ミュージシャンは音楽業界全体の売り上げのうち12%を得ていることが判明 | 変わりつつある産業構造
先日、2018年上半期のアメリカにおける音楽の売り上げのうち、ヒップホップが2年連続で全体1位のシェアを獲得したことを取り上げたが、実際のところ、その売り上げはどのくらいの割合でアーティストに還元されているのだろうか?
世界有数のグローバル銀行であるCitiが新たな調査結果を発表した。
約80ページにもわたるこの調査は、アメリカの音楽業界における金の動き方を分析したもので前述の問いの答えを明らかにしてくれている。
調査によると、アメリカの音楽リスナー達は以前よりも音楽に対してお金を払うようになったらしく、年間で200億ドル(約2兆3000億円)以上の金を音楽に使っているとのこと。加えて、ストリーミングやCDセールス、エアプレイ、ライブそして広告など、全てを要素を含んだ音楽業界全体の売り上げは、2017年には年間で約430億ドル(約4兆8000億円)にものぼったそう。
しかし、そのうちアーティストが受け取ったのは全体の12%である50億ドル(約6000億円)にしか満たないというのだ。
なぜこんなにも少ないのだろうか。答えは簡単である。収益の大半はアーティストではなくオンラインプラットフォームの運営会社やレコードレーベル、ラジオ曲などの中間業者に行ってしまっているのだ。
しかし、12%とはいっても2000年の調査では7%で、数字を伸ばしているのは事実だ。この増加の要因としてはコンサートビジネスの強化と、自ら自身の楽曲をリリースして多くの収益を得るアーティストが増えたのが要因だそう。
つまり、今の状況は、ストリーミングサービスが中心となっている現代の音楽システムに音楽業界の構造が追いつく過程の途中だということだ。
Citiはこの先、音楽業界がストリーミングサービスを代表とするデジタル世代に追いつけば、様々な会社の統合が図られ、音楽関連企業はアーティスト達により良い契約をオファーできるようになると予測している。
確かにヒップホップを中心に今の音楽に関する収益の大半はストリーミングサービスが生み出しているといっても過言ではない。
音楽関連会社がデジタル世代に合わせていくのは自然な流れといえるだろう。
この調子でいけば、アーティストの受け取る収益はだんだん増えていくと思われるが、これからはその収益のバランスが重要になってくるかもしれない。