【ライヴレポート】SALU『SALU THE LIVE 2019→2020 "GIFTED"』 | 「やっとここまで戻ってこれたよ」心の痛みと決別するための特別な公演

SALUが1/17にワンマンライヴ「SALU THE LIVE 2019→2020 "GIFTED"」を開催した。会場は自身初の東京・Zepp DiverCity。同タイトルのライヴを昨年12月13日に大阪・Zepp Nambaでも行なっている。今回のライヴは昨年12月4日にリリースしたアルバム『GIFTED』の収録曲をベースにしたセットリストが組まれた。

『GIFTED』はSALUのキャリアの中で最も重要な作品となった。それは彼がこれまで語ってこなかった過去を踏まえて現在の心境を歌っているからだ。SALUはこれまでの作品でも繊細さと複雑さは垣間見せていたが、その根源については一切語らなかった。なぜ? その理由が今回のライヴでは明らかにされた。

取材・構成 : 宮崎敬太

写真 : Kenji Kitazato

この日の東京は深夜に初雪が降ると予報されるほどの寒さだったが、会場は開演を待ちわびるファンで息苦しくなるほどの熱気に包まれていた。客電が消えるとアルバム『GIFTED』の冒頭を飾った"KURT"がスタートする。この曲はNirvanaのKurt Cobainがテーマだ。曲中でSALUは「自殺しなかったKurt Cobainの世界観を見せるよ」と語る。ライヴの導入部は重苦しくハードだった。続く"DON’T"では、ファストライフな知人たちの死生観を嘆いた。盟友・WON¥ENを招いた3曲目の"204"では「この人(WON¥EN)がいなかったら、俺は今こうしてみんなの前に立ってなかった。俺らのクルー・MONSTARS STREETには9人もメンバーがいたんだ。なのに今ここにいるのは2人だけ。俺らはラッパーだから2人でも歌うぜ」と話す。そして"RAP GAME"へ。人生の悲喜交々が交差するヒップホップシーンの中でも、ラッパーとして生きる強い確信を歌った楽曲で導入部を締めた。

次のパートは、"LOST"、"K1500"、"BLACK SWAN"、"FALLIN'"、"BLESSING"というSALUの半生を歌った楽曲たち。ドキュメンタリー『SALU/THE DOCUMENT "GIFTED"』でかなり赤裸々に語られているが、SALUの悲しみの根源は幼少期に体験した母の喪失だった。当初は事故死と伝えられていたが、16歳の時、実は自殺だったと知らされる。原因は父の浮気やドラッグだった。SALUの人生はそこからおかしくなったと言う。周りの大人たちが母の自殺を隠していた、という事実がSALUの精神を徐々に蝕んだ。何が正しくて、何が間違いなのか。不一致から生まれる悲しみや違和感。そこをベースにSALUは創作した。

だがそれは、自分を傷つける行為でもある。ドキュメンタリーでは「精神を病んでしまった人が発狂するのをどこかで観たことがあると思うけど、僕もそうなっちゃうんですよ。たぶんみんな想像つかないと思うけど」「(アルバムを制作していた)この2年間も結構荒れた生活を送っていました」「そうすると家族とか、親しい友達のような心を開いた人にどんどん悪い影響が出てしまう」「妻が『もう限界だ』と思うほど荒れていました」と話していた。そして「ある日、妻がこんなことを言ってくれたんです。『(自分の中にある根本的な問題を)全部先延ばしにして、自分のことを舐めて、人のことを優先してばかりいるから、そんなふうになるんじゃない?』」と。

この言葉を聞いて、SALUは次のアルバムは自分が本当に思っていることを言おうと決めた。ライヴの中盤で歌われた5曲はまさにSALUの悲しみの根源にあるものだった。

そして"BLESSING"を歌い終えた後、唐突にこんなことを言った。「みなさん、SALUが完全体になるのを見届けてくれてありがとう。やっとここまで戻ってこれたよ」。つまりSALUにとって、自分がなぜラップをするのか、そして自分はどういう人間なのかを、これまでの活動を支えてくれたファンの前でそれを明らかにすることまでが、今回のアルバムを制作した意義でもあったのだ。この時のSALUは本当に晴れやかな表情だった。

「僕はこれまで、自分の道に必要ないネガティヴなことをたくさん考えたりしてきました。しかも僕はそれがアーティストになるためには絶対にやらなきゃいけないことだと思ってたんです。こうしてステージに立つ人間は、ネガティヴなことや、人生のリスクも知った上で、何かを表現しないとお客さんに失礼だろうって。勝手にそう思ってたんです。でも今はもう(自分も含めて)みんな幸せになっていいんだと思えるようになりました」

そしてライヴは、現在の心境に至る流れを紹介するパートに。Kurt Cobainの妻、Courtney Loveに引っ掛けたラブソング"COURTNEY"や、自分の娘に向けた"FRANCES"(タイトルはKurtとCourtneyの娘の名前になぞらえている)、そして亡き母への思いを素直に綴った"GIFTED"を歌った。SALUはドキュメンタリーで今回のアルバムは「(自分が)子供から大人になるためのアルバム」と話していた。そしてタイトル曲である"GIFTED"で「さよならママ」とようやく言うことができた。妻、娘、仲間、会社、ファン……、多くの人たちの愛を受け入れて、ようやく母の自殺という心の呪縛から決別したのだった。

"GIFTED"の後は、「SALU完全体」がどんな状態かを示す時間。その象徴的な曲は"GOOD VIBES ONLY"だろう。客演のJP THE WAVYも登場し、陽気でポジティヴなバイブスを届けた。続く"FIRST DATES"、”WALK THIS WAY"、"TO COME INTO THIS WORLD"、"IN MY LIFE"では観客も一緒に合唱する。SALUのこれまでを知った上で、過去曲の歌詞を聴くと当時の彼が何を考えていたかを感じることができた。ラストは"LIFE STYLE"。「まだ君は知らない / 想像もつかない / 俺がどこから来て / どこまで行くか / 楽しみに今は待ちな / 心配すんな全部大丈夫さ / 塀の向こうや天国まで届くくらい叫ぶ」というリリックとともに、SALUにとって特別な意味を持ったライヴは幕を下ろした。

なお、SALUは4月から5月にかけて全国9都市を回る「ZERO TOUR」を開催する。会場限定で、SALUがデビュー前に制作ていたという楽曲から厳選した40曲弱を収録した『BIS0』が販売されるという。

Info

————-
2020年1月17日(金)東京都 Zepp DiverCity
「SALU THE LIVE 2019→2020 "GIFTED"」セットリスト
01. KURT
02. DON'T
03. 204 feat. WON¥EN
04. RAP GAME

05. LOST
06. K1500
07. BLACK SWAN
08. FALLIN'
09. BLESSING

10. COURTNEY
11. IN YOUR EYES
12. MY LOVE
13. FRANCES
14. GIFTED

15. SPACE
16. GOOD VIBES ONLY feat. JP THE WAVY
17. FIRST DATES
18. WALK THIS WAY
19. TO COME INTO THIS WORLD

20. IN MY LIFE
21. LIFE STYLE

————-
SALU 5th ALBUM『GIFTED』

配信URL: https://orcd.co/salu_gifted

CD+DVD+大判ブックレット
CD(全15曲)+DVD(MV4曲)収録
完全初回生産盤(7000円+税)
URL: https://www.exiletribestation.jp/products/detail.php?product_id=18926
—————-
SALU / ZERO TOUR
出演者: SALU , ELIONE (オープニングアクト) , Kvi Baba (オープニングアクト) 
チケット:前売り ¥4,000 / 当日¥4,500 
※年齢制限→未就学児入場不可 
※入場時ドリンク代別途必要
企画 / 制作: 森プロジェクト

チケット
https://ticket.line.me/sp/salu

石川公演
4/11(土):金沢DOUBLE

OPEN 17:30 START 18:00
問い合わせ:DOUBLE / 076-222-8333

茨城公演
4/18(土):水戸BUBBLE

OPEN 17:30 START 18:00

問い合わせ先 :Spyder Mito / 029-212-7788

宮城公演
4/24(金):仙台MACANA
OPEN 18:30 START 19:00
問い合わせ先:(株)ジー・アイ・ピー コンサート部 / 022-222-9000

福岡公演
5/8(金):福岡BEAT STATION

OPEN 18:00 START 19:00
問い合わせ先:キョードー西日本 / 092-714-0159

大分公演
5/9(土):大分音楽館

OPEN 17:30 START 18:00
問い合わせ先:大分音楽館 / 080-1789-1234

京都公演
5/17(日):京都KYOTO MUSE

OPEN 17:30 START 18:00
問い合わせ先:サウンドクリエーター / 06-6357-4400

愛知公演
5/22(金):名古屋SPADE BOX

OPEN 18:30 START 19:00

問い合わせ先 :サンデーフォークプロモーション / 052-320-9100

静岡公演
5/23(土):沼津ROOP SOUNDS

OPEN 17:30 START 18:00

問い合わせ先:ROOP SOUNDS / 055-954-2080

神奈川公演
5/30(土):厚木ThunderSnakeATSUGI

OPEN 17:30 START 18:00

問い合わせ先:Thunder Snake ATSUGI / 046-226-1281

related

WON¥ENがSALUとELIONEを客演に迎えた新曲"Only One"のミュージックビデオを公開

神奈川・厚木を拠点とするラッパーで、同郷のSALUのアルバム『GIFTED』にも参加していたラッパーのWON¥EN (ウォン・エン)が、そのSALUとELIONEを客演に迎えた新曲"Only One"のミュージックビデオを公開した。

SALUがKvi BabaとELIONEとのツアー『ZERO TOUR』を開催 | 未発表音源集も会場限定で発売

本日Zepp Diver City Tokyoでのワンマンライヴ中にSALUが、新ツアー『ZERO TOUR』の開催を発表した。

SALUのニューアルバム『GIFTED』から収録曲“FALLINʼ”のMVが公開|アルバムのトラックリストも公開

12/4(水)にリリースされるSALUの5枚目となるアルバム『GIFTED』から、収録曲“FALLINʼ”のミュージックビデオが公開された。

most popular

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

Floating Pointsが選ぶ日本産のベストレコードと日本のベストレコード・ショップ

Floating Pointsは昨年11月にリリースした待望のデビュー・アルバム『Elaenia』を引っ提げたワールドツアーを敢行中だ。日本でも10/7の渋谷WWW Xと翌日の朝霧JAMで、評判の高いバンドでのライブセットを披露した。