『ムーンライト』の主人公を演じる3人の俳優の「目」に隠された秘密とは?
今年のアカデミー作品賞を受賞した『ムーンライト』は、異例の1ヶ月前倒し公開も決定、日本国内でも大きな注目を集めている。
『ムーンライト』は主人公・シャロンを少年期、青年期、成人期と3つの成長過程で3人の俳優が演じているが、そのキャスティングにはある秘密が隠されていた。
キャスティングはバリー・ジェンキンス監督の、10歳の少年期から様々な段階を経て30歳前半までのシャロンの成長を、1人の俳優が年を重ねていかずに描くという決断に始まる。さらにキャスティング・ディレクターであるヤシ・ラミレスを初めとした多くのスタッフの努力によって、ある共通点を持った3人の俳優がキャスティングされた。
「同じフィーリング、同じ雰囲気、同じ要素をもつ俳優を探そうと思った」という監督の意向もあり、キャスティングチームは同じ雰囲気を感じさせる目をもつ3人を探したという。
★少年期(リトル):アレックス・ヒバート
監督は、マイアミ中をくまなく歩いて、出演者募集のチラシを貼ったり、学校や近隣を歩いて周り、この重大な役柄を演じられる少年を探し歩いた。最終的に2人はヒバートを見つけ、他のスタッフに見せるために彼を撮影した。ラミレスは彼をオーディションで見た時、すぐにその幼い目に映る物静かな好奇心と脆弱性に強く惹かれた。誰もが彼こそがふさわしいと確信を持ったのだった。
★青年期(シャロン):アッシュトン・サンダース
ラミレスは全国を回り、オーディション・テープや顔写真を見たり、インターネットで高校の演劇プログラムを終了した生徒のビデオクリップを探し回った。ラミレスが最初にロサンゼルスで行った数多くのキャスティング・オーディションで見つアッシュトンは、これまでにもインディペンデント映画に出演したこともあり、静けさと不屈の精神を持ち合わせた第2章のシャロンの重要な役どころには打ってつけだった。
★成人期(ブラック):トレバヴァンテ・ローズ
ルイジアナ出身の陸上競技界のスターであるトレヴァンテ・ローズは、もともとは第3章の大人になったケヴィン役のために呼ばれていた。しかし、筋肉隆々で男っぽいローズが、街に精通した大人の化身である“ブラック”ことシャロンの役柄に、より適していることに誰もが気づいたのだった。ラミレスは「キャスティング・ディレクターとして、入ってきてすぐ強烈に“これだ”と思うことはあまりないことないのに、ローズは特別だったわ」「彼の男らしい風貌に加えて、彼は観客がキャラクターに対して何か感じる弱さを持ち合わせていたの」と絶賛した。
3人のシャロンは継ぎ目なく3つの章でつながっているが、ヒバート、サンダース、ローズの3人は監督の指示で、撮影中会うことはなかったという。「私たちがラッキーだったのは、それぞれのパートに最もふさわしい俳優を見つけられたことよ」とラミレスは語る。「3人には3つの違った時期を一貫して流れる、内なる脆弱性という共通の特徴もあったのよ。それぞれの俳優はそれを目で表現できて、あのキャラクターの人生の完璧な映画を作るのを助けてくれたわ」と、振り返った。
Info
『ムーンライト』
3/31(金)、TOHOシネマズシャンテ他にて全国公開
配給・宣伝 お問い合わせ:ファントム・フィルム 03-6276-4035