ThundercatがFM802『LNEM』に出演した際の未公開分も含んだ秘蔵インタビュー

FM802で深夜3:00〜5:00に、日替わりで異なるDJが担当する番組『LNEM』。火曜の『LNEM Tuesday』では、ヒップホップやR&Bなどをフェイバリットとする河嶋奈津実がDJを担当し、海外のHIP-HOP/R&B/POPS/EDMなどのニューリリースを中心に選曲している。

そんな『LNEM Tuesday』とFNMNLのコラボコーナー。番組に出演するゲストとのトークコーナーを、番組では惜しくも放送できなかった部分も含めて公開していく。

今回はFlying Lotus率いるレーベルBrainfeederに所属する凄腕ベーシストのThundercat。2月にKendrick LamarやWiz Khalifa、Pharrell Williamsをフィーチャーしたアルバム『Drunk』をリリースした彼は、日本ツアーを敢行。

大の日本好きとして知られている彼に河嶋が迫る。

河嶋

河嶋 - 日本のファンだと聞いたのですが、これまで何度も日本に来ているのですか?

Thundercat - そうだよ。何回も来てる。初めて来たのは16か17歳の高校1年生のときに、リオン・ウェアのバンドメンバーとして来たんだ。それが初来日で、それからもスーサイダルテンデンシーズ 、エリカ・バドゥ、フライング・ロータス、スヌープ・ドッグとも一緒に来てるよ。

河嶋 - スーパースター達ですね!

Thundercat - 色んなミュージシャンと仕事をして、毎回仕事として来た。でも俺自身子供の頃から日本にずっと来たかった。おかしな話だけど、初めてドラゴンボールZを見た時はたまげたよ。

河嶋 - 日本のもので好きなのはアニメと聞いていますよ。ドラゴンボールとかガンダムとか

Thundercat - そうだよ。ガンダムも好きだ。

河嶋 - 今回の来日ではどこかへ出かけましたか?買い物だったり、観光だったり。

Thundercat - 大阪で買い物をするチャンスがあったのは初めてだ。1時間前についたばっかだけど、色々買い物できる場所があるね。今回の来日でした買い物はまだそれだけだ。東京にも、また戻ったらしたいね。

河嶋 - (歌詞に登場する)パチンコは試してない?

Thundercat - そうだパチンコマシーンだ。離れずにずっと機械の前に座ってたい。今回の来日ではぜひやってみたいね。

*後日、東京でパチンコに挑戦した彼は3万円分を勝ちとったが、メダルは換金せずに大切に持ち帰ったという。

河嶋 - 今回の来日ですでにいくつかの公演を終えていますが、東京と京都でのライブは楽しめましたか?

Thundercat - めちゃくちゃよかったよ。もっとやりたいんだけどね。毎回日本に来るたびにそう思うから、来続けるよ。

河嶋 - 日本のオディエンスはどうでしたか?

Thundercat - 最高だったよ。とても楽しかった。言語の壁があるからね。どんなに適当なこと言っても平気だし。みんな「なんて言ってるんだろう?」みたいな顔してる。それでもみんな楽しんでたと思う。楽しかったよ。

河嶋 - 日本の中では大阪のオディエンスが一番エモショナルで熱烈なので今夜は盛り上がると思いますよ。

Thundercat - 前回ここに来たのを思い出すよ。もう死んじゃった友人、Austinと来たんだけどそのライブを覚えている。とても楽しかった。大阪はLITだね。そこにいた人達はカマしてくた。

河嶋 -  今夜もLITになるはずですよ。約束します。あなたが演奏している映像をたくさん見ました。BBCでのライブ映像が素晴らしかったです。

Thundercat - ありがとう。

河嶋 - あなたのベスの音は人間の声みたいですよね。まるでベースが喋っているようで。今の音のスタイルにはどのようにしてなったのですか?

Thundercat - わからない。僕たちミュージシャンは他の人に似ている音を出している時期を通って、ある地点で自分の音を模索しはじめるんだ。仕事をしていると、その依頼人が求める音を出さなきゃいけないから自分の音を追求できないんだ。一人で座って色んなトーンを試していじくりまわして、それを録音するのを繰り返す。それを続けているとだんだんとモノにできるようになるんだ。数年前にやっと自分の音がわかるようになってきた。「音でお前だって分かるよ」とか周りが言ってくれるようになった。俺のベースの音はそうやってトーンをつきつめてできたんだと思うよ。

河嶋 - あなたの家族は素晴らしいミュジシャンばかりですよね。二人の兄弟と父親と。なぜ幼少期にベースを選んだのですか?

Thundercat - 反抗だと思う、俺の兄と父親はドラマーだから、ドラムはやりたくなかった。変な話、小さい頃の兄はおもちゃでは遊ぶのに、ドラムのスティックをおもちゃにして遊ぶことは絶対になかった。それに対して俺はすぐスティックを剣みたいにして遊んでたんだ。なぜベースを選んだのかわからないけど、親は俺がやることを自由に続けさせてくれた。携帯に子供の頃の写真があってね、歩くのを覚えて間もないころぐらいの写真なんだけど、俺がすでにベースを手にしているんだ。俺は何も変わっていないんだと思う。

河嶋 -  興味深いですね。最新のアルバム『Drunk』で、Kendrick Lammer、 Wiz Khalifa、Pharrel Williamsなど、素晴らしいアーティスト達と一緒に制作したのはどうでしたか?

Thundercat - 共演が実現したのは本当に嬉しかった。彼らとの制作を振り返ると何も思い出せないんだ。酔いつぶれて記憶が全部酒で流れちゃってね。まあそれが人生だ。覚えていることは少ないけど、実現して形に残ったのが嬉しい。その残ったものが記憶となったからね。10年ぐらいの思い出がこの作品に詰まっている。俺らが一緒に制作したという唯一の証拠がこの作品だから、『Drunk』を聞くとエモーショナルになっちゃうよ。この作品が存在するのが嬉しいし、それをBrainfeederがリリースするべきと判断してこの世に出してくれたのも嬉しい。そして今でも仲のいい友達でいれて、「やあ」って電話をして、向こうも俺の顔を覚えていてっていうのも嬉しいね。俺の頭がおかしくなったんじゃなくて、あの経験は現実だったんだって再認識させられる。

河嶋 - 彼らとはいまも曲作り以外でも会うんですか?

Thundercat - そうだよ。俺とWizはよくボーリングをしにいく。彼はボーリングがうまくてね。

河嶋 - 楽しそうですね。この番組は『LNEM』という番組で深夜の3時から朝の5時にかけて生放送されます。ふだんその時間帯は起きてますか?

Thundercat - いつも起きてるよ。

河嶋 - それは曲作りで?

Thundercat - そうだね。最近はツアーが多いから少ないけど、曲作りをしている時はだいたいその時間は起きてる。太陽を見るのが嫌いでね。作業中に日が沈むのを見て、作業が終わる前にまた日が昇ってくるのを見ると精神的におかしくなりそうになるんだ。深夜3時が一番好きな時間帯だ。

河嶋 - 最新作の『Drunk』は深夜にぴったりだと感じました。スムズだし、新しいサウンドなんだけどクラシックで… 深夜に聞くのが大好きです。この番組で流すように1曲選んでくれますか?

Thundercat - ……

河嶋 - 難しい質問でしたか?

Thundercat - …いや、いま考えてる。選ぶとしたら”The Turn Down”と”3AM”かな。3AMは本当に文字通り夜中3時に作ったしね。

河嶋 - ありがとうございます。最後にリスナーに向けてメッセージを。

Thundercat - Hey。コンドームを常につけることを忘れるなよ。もし忘れたら誰かが...それか赤ちゃんが死ぬからね。

河嶋 - ありがとうございました(笑)

河嶋によるインタビュー後レポート

【Thundercat インタビュー手記】

サンダーキャットにインタビューしたのは、日本ツアーの大阪公演がスタートする1時間前。楽屋に入ると、彼はソファーに横たわったまま「よう、元気?」と手を差し出してきた。握手をしながら、わたしが「英語はあまり喋れないんだけど、ちょっとだけインタビューしていい?」と聞くと、「俺も英語うまく喋れないけど、いいよ。」と、大きな体をむくっと起こすのだった。

インタビューは、ゆったりと進行した。そして収録が終わったあとも、サンダーキャットは席を立つ様子もなく、自身の日本にまつわるエピソードを気まぐれに話してくれた。アルバム“Drunk”に収録されている“Tokyo”の歌詞にドラゴンボールやガンダムが登場するほど、彼はアニメの大ファンなのだが、アニメを観る際のこだわりとして、英語に吹き替えられたものは観ないそうだ。「オリジナルの日本語セリフが聞きたいから、英語字幕がついたものを探し回っているよ」

そんな調子で話していたとき、「きょう日本人の友達がひさしぶりに来るはずなんだけど、連絡来てるかな?」と言うサンダーキャット。わたしに「そこにある俺の携帯とってくれる?」と言うのだが、わたしの脳裏を『この中にケンドリック・ラマーやウィズ・カリファ、ファレル・ウィリアムスの連絡先が入っている』という事実が掠め、iPhoneを渡す手が思わず震えた。

「俺が15〜16歳のころに組んでたバンドのメンバーに、ひとり日本人がいたんだ。ググれば出てくるはずだよ。ホラ。」 彼は、自身が17年ほど前に所属したバンドのアーティスト写真を見せてくれた。わたしが「うわぁ、本当だ。若いね〜。」と言っていると、わたしの手元にiPhoneを残したまま、サンダーキャットが楽屋を出て行く。ほどなくして彼は日本人の男性を連れて戻って来た。「こいつがその写真に写ってる、日本人のメンバーだよ!」

相当ひさしぶりに再会したようで、ソファーに腰掛けたサンダーキャットと男性は、和気藹々と話し始める。わたしはこのあたりで、自主的に退室することにした。楽屋の外からでも、「OOOHHHH SXXT!!!!」「WHAT THE FXXK!!!!」といった野太い叫び声が聞こえたので、思い出話はかなり盛り上がったようだ。

数十分後、サンダーキャットはステージいた。詰め掛けたオーディエンスの前にふらりと現れ「やぁ、調子どう?」とだけ挨拶し、芸術的かつ超人的なライブをみせたのだ。インタビューとライブを通じて感じたことは、彼にとってショーと楽屋での雑談に大差はないらしい。何事も、いい意味で『ただ楽しんでいるだけ』なのだ。

番組情報

LNEM

FM802 『LNEM-エルネム-』 月曜〜土曜 深夜3:00〜5:00

6名のDJが日替わりで担当する2時間プログラム。火曜深夜(水曜早朝)は "LNEM Groovy Tuesday”として、「夜と朝の狭間を心地いいグルーヴでつなぐ2時間」をテーマにHIP-HOP/R&B/POP/EDMなどのニューリリースをいち早くお届け。

 

DJ 河嶋奈津実

10月29日生まれ 奈良県出身。1970年代のFUNK、1990年代のHIP-HOP、2000年代のR&Bなどに影響を受け、現在はブラックミュージックを中心に年代とジャンルを問わず「GROOVYな音楽」を探求中。

Twitter :  @ntm_DJ
Instagram :  (@ntm_dj)

【Thundercat ライブ情報】
フジロックフェスティバル’17
7/30(日)@Field Of Heaven に出演
>>>http://www.fujirockfestival.com/artist/

【商品情報】
http://www.beatink.com/Labels/Brainfeeder/Thundercat/BRC-542/

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