【ライヴレポート】5lack | 大舞台でも自分らしく 赤坂BLITZワンマンで最高の「KESHIKI」を見せる
5lackが10月8日に東京・マイナビBLITZ赤坂でワンマンライブ「KESHIKI」を開催した。チケットは前売り券で完売し、客席は最前列から最後尾にあるPA卓の周りまでびっちりと観客で埋まった。
客電が落ちるとkZm(YENTOWN)がオープニングアクトとして登場する。「マジでこんな耳の肥えた人たちの前でライヴできて光栄です。YENTOWNというところからやって来たkZmと申します」と挨拶。観客のスマホのライトだけでパフォーマンスする"Dream Chaser"を含む4曲を歌って会場を暖める。
ステージはDJブースとプールサイドで見かける3mほどの高さの監視台のみというシンプルな構成。暗転した会場に一筋のレーザーが走ると暗闇から5lackが現れる。重たく美しい"Twiligh Dive"でワンマンライブの幕を開けた。アンビエントなビートに、独特なリズムを刻むラップ、さらにソウルフルなフックは、5lackの新境地だ。荘厳な雰囲気が空間を支配し、曲の終わりとともに再び静かな闇に包まれる。そこに一発の銃声。同時にストロボで一瞬ステージが照らされる。そこには3人の影。それはもちろん、5lack、PUNPEE、GAPPERのPSGだ。曲はPUNPEEのソロアルバム『Modern Times』から、"Stray Bullets"。まさかの人気曲が2曲目に披露され、客席から割れんばかり声援が送られた。
PUNPEEはそのままバックDJとしてブースに入り、レゲエビートの"Weekend"を鳴らす。5lackが「盛り上がる準備はできてるか」と観客に呼びかける大歓声が跳ね返ってきた。3曲目はNTTドコモのCM曲としてもおなじみの"東京"。今回はSILENT POETSのアルバム『dawn』に収録されたExtended Dubバージョンをエディット。よりダイナミックで壮大なアレンジを聴かせてくれた。
さらに前半はOlive Oilと5O名義で発表したアルバム『5O2』から"もういい"、2015年に発表した『夢から覚め。』で強烈な印象を残したKILLER-BONGビートの"HNGRI KILLIN!!"、2ndアルバム『WHALABOUT?』収録のアーリークラシックス"That’s Me"とファンも納得のナンバーが次々と披露される。しかも"That’s Me"は、後半のヴァースがアカペラ。5lackの安定感あるラップに観客は釘付けになる。当然、パンチラインの「Musicのみ」は会場全員が一緒にシャウトした。
kZmとの"Wolves"のあと「元気なうちに愛について歌っとかなきゃね」とメロウなラブソング"But love"を歌う。そして次の曲はなんと"Hot Cake"だった。この曲は1stアルバム『MY SPACE』の収録曲で、16flipがビートを手がけた5lackの代表曲。イントロが流れると歓喜の声を上げる。1ヴァース目から最後まで大合唱となった。続いて鳴り響いたのは、一転してストイックなSick Teamの"踊狂"だ。ISSUGIもステージに登場して、BudaMunkのタイトなビートに切れ味抜群のラップを乗せていく。続けてハードコアなブーンバップの"Street Wars"を歌い終わると5lackは「ヒップホップにはいろんな種類があるけど、いまみたいのが(ピュアな)『ヒップホップ』っていうんだよ」と語った。
ライヴはBudaMunkビートの"Come Inside"から後半戦へ。"Feelin29"では互いにインスピレーションを受け合うラッパー・KOJOEが現れる。5lackはKOJOEに対して「本当にラップがうまい。日本でも(KOJOEのような)素晴らしい音楽がもっと聞かれればいいのに」とリスペクトを送った。そしてDogear Recordsからリリースを行った初期のナンバー"Good More"と"NEXT"を歌ったあと、MONJU(ISSUGI、仙人掌、Mr.PUG)との昔話をする。そしてライヴ本編最後の曲は"CUS"。5lackのいまのモードが反映されたこの曲は、11月21日にリリースされるニューアルバム『KESHIKI』に収録される。
熱烈なアンコールに応えるように、5lackは再びステージへ。PUNPEE&GAPPERとともにPSGの"愛してます"を歌った。もちろん会場からは合唱が巻き起こり、大団円に向けてピースな雰囲気が作り出される。続けて5lackは電話というキーワードを話し出すと、最後のゲストで唯一のヴォーカリスト・iriが登場。彼女は5lackがプロデュースした自身の楽曲"Telephone"でスモーキーなヴォーカルを響かせた。
ラストソングは「俺の話しを聞くのはあいつだけ」と歌う"Girl if you"。PUNPEEが「今日は話を聞いてくれる人が多くて良かったね」と笑う。観客も皆笑顔だった。あるものは声をあげ、あるものは柵を叩き、あるものは手を上げて5lackを祝福していた。今回のライヴは、来たるニューアルバムにちなんで「KESHIKI」と銘打たれていた。5lackがマイナビBLITZ赤坂のステージの上から見た景色はどんなものだったのだろうか? それは彼のみしか知り得ないが、クラシックからマニアックまで、5lackのさまざまな面を垣間見ることができた今回のライヴは、観客にとっては間違いなく素晴らしい景色として映っていた。大きなステージでも、あくまで自分らしく。常に進化し続ける5lackは、その眼差しをさらに先に向ける。(宮崎敬太)
Info
5lack「KESHIKI」トラックリスト(2018年10月8日 東京都 マイナビBLITZ赤坂)
■kZm
絶唄
WANGAN
Emotion ( Chaki Zulu Remix )
Dream Chaser
■5lack
01. Twilight Dive
02. Stray Bullets feat. PSG/PUNPEE
03. Weekend
04. 東京/SILENT POETS
05. もういい/5O (5lack x Olive Oil)
06. HNGRI KILLIN!!
07. That’s me
08. Wolves feat. kZm/kZm
09. But Love
10. Hot Cake
11. 踊狂 feat. ISSUGI & BudaMunk/Sick Team
12. Street Wars feat. ISSUGI & BudaMunk/Sick Team
13. Come Inside
14. いつも想う
15. Feelin29 intro
16. Feelin29 feat. KOJOE
17. Good More
18. NEXT
19. CUS
<アンコール>
20. 愛してます feat. PSG/PSG
21. Telephone feat. iri/iri
22. Girl If you