The xx『I See You』リリースインタビュー |開放感と共に
The xxが1/13に新作『I See You』で4年半ぶりに戻ってくる。今回のアルバムは、これまでのThe xxサウンドともいうべきメランコリックかつ研ぎ澄まされたリズムから、より朗らかでオープンな開放感のあるグルーヴが聴こえてくる。その背景にはJamieのソロ作がOliverとRomyに与えた影響があるという。バンドに起こった変化を、前向きに吸収し、「ベストフレンズ」と語る関係性をさらに深め、新たな一歩を踏み出したThe xxのOliverとRomyに12月の来日公演時に話を聞いた。
取材/構成 : 和田哲郎 辻本秀太郎 取材協力 : Beatink
- 新しいアルバムを聴いて、すごく驚きました。これまでのThe xxのサウンドと比べて、明るさというのが違うなという印象です。まず、どうしてThe xxの活動に戻ったのかということと、新しいアルバムの方向性について伺いたいです。
Oliver - また始めたというよりは、実はセカンドアルバムのツアーの後にすぐ曲作りを始めていたので、ずっと一緒にはいたんだよね。なので、離れていたのではなくて、曲作りが長くかかってしまったということなんだ。もちろん、Jamieのソロの成功もあったし、Jamieが不在ということもあったよ。それが今やっと皆一緒になったので、こうしてアルバムを完成させることができた。
Romy - 自然なリズムの、動きのある音楽を作りたいと考えていて。あと、これまでは失恋の歌とかもちょっと多かったんだけど、ハッピーなラブソングを作りたいなというのは頭にはあった。
- 以前のThe xxのサウンドというと、その自然なリズムの反対で、不自然とまでは言わないですけど、リズムがミニマルに抑え込まれているような感じがしていたのですけど、そこをあえて今回は開放というか、ナチュラルにやってみたという感じなのですか?
Romy -開放感というのは本当にそう。聴いた人が自然とダンスしちゃうようなものを作りたいなとは思ってた。
- 外側に向かっていくきっかけというのは、何があったんですか?
Oliver - ツアーが大きかったね。『Coexisit』のツアーに出てから、最初はやっぱりレコードそのままの音でパフォーマンスをしていたんだけど、段々色んな場所や色んな規模でプレイするようになってそれが変わってきて。あとそれによって自信もついたんだ。また、Jamieのソロプロジェクトもすごく影響していて、そういう方向に進んだんだ。
- バイオグラフィーにも、Jamieのソロアルバムからすごく影響を受けたって書いてありましたが、メンバーでありつつ、あのプロジェクトは彼ひとりのものだったわけで、その音楽を聴いたときにどのような感想をもちましたか?
Oliver - ファンとして作品をすごく楽しんだよ。オーディエンスとして彼のショーを観に行ってもすごく誇りに思ったし、それによって自分たちもパフォーマンスがやっぱり好きだなということに気づいたんだ。すごくパフォーマンスが恋しくなりましたし、もっと音楽制作をやりたいというモチベーションにもなったね。
- Jamieのソロは、The xxの作品をもドライブさせる効果があったということですか?
Romy - 彼の作品からインスピレーションを受けたということがまずあるし、ベストフレンドなので、彼が恋しくもなって、より絆を感じるようになった。あとJamieがいない間、私とOliの2人で作業しなくてはいけなかったので、デモの作り方が前よりも進化した。
- 今回は結構2人でデモを作った曲とかも結構入っていたりするんですか?
Oliver - “Say Something Loving”という曲が入っているけど、それはJamieがいない中でやらなくちゃいけなかったので、ほぼ完成させた状態でJamieに持っていったよ。
Romy - “Say Something Loving”に関しては、私たちもただ聴いてみてって感じで渡したんだけど、そしたら彼もそれをあまり変えずに、自分たちの作ったものをそのまま生かしてくれたのですごく良かった。曲によっては、彼がイマジネーションを働かせて、自分たちが全然想像のつかなかったものになることもあるのだけど、その曲は本当に自分たちが作ったままといってもいい状態でアルバムに入れたね。
- 他に今回、制作の面で変わった点はありますか?
Oliver - 本当にプロセスはたくさん変わったよ。やっぱりロンドンの外でレコーディングしたことによって、皆で作業したというのがすごく強くて。新しい場所だからこそすごく刺激を受けて、サウンドに関してすごく冒険したし、新しい影響や自分たちが好きなサウンドをどんどん取り込んでいったんだ。The xxのサウンドにしなきゃというプレッシャーも前よりも感じることなく自由にできた。あと、自分とRomyが、ロンドンで作業するとそれぞれがレコーディングの後に家に帰ったりで、自分たちの家でそれぞれ作ったものを後から合わせる、コラージュみたいな感じだったんだけど、今回は同じ部屋で2人で一緒に最初から作っているのでもっと協力して2人で作ることができたよ。
- 今回は世界中の様々な場所でレコーディングをしたということですが、ロンドンの外で出ることで、街の空気感とかそういうものにも影響されましたか?
Romy - 今回もいい意味でリスクを冒して、テキサスに行ってみたりで。実際行ってみると、広い空と広い道があって、圧倒されたりだとか、アイスランドも自然がすごくきれいだし、LAもすごい太陽の光がいっぱいでとか、それぞれの特徴から影響を受けた。
- RomyはLAに行ってポップスのヒットメイカーの人からプロダクションを学んだとか?
Romy - ポップソングの書き方の勉強をしたから、よくみんなから学校に行ってたのとか言われるんだけど、そういうわけではなくて、LAで色んなプロデューサーが作業しているのを見たりだとかして勉強していた。The xxのために曲を書いてたり、そのための勉強をしたというわけではなく、より広い意味で音楽を勉強した。もちろん、色々なことを学べたし、いい経験だったので良かったんだけど、同時にそれをしたことによって、やっぱり親友と曲を書くということがどんなに素晴らしいかということを感じ直したというか、そこに価値とか感謝の気持ちを感じるようになった。
- 色んなところに行って、故郷のロンドンに戻ってきた時の感触というものはいまの話に通じるところがあったりするんですか?
Oliver - すごい変な感じだったね。調整が大変で、例えば前回のツアー中は色んなことがめくるめく起こって時間が過ぎていったんだけど、そこからいきなりスローペースのロンドンに帰ってくると、どうしたらいいかわからなくなってしまって、また時間を置かずにすぐ作業を始めてしまおうという気持ちになるんだけど。今は逆にツアーがまた始まるので楽しみです。
- 東京の空気感みたいなものはどうですか?例えば東京に滞在して曲を作るとなったら作れそうですか?
Romy - 早いテンポで何か作ると思う。エレクトロニックなイメージで。イギリスと全然違うので、ビジュアル的にも見ていてすごく面白いし、インスピレーションを受ける。
Oliver - 日本の観客で良い部分というのは、サイレントになれるということで、自分たちの国だと全然そういう風にならないんだよね。静かな曲の時も喋ったりだとか。日本だと真剣に聴いて、何かを取り入れようとしている感じがすごく嬉しい。でも今回の公演で、みんな踊っていてそれがすごく嬉しかった。もっとより強いエナジーを感じたよ。なので、今回の経験から何かを作るとしたら、ダンサブルな曲を作ると思うね。
- アルバムはすごくエネルギッシュな内容になっていて、RomyはLA行ったし、Oliはモデルの仕事とかもやっていて、Jamieはソロアルバムを出して、外側に皆のエネルギーが向かったものがまた結集して、さらに新しいThe xxになったという感じなんですか?
Oliver - 今回のアルバムのエネルギッシュな部分は、Jamieが影響しているんじゃないかっていう考え方をされることが多いんですけど、でも実際自分たちが会ってまた新たに曲を作り始めたとき、実は自分とRomyの作ったデモの方がよりアップリフティングで、高揚感があってテンポも早かったんだ。逆にJamieは2年くらい、それを自分のプロジェクトでやっていて、フェスでもDJでも人を踊らせようとしてきたので、彼はちょっと落ち着かせたかったんです。だから、その間をとって新しい曲ができたという感じ。
- ツアーが久しぶりに始まって、皆がバンドに戻って、曲調も変わってというので、日本の話はさっきしていただきましたが、ヨーロッパのオーディエンスの反応とかはどうですか?
Oliver - 新しい曲をプレイしているから、例えばファーストの頃の“Islands”とかだったらみんな知っているから踊っていて楽しそうなんだけど、新しい曲をプレイした途端みんな聴こうとするので流れが止まっちゃうんだよね。すごいそれは理解できるんだけど、ステージ側にいる身としては、「好きなの?どうなの?」という感じになるよ。
でも“On Hold”のリアクションはすごく良いね。特に東京ではあの曲をプレイしたときがハイライトだったんじゃないかな。曲を公開した時点でもリアクションが結構よかったので、あの曲をやるとすごく盛り上がりますね。
- 僕もアルバムだと、"Dangerous"と"On Hold"がすごく好きです。今日はありがとうございました。
Info
The xx - 『I See You』
cat no.: YTCD161J
release date: 2017/01/13 FRI ON SALE
国内盤CD:ボーナストラック追加収録 / 歌詞対訳・解説書付き
定価:¥2,590+税
Tracklisting
01. Dangerous
02. Say Something Loving
03. Lips
04. A Violent Noise
05. Performance
06. Replica
07. Brave For You
08. On Hold
09. I Dare You
10. Test Me
11. Naive *Bonus Track
12. Seasons Run *Bonus Track