【オフィシャルインタビュー】King Krule 『Man Alive!』|「俺はいつだって変化し、進化しようとしている」
独自の音楽と詞世界を追求し続けるロンドンの若きシンガーソングライターKing Krule。高い評価を受けた2017年リリースの2ndアルバム『The Ooz』に続く待望の新作『Man Alive!』がリリースされた。それに合わせ、FNMNLではKing Kruleの貴重なオフィシャルインタビューを掲載。インスピレーションの源や創作の過程、彼が持つ独自の価値観などが伝わるスリリングなインタビューとなっている。
- 19曲入りで1時間7分の大作だった『The Ooz』に対して新作『Man Alive!』は比較的「ノーマルな」尺のアルバムですね。
King Krule - うん。
- これはやはり、ある意味とりとめなく広がる、スコープの大きかった前作の反動で「今回はもっとコンパクトで凝縮されたアルバムにしよう」という思いゆえ?
King Krule - ああ、その通り、うん。俺はだからまあ…。『The Ooz』にしても、もっとコンパクトなものにしたかったんだけどね。ところが、いざ出来上がってみたら…。
- (苦笑)
King Krule - (苦笑)…。ああいう内容になっていたっていう。変化したわけ。だから、うん、今回の作品は…。実は、本来はもうちょっと長いアルバムだったんだ。ただ、何曲か削り落として、それでこうなったんだ。
- レコーディングしたもののアルバムに入らなかった曲も他にある、と。
King Krule - そういうこと。
- 『The Ooz』は妥協無しというか、あなたの当時をすべて詰め込んで、世界に対して「これが自分だ」と提示するようなところもあったのかなと感じましたが、今回はもうちょっと自己コントロールしている、ということ?
King Krule - そうね、まあ俺の見方としては、こう捉えていたんだよ。あれは…「何かが出て来るイメージ」だったというか、だから、自分の頭の中はスパゲッティみたいだな、と(注:「ooz」は何かがにじみ出てくる/にょろにょろと這い出してくる様を表現する動詞)。
- 文字通りにじみ出てくるというか、あなたの潜在意識や内面のモノローグ、流動的なマインドスケープをフィルターを通さずにドキュメントしたアルバムだったとも思いますが、新作『Man Alive!』でもその内省的な面は変わっていないと思いますか?
King Krule - んー…たぶんそうなんじゃないの?自分じゃ分からないけどね、正直…ただ、意識して作ったものではないな。
- なるほど。感じたことだったり、ふっと浮かんだ記憶や、見た夢を元にそれを曲にしていく、という感じ?
King Krule - うん、ま、そういうところ。だから、俺は自分自身になんのプレッシャーもかけてないからさ。とにかく、自分の書きたいやり方で書いていくだけだし。
- 新作向けの曲作りやプリプロはいつ頃から始めましたか?
King Krule - 何曲かは、2016年にまでさかのぼる。うん、たとえば、“Stoned Again”は2016年に書いた曲だし…っていうか、俺たちは新作収録曲をもうライヴでプレイしてきた。何曲かは『The Ooz』時のツアーでも演奏していてね。それとか、サウンドチェックの際にプレイしてみたり…だから、俺たちは前のツアー中から、『Man Alive!』向けのコンポジションの多くを練習していたっていう。そんなわけで、楽曲は結構早いうちに浮かんできていたんだけど、そこからこう、収録曲のいくつかはもっと後になってできて。“Supermarche”に…それとか“The Dream”なんかはその頃よりも後に書いたね。
- ミュージシャンに取材すると、よく「ツアー中は疲れるし曲を書けない」という答えを返されるんですが、あなたはツアー中も曲を書けるタイプ?
King Krule - うん。まあ単に、自分はあの当時すごくインスピレーションが湧いていたってことじゃないかと思うけど?だからなんというか、人生のあの時点で、俺は「インスピレーションを感じて自分の中に創作意欲が湧いたら、それを活用しなくちゃいけない」って点に気づいた、みたいな。そうだな、ほんと、そういうことだと思う。とにかく…自分にそういうところがあるのを自覚したし、ギターを弾いていてもすごくインスパイアされた。そんなわけで、うん、そんな風に霊感が湧いていた状態を最大限活用しようとしたっていう。
- ツアー中にビートやリフのアイディアが浮かんだら、たとえばiPhoneに録音して、そこから発展させていく、みたいな?
King Krule - まあそんなとこ。それとか、PCを持ち歩いてるから、それでデモだとかを作ったり。
- 新作アルバムであなたが新たにやろうとしたことは、何かありますか? これまで挑戦したことがなくて今回やったことと言えば何でしょう。
King Krule - そうだなあ…。んー、特に「これ」といったことはないんじゃないかな?っていうか、新しいことをやりたいっていうのは当然、どっちにせよ自分が自然に感じることであって、何も「今回はこれをやるぞ」みたいに構えて始めることじゃないんだ、ほんと。ただ、自然に生じた変化というのはもちろんあって。というのも、俺は生きていく中で得た自分の経験から曲を書くし、自分の周辺で起きていることとか、自分の内面の状態/環境について書いている。ということは、当然変化するものだろうと俺は思うけどね。だって、物事は変化していくもんだろ。
- なるほど。人間としても、ミュージシャンとしても、生きていく中で常に変化していくわけですしね。
King Krule - そう。物事に対する見方もそうやって変わっていくっていう。
- 新作レコーディングでは、Ignacio Salvadoresのサックスを始め一部をバック・バンドが担当したのを除き、あなたがほとんどの楽器を演奏しているようです。ちゃんとバンドがいるのに、なぜ自演したんでしょう?
King Krule - いや、バンドとはちょっと一緒にレコーディングしたし(笑)だけど、うん、大半は自分で演奏したってことになるんだろうな…。Ignacio Salvadores、彼にはこのレコードで大いに助けられたけどね。彼からは、アルバムを通してインスピレーションをもらいっぱなしだったよ。
- サクソフォンを勉強して演奏できるようになりたいですか?
King Krule - んー、フム。そうね、自分で演奏できるようになれたらいいだろうなとは思うよ。ただ…(チッと舌打ちして考え込んでいる様子)…どうだろう? 今のこの時点では、「どうしても吹けるようになりたい」っていう、強い欲はないな。ただ、クラリネットを習おうとしたことはあったんだよ。でも、こう…自分にはあまり向いていなくて、上手に弾けなかったっていう。
- あなたのライヴパフォーマンスはレコーディング音源以上に広がりがあって素晴らしく、音源を青写真にそこから変化していくものだと思います。録音音源とライヴとの違いをどう捉えていますか?
King Krule - まあ、俺が好きなのは…だから、俺たちがライヴでプレイすると、そこにカオスがたくさん生じるところが大好きなんだよな。分かるだろ?今のバンドとはかれこれ10年近く一緒にプレイしてきたし…少なくとも、バンドの核になる連中とはそれくらい長くやってきた。で、思うに、合図に合わせて演奏を変える、そういう関係性がバンドの中で成り立っているっていう。要するに、俺たちはお互いのキューを頼りに演奏しているわけ。だから複雑な構成をあれこれ組まなくても、演奏中に出るキューを頼りに、「ここで曲調を変える」等の変化が分かるっていう。それに俺はカオスは相当好きだしね。「いつどこで何もかもがおじゃんになるか分からない、予断を許さない」みたいな要素は好きだし、それに…そういう演奏の仕方だと、俺たち自身も緊張感を保てるんじゃないかな。ステージ上でのバンド内のコミュニケーションがすごく重要になってくるわけだから。それに対してコンポジションっていうのは、それをいったんレコーディングしてしまうと、そうだなぁ…音源として残ったものに対して、再び自らを掻き立てエキサイトさせる必要があるわけだよね。だからライヴで演奏する行為というのは、レコード作品やその音楽に俺自身が立ち返るのにもってこいの、パーフェクトな方法なんだよ。
- ということは、あなたのライヴへのアプローチはジャズミュージシャンやJames Brownに近そうですね?意図的にお手本にしているわけじゃないでしょうが、ジャズやファンクのインプロが多くてフリーなスタイルのライヴに近づいている気がしますが。
King Krule - あー、うん、そうなのかも?…ただ、特に「これ」といった具合に、特定のバンドにインスピレーションを受けてそういうことをやろうとしているわけじゃないけどね。ただ単に、自分からすればそうするのがごく当たり前のことだと思えた、というだけだし。いやだから、俺は全然…っていうかそんなに…あー、なんだったっけな、あの言葉は(チッと舌打ちしながら思い出そうとする)…だから、俺の持ってる音楽的な知識っていうのは、こう、伝統的、常識的な考え方からすれば言えば良くない、偏ったものなんだよ。そんなわけで、俺にとってはあれ以外にライヴのやりようがない、それだけのことであって。
- へえ。でも、あなたの音楽的な知識は幅広くてとても豊かだなといつも思ってきましたけどね。あなたと同年代の若者に較べたらはるかに面白いと思うし、別に悪く言うつもりはありませんが、あなたの世代のイギリスの若者は普通だったらEd Sheeranあたりを聴いているでしょうし(笑)
King Krule - フフッ!(苦笑)
- あなたの地元であるサウスロンドンのスタジオだけではなく、新作は英北西部ストックポートにあるEVEスタジオでもレコーディングしたそうですね。
King Krule - うん、何曲かはあそこで録った。
- EVEのウェブサイトを見たら、ヴィンテージ機材を数多く揃えた面白そうなスタジオだなと思いましたが。
King Krule - んー、まあ、今稼働中のスタジオって、どこもそんな感じだけど。ただ、うん、あそこはめちゃ良かったよ。住み込み型のスタジオだから、1週間あそこで寝起きして、一晩中作業に費やすこともできたし。
- 古いシンセや録音機材、制作環境の変化は作品やヴァイブに何か影響をもたらしたと思いますか?
King Krule - うん…でもまあ、俺はいつだって旧型のシンセやアナログ機材、モジュラーシンセサイザーなんかは使ってきたしね。ただ、あのスタジオに入った時点ではレコーディングはかなり進んだ後期段階にあったから、特にこう…要するに、見たことのない機材に出くわしたからと言って、単にそれを使いたいがために既にレコーディングしたものにあれこれ付け加えたくはなかったっていう。
- 前作に較べると、新作はサウンドのどろっとした水浸しな質感が薄れましたし、ジャズ系な楽曲やパンクなギター曲もアクセント的に配置されていると感じました。今回のアルバムを作る際にあなたがイメージしたのはどんなサウンドでしたか?
King Krule - もっと乾いた音にしたかった、それはかなり意識してた。ギター・サウンドにせよ自分のヴォーカルにせよ、リヴァーブやエコーという点でもっとドライなものにしたかった。それから、ノイズも常にたくさん使っている。ホワイトノイズだのフィールドレコーディングした音源、それらを用いてストーリーを語ろうとしているんだ。だから…うん、そこらへんの要素だろうね。俺はいつだって変化し、進化しようとしているんだよ。
- 今フィールドレコーディングとおっしゃいましたが、1曲目のタイトルは“Cellular”ですし、留守電メッセージや電話のコール音もアルバムに使われています。そうやって電話が何度か登場するのはなぜ?
King Krule - んー、それは思うに、あの頃の自分は誰かに電話をかけようとかなり時間を費やしているのに、でも相手は電話をとってくれない、という状態が多かったからだろうな。
- (笑)。あなたの実人生の一部だ、と。
King Krule - フフッ(苦笑)。そういうこと。
- ケースバイケースでしょうが、曲を書く際に、歌詞と音楽部ではどちらが先でしょうか。どっちがどっちをインスパイアすることが多い?
King Krule - ああー、それは…答えるのが難しいな。とっちらかり過ぎだからさ。
- (笑)なるほど。あなたの音楽には夢と現実の境目にあるような不思議な感覚を表現したものが多いと思うので、だとしたら言葉と音楽のどちらが先にくるのかな?と。
King Krule - まあ、歌詞と音楽部とはまったく別物だったのが、後になってそのふたつをくっつけ合わせて出来上がった、みたいな曲もたまにあるし。
- 5曲目“The Dream”以降はあなたの見た夢や潜在意識のモノローグを追体験するような曲がいくつか続きます。様々な質感やトーンの混じる様は非常に絵画/映画的ですが、ストーリーを聴き手に伝えるのと、音でムードやサウンドスケープを作り出すのと、どちらがあなたには重要ですか?
King Krule - ハハッ!(苦笑)いやー、だから、それもさっきと同じ話でしょ。ほぼ同等ですよ、という。ただまあ、たぶんストーリーが最初に浮かんできて、それに続いてそこにサウンドスケープの要素を付け足していく、ということだとは思うけど。でもほんと、コンポジション面におけるそのふたつの概念の間に、大きな差があるとは思っていないんだ。
- あなたはシナスタジア(=共感覚)なところはあったりします?
King Krule - どうかなぁ。もしかしたらそうなのかも? でも、別に音が色で見えるってことはないし…それよりもとにかく、色んなイメージが浮かぶっていう。だから、たとえばストリートのイメージが自分の中に見えるけど、それはむしろ映画的な見え方だっていう。カメラの動き方を想像してみたり。たとえば“Theme For The Cross”を作っていた時、俺たちはレコーディング作業にちょっと飽きていて、そこでちょっとしたルールを決めたところから出てきた曲なんだ。そのルールは、作業から1時間離れて、その1時間の間はとにかく、実在しない映画のサウンドトラックに取り組んでみよう、というもので。“Theme For The Cross”は、そうやって作った音源のひとつだった。要するに、ちょっとした息抜きとしてリラックスするために架空の映画のサントラを作り、それでリフレッシュできたらレコーディング作業を再開する、というのが狙いだったんだけど、結果的に、そこでできた曲もレコードの一部になったっていう。だけど、あの曲には本当に視覚的な、ものすごく強いイメージがあるね。
- 一方で新作の歌詞には、難民危機、ブレクジット、そしてあなたの生まれた街ペッカムのジェントリフィケイションといった、社会観察型のトピックも出てきます。今回のアルバムは、あなたの内面よりも外の世界にインスパイアされたものと思いますか?
King Krule - んー(軽くため息をつく)、どうなんだろう、分かんないけど…思うに、自分に正直に書く、リアルな地点から曲を書いていれば、おのずとそうなってくるんじゃないの? まあ、俺はすごく自己耽溺型だし、自分自身についてさんざん書いてるソングライターだよ。ただし、当たり前のことだけど、そんな俺自身も社会の中で、様々な周辺環境に取り巻かれて存在しているわけで。だから、色んなニュースも見かけるし、ストリートを歩いていて毎日色々な出来事も目にするし…要するに、俺もこの世界に取り囲まれているっていう。というわけで、自然に観察型の歌詞も出てくる。っていうか、自分としては、これまでもずっとその手のことは歌で語ってきたんじゃないかと思うけど。だって、それだってとどのつまり、自分自身にまつわる事柄なんだし。
- そんなあなたを「世代を代弁する声だ」と評した人もデビュー期にいましたが、そう呼ばれたことはどう思いましたか?
King Krule - …どうでもいいよ。そういうのって自分じゃ分かんないし(苦笑)。いや、っていうか、デビューして最初の何年かは、あの呼ばれ方がうっとうしく思えたよ。たぶん、あのせいでちょっとしたプレッシャーを感じていたんだろうな。だけど、ぶっちゃけ、今のこの時点の自分は、あのレッテルには何も感じないし、どうでもいいと思ってる。っていうか、あのフレーズ自体、自分には理解できないよ、みたいな。そうは言っても、当時一部の人間からそう呼ばれたのがいやだったとか、そういうことではないけどね。呼びたければ勝手にそう呼んでくれて構わないよ、と。ただ、ほら…どう呼ばれようが、俺自身はそこは気にしちゃいないからさ。
- 「ブルー」や「グレー」の単語は1枚目、2枚目によく出てきましたし、2枚目では「パラサイツ」「パラダイス」というフレーズがコンセプチュアルな骨格をもたらしていましたが、『Man Alive!』にはそうした一貫するテーマはありますか?
King Krule - たくさんあると思うよ、うん。だから、このアルバムの曲では、自分が見聞きしたり観察してきた色んなことが何度も現れる。
- それは、ありきたりで日常的な観察?
King Krule - ああ。この世界の観察。それに自分の内面の観察に……だから、自分の周囲で起きている色々の観察だね。
- 資料によれば、アルバムのタイトルは感嘆符=「!」(エクスクラメーションマーク)みたいなものだそうですが…。
King Krule - そう。
- それを読んで、これは今の時代の混沌に対するびっくりマークなのかな、と思いました。
King Krule - フフッ!(苦笑)
- トランプが大統領になり、イギリスはブレクジットも間近で(注:この取材は1月29日におこなわれた)、気象変動、難民危機を始めとするあり得ないことがどんどん起きている現在の世界に対する驚きなのかなと感じましたが、なぜこのタイトルを選んだんでしょう?
King Krule - あー(と、軽く息をつく)。とにかく、あのフレーズが気に入ったから。あれこれ深く考えて決めたわけじゃないし、ほんと、そんなにじっくり考えずにあれにした。俺は感嘆符(注:exclamationには、「感嘆」の他に「叫び」、「激しい抗議」、といった意味もある)が好きだし、この作品にそうあって欲しかった。それもあったし、さっき君が話してくれたような解釈も可能なフレーズだっていう、その発想が気に入ったってところもあるよ。だから、色んな風に解釈してもらえるし、実存的なタイトルと読み取ってもらうこともできるフレーズ、という。ただ…本当に正直に言わせてもらえば、ノー、そこまで深く考えないでつけたタイトルだ。ほんと、あれこれ考えなかったし、そうは言ったってもちろん、色んな風に解釈できるタイトルだって点は認識していたけども。でも、このタイトルが好きなのもそこ、どんな風にも解釈できるってところだったわけで。
- 聴き手それぞれの解釈、判断に委ねる、と。
King Krule - そういうこと。
- 『Man Alive!』の制作前や制作中に読んだ本や映画、あるいは聴いたアルバム等、あなたに何か特別な影響を与えたアート作品はありますか?それは何?
King Krule - そんなの山ほどあるって! いくらでもあるし…。
- じゃあ、映画にしましょうか。観た映画で何か心に残ったものは?
King Krule - そうだなぁ(と考えながら)…ああ、アルバムに"Alone, Omen 3"って曲があるけど、あの曲は映画『オーメン』とは全然関係ないんだ。でも、あのタイトルにしたのは、あの曲の歌詞を書いていた時に…ベッドに横たわってあの歌詞を書いていた間ずっと、『オーメン』、『オーメン2』、『オーメン3』、と立て続けに流しながら観ていて。
- (笑)。1作目の『オーメン』は観たことがありますが、『3』は観てないです。良い映画なんですか?
King Krule - …あー、っていうか、『3』が始まった頃までには、俺はほとんどもう完全に、あの映画シリーズを観る気力を失って脱落してた、みたいな。だから分からない。
- (笑)。
King Krule - ただ、3作目の基本的なコンセプトってのは、あの子供(=悪魔という設定のダミアン)がいまや大人になり、彼がアメリカ合衆国大統領になるっていうお話で。
- なんと!ひどいなあ。
King Krule - (苦笑)うん、その通り。だから、俺も「これって今にぴったりなんじゃないの?」と思った、みたいな。
- (笑)。
King Krule - 「実はかなり時代に合ってるじゃん」とね…(苦笑)。
- (苦笑)分かります。で、ジャケットのイメージは、座っている人物のポーズがアルファベットの「M」と「A」になっていて、あなたの名前(Archy Marshall)の頭文字かなと思いましたが…。
King Krule - そう。だから、M&A=Man Aliveってこと。
- ああ、そう言われればそうですね!気づかなかった。てっきり、あなたのイニシャルだとばかり。
King Krule - (笑)うん、まあ、A&M=Archy Marshallでもあるよな。っていうか、それだと「Marshall Archy」になっちゃうけど。
- (笑)。あの絵は、お兄さんのJackが描いたもの?
King Krule - うん、兄貴の作品。うん。だから……家の居間で、奴が描いてきた絵を色々と眺めていて。あの頃、俺たちはこのアルバムのアートワークをどうすべきか、そのコンセプトを固めようとしていて、兄貴もいくつかのアイディアを試作していてね。で、ああ、確か、あいつと電話で話しながら絵を眺めていて、そこで言ったんじゃなかったかな、「あ、これじゃん? なんか、「M」と「A」っぽく見えるし、これならイケるっしょ」って。
- (笑)簡単だなあ。
King Krule - (笑)。
- (笑)っていうか、アートワークをどうしようか?とじっくり考える人って多いと思うんですけど。
King Krule - (笑)ああ、そうだよね。いやだから、兄貴も描き直したんだって!原画を元にちゃんと描くことにして、そこから少し変える、人物像がもうちょっと左右対称に見えるようにするだのなんだの、あれこれ手を加えて、あの絵に仕上がったっていう。
- Jackはあなたのジャケットをずっと担当していますけど、そのコラボはどういう風にやってるんですか? 彼は仕上がった音源を聴いてから描くのか、それとも彼は彼で好きにやっていて、あなたが「お前が今やってる、手元にある作品はどんなもの?」って感じで彼に見せてもらい、そこからふたりでアイディアを広げていく、というもの?
King Krule - 彼はこの作品の制作が進行中の過程から、もう関わっていたよ。それってまあ、ほとんどの人たちがやっていることだろうけども。だから、大抵の流れはどうかと言えば、兄貴に何かアイディアが浮かんで持ち込んでくれて、それを見て、俺の方は「こうしたらどう?」とか「ああいう風にしてくれ」と注文をつけるわけ。「ああしろ、こうしろ」、「これを試したら?」とか、色々言って兄貴に変更を加えてもらうんだけど、最終的には「あー、やっぱ、一番最初の原画が良かったわ」ってことになるケースが多いかも(苦笑)。
- (笑)。あなたも絵を描くのはお好きですよね。いずれ、自分でジャケットを作りたいとは思います?
King Krule - ああ、っていうか他の人の作品のアートワークはやるよ。ただ、そうだなあ、自分内の「人生におけるルール」があるっていうか? だから、ジャケットは自分でやらない。自分で決めて守っているそういうちょっとした規則があって、それに基づいているからやらない。ルールのひとつがそれなんだよ。
- ほう。その「規則」には、他にどんなものがあるんでしょう?
King Krule - ハハッ!(笑)
- ひとつかふたつ、教えてください。
King Krule - (笑)…いやいやー、それは話したくないな。
- そうですか、じゃあ、「あなた個人の掟」ということで、これ以上聞きません。
King Krule - (笑)。
- 3月からツアーですが、バンドと共にロードに出るのですか?
King Krule - うん。
- メンバー構成や演奏する楽曲はどこらへんになると思いますか。新作曲が中心でしょうか?
King Krule - どうかな、まだ分かんない。まあ…ライヴで俺たちが毎回演奏する一連のムーヴメントの箇所があるんだけど、それをセット全体の中にどう取り入れるかは考えないとな。『The Ooz』のツアーでそれをやるのはかなり楽だったんだ、ってのも以前よりも長いセットを組めるようになったから。だからまあ、今回のツアーではたぶん、1時間半くらい演奏できるんじゃない? それって、自分が昔やってたライヴに較べれば、かなり長いセットだよ。それだけあれば、色んなことをたくさん詰め込めるだろうと思ってる。
- 昨年は娘が誕生するなどあなたにとっても印象深い年になったことと思います。子供が生まれたことであなたの生活はどのように変化しましたか?また、そのことが作品に影響を与えた部分はありますか?
King Krule - 世界の中に平和を見つけた。前はそういうのを見出すことが出来ていなかったんだけど、今は世界に愛が存在するんだと実感出来ているんだ。それは前から見つけたいと思っていても見つけられずにいたものだった。新作を作った時は、娘が生まれる前だったし、生まれるとわかる前に書いたものもあるから、アルバムの音楽にそれが作用したかはわからない。
- 先行曲“(Don’t Let The Dragon) Drag On”のビデオクリップはご自身が監督されたものですが、満月の下で木に縛り付けられ、火炙りにされるあなたの姿が印象的な作品でした。ビデオの中であなたを取り囲み、火炙りに処している人々はどのような存在なのでしょうか?
King Krule - 特に誰というわけではないんだけど、映像にホラーの要素を取り入れたくてあの設定にしたんだ。彼らの形はイギリスの伝統的な騎士の形をしている。それは、この国の状態、伝統を表しているんだ。
- 今作ではこれまでと比べよりストレートにビートが強い楽曲も収録されている反面、シンセサイザーのサウンドがとてもエモーショナルに使われている部分も多い印象を受けました。そのような変化が見られる『Man Alive!』を制作するにあたって、以前と制作環境が変わった部分などはあるのでしょうか?
King Krule - 今回は、初めて自分以外の人間に対してもっとオープンだった。あれは俺にとっては初めてだったから新鮮だったね。これまでは全部自分で作っていたけど、もっと曲作りに関わってもらったり、メロディにでさえ関わってもらった。一曲プロデュースもしてもらったし、それは俺にとっては大きな変化だったな。でも、すごく自然だったんだ。あともう一つは、今回はレコーディングに入る前に殆どの曲を仕上げていた。スタジオに入ってから作る必要がなかったから、その曲の色々なバージョンを試せて面白かったんだ。
- アルバムに先駆けて昨年11月に公開されたビデオ『Hey World!』も話題となりました。タイトルにはどのような意味が込められているのでしょうか?また、ビデオはパートナーのCharlotte Patmoreと二人で制作したようですが、撮影はどのような体験でしたか?印象に残った出来事などがあれば教えてください。
King Krule - あのビデオは、皆に向けた挨拶みたいな作品だった。俺にとってはすごく面白い経験だったよ。撮影のために出かけて、場所を探し、誰もいないところで曲を演奏する。その過程がこれまでにはなく新鮮だったんだ。でも、シャーロットのお腹はかなり大きくなっていたし、寒かったし、彼女にとっては楽しいとは言えなかっただろうな(笑)でも俺は楽しかったし、普通のパフォーマンスからは感じられない、また違ったものが表現された良い作品が出来上がったと思う。
- お母さんのブランドであるSET ADRIFTのシャツをはじめ、あなたのユニークかつスタイリッシュなファッションに憧れているファンも多いと思います。普段好んで着ている洋服にはどのような共通点があるのでしょうか?また、好きなブランドやスタイルに影響を受けた人などがいればそちらも教えてください。
King Krule - どんな服を着たくなるかはその時のフィーリングによるな。映画の影響は結構あると思う。あえて言うとすれば、作業着みたいな感じの服が一貫して好きかもしれない。
- ありがとうございました。
Info
label: XL Recordings / Beat Records
artist: King Krule
title:Man Alive!
release: 2020/02/21 FRI ON SALE
XL1009CDJP ¥2,200+tax
国内盤特典 ボーナストラック4曲追加収録 / 歌詞対訳・解説書封入
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BEATINK.COM:
http://www.beatink.com/products/detail.php?product_id=10767
Tower Records: https://tower.jp/item/5010177/
HMV: http://www.hmv.co.jp/product/detail/10580422
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/B083V2LLS1
Tracklisting
01. Cellular
02. Supermarché
03. Stoned Again
04. Comet Face
05. The Dream
06. Perfecto Miserable
07. Alone, Omen 3
08. Slinky
09. Airport Antenatal Airplane
10. (Don’t Let The Dragon) Draag On
11. Theme For The Cross
12. Underclass
13. Energy Fleets
14. Please Complete Thee
*Bonus Tracks for Japan*
15. Perfecto Miserable (Hey World! Version)
16. Alone, Omen 3 (Hey World! Version)
17. (Don’t Let The Dragon) Draag On (Hey World! Version)
18. Energy Fleets (Hey World! Version)