【コラム】XG TAPE #4 | 宇宙からのアンサー
待望となる、XGのラップ動画が次々に5本公開された。
デビュー当初から不定期にドロップされ世界中でバイラルを起こしてきた注目の[XG TAPE]シリーズ最新作であり、今回は[#4]となる。5月21日に新曲“WOKE UP”をリリースすることがアナウンスされているため、それに向けて一気に攻勢を仕掛けてきたような形だ。しかも、“WOKE UP”は初のオールラップ曲であることが分かっており、なるほど、今のXGは完全なるラップモードなのだろう。
JURIN、HARVEY、MAYA、COCONAの4人がキレキレのスキルを見せており、公開直後から国内外で解説記事やリアクション動画も多く作られている。音源はこれまで通りビートジャックという形でパフォーマンスされており、“BIG MAD (HARVEY)”ではKtlynの“Big Mad”を、“Million Cash (MAYA)”ではConnor Price & Armani Whiteの“Million Cash”を、さらに“Dirt Off Your Shoulder (COCONA)”ではJay-Zの“Dirt Off Your Shoulder”、“Still Hot (JURIN)”ではConnor Price & Nic Dの“Still Hot”、そして4人での“Trampoline (JURIN, HARVEY, MAYA, COCONA)”ではDavid Guetta & Afrojack ft. Missy Elliott, BIA & Doechiiの“Trampoline”をそれぞれカバー。今回もまた動画の話題化によって原曲の再生数が伸びており、かつリリックのテーマ性も忠実に原曲を引き継いでいるものが多く、リスペクトを込めることで少なからずオリジナルへ利益を還元しているようにも見える。
そんな中、今回の動画の新しい要素というと、それぞれ一人ずつのパフォーマンスが公開されたのちに初めて4人揃ってのラップが行われた点。奥行きを目一杯使いながら4人が遠近感ある立ち位置でスキルを披露しており、それだけで存在感に満ちていてかっこいい。一方で、一人ずつの動画は初めて縦長のアスペクト比で撮られている。スマホ視聴にあわせた形だろうが、ただ縦サイズで撮りましたというだけではない、しっかりと必然性のある演出になっているのがさすがだ。たとえば「BIG MAD(HARVEY)」は階段の段差を効果的に使いながら仰角の構図を作ることでクイーンとしての風格が喚起されているし、「Still Hot(JURIN)」も縦長になることでCEOの役柄が生み出す威圧感がより強調されている。デバイスの要請によるサイズ変化を、きちんとクリエイティブの臨場感/リアリティ創出へと繋げているのだ。
衣装とメイクも、これまでのラップ動画と比較するとコンセプチュアル。XGは今までも世界観に宇宙を引用し自らを“宇宙人”と称してきたが、今回は4人のラップ全てに宇宙を想起させるワードが散りばめられている。それに合わせて、「Trampoline(JURIN、HARVEY、MAYA、COCONA)」の動画ではリップやネイル、ヘアを中心にダークな黒~青色を使い、ゴスっぽい近未来感を打ち出した。これまでにない異星人のようなユニークさが漂っているが、ちょうど黒×青の宇宙系~魔女メイクは今年のモードトレンドの一つであり、ディオールなどのメゾンが“男性中心社会に異を唱える反逆者”というテーマでイメージを打ち出している最中。“Trampoline”はそういった世界観をより突き詰めたような形に見える。しかも、追って公開されたビハインド動画を見てみると4人がスタイリングについてどんどん意見を出しており、今回のヴィジュアルがスタッフとメンバーのアイデア交換により生み出されていることも分かる。
さて、そのダーク&ゴスな反逆的宇宙人イメージにあわせて、今回のラップ動画でXGが歌っているのはほとんどがアンチ/ヘイターへのアンサー。それぞれ見ていくと、HARVEYはカバーした「BIG MAD(=ブチ切れさせる)」というタイトルからして怒っているし、「ヘイターは私のことで頭がいっぱい」といった内容を、肩の力を抜いた余裕あるラップスタイルで颯爽とこなしていく姿が圧巻。「Half asian half aussie alien」というラインでは、自身をエイリアンとも形容している。
続いてMAYAは、「Million Cash」というタイトルにある通り、お金を稼ぐこととスキルを積み上げることを重ね合わせながらNicki Minajを彷彿とさせるラップスタイルで豪快に決めている。「Unidentified intergalactic when landin'」というラインでは、自身を銀河系に降り立った宇宙人と表現した。
COCONAは、JAY-Zの曲のビートジャックということもあり、とりわけ大きな話題を呼んでいる。曲中では“99Problems”、“Encore”、“La Familia”、“Empire State Of Mind”、“Blueprint”、“Izzo”などあらゆるJAY-Zの曲へのオマージュが次々となされ、圧倒されるほかない。「Galaxy empire state of mind」というラインではNYに銀河系が重ね合わされ、彼女もまた宇宙から来た人物であることを強調。
JURINはRoyce Da 5'9"等へのオマージュを果たしつつ、「My level be X tra terrestrial so tread carefully」と、地球に存在しないレベルの自身を誇る。身長に対するディスを跳ね返すような表現もあり、やはり「地球に蔓延るアンチに向けて、宇宙からやってきたXGが華麗に反撃する」というコンセプトは通底しているようだ。
最後に公開された4人の“Trampoline”では「JUST SUPA DUPA FLY ALIENS」というリリックで「超イケてるエイリアン」といったボースティングがなされ、トランポリンで上へと跳ね上がるイメージがサウンドと相乗効果を起こす。バウンシーでフューチャリスティックな音楽性は、まさしくXGが得意としてきた90s~00sのヒップホップの再解釈ともとれる。同時に、「BUT JAKOPS ABOUT TO TAKEOFF ON A WHOLE NEW LEVEL」というラインではXGの総括プロデューサーのJAKOPS(SIMON JUNHO PARK)にまで言及されるのが興味深い。
JAKOPSは、直近のインスタライブなどで「音楽はいつまで勉強してもしきれない」「XGを文化産業の革命にしたい」「常にクリエイティブファーストでXGを作っていく」といった旨を話していた。今回のラップ動画も、コンセプト/世界観/スキル/メッセージの全てが、「宇宙」や「ヘイターへのアンサー」といった形で一気通貫されている。XGはその音楽性をX-POPと称しているが、高いラップスキルや英語の発音、鋭くユニークなリリックによって、ヒップホップシーンへ向けても外側から揺さぶりをかけるような存在になってきている。事実、Coconaは今回の曲で「Am I gift and a curse for the culture=文化にとってギフトでもあり呪いでもある」という意味深長な内容を歌っていた。もしかすると、XGの標榜するX-POPとは、宇宙という俯瞰した外部から私たちの社会に対して問題提起を仕掛けるようなアート表現であると言えるのかもしれない。恐らく、来たるべくオールラップの新曲“WOKE UP”によって、また新たな異なる角度から我々の価値観を覆してくるのだろう。
いよいよ、リリース間近。唯一無二の宇宙人たちの動向に、目を凝らしておきたい。(文 : つやちゃん)
Info
XG
5th Single
「WOKE UP」
2024.05.21 TUE
【CD BOX】
<価格>
¥1,100(tax in)
<商品構成>
CD-R/LYRICS PAPER/LOGO STICKER SET(2Piece)
<収録内容>
1. WOKE UP
2. WOKE UP (INSTRUMENTAL)
「WOKE UP」スペシャルサイト