アメリカの2017年のヒット曲における男女間の格差をテーマにした研究が発表
南カリフォルニア大学の研究機構、USC Annenberg Inclusion Initiativeが新たな研究を発表し、「2017年の音楽業界は男性に偏ったものであった」といった報告を出した。
研究機構の創設者であるDr. Stacy L. Smithが中心となり行った"Inclusion in the Recording Studio?"というこのレポートによると、2012年〜2017年におけるBillboardの年間Hot 100チャートに入った600曲を分析した結果、アメリカのポピュラー音楽業界における男女間の格差が浮き彫りになったという。
研究によると、2017年は過去6年間で女性アーティストによるヒット曲のパーセンテージが最も低い年だったという。2016年には28.1%だった数値は、2017年には16.8%にまで落ち込んでいる。さらに、この6年間の全体の統計において、女性がソングライターとしてクレジットされている曲はたったの12.3%で、さらにプロデューサーに関しては、女性の比率は全体のたった2%であったことも明らかとなった。この中でも、「白人以外」の女性プロデューサーに絞れば、その数はプロデューサー全体の651人中でたったの2人だった。
ちなみに、2016年のRolling Stone誌のインタビューで、Grimesは女性プロデューサーについて、「女性のプロデューサーの数が少ないのは、女性がそれに興味がないからっていう理由じゃない。女性がこの世界に入っていくことは難しいってことなの。ここには女性にとって非友好的な環境がある。」と語り、プロデューサーの世界における排他的な構造について指摘している。
昨年は、SZA、Cardi B、Nicki Minaj、Rihannaなどの楽曲がBillboardの年間Hot 100 にランクインされ、またシーンにおける彼女達の存在感も大きかったように思える2017年であった。しかし、そのチャート内容を詳しく見てみると、女性アーティストとして最も上位のHalseyは7位でランクインしているが、これはThe Chainsmokersの"Closer"でのゲストとしての記録であり、それ以降では24位のCardi B "Bodak Yellow"まで女性アーティストが一切顔を出さない、という状況が確認できる。
研究を行なったDr. SmithはBillboardに対し以下のように語っている。
「踏むべき最初のステップとしては、データを吟味し、それが音楽業界に対する現状の認識とどのくらい一致しているのか、また『誰が新しくレーベルと契約をしたか』や『誰がプッシュされているか』などを冷静に分析することです。この業界は、ビジネスの観点からより非・排他的な実践をしていく必要がありますし、また音楽制作の現場において全ての才能にチャンスが与えられ、性別や人種的なアイデンティティによる偏見の排除を保証するような方法について考える必要があります。」
Dr. Smithらの研究グループは、このデータに基づいてさらに研究を進めるとし、これによりプロデューサーやレーベルの経営陣らの間で音楽業界における偏見の現状の認識が広がっていくことを期待しているという。
研究レポートの原文はこちらからチェックすることができる。
(辻本秀太郎)