Simon Fowler & UC EASTインタビュー 元おかき工場の山本製菓での合同展、それぞれのスタンス、場所と作品

Simon - 言いたいことあるので英語でいいですか。

Simon - もともとギャラリーっていうコンセプト自体に疑問を持っていて。アートを通じて、人間として色んな人とコミュニケーションをしたいと思ってる。けど、ギャラリーで展示をするとなると、スーツでキメたやつが部屋の中にいることになる。

自分と、作品と、観に来た人っていうコネクションが大事なんだ。けど、その空白の場所としてのギャラリーっていうのは、ロンドンとかニューヨークのクソ高い場所を誰かが借りて、「おれがこの場所の所有者だから1000ポンド払ってね」っていう風に、タダのビジネスのためにやってる人によって成り立っている。

だから、自分にとっても、観に来てくれる人にとっても、その場所っていうのは何の関係もないんだ。だから、自分がそのギャラリーのオーナーと会話をすることがなかったら、全くその場所っていうのは意味が無いんだ。

ぼくはイラストレーションをしている。それはヴィジュアルを使った言語なんだ。そのヴィジュアルはアイディアを伝えるのに完璧な言語なんだ。自分が30秒で言語で伝えようとすることもできるけど、ぼくはイラストレーションを使って、何かを伝えようとして、そしてそれが観た人がそれを読み取ってもらえるように祈るんだ。

10年くらいイラストレーションを仕事としている。と言っても結構DIYなんだけど、アルバムのジャケットなんかをコマーシャルにしている。けど本音を言うとそういうファンの人たちの反応から離れたところにいることに疲れてるんだ。

自分は「この場所で展示をすれば、オーディエンスと会話が生まれるか?そして自分が答えを押し付けるより、オーディエンスと一緒に何かある方向であったり答えを見つけ出すことが出来る場所なのか?」ということを考え続けている。

(ヤング・ブリティッシュ・アーティストとして有名な)デミアン・ハーストやトレイシー・エミンのようなアーティストは素晴らしいとは思うけど、彼らの作品はアート・ワールドで存在する作品であり、現実世界と何の関係もない。だから、自分はそれらの作品を観ても、何も思わないんだ。

近代の生。闘争や痛み。生きるために金を稼ぐこと。ぼくは、ファイン・アートの世界と反対の方に行くことに興奮を感じる。まあ、そうすることで自分自身が生きていくのが大変になっちゃうんだけど。(笑)

けど、そうする事で自分の作品がより面白くなるし、新しい詩的な表現やイメージが浮かんでくるんだ。より現実の多面的に観察することができる。

だから山本製菓はぴったりだよ。普通のきれいなギャラリーよりね。普通のギャラリーには文脈も、エクストラな情報は何もないから。

一言で言うとアーティストやオーディエンスを本質的な力から遠ざけちゃう(疎外=alienation)ってことだね。

コミュニティという概念が一番重要だね。ぼくらは孤独の時代を生きている。月曜から金曜まで、9時から5時まで、もしくはそれ以上働いてる。だからこそ、ぼくたちには社会的なつながり(social engagement=ソーシャル・エンゲージメント)が必要なんだ。ギャラリーで会って、作品を観て、会話をする、そんな時間と場所って当たり前のもでしょ?ここはそういう意味で最高だね。

だからこの場所は最高だね。気楽にコミュニケーションできるから。ギャラリーだと「作品は何が言いたいのか?」っていうことが重きに置かれてしまうからね。

インターネット以前、シーンというのはある都市から始まった。ハードコア、パンク、なんであれ。そのシーンからは、イラストレーターなどのアーティストも排出した。そのシーンのフライヤーなどを担当していたイラストレーターの作品は、何十年にもわたって傑作とされて、ギャラリーに展示されたりしてる。シーンを代表する、そして偉大なアーティストになった。場所というのは、それくらい大事なんだよ。

まあこのギャラリーでする理由の80%は可愛いネコのギギがいるからなんだけどね。

UC EAST - ほんまやな〜 (笑) ギギ〜おいで〜。

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大阪の展示情報。

『さび』
Simon Fowler + UC EAST exhibition
会期:2016.9.18(sun)ー10.2(sun)
Open 15:00-21:00 Fri-Mon 金土日月
会場:山本製菓 大阪府大阪市西成区天下茶屋東2-5-5
www.yamamotoseika.com

9/18(sun) Opening Party
live R A M Z A × paint UC EAST
dj: phonehead
Open.18:00-21:00 ¥1000 with 1D

10/2(sun) Closing Party
live GUILTY C. × paint UC EAST
and more..
Open.18:00-21:00 ¥1000 with 1D

来月は東京でも展示をする予定。

Simon Fowler UC EAST LOST FOR WORDS(Kosuke Kawamura ,Simon Fowler)

2016.10.23(sun)-10.27(thu) 平日17:00-22:00 日曜14:00-22:00

at ANAGRA http://www.anagra-tokyo.com 102-0093 東京都千代田区平河町1-8-9 地下一階 B1 1-8-9 hirakawa-cho chiyoda-ku TOKYO opening party 2016.10.23 START 18:00-

closing party 2016.10.27 START 19:00-

Simon Fowler

アーティスト、プリントメーカー。ロンドン出身。独学でイラストレーションと印刷を学ぶ。2006年、日本のInoxia Recordsで働く頃から、アンダーグラウンドの音楽シーンにおいて作品を発表し始める。2007年にSunn O))) と Borisの、日本ツアーのアートワークを手がけたところより、様々なミュージシャンやレーベルに作品提供を行うことになった。その一部として挙げられるのが、The Bug; Sunn O))); Master Musicians of Bukakke; Dylan Carlson; Earth;Stephen O’Malley; John Doran (the Quietus); Lustmord; Blackest Ever Black; Small But Hard Recordings (Art Direction); Bo Ningen; Kohhei Matsuda; Cafe OTO など。
これに相反するように、印刷の分野では様々な印刷技術を試している。HANGAと呼んでいる凸版印刷では、ヨーロッパとアジアの技術を組み合わせ、大胆な現代作品を制作している。また、DJ Scotch Eggと立ち上げたレーベル「Small But Hard Recordings」など多岐にわたる活動を行なっている。
cataract-operation.com

UC EAST

89年生まれ。
画家、ペインター。06年、ライブペイントを主軸に活動を開始。09年、初個展を開催。以降、公開制作展やグループ展など作品展示を意欲的に行う。その他にも壁画、CDジャケット、zine、Tシャツ、フライヤーなどの作品を発表。その時々により様々な手法で作品を制作している。
uceast89.blogspot.jp

インタビュー協力: 山本製菓、行松陽介

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