韓国でもさまざまなストリートブランドが生まれていますね。

Inwook - はい。現在の韓国には新しいものが生まれてくる楽しさがあります。ただ長く続かないところが多いですね。僕らも初めは大変でした。だからこそ若いブランドには頑張ってもらいたい気持ちがあります。

- thisisneverthatはNew Balance、GORE-TEX、Pokemon、Converse、G-SHOCKなどなど、これまでさまざまなブランドとコラボレーションしてきました。個人的にインパクトがあったのは2018年のParabootとの取り組みでした。

Inwook - 個人的にParabootが好きだったのでルックに取り入れてたんです。そしたらParabootから連絡をもらってコラボレーションが実現しました。

Jongkyu - ナイナさんがルックのスタイリングでスニーカーだけでなく革靴を使ってた影響で、韓国でもミックスしたスタイルが受け入れられるようになりました。

Inwook - GORE-TEXに関しても、GORE-TEX社の中のImage Driveというグローバルチームから5年前に声をかけてもらいました。そのチームがかっこいいと思うブランドに生地を提供して自由に作らせてくれます。SupremeもPalaceもImage Driveから生地を提供されてるんです。

- thisisneverthatがデザインするNew Balanceも毎回即完売ですね。

Inwook - ありがたいことに。

Jongkyu - 最初は韓国のチームとやりとりしていましたが、現在はグローバルチームと制作しています。コンバースもクラークスもそんな感じです。

Seoul to Tokyoのつながりがあったらいいんじゃないかな

- Tokyo Flapship Storeのオープンに合わせてMIN-NANOの中津川吾郎さんがグラフィックを制作したTシャツと、Black Eye Patchとのコラボアイテムをリリースしましたね。

Inwook - 吾郎さんのTシャツに関しては日本のチームに動いてもらいました。Black Eye Patchに関してはモモさんの交友関係からですね。モモさんは日本にも韓国にもいろんなつながりがあるので「一緒に何か作ろう」という話になって、1年くらい準備して今回ようやく実現しました。

Jongkyu - Seoul to Tokyoのつながりがあったらいいんじゃないかなと思ったんですよ。自然な雰囲気で(コラボが)実現しましたね。

- thisisneverthatのinstagramにはデザイナー/モデルとして活動されている菊乃さんのスタイリングによるポストも上がっていました。

Jongkyu - 私たちはMAKE-1さんが共通の友人なんです。

- 韓国ヒップホップの創成期を支えたヒップホップクルー・360 Soundsのメンバーですね。

Jongkyu - 彼は韓国のランニングチームに所属してて。

- あ、菊乃さんもNIKEとアンダーカバーのGYAKUSOUでモデルも務めてましたね。

Jongkyu - そうです。MAKE-1さんはよく日本に来ていて、私も来日してたタイミングで菊乃さんを紹介してもらいました。いつだか忘れましたが(笑)。いま通訳してくれてるタカトもその時に知り合いました。

- なるほど。今回のインタビューをコーディネートしてくれたMonkey TimersのHisashiさんをはじめ、モモさんは東京のリアルな人脈にジョインしてたんですね。

Jongkyu - みんな自然な雰囲気で繋がりました。thisisneverthatはそんな感じです。

- では最後に今後の展望を教えてください。

Inwook - さっきも少し言いましたが長くブランドを続けたいです。それが目標。日本でも2号店、3号店をオープンしたいですね。

Jongkyu - 次は大阪にオープンしたいです。

Inwook - 大阪行きたいです!

related

【インタビュー】STARKIDS | 星の子が目論む"世界征服計画"

脳天に響くデジタルでアグレッシブなビートに日英織り交ぜたリリックで「日本を征服するぜ / We bring it back(日本のポップが戻ってくる)」と宣言する"星の子"ことSTARKIDSは、パンデミック以降の音楽シーンを揺るがす多国籍ラップクルーだ。

【インタビュー】LANA | 自分の将来が楽しみで仕方ない

2020年からSoundCloudでの活動をスタートした神奈川・湘南生まれのアーティストLANA。ジャンルレスな才能を感じさせるメロディーセンスと特徴的なハスキーボイスを武器に、2022年に"FLAME (feat LEX, Saru jr.fool, taisyov)"で本格的なデビューを果たした。

Supreme前夜、NYストリートで何が起こっていたのか | 映画『All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合』監督インタビュー 

2022年10月21日よりドキュメンタリー映画『All the Streets Are Silent:ニューヨーク(1987-1997)ヒップホップとスケートボードの融合』が公開される。

most popular

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。