映画『mid90s ミッドナインティーズ』の監督のジョナ・ヒルと出演するナケル・スミスの対談を日本独占公開 | 本編映像も
『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、『マネーボール』、『21ジャンプストリート』などの出演で高い評価を受け、またヒップホップやスケートカルチャーへの深い愛と造詣を持つことでも知られるジョナ・ヒルの初監督作品『mid90s ミッドナインティーズ』が、9月4日(金)より新宿ピカデリー、
渋谷ホワイト シネクイントなどで全国公開。今回FNMNLでは、同作の本編映像を独占公開する。
主人公のスティーヴィーと、彼の良き先輩に当たるレイを演じるのは、それぞれ『聖なる鹿殺し』などで注目を集める若手俳優でありスケーターのサニー・スリッチと、SupremeやAdidasのビデオへの出演で知られるプロスケーターであり、俳優、そしてラッパーとしても活躍するナケル・スミス。Morrisseyの楽曲“We'll Let You Know”と共に、美しい夕陽をバックにスケートをする二人の姿が印象的な映像だ。
また、『mid90s ミッドナインティーズ』を制作するプロダクションA24のZINEに掲載されている、監督ジョナ・ヒルとナケル・スミスの対談も日本独占公開。映画本編とも通じる二人のクリエイティビティや、スケーター、アーティストとしてのマインドが伝わる会話となっている。
ナケル・スミス(以下ナケル) - へい、元気?
ジョナ・ヒル(以下ジョナ) - いまニューヨークにいるの?
ナケル - うん、ロングアイランドにいるよ。
ジョナ - それは僕と一緒にいるより楽しいね。きみの声が聞けて嬉しいよ。何歳になった?
ナケル - 24歳になったばかりだ。撮影が始まってセットの初日がちょうど23歳の誕生日だった。
ジョナ - わお、君は24歳で僕は34歳だけど、君は僕が常に話を聞いているような人だ。10歳も下なのに、最も賢い友達の一人だ。
ナケル - クレイジーだね。全く逆のことを思った。僕は君と一緒にいるときは、常に吸収することがあるから。
ジョナ - ありがとう。君は常にインスパイアしてくれる。僕の世代では、インスパイアリングなことはクールじゃなかった、すごくダサかったんだ。
ナケル - そうなんだ。それは僕の世代ではかっこいいことではない。友達からはいつも「説教はやめてくれ」って言われる。
ジョナ - 友達の中でいつでもちゃんとした見方をできる人は誰かと考えるとき、いつも君が思い浮かぶ。歳上の人たちといつも話している?
ナケル - 僕たちはお互いパッションを持っている。一度パッションを持つと、ある意味年齢は関係なくなる。そのパッションとキャリアを掘り下げれば、皆自由に動いて、情報の取り入れ方も変わる。
ジョナ - 僕は君を「完璧な天使」だ、とか言うことはない。君が人々をインスパイアできる理由は、君が人間だからだ。
ナケル - この前スケートをしていて、近くにいた女性と口論になった。彼女はとても失礼な態度を取ってきたから、僕も同じく失礼な態度を取った。僕も人間だからね。でもその後、その状況をうまく落ち着かせなかったことに気分が悪くなった。もし誰かが感情的になっていたとしても、気にするべきじゃないよね。気持ちを安定させて、払い退けるべきだ。だってそこに注ぎ込むエネルギーがもったいないから。
ジョナ - 君を説明する完璧な例だね。もし僕が若い時に何かやらかしたら、自分を傷つけるか他人に迷惑をかけていたと思う。口論になった後に後悔するのは、すごいね。
ナケル - 自分を傷つけるか、間違いを正当化するかどっちかだね。向こうが喧嘩を売ってきたとしても、それを起こさせるかは自分次第だと思う。みんな良い悪いの判断はできるから。自分のしたことに責任を持てるかだね。
ジョナ - なぜその考えを持つようになったの?どのようにしてその感覚が養われた?
ナケル - 間違いをたくさん起こしてきたからだね。昔はいっぱい喧嘩していた。もし誰かが僕のスイッチを押したとしたら、それをさらに大ごとにしていたのは僕だった。そうすると「座って、自分がやったことをよく考えなさい」と言われるんだけど、その時間がとにかく多かったんだ。僕は何度もトラブルを起こしていたから。
ジョナ - すごいね、僕が子供の頃同じことを言われたら、座って、なんで世界は僕に対してこんな扱いをするんだ、みんなクソだって思っていたね。
ナケル - そのフェーズも経験したよ。でも世界は別にそんなこと気にしていないんだって気付いたんだ。君に何が起こったかなんて世界からしたらどうでも良いんだよ。
ジョナ - ほとんどの人はそのようには考えないよね。
ナケル - 人生を生きるっていうのは、キャラクターを創り出して行くことだと思う。欲しい特性もあれば、そうでないのもある。なりたい外見もあるだろう。ただ自分の頭で創り出す人物像を実際に作るだけなんだ。身体は機械で、頭はコンピューター、そして精神があなた自身だ。それがあなたを導いてくれる。人間は精神を着飾っているだけなんだよ。それが人間の身体だと思う。あなたの精神が言うことやるだけ。
ジョナ - 本当に君は賢いよ!
ナケル - でも気になることと言えば、首尾一貫していないことだ。そこは直さないといけないと思っている。どうすれば良いかは分からないけど。
ジョナ - 首尾一貫?
ナケル - そう、やっていること全てに一貫性が欲しい。もし音楽を作るなら毎日それをやっていたい。一週間だけ、とか二週間だけ、みたいなことはいやなんだ。ルーティン化したい。
ジョナ - まあ若さで良いことの一つは、なんでもやってみたいと思うことだ。若者たちはクリエイティブだからね。歳をとるにつれて、一つか二つを選ばないといけないと気付く。
ナケル - 選ばないといけないというのは、本当じゃないと思うな。起きて、シャワーを浴びて、メールを返して、音楽を作って、スケートして、オーディションに行くとする。丸一日動いて、たしかに「今日は疲れたな、長い1日だった」と思うかもしれない。でも家に帰って、テレビをみる代わりに、彼女との時間を大事にして、ファッションデザインを考えたりできる。自分が挑戦したいことをどれだけ本気でやりたいか次第なんじゃないかな。
ジョナ - そうだね。また君から新しいことを学んで、悪いアドバイスをしてしまったな。まあ人それぞれだね。君にはクリエイティブなエネルギーがたくさんあって、それをいろんな方向に向けている。一つか二つにフォーカスしろ、なんて言われたくないよね。僕と君は違うからね、また君から学ぶことができたよ。
ナケル - これ通りにやればいい、というような説明書なんてないからね。もし演技をやるためにスケートを辞めなければならない、ということはクレイジーだ。スケートは僕がずっとやってきたことで、辞めるなんて考えられない。僕は全部やるよ。
ジョナ - 君は次の世代だね、嬉しいよ。君は挑戦することなんでも成功するってことに疑問はないし、それは僕に希望を与えてくれる。なんでも100%で挑戦して、君は本当に才能があるし、やり方も知っている。君が夢を叶えるのを見れることは本当に楽しみだ。
ナケル - 頑張っているよ。大変なこともあるけどね。人々がこれを読んで、僕は全部わかっていると思われたくないな。
ジョナ - じゃあ最後にみんなに聞いている質問をするね。誰でも世間から隠したいバージョンの自分があると思うんだけど、どう思う?
ナケル - うんわかるよ。アニメの『リック・アンド・モーティー』見たことある?
ジョナ - もちろん、大ファンだ。
ナケル - じゃあキャラクターたちが自分の欠点を話し合うエピソードは分かる?自分の悪い部分を全部取り出すと、全然違う人物になる。悪い部分なしでは、今の自分はない、という終わり方になるんだけど。
ジョナ - わお、ナケルと『リック・アンド・モーティー』が解決してくれた。その見方は素晴らしいね。もし良い部分だけの自分だったら、自分ではないのか。
ナケル - そうだね。
ジョナ - それはすごい分かる。その人の悪い部分ですらないんだよね。その人が恥ずかしいと思っているだけで。
ナケル - もちろん僕にもなくなって欲しい部分がある。自己喪失感と一貫性のなさだ。
ジョナ - じゃあ自信喪失している時とか、「僕にはたくさん良い部分があるから大丈夫だ」って思える?
ナケル - 外にいる時に「外にいる必要はないんだ、みんなに腹が立つし、何もかもがムカつく、家に帰って自分一人で過ごすべきだ」って思ったことある?
ジョナ - もちろん。
ナケル - そのような状況になった時は、僕は一服するんだ。吸ってリラックスして「僕は自分でしっかりコントロールできる環境にいるから大丈夫だ」と考える。大抵の場合は両親に話をする。そのような状態で人に話すのは珍しいことなんだ。もし僕が人に話をしていたら、それは僕の中でもう整理できたということ。
ジョナ - なるほど。
ナケル - それもあって僕はウォーターパークにいるんだ。今日が旅の最終日で、まだ何も撮っていない。プロとしてやるべきことをやれてないと焦ってはいるけど、旅は全部会社が払ってくれているし、僕は努力している。だから自分に無理強いする必要なない。
ジョナ - なるほどね。何か気になることがあっても、一歩下がってみて、何が起こっているか見つめてみるのか、そして感謝する。
ナケル - そう。君のような友達がいることにすごく感謝している。一緒に高め合える存在だ。本当にそれは良いことだし、尊敬するよ。
ジョナ - 僕もだよ。ありがとう!
A24『ZINE』より
Info
9月4日(金)新宿ピカデリー、
渋谷ホワイト シネクイントほか全国ロードショー
監督・脚本:ジョナ・ヒル『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『マネーボール』(出演)
製作総指揮:スコット・ロバートソン『レヴェナント:蘇りし者』、アレックスG・スコット『レディ・バード』
製作:イーライ・ブッシュ『レディ・バード』 音楽:トレント・レズナー、アッティカ・ロス
<キャスト>サニー・スリッチ『ルイスと不思議の時計』『聖なる鹿殺し』、キャサリン・ウォーターストン『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』、ルーカス・ヘッジズ『ある少年の告白』『ベン・イズ・バック』、ナケル・スミス
2018年 / アメリカ / 英語 / 85分 / スタンダード / カラー / 5.1ch / PG12 / 日本語字幕:岩辺いずみ / 提供:トランスフォーマー、Filmarks / 配給:トランスフォーマー