【インタビュー】19XX | ニヒリスティックなサウンドで注目を集める韓国のニューフェイス

昨年デビューシングル”Lights”を発表するや否や、UKアーティストDisclosureの来韓公演のオープニングアクトを務め、夏にはMaison Kitsuneの新しいコンピレーションアルバムを通じて”Freefall”を発表し、韓国のニュー・フェイスとなった19XXをご存知だろうか。大手芸能事務所であるSMエンターテイメントやコカコーラとの作品でも知られているピクセルアーティストのJoo Jaebumによって制作されたアート性の高い”Free Fall”のMVはみるみるうちに、その再生回数を伸ばしている。K-POPやK-HIPHOPなど力強い印象の音楽がメインストリームで多く聴かれている中で二人が表現している物悲しさや、憂いのような感情、そして幻想的で高いクオリティのビジュアルワークに注目が集まっている。今回は今年デビューしたばかりの二人のMV撮影現場に話を聞きに行ってみた。

インタビュー Shim Eunbo

インタビュー・通訳 Erinam

写真 : Lee Guno

- FNMNLの読者に自己紹介をお願いします。

ジノ - ヒップホップ、エレクトロニック、ロックをベースにフュージョンさせた音楽を作っています。ボーカルは主に私が務め、ラップはギホがしています。

- 19XXというグループ名は、どういう意味でつけられましたか?

ジノ - 19XXは文字通り、1900年代という意味です。レトロさや懐かしさを連想させる感じがありますし、世紀末的な感じもあって。初期はサイバーパンクの世界観に関心が強かったので、その感覚ともよく合いました。

- 韓国アーティストなのに、初めてのインタビューが日本のマガジンというのが面白いです。どんな気分ですか?

ジノ - すごく良いですね。私はバンドを始めたときに最もよく聴いていたバンドがASIAN KUNG-FU GENERATIONです。その時から、日本の音楽に関心が強かったですから、日本のメディアの取材を受けるのは格別ですね。

ギホ - 音楽だけじゃなくて、日本文化に影響を強く受けています。世紀末的な部分にも影響を最も多く受けたのが『AKIRA』でした。

- ギホとジノは、19XXとして活動する前から音楽活動をしていましたよね。

ギホ - DJでした。EDMトラップやヒップホップを中心としたプレイをしていて、曲作りも。梨泰院、弘大など場所を選ばずプレイしていましたが、DJではなくアーティストとして活動したいと渇望していましたね。そんな時にジノと出会い、一緒に活動できたら、その欲求を満たすことができるかなと考えました

ジノ - 幼い頃からギターを弾いていました。パンクバンド、エモコアバンドでギタリストとして活動し、一人で活動することになって、エレクトロニックミュージックを作るようになって。ベースミュージックをベースにしたプロデュースを勉強しましたね。

- 19XXのヒップホップ、ロック、EDMなどが混ざり合った音楽が生まれた理由は、メンバー達のルーツからきているようですね。多くのジャンルをブレンドするプロセスは簡単にはいかないと思います。

ジノ - なので、曲ごとに制作する方法が異なっています。ギターから始める時もあれば、TR-808で始めることもある。

ギホ - 曲ごとに感じが違う理由もそこにあります。まだ曲数が少なく、すべての音楽が異なって聴こえるだろうけど、地道にやっていけば19XXだけのカラーを知ることができるようになるしょう。今は私たちが得意なもの、好きなものを積み上げている最中だと思いますね。

- Disclosureのオープニングアクトで19XXが参加しましたね。それが初公演だったと思うのですが、プレッシャーはなかったですか?

ギホ - プレッシャーがないわけではなかったです。さっきEDMのDJだったと言いましたよね。Disclosureといえば、そのシーンでは誰もが知っているアーテイストですから。DJではなく、ライブ公演として舞台に立つことに不慣れでもありました。さらに初舞台で、7〜8千人の前でライブをしなければならなかったんです。それでもジノがうまくやってくれて、初めての公演としては満足でした。

ジノ - 初めてにしては悪くなかったですが、サウンドや構成では、物足りなさをたくさん感じましたね。次どのようにするべきかは分かりました。初めてのライブでは、このような場所ではといった想定をせずに曲を作ったりミックスしていたので。こういった点を直さなければいけないでしょう。

- その後、Waterbomb Festivalの舞台に立ちました。そこでは、ライブではなくDJセットでプレイした理由は何ですか?

ギホ - ウォーターバンフェスティバル自体がライブをすることができる場所ではなかったんです。水鉄砲を撃って遊ぶフェスティバルなので、私たちのライヴの構成とは合わなかったですね。ギターも、ノートパソコンも必要なのに、水を撒くとなれば楽器が故障する可能性がありますから。また、同時にライブだけではなく、DJプレイもできるのもお見せしたかった部分もあります。

- 19XXの音楽やビジュアルを見ると、赤が多く使用されています。どのような意味を持っているのでしょうか?

ジノ - 正確にはネオンです。私たちはネオンが好きで。その中で、赤が私たちの音楽と最もよく合いました。妙な感じがあるじゃないですか。西洋のアーティストが、東洋に来るとネオン街で撮影したりとビジュアル制作に多く活用していますよね。ですが、東洋のアーティストはネオンをあまり活用していないように感じました。ネオン街の当人である東洋人が使ってみればどうかと思ったんです。

ギホ - ネオンサインがある通りに対して、繁華街のような良くないイメージがあるからそうなんだと思うのですが。しかし、海外の人は不思議に感じたり、ただ綺麗だとだけ考えている。むしろ私たちの偏見のために美しいものを見逃しているではないかと思ったんです。

- 最初のシングル"Lights"の後に"Fantasy"、"Freefall"が発表されました。その中の二曲("Lights"、"Freefall")にピクセルアートが使用されたのは?

ジノ - 最初に、私たちが考えていたイメージが実写ではすぐに実現するのが難しかったんですよね。それを実現するのが可能でありながら、現実的な方法を探してみたところ、ピクセルアートがよく合いました。同時に身近に力のあるピクセルアーティストが多かったんです。

- "Freefall”のミュージックビデオは、ピクセルのアーティスト、ジュ・ジェボムと共に製作されました。なぜ彼と組むようになったのですか?

ギホ - 私がジュ・ジェボムの作品を好きで。19XXの活動前から作品がとても素晴らしいと連絡していて、親交がありました。そんな中"Freefall"をMaison Kitsuneで発売することになったのですが、そこにもピクセルアートで描かれたキツネがあって。だからジュ・ジェボムに連絡したところ、快く一緒にやろうと言ってくれました。

- 実写でのアートワークやミュージックビデオを作る考えはないのですか?

ギホ - もちろんあります。次は必ず実写で表現してみたい。

ジノ - どのようなものを実写で表現するかについて、今後探していかなくてはならないですね。私たちの趣向は既にありますが、まだ具現化できていない。色々と試しながら、少しづつ完成されていくのでないかと思いますね。

- “Freefall”では実写のアートワークを使用してますが、19XXが望んだような色彩にはなっていなかったようですね。

ギホ - そうですね。率直に言えば、アートワークはどんなものか知らないまま進行しました。Kitsuneにお任せしたので、私たちが意図したものではなかったが、それでもとても良いアートワークなので気に入っています。

- 19XXだけのカラーを探していくために、今のように様々な人に会う必要がありそうですね。必ず維持しなければならない19XXの核があるとすればなんでしょうか?

ギホ - 私たちの感性が重要です。今後フィーチャリングをお願いしても、私たちと合う方とする予定です。私たちの音楽は憂鬱な部分があるけど。精神的なメッセージでは希望を伝えているんです。

ジノ - ニヒリズム(虚無主義)、憂鬱感を表現したようなものが韓国にあまりないんですよね。私自身がそういう感じの人なので、音楽にもそういった部分が多く反映されています。音楽では私たち自身の話をしているんです。それを誰かが共感してくれれば良いと思っています。

- "Freefall"をMaison Kitsuneからリリースすることになったきっかけは何ですか?

ギホ - メールで直接連絡を貰いました。韓国でコンピレーションアルバムを発売するにあたって、私達の楽曲を入れたいという内容で。それに返事をしたら、すぐに返事が来て"Freefall"を発売したいという内容でした。

- Kitsuneの影響力は大きいですよね。最初に連絡を受けた時の気持ちはいかがでしたか?

ジノ - 私は以前よく聴いていたTwo Door Cinema Clubがよくリリースしていたという事もあり、とても嬉しかったですね。

ギホ -  私もそうでした。フレンチハウスといえば、Maison Kitsuneだった時期があったじゃないですか。そう思うと、気分がいいですよね。

- 19XXの今後の計画を教えてください。

ジノ - 今後発表される曲は多いですね。公演もより活発にしようと計画中です。

ギホ - EPを準備中です。フィーチャリングしてくれるアーティストを捜しています。すぐに"Freefall"のライブバージョンも公開される予定なので期待してください。

- フィーチャリング話が出たついでに、このインタビューを読んでいるアーティストに19XXを紹介するなら?

ギホ - 私たちだけの音楽性やバイブは独特なものだと思う。もし自分の音楽に違う要素が必要なら、私たちをチョイスするのは良い相乗効果があると思います感性的な部分において良い相乗効果があると思います。

ジホ - 音楽的に合うアーティストとしたい。一緒にしてみたいことが多いです。独特なセンスを持ったアーティスト同士が、1曲をまとめることができたらそれは美しいことでしょうね。

- 最終的にしたいことは何ですか?

ギホ - 公演。日本で公演するのが夢です。私が文化的に好きな場所で行うことができれば嬉しいですね。ジノが勉強していたオランダにも行ってみたい。最後に、ツアーをしながら観光もして、そんなことが最後の目標です。

ジノ - 私はオーケストラと一緒に演奏をしてみたい。私たちの音楽をオーケストラでアレンジして、壮大な公演をする事です。

- それなら、今すぐしたいことは?

ジノ - IPAが飲みたい。

ギホ - 旅行。温泉に行きたい。

 

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