ケーキショップから深夜食堂へ ― ソウルのクラブシーン フォトレポート PART.2

Cakeshopに入場制限がかかり行列が出来る

私は7月に自身の写真展開催のためにソウルを訪れた。その時に見たもの、出会った人、そして彼らによるソウルガイドを全5回に渡って紹介する。第2、3回は写真展とクラブイベントレポート。

文・写真 横山純

6月30日 ソウル〜イテウォン〜Cakeshop

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私は成田空港から仁川国際空港まで片道1万円のチェジュ航空でソウルに渡った。ソウル東京間は、Peachなどの格安航空会社(LCC)が巡航している。そのLCCの中でもチェジュ航空は預け入れ荷物15キロまで無料のサービスを行っている。5泊6日の旅行だったが行きの段階で私のスーツケースは展示用の写真や物販のTシャツなどで23キロを超えていた。カウンターで3000円の手数料を支払い搭乗した。

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18時30分に成田の第三ターミナルを出発した飛行機は仁川国際空港に22時頃に到着。イミグレーションを抜けて、荷物を受け取ると午後11時頃になっていた。仁川国際空港から市内まで電車で1時間少しかけて、ホステルと写真展の会場がある梨泰院(イテウォン)に向かった。

イテウォン

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ソウルのイテウォンはホンデ地区と並ぶナイトスポットだ。夕方頃から若い人がどんどん集まってきて、毎晩毎晩この街でお祭りか何かが行われているのではないかと思うくらいの人出だった。そして夜通し遊んだ若者たちは、朝8〜9時ころまで飲み続けていた。

イテウォンは昔から外国人向けのショッピング街として発展した。イテウォンがある龍山地区には米軍基地もある。日本軍基地が戦後から米軍基地として使用されている。イテウォンにも外国人相手の売春街があったと聞いたが、最近は警察や米軍憲兵の取締などで飲み屋街に変わっているようだ。夜通し米軍の憲兵がパトロールしていた。

語弊を恐れずに言うならば、ホンデ地区が東京の渋谷や原宿であるとするならば、イテウォンは六本木だろう。外国人旅行客も多数訪れ、バックパッカー向けのホステルも多数ある。午前0時頃にホステルにチェックインし、30キロほどの荷物を預けるやいなや、ソウルのアンダーグラウンド・ダンスミュージックの聖地とも呼ばれるクラブCakeshopに向かった。

Faze Miyake at Cakeshop

Cakeshopは週末ではない木曜日にも海外からアーティストを招き、週末と同じテンションで、オールナイトでイベントを行っている。到着した日もUKからグライムDJ、Faze MiyakeがCakeshopでプレイするということを聞いていたので、私はカメラを持って出かけた。

ロンドンのRinse FMでレギュラー番組を持つDJでプロデューサーのFaze Miyakeは、ソウルでこの晩のDJのためだけにロンドンからアジアまで来ていた。2015年10月にRinse FMのレーベルから1stアルバムをリリースした。かつてグライムニューウェーブと呼ばれていたDJも円熟味を増してきた。

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午前1時前に到着したCakeshopには平日の夜とは思えないほどのオーディエンスがやってきていた。Cakeshopはイテウォンの外れに位置し、地下一階にキャパシティ300人のフロアを備える。フロアに明かりは殆ど無い。バーカウンターと壁面にプロジェクターから映されたビジュアルが唯一の照明だ。そして最前列に備えられたDJブースは真っ赤の照明で照らされ、ブースの後ろの壁にネオンサインのようにプロジェクターで映しだされた"Cakeshop"の文字が光る。

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着いくとちょうどFaze Miyakeがプレイの準備を始めていた。ブース横に行くとFaze Miyakeが私を見付け、ウォッカにぬるいトニックウォーターを入れ、私がRinse FMで撮影をしていた時に出会って以来、1年ぶりの再会を祝ってくれた。"Bro! why are you here!? loooool! Fuck the hell!!!"という感じだ。

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Cakeshopのオーディエンスのエネルギーは凄まじいものがあった。日本のグライムシーンはもちろん、ロンドンのグライムファンのエネルギーにも、負けていない、日本でのグライムの受容の仕方やシーンと全く違う方向性に行っていると感じた。TRAPも韓国では大流行と聞くが、GrimeやDubstepなどのUKアンダーグラウンド・ダンスミュージックも流行こそしていないが、その音楽は十分にソウルに根付き機能していた。

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その訳をソウルのDJらに聞いた。Cakeshopのオーナーは妥協無く踊れるイベントを求めつづけているからではないかという答えが帰ってきた。UKアンダーグラウンド・ダンスミュージックを中心として踊らせることのできるDJをブッキングし、UKからアーティストを呼びつづけ、クラブのポリシーを貫き通しているという。その努力がオーディエンスが行列をなしてやって来るクラブになったと皆が口を揃えて答えた。

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はっきり言ってCakeshopは一般的なクラブより暗いし、汚いかもしれない。しかしアンダーグラウンド・ダンスミュージックで夜通し踊ったり、我を忘れて叫ぶのなら、世界でも随一のクラブだと感じた。踊ることだけを考えた、赤い照明と何の飾りもないフロアが特徴的で、トイレも暗い。東ロンドンにある、Dance Tunnelというクラブに似ていると個人的に感じた。

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Faze Miyakeの後に登場した、Phantoms Of RiddimクルーのQuandolのプレイはFaze Miyakeのプレイ以上にソウルのオーディエンスを踊らせていた。この日はグライムやUK ガラージなどの新旧クラシックでフロアを沸かせていたQuandolはCakeshopでレギュラーイベントを持ったり、海外からのアーティストのサポートDJを務めている。

私と同い年で、ふだんはパーカッションを叩いて生計を立てているという。独特のミックスの間やアイディアがあり、ベースミュージックだけでなく、ジャンルを独特のセンスで自由に行き交いながらBPMを上下させグルーヴを操る。

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クラブ帰りに食べるカルビスープ、冷麺、ビビンパ…

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Cakeshopで踊り明かした後は、東京からソウルに遊びに来ていた友達と、東京のCircus TokyoのElijah & Skilliamの公演で出会ったソウルのDJかつインテリアデザイナーのSeeseaとその友達、海外初公演を控えていた日本のグライムプロデューサーDouble Clapperzのシンタと共に、Cakeshopから歩いて5分位の韓国料理の食堂に行った。

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この食堂は24時間オープンしており、何時に行っても韓国の定食を食べることができる。様々な種類のキムチや小皿が無料で提供され、私たちは冷麺やビビンパ、カルビスープなどで腹を満たした。すべて600円くらい。最高だ。この店にはキム・ヨナやBig Bangら有名人も多数来店しているそうだ。そういえばCakeshopもG-Dragonが遊びに来るということで、ファンが集まってくるようになったという噂も聞いた。

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午前6時頃にホステルに帰ると、しとしとと雨が降り始めていた。

第3回は私の写真展とイベントの様子をレポートします。

フォトグラファー横山純によるソウルのクラブシーン フォトレポート PART.1

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