TARO NASUで万代洋輔の個展が開催へ
1980年東京生まれの美術作家万代洋輔の個展が東神田にあるギャラリーTARO NASUで9/9~10/7まで開催される。
TARO NASUでは2回目の個展開催となる本展覧会では、新作を中心とした写真・映像・インスタレーション作品等を展示する。
本展覧会の軸となるのは、日常生活に落ちているものを拾い集め、スキャナーに配置し彫刻作品として記録した新作、『コレクターB』シリーズ。
展示会場にはその写真作品とともに、実際に撮影された被写体が水槽に浮遊する。この作品は鑑賞者に対し、会場に流れる現在という時間軸を表出させるという試みであり、写真という媒体の物質性と定義に対する、万代の新たなアプローチとなっている。
他の展示作品としては2006年から2008年頃に、万代が樹海などの都心から離れた森などで、不法投機されたゴミを集めて彫刻を作り、記録した、『蓋の穴』シリーズがある。2015年から本シリーズの撮影を再開した万代は、気圧の低い高地へ赴き撮影するようになった。これは、胎児が母胎内で感じる気圧と、同程度の気圧がある高地には聖地が集まるという一説に基づいている。
また他にも、近年継続的に発表されている『100枚のコミュニケーション』シリーズからは、母と子の出生にまつわる記憶についてのアンケートを元に制作された新作の映像作品が出展される。
下記は作家からのメッセージとなっている。
制作の考えの根底にあるのは、人間が今後、科学技術の進化や大量消費社会、それらを生み出した欲望とどう折り合いを付けていくのかということです。それに対する解答を示したり、倫理やモラルについて説くのではなく、精神と対象との関係を体現する事で作品が出来て行きます。
制作の方法で特徴としてあるのは、まず残滓が好きだという事。そして扱う素材の元にあった文脈を再構成して意味を削ぎ落としたり、イメージを宙吊りにしたり、出来事の主語を曖昧にしたりする事。その様にして出来る、鑑賞者からすれば余白の様な出来事と、それに対峙した時の鑑賞者の記憶との関係について考えています。その関係を、個別の現象形態として認識し、ある、ないの間を漂っている事柄への問いを立てる為に体系化する試みでもあります。
それらは、神話の構造にみられる様な喪失と回復の物語として捉えられる側面もあります。
制作は、世界を把握する為の知的プロセスでもあり、作品は世界の縮図の様な側面もあると思います。
時間の表象を扱う事の重要性を感じています。時間は存在が現象する際の1つの形態です。これまでの作品では、時間の表象という視点からみれば、過去形「~した」という時間の断面を扱った作品がほとんどでした。そして展示会場のそこは現在です。コレクターBのシリーズは過去形「~した」を、蒐集物を博物館で観られる様な保存品の様に認識させる事で強調しようとしています。
テーマを掘り下げていく中で、保存されない作品をつくる必然性を感じました。保存されない作品、この事が時間の表象の中で未来形「~するであろう」という事を強調できると考えます。保存できないものとはつまり展示会場の現在において、例えば展示初日から最終日まで変化し続ける様なものの事でもあります。展示が終われば廃棄してしまいます。
しかし、時間は存在が現象する際の一形態にすぎません。時間を観る事ができて、さらに、他者の記憶と結びつく様な体験をつくろうと考えています。2016年7月 万代洋輔
<Info>
万代洋輔| Yosuke Bandai
「Friday, September 9 - Friday, October 7, 2016 」
2016年9月9日(金)-10月7日(金)
火-土 10:00-18:00 日月祝 休
*Reception for the Artists: 2016年9月9日(金)18:00 - 20:00
TARO NASU
〒101-0031 東京都千代田区東神田1-2-11
T: 03-5856-5713 F:03-5856-5714
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