Big Seanが新作『I Decided.』やJhené Aiko、Eminemなどについて語る
2月3日にアルバム『I Decided.』をリリースしたBig Seanが、DJ Envyがホストを務めるラジオ番組『Breakfast Club』に出演した。Charlamagne Tha Godが言うところの「デトロイトっぽい格好」(コーデュロイのジャケット)で現れたSeanは、ニューアルバムや、同作におけるEminemとのコラボ、交際中のJhené Aiko、その他諸々について語っている。
本記事では、同番組でBig Seanが話した内容から、ファンにとって特に興味深いと思われる9つのポイントを紹介する。
1. Quavoからの一言
“Bad & Boujee”が大ヒットし、2017年のヒップホップ・シーンの中心に躍り出たと言っても過言でないMigos。今作でも“Sacrifices”でフィーチャーされており、Seanは彼らの、他人の言うことを気にしないアティチュード(態度)が好きだという。そんな彼らとの出会いについて、次のように語っている。
「初めて会った時、Quavoが俺の所に来て『俺らはあんたのことを尊敬してる。あんたはOG(=オリジナル・ギャングスタ。転じて、大先輩)だ』って言ってくれたんだ。2歳くらいしか違わないのに(笑)。でも、俺が(ラップ・)ゲームに参加した時は19歳で、NIGOやYe (= Kanye)と一緒に日本に居たんだから、全然違う世代だし、無理もないよね」
2. 自殺について
Biggieの"Suicidal Thoughts"やKendrick Lamarの"u"等の例を挙げるまでもなく、自殺願望は多くのラッパーが曲中で語ってきたテーマの一つである。Seanも新作に収録された"Stick To the Plan"において「頭の中の声が俺の考えを攻撃する/頭に銃弾を撃ち込めば逃れられるかもしれない」とラップしている。それを乗り越えられたのは「無償の愛(unconditional love)」のおかげだそう。
「無償の愛は何よりも大事だ。お金じゃ買えない。家族や周りのリアルな奴ら、一緒にやってきた奴らから無償の愛を受けたんだ。そういうことさ」
3. "Inspire Me"を聴いた母親の反応
LAの自宅で母親にアルバムを聴かせた際の反応についても触れている。
「曲を次々に聴かせてて、“Inspire Me“がかかったら『わぁ!』って驚いてた。曲が終わる頃には泣いてたね」
同曲のリリックに出てくるアイズレー・ブラザーズやマーヴィン・ゲイといった同郷デトロイトの伝説のソウルレーベルモータウン所属のアーティストは、小さい頃から母親と一緒に聴いていたのだとか。「("Inspire Me"で)誰に(客演で)歌ってほしい?」というSeanの問いに、母親が涙目で「あなたが歌うのよ。あなたが歌うから完璧なの」と答えたという、心温まるエピソードも披露している。
4. 交際中のJhené Aikoとの関係
"Same Time, Pt. 1"で客演しているだけでなく、"Sunday Morning Jetpack"でも「俺とJhenéに嫉妬してるリサ・ボネット似の女」というラインで登場しているJhené Aiko。まず、このラインの意味は?
「Jhenéは俺の作品に2011, 2012年頃から参加してるんだ。そのせいか、当時は可愛い子と付き合ってても『Jhenéとの関係はどうなの?』って訊かれたんだよ」
「その時Jhenéが他の人と付き合ってたから、彼女への好意に気づいたんでしょ?」というAngela Yeeの追撃には「俺はアルバムの話をしに来てんだよ(笑)!」と答えるも逃れられず、「彼女は素晴らしい人だからずっと気になってたんだ」と正直に答えている。
5. Eminemのバースを受け取って
"No Favors"では同郷のEminemがフィーチャーされており、トランプ大統領を「ビッチ」とこき下ろすラインが話題となったが、多忙なEminemがバースを録って送ってくれるとは思わず、数週間後に受け取って驚いたことをSeanは明かしている。当初、"No Favors"は12小節の2バースからなる曲だったが、Eminemから送られてきた2分にも及ぶバースを聴き、構成を少し変えたようだ。
「2つのバースを繋げて、4小節加えたんだ。くっつけるだけじゃ不自然だったから。それからフリントに関するリリックも加えた。デトロイトだけじゃなくてフリントまで、ミシガン州全部を気にかけてるってことを伝えたくてね」
実際、Seanは水質汚濁に苦しむフリントの子供たちのため、本年1月に1万ドルを寄付している。
6. 今作でKanyeが果たした役割
“Bounce Back”のアウトロを歌っているG.O.O.D MusicのボスKanye Westは、本アルバム制作における別のプロセスでも役割を果たしていたようだ。
「“Owe Me”は『バースの一部を取り出してフックにするんだ』って彼が言うから、そのとおりにしたんだ。そのちょっとした提案で10倍良くなったよ。あとは“Sunday Morning Jetpack”でThe-DreamをフィーチャーしようっていうのもKanyeのアイディアだった」
ただ、残念ながらそのKanyeがルイ・ヴィトンと共作したスニーカーJasper’s(通称『ピンクボトム』)は、2015年12月に盗まれてしまったそうだ。
7. Seanの愛読書
今作でスピリチュアルな一面を見せているSeanは、愛読書として『富と成功をもたらす7つの法則』や『アルケミスト」を挙げているが、彼にとって最も重要な本は、レーベルとの契約を勝ち取る前に読んでいた『運命が好転する 実践スピリチュアル・トレーニング』なのだそう。「(あの本を読んで)考え方を変えるとすぐに、他の全ても変わったんだ」と話している。
8. ライブ中にお金を投げられて怒った理由
先日、ラスベガスで公演中のSeanが、お金を投げるファンに怒っている様子がInstagramでアップされた。Seanはこれについても番組内で語っている。
「ビデオに映ってない、ステージ脇に居た年寄りの男が金を投げ続けたんだ。俺はストリッパーじゃねぇぞって(笑)。(DJ Envyもお金を投げられたりするよ?)いや、投げ上げるならまだしも、彼は俺や前列のファンめがけて金を投げつけてきたんだ。そういうショウじゃないって注意したら、もっと金を投げ始めた。人種的なものか何か知らないけど、ディスリスペクトだって感じて我慢できなかったんだ。俺やファンをディスリスペクトするのは許せなかった」
9. 他人からの評価の捉え方
Big Seanの音楽を聴こうとしない(英語で「sleep on」)人々をコントで表現した動画がInstagramに投稿されると、Seanはそれを自らのアカウントでも共有した。「自分は過小評価されてると思う?」という質問には、こう答えている。
???? no more sleeping @supremedreams_1
BIGSEANさん(@bigsean)がシェアした投稿 -
「この世界ではすごく多くの人が過小評価されてると思うよ。でも、そのおかげでよりグレイトになろうって思える。あの動画も投稿したけど、彼らがそう思ってくれるのはいいことだし、俺と同じデトロイト出身で、この肌の色でここまで成功したのは俺だけなんだ。俺はそのことにすごく感謝してる。みんながこのスポットを狙ってるけど、渡すつもりはないね」
「人生は選択の連続」というコンセプトから作られた今作。メディアやファンの反応をみるかぎり、少なくともこのアルバムに関していえば、彼の選択は間違っていなかったようだ。「リスクを取らないことには進歩できない。失敗しないことには成功できない」と話すSeanは、今後たとえ躓いた(took a L)としても、ただで起きるつもりはなさそうだ(bounce back)。
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奧田翔(おくだ・しょう)
1989年3月2日宮城県仙台市出身。会社員。