【インタビュー】FAKY 『ANTIDOTE』| ナチュラルな強さを
2013年に活動をスタートさせたグループFAKYは、昨年末にAnnaが脱退し新たにTakiとHinaが加入し5人体制として、メンバー曰く「シーズン3」の幕が開いたばかりだ。8月の"GIRLS GOTTA LIVE"、10月の"ANTIDOTE"と立て続けにリリースされたシングルは、グローバルな音楽のトレンドを巧みに取り込んだダンストラックと、「GIRL POWER」を打ち出した力強い歌詞が特長だ。
"ANTIDOTE"の歌詞を手がけたのはAwich。彼女はFAKYについて「まずみんなめちゃくちゃ可愛い!なのに自分たちがやりたいことに覚悟を決めててかっこいい。集中力も洞察力もあるし、一緒に仕事できてとても楽しかったです」と述べている。さらに同曲についても「"ANTIDOTE"は自分が嫌になる毒が蔓延している世の中で、自分が好きでいれるようにと書いた曲です。強くてもいいし、逆に弱くてもいい。強いふりしなくてもいいし、傷を隠さなくていい。正解はない、愛があればいい。っていう言葉たちが解毒剤になればいいなと思います」とコメントしている。
5人組として新たな舵を切ったFAKYは、再出発にあたりどのように楽曲と向き合ってきたのか、そしてこれからの展望とは。
取材・構成 : 和田哲郎
撮影 : Cho Ongo
- 新メンバーのHinaさん、Takiさんが加入した後のFAKYはどのような変化がありましたか?
Lil' Fang - シーズン2のFAKYよりもファンの皆様に受け入れられやすくなったのかなと思いますね。シーズン2の時は、ある意味エッジを尖らせたパフォーマンスをしていたと思うんですけど、5人になったシーズン3のFAKYは、よりお客さんとコミュニケーションがとりやすい形に見えてるのかなというのは、すごく思いますね。Takiはフィリピンから来ているし4ヶ国語をしゃべれたりするので、今まで届けられなかった国境を超えた層にまでFAKYの存在を届けられるようになったのは大きく変わった点かなと思います。特に自分たちの意識は変わっていなくて、変に媚びることもなく、エッジーな曲のイメージを大切にしたままだし、私たちもライヴを重ねるにつれ、これまではなかった反応を得られるようになってきたんですよね。
- メンバーが変わったことによってライヴでの見せ方が変わった部分はありますか?
Akina - 個人の意見ですけどシーズン2よりシーズン3の方がよりトラックがダンスミュージックにフォーカスしているので、ダンスに気合を入れられるっていう感じはします(笑)
Lil' Fang - 4人のときはレイドバックした肩の力が抜けたパフォーマンスを意識していたんですけど、今はガールズパワーとダンスにフォーカスしていこうと、私たちの中で話し合ってやっているんですよ。あと5人だとセンターが取りやすいので、そこもメリットですかね。4人と5人ではできるフォーメーションの数が全然違うんですよ。ダンスを全力で魅せようってことで、歌っていても全力で踊るというシーンが割合的に増えたのかなと思いますね。その分体力面を頑張らないと。
- "ANTIDOTE"はAwichさんが作詞で参加していますが、Awichさんの書いた歌詞に対する印象はいかがですか?
Hina - 私は"ANTIDOTE"の歌詞が一番素の自分に近い部分を表現していると思っていて。Awichさんが亡くなられた旦那さんのことを歌った"Ashes"のMVを観たときに、すごい衝撃を受けて。そういう経験をしたAwichさんが書いた歌詞だからこそ、すごい説得力があって、その歌詞を歌えることが率直に嬉しいし、自分も弱いところがあるけど、強いふりをしているところもあるから、すごく共感できる歌詞ですね。
Taki - 最初歌詞を見たときに、日本語の部分は半分くらいしかわからなかったんだけど、英語の部分をみて「これは絶対強い感じでシーズン3のFAKYにめちゃくちゃ合ってる」って思いましたね。みんなのイメージがちゃんとマッチした曲になってると思う。
Mikako - やっぱり人間って...
Lil' Fang - やばい、やばい(笑)長くなるかもしれません。
Mikako - 短く切り上げるから大丈夫(笑)。人間っていろんな強さを持ってると思うんですけど、みんな絶対弱い所があると思っていて。FAKYのメンバーも絶対そうだと思うんです。これまでの楽曲だと自分自身に対して「大丈夫だよ」って歌っているような感じだったんですけど、この"ANTIDOTE"に関しては聴いているみんなに対しても「弱いところがあってもいいんじゃない」というか、「弱さが強みになっていく」みたいなマイナスもプラスになるみたいな気持ちで歌いたいなって思いました。この曲をライヴで結構やっているんですけど、自分はそれが自然に出せていると思います。
Akina - 私もTakiと一緒で、まだ日本語勉強中なので最初から深い理解ができなくて、メンバーに翻訳してもらいました。個人的には比喩がある歌詞がすごい好きでそれもありつつわかりやすくキャッチーになってるから、そういう歌を自分たちが歌えて、クリエイティブのレベルが上がったなと思いますね。すごい好きな曲ですね。
Lil' Fang - 曲のデモ自体は去年の夏にあってめちゃ好きな曲だったんですけど、シーズン2が終わる直前だったので、4人での終わりを迎える中でやる曲ではないねって判断になって、シーズン3に満を持してって曲なんですよね。これは普通の歌詞だともったいないねって話になっていて。一見パーティーチューンっぽい曲ですけど、そうやって歌うんじゃなくて、今のFAKYとして想いを乗せた方がいいなって話になって。それでAwichさんからこの歌詞が上がってきたときに、「そうです、こういうことですよね」って本当に思って。同じ時代に頑張っている女性として言いたいことがコネクトできたような気がしていますね。私たちの中で魂で繋がった感じがしました。誰かに書いてもらった感じがする歌詞じゃないなって思いますね。
- 一緒にスタジオにも入ったんですよね、どういうアドバイスをもらいましたか?
Hina - はいブースの中にも一緒に入って。
Akina - 私は普段クセをつけた歌い方をしているんですけど、すごい正直に「クセをもっと弱めて」って言ってもらえたのがありがたかったですね。最後らへんに、やっと内面からしっかりと表現できた感じがします。
Lil' Fang - Akinaは"ANTIDOTE"だと普段と全然違う歌い方をしていると思っていて、Awichさんにレコーディングのときに「もっと気持ちで歌って」って言われていて。Akinaは確かに普段は天使のような歌い方をしているんですけど、「さらけだして歌って」って。最後の最後にどんどん良くなっていっていて。そのとき初対面だったんですけど、Awichさんとコネクトしている感じがわかりましたね。全体を通して気持ちのままに歌ってほしいとは言われてましたね。
Taki - 私はレコーディングが最後だったんですけど、時間がもうなくなっちゃっていて、一緒にブースに入れなかったです(笑)
Akina - あとAwichさんのオーラがすごいピースフルで、レコーディングいつも緊張するんですけど、今回は守ってもらえているって感じがしたので、すごいリラックスしてできましたね。
- 「みんな強いふり」というラインが印象的なんですが、皆さんそれぞれ強いふりをして失敗した経験談はありますか?
Lil' Fang - ありすぎて、絞るのが難しい(笑)
一同 - (笑)
Mikako - 私はないかもしれない。ちょっと思い浮かばないですね。
Lil' Fang - かっけえ(笑)私はかっこつけちゃいがちなので、そういうことは結構あるんですけど、メディアに明かせる話がないかもしれないです。これは今でも闘っていることなんですけど、表に出るときに強がらないと踏ん張れない時が、私の中ではあって。そういうときに無理してガッと力任せにいこうとして、これはやっぱり違うなって思ったりして。そのトライ&エラーの繰り返しは今でもやってると思いますね。ふふふ、他のみんなはないと思うので次の質問にどうぞ(笑)
- 了解です(笑) 皆さんそれぞれが思う本当の強さってなんでしょうか?
Taki - 質問が難しいね(笑)
- すみません(笑)
Mikako - 私は素直でいることだと思いますね。人って自分が素直かなと思っても、簡単なことができなかったりとか、当たり前のことをナチュラルにできる人って、一番美しいのかなって思っていて。着飾って綺麗になる/かっこよくなるっていうのは当たり前だなって、25歳になって思ったんです。そうじゃなくてナチュラルにでてくるものが、人から見て悪かったとしても、それがその人だったら強さなのかなって思うんですよね。自然に生きるのが簡単なようで難しいけど、個人的にはそういう人でありたいし、そういう人に惹かれるから。私はナチュラルな強さが本当の強さだと思いますね。
Lil' Fang - この曲について話させてもらう時に、何度も言ってるんですけど、矛盾の肯定というか、誰かから見たら嫌いな人でも、別の誰かにとっては愛しい人だったり大切な人だったりするわけで、そういう中で自分だけは自分を肯定してあげるっていうのは、この曲で教えてもらったことかなと思いますね。
Mikako - Lilが言った通りで、誰にでも好かれようとしなくていいのかなって思いますね。誰かがLilのことを嫌いでも、こっちの人はLilのことを好きでいるだろうし。
Lil' Fang - 「私が好き」って言ってくれるのかと思った(笑)
Mikako - あはははは(笑)ごめん、ごめん!
Lil' Fang - 「ありがとう」って言う準備してたのに(笑) でも自分で自分を受け入れられるようになるために必要なのは戦った数じゃないなと思っていて。私はそうじゃなくて人のことを受け入れることが大事だって思っていて。許せる強さって自分を肯定する強さだし、人を肯定できる強さにも繋がって来るんだなと思いますね。私は家族の中で色々あった時があって。父親のことをすごく尊敬しているんですけど、私だったら到底許せないことが起きたときに、父だけは「俺だけは味方にはなってやる」と言っていたときに、単純にすごいなと思って。許せるってすごい余裕のある考え方だと思ったし、建設的だなと。
- FAKYもファンをエンパワメントできるようなパフォーマンスを行なっていると思うんですが、メンバー自身がエンパワメントされるような存在っていますか?
Akina - 私は海外のアーティストがすごい好きなんですけど、LizzoとかHalseyとか歌詞で正直に歌える人がすごいかっこいいなと思いますね。
Hina - うーん(しばらく考えて) もちろんその都度、その都度かっこいいなと思うものとかはあるんですけど、憧れたりする存在っていうのはいなくて、自分が思う理想像の方を大事にしていますね。
- その像はどんな感じですか?
Hina - うーん..こういうインタビュー、ちゃんと答えられるようにしないとダメですね。こういうこと考えるとうるうるきてしまって..
Lil' Fang - そしたら一回飛ばしましょう!次!
Taki - 私が一番インスパイアされるのは私の家族ですね。家族が幸せな状態でいることが一番力をもらえる。
Mikako - 人として生きていくうえでは私も両親ですね。両親の背中をみて色々教わってきたので。
Lil' Fang - 私は倖田來未さんが初めてファンになったアーティストさんなので。小さい頃から見てきたアーティストが今も第一線でやってらっしゃって。今でも勝てない部分しかない強さを持っているのは、アーティスト活動を続けていく中で、とても見習いたいしこれからも追いかけていきたい背中だなと思います。一生ヒーローなんですよね。楽屋にご挨拶させてもらう時も、今はめっちゃ喋ってるのに、本当に一言も喋れなくなるんですよ。
Mikako - いつも面白いのに全然面白くないんですよ(笑)
Lil' Fang - 他のアーティストさんの時は楽屋挨拶が一番生き生きしてるんですよ。倖田さんの時は全然ダメですね。
- Hinaさんおちつきましたか?
Hina - パフォーマンスとか曲とかで、みんなが思ってても言えないことを代弁して、共感させられるのもメッセージを伝えるのも、私たちができることだと思ってるんですよ。めっちゃ正直に言っちゃうと、今は誰かに憧れるって気持ちよりも憧れてもらえるようになりたいって言う気持ちの方が強いから。それに向かって進んで模索している最中なのかなって思いますね。自分たちもみんなに伝える役目をしつつ、自分たちもそういう存在になれるよう進んでる最中だから。その両方をやっていきたいですね。
- サードシーズンのFAKYとして成し遂げたいことはありますか?
Mikako - 5人としてはワールドツアーですね。これは先に言っておきます(笑)個人的には自分の表現したいことを音楽でもファッションでもやって、わかってくれる人が付いてくるじゃないけど、自然と誰かにとって「これってこうやっていいんだ」っていう指標の存在になれたらいいなって思いますね。それは「こうしなきゃいけない」とかじゃなくて、正解・不正解ないからって思ってもらえたらと思いますね。
Akina - Mikakoが言ったワールドツアーはもちろんそうなんですけど、私はアメリカの人なので『Coachella』にいつか出たいなって思いますね。アメリカの大きいフェスに出たいなって思いますね。
Taki - 私は日本に一年くらい住んで思うのは、もっと日本の音楽を海外に出したいなって思いますね。ママは前から日本に住んでたから、日本の曲ずっと良かったって言うんですけど、他の人はJ-Pop聴いたことあるよくらいのレベルなんですね。でもダンスとボーカルグループのFAKYなら、海外でも売れやすい形だと思うから、みんなも思ってると思うけど、それが個人的にゴールになってる。
Hina - 私はワールドツアーとかも、もちろんやりたいんですけど通過点として、日本人として武道館に立ちたくて。誰からも武道館って一番名前が出てくるし、象徴的な場所だから。
Lil' Fang - 私リアルにめっちゃやりたいから、すごい書いてほしいんですけど、まじでみんなの地元でライヴがしたいです。
一同 - おー!
Akina - やばいね。
Lil' Fang - 凱旋じゃないですけど、やってみたいですね。(Takiに)どこにする?
Taki - 静岡(笑)
Lil' Fang - それ生まれたとこじゃん(笑)自分のホームタウンは?
Taki - そしたらパリ行く?
Lil' Fang - いいじゃん!私東京で福岡も、パリもフィリピンもいけるし、LAも沖縄もいけるし。
Mikako - あ、沖縄行きたい。
Taki - なんで静岡行かないの(笑)?富士急でライヴしたい!
Lil' Fang - 静岡はみんなで遊びに行こうって。でもせっかくこんだけみんなバラバラなので、行かなくてどうするんだろうなって思ってます。
Akina - もう1つは、日本をちゃんと代表できるグループになりたくて。韓国だとBTSとかBLACKPINKがパッと思いつくじゃないですか。日本っていえばFAKYだよねってグループになりたいですね。
- でもYouTubeのミュージックビデオのコメントも、どんどん日本語の方が少なくなってますよね。海外でもライヴをやっていて、熱いリアクションを受けたりしますか?
Lil' Fang - 想像以上のリアクションがありますね。普段はSNSとかコメント欄でしか感じられないんですけど、実際行ったら「いた!」みたいな。本当に会いに行かなきゃいけないんだって思いますね。
- もう今年も11月なんですけど、今年はどういう1年で来年はどういう1年にしたいですか?
Mikako - 仕事面では今年はシーズン3が始まって、正直私は不安でした。Lilと私に関しては最初からいたメンバーだったので、良いことも悪いことも経験して、メンバーチェンジはまたかっていうのはありました。でもFAKYは自分の中の一部で絶対に守り続けたいと思ってたので、腹をくくって「やる」って決めた。不安な気持ちはあったけど、海外でもライヴの機会も増えているしも、たくさん経験を積ませてもらって、泣いてまで喜んでくれるファンもいたりした時に、今までやってきたことが間違いじゃないんだじゃないけど、これでいいんだって思えて。来年はこの自信をそのまま持って、自分がやりたいファッションの仕事をやりたいから、あと一ヶ月ちょいくらい勉強します。
Akina - 私は軽く聞こえるかもしれないけど、これまで一番年下のメンバーだったんですね。でもTakiが入ってきて、この1年自分自身も本当に成長したなあって思いますね(笑)この1年で大人になれた実感がありますね。前までなかった自信もついたし、来年に向かいたいです。
Mikako - Akinaは大人になったと思う。昨日もずっとお世話になってるヘアメイクさんとも「Akina大人になったね」って話してたんですよ。リハでも適切なことを言ってくれる、お姉ちゃんになったというか。
Hina - 私はこの1年はFAKYに入って、全部が初めてのことだったんで、1つ1つのことをやっていくのに必死だった1年でしたね。初めてってだけですごい良くも悪くもインパクトがあるっていうか、見方も変わってくるから、来年1年がFAKYが本当に進化したかの勝負の年だと思っていて、今年1年をさらに超えていけるか頑張り次第だと思うので、そう思ってもらえるように頑張ります。
Taki - 私はこの1年は日本にアジャストする年で。日本語も難しいし、文化も環境も全然違かったけど、頑張って合わせてきたんですけど、フィリピンではずっとTVの仕事をしていて、ドラマも出ていたので、日本でもTVや雑誌に出れるようになりたいです。来年はそこを頑張りたいですね。
Lil' Fang - 今年は個人的に喉にポリープができて手術をしたり、サードシーズンが始まったばかりだったのに私が止めてしまったところがあったりして、とても苦しい1年の始まりでもあったし、同時にすごくメンバーやスタッフやファンとか支えてくれる人がいるってわかった一年でもあって。入院中にみんなで動画とかくれたりして。来年は支えてもらった分返したいなと思って。
Mikako - メンバーに(笑)?
Lil' Fang - あんたはいいわ(笑)まあ、でもそうですね特にメンバーとスタッフには返したいな。本当に新メンバーの2人も色々なものを犠牲にしてFAKYに入ってきてくれてると思うので、その恩を返したいな。私とMikakoが7年やってきたFAKYに入って良かったなって思って欲しいし、もっと新しいFAKYを一緒に作っていきたいなって思いますね。この一年はお試し始めましたって時期だと思うんですよ。プレゼンテーション的な1年だったので、ここからはシンプルに勝負に変わるので、自分たちの経験も含め見せつけられるようなFAKYになれたらと思いますね。
Info
■「ANTIDOTE」楽曲配信はこちらから
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