【インタビュー】GLAMHATE | 東京のファッションシーンへの嫌悪と疑問を投げかけるブランド

デザイナー藤原大輔が手がけるブランドGLAMHATEが、2ndシーズンとなる"VAMPYRE”の展示会を、4/19(木)〜4/22(日)に渋谷のRoom 412 Gallery にて開催する。

今回の展示会では“dose your BLOOD have LIFE in it?” という問いかけをマニフェストに掲げ、東京に蔓延する誰かの「かっこいい」を鵜呑みにしただけの意思の宿らないスタイルに嫌悪と疑問を投げかけている。

展示会では写真家のマコトオカザキ、画家・PINOとの共同制作も展示し新シーズンのアイテムの受注が可能だ。

GLAMHATEは「嫌悪を魅惑に輝かせる」をコンセプトに2017年4月よりスタート。デザイナーの藤原にブランド設立のきっかけや、新シーズンについての話を聞いた。

取材・構成 : 西原滉平

写真 : 長井日菜子

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- 今までのコレクションと同様に、今季もアイテムのほとんどを自分の手作業で制作したのですか?

藤原大輔 - 去年までは本当に簡単なTシャツとか以外は、全部自分が作業して作っていました。でも今回はアイテムごとにある程度の形までは工場に頼んで、それ以降の工程を自分で制作するという分業的な形をとりました。かなりショーピースっぽい仕上がりになると思います。

- 今までのコレクションもショーピース感はあったと感じるのですが?

藤原大輔 - 確かにそうかもしれません(笑)。でも実は今回はいろんなファッションプレスにもGLAMHATEを、ファッションブランドとしてではなく私の思想を売り込む宗教レーベルとしてリリースを送っていました、それでまあまあドン引かれているんですけど(笑)。だから今まで以上にコンセプト含めルックや展示など、インスタレーションとしての全体表現にも力を入れています。分かりやいところだと、GLAMHATEの服を一つも身につけていないルックもあります、そういうテンションです。

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- 宗教というのはどういう意味ですか?

藤原大輔 - まずGLAMHATEというブランド名の意味自体は「嫌悪を魅惑に輝かせる」というもので、自分自身が、東京のイケてるっていう価値観自体に嫌悪感がありすぎて、それに反抗するというよりは自分のなかでその嫌悪感を昇華するために始めました。今の時代、何をすればかっこいいかなんて本当に全員分かっている。私は東京のファッションもすごく嫌いだし、自分の見た目も嫌いだし、自分の性別も嫌いだし、その嫌悪感を解消する手段が服だと思ってきました。嫌いなものがある人って世の中にいっぱいいるし、そういう嫌悪が原動力になることって悪いことではない。それを何かが嫌いで悩んでいる人に伝えられればいいなという考えが根本にあります。

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- 今回は“VAMPYRE”というテーマですがどういう意味ですか?

藤原大輔 - 題材として扱ったのは映画監督の岩井俊二の『ヴァンパイア』という映画ですが、今回も制作をするにあたって一番大きな軸としてあったのは、やはり今の東京ファッションシーンへの嫌悪です。自分の周りにかっこいい人は多いと思うし、街を歩いていてもかっこいい人だらけだと思うけれど、あまりにもみんなゴール自体が「かっこいい」になりすぎていて、そこまでのプロセスも薄っぺらければそこから先も何もない。みんな、“かっこよくなりたくて、そのためにかっこよくなっている”、それで完結している人が多すぎるなと思います。

- 具体的に、それを強く感じた瞬間はありますか?

藤原大輔 - すごく印象に残っていたのは、あるヒップホップのクルーのパーティに行ったときに、オーディエンスがびっくりするくらいみんな黒ビーニーをかぶっていた光景です。そのパーティはイケてる人たちが主催のいわゆるイケてる人らが集まるパーティ。ファッションにさほど興味がない人たちならまだしも、あなたたち本当にそれでいいの?って思ってしまいました。クリエイターがたまたま黒ダウンジャケットに黒ビーニーを身につけていたのはもちろんいい、けれど日本のメディアは「イケてるひとのファッション」としてそれを紹介したがる。そういうのがあまりに多すぎてうんざりします。いろんな場所でそれを見ると「みんな感染しているな」と思い始めたんです。ヴァンパイアって吸血した人を感染させていきますよね、ヴァンパイアというのを掲げているのは、東京の今のシーンに対するそうした揶揄です。

副題の “dose your BLOOD have LIFE in it?” という言葉に込めていますが、あまりにも服装などに意志が宿ってないひとが多すぎると思います。「かっこいい」なんてもう飽和しているし、イケてるものの正解なんてみんなもうみんな知っているのだから、今更改めてあなたがその正解を提示しなくていいんだよ、と言いたいです。

- 東京のシーンに嫌悪感があると言っていましたが、東京と他の都市は藤原さんにとってどう違いますか?

藤原大輔 - そんなに海外に詳しいわけではないのですが、ロンドンには凄くよく行きます。きっとロンドンでも同じ服装、同じ演出がはびこっている場所もあると思うけれど、私の印象だと、あっちではその景色を何度も見たときに、「それさっき見たじゃん!」ってしっかり言える人が多い気がします。東京はみんな一様に「へえ〜」と言って、ただただ飲み込む。

- GLAMHATE及び藤原さんにとって服は、あくまで表現のための一つの手段にすぎないような印象を受けます。服以外の手段で思想を表現するとしたら他に何がありますか?

藤原大輔 - あるとすれば、街頭演説したり選挙に出るなりして、より多くのひとに直接、それおかしいよって声を大にして言っていきたいです。

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- 自分と同じように東京に嫌悪をなげかけながら活動していて共感する人はいます?

藤原大輔 - YOUTH QUAKEのKeiくんという人がやっている、CAR SERVICEというブランドがあります。彼は車が大好きで、彼のブランドのインスタグラムは服の写真ではなく街で見かけたかっこいい車の写真ばかり。でもそれ、凄くなるほど、と感じます。素直に、車が好きだからアパレルブランドだけど車のかっこよさを売っているんだなっていう。それって変なことではないし、それくらい自由に自分の趣向や表現の仕方が出てくるのって当然だと思います。ジャンルは違えど、この人はこれが好きだから素直にこれをやっているんだな、と感じられる人はみんな好きです。

- 最後に展示会への意気込みを。

藤原大輔 - 全身全霊をかけて準備をしてきました。ぜひ現場でご覧いただければ嬉しいです。

以下は新コレクション”VAMPYRE”のルックの一部。

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展示会情報は以下。

<info>

GLAMHATE 2nd collection “VAMPYRE” exhibition

日時:4/19(木)〜4/22(日) 13:00〜22:00

場所:Room 412 Gallery

〒150-0031 東京都渋谷区桜丘町15-8 高木ビル4F

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