NENE 『夢太郎』| お化け・インド・トランス

ゆるふわギャングのNENEが今月リリースした2枚目のソロ作となるEP『夢太郎』。もちろんゆるふわギャングの楽曲でもそうなのだが、前作の『NENE』や、今作においてもNENEは自分らしく自由であることを追求しているようだ。「東京の中のオアシス」をテーマにした前作は、騒がしく人が行き交う東京の街の中で自身が開放できる自由な空間を音楽で表現していた。そして今作では伝説の妖怪をテーマに、さらにサウンドの幅も広がり新しいスタイルをみせている。

先日ミュージックビデオが公開されたリラックスしたトラックの上で「お化けが見える ここ最近ずっと 気にしてないけど」という印象的なフレーズで始まる"慈愛"でもわかるように、現在の彼女は、異世界のお化けと出会っても気にしないくらいに心に余裕があるようだ。夜だけではなく朝にも登場しているお化けたちを慈しむようなフロウが流れていく。しかし楽曲はただ精神的にタフになっただけというよりも、自身の暗いところにある影の部分を抱きしめられるようになったことがわかる。お化けとは本当のお化けでもあるだろうし、見えないように蓋をしていた感情でもあるだろう。NENEはFNMNLに対して、好きなお化けは今作のジャケットにもなっている「ろくろっ首」と回答し、「寝てるときに魂が抜け出るタイプのやつが好き。似たような体験をしたことがあるから。」とコメントしている。

ちなみにこの印象的なジャケットはタトゥーアーティストのGANJIによるものだ。ちなみにこうしたお化けさえ受け入れる心境に至った1つのきっかけとして、Ryugo Ishidaはもちろんヘンタイカメラ❤️のアキラアラサワとYOUTHEROCK★とともに行った今年初頭のインドのゴアへ遠征があるかもしれない。現地でレイヴなどにも参加したというNENEはインドについて「色んな人を受け入れる懐の大きい国」だったと振り返っている。人との距離感なども日本とは全く異なっていたというインドからは、精神的な広がりともう1つ様々なひとがいる中でも「自分達のヤバさを再確認できた」という自信も持ち帰ってきた。

インドでのゆるふわギャング

その自信は『夢太郎』の中でも、最後に収録されたレジェンドNIPPSをフィーチャーした"地獄絵図"で聴くことができる。生々しいインダストリアルなトラックを前にして圧倒的なラップを聴かせてくれる。「化け物みたいに怒り狂ってる そんな女は最初で最後」と今度は自分が化け物になり、魑魅魍魎が蠢く世界を生き抜こうとしているようだ。

そしてインドに行くきっかけとなってるのがトランスとの出会いで、インド遠征のメンバーでその体験を伝えるべくEP『GOA』も同時リリースしている。昨年くらいからレイヴパーティーに興味を持ち出し、自身も密かにDJとしての活動をスタートさせているNENE曰く好きなトランスは「ヘンタイカメラ❤️の作る音楽にぶっ飛ばされました」ということだ。いつかあなたが参加するレイヴで彼女がプレイをしていることがあるかもしれないだろう。

生憎この夏は、遊園地のお化け屋敷にも足を運べないかもしれない。しかし『夢太郎』を聴きながらあなたも自分の中のお化けに出会ってみてはどうだろうか?(和田哲郎)

Info

Artist : NENE
Title: 夢太郎

Track List
1. 山彦
2. 6969 ft. Ryugo Ishida
3. 慈愛
4. 名器 ft. Awich
5. Dilemma
6. 地獄絵図 ft. NIPPS
配信リンク:https://linkco.re/E7eNSP2Q

Artist: ゆるふわギャング, ヘンタイカメラ❤️ & YOUTHEROCK★
Title: GOA

Track List:
1. Alien Disco
2. HENTAI GANG
3. GOA
4. Arambol Yanky
配信リンク:https://linkco.re/0GCgcSPB

RELATED

『森、道、市場2024』第三弾でAwich、ゆるふわギャング、どんぐりずなどがアナウンス | CANTEENとのコラボステージにはJUMADIBA、lil soft tennis、Peterparker69、ralphなどが登場

愛知・蒲郡で5月に開催される『森、道、市場2024』の第三弾出演者が発表となった。

ゆるふわギャングと踊ってばかりの国が初のコラボEP『no.9』をリリース

ゆるふわギャングが親交の深いバンド踊ってばかりの国と初のコラボEP『no.9』を、明日11/29(水)にリリースする。

ゆるふわギャングが最新作『JOURNEY』から特に思い入れの強い"See You!"のミュージックビデオを公開

ゆるふわギャングが7月にリリースしたアルバム『JOURNEY』から、"See You!"のミュージックビデオを公開している。

MOST POPULAR

【Interview】UKの鬼才The Bugが「俺の感情のピース」と語る新プロジェクト「Sirens」とは

The Bugとして知られるイギリス人アーティストKevin Martinは、これまで主にGod, Techno Animal, The Bug, King Midas Soundとして活動し、変化しながらも、他の誰にも真似できない自らの音楽を貫いてきた、UK及びヨーロッパの音楽界の重要人物である。彼が今回新プロジェクトのSirensという名のショーケースをスタートさせた。彼が「感情のピース」と表現するSirensはどういった音楽なのか、ロンドンでのライブの前日に話を聞いてみた。

【コラム】Childish Gambino - "This Is America" | アメリカからは逃げられない

Childish Gambinoの新曲"This is America"が、大きな話題になっている。『Atlanta』やこれまでもChildish Gambinoのミュージックビデオを多く手がけてきたヒロ・ムライが制作した、同曲のミュージックビデオは公開から3日ですでに3000万回再生を突破している。

WONKとThe Love ExperimentがチョイスするNYと日本の10曲

東京を拠点に活動するWONKと、NYのThe Love Experimentによる海を越えたコラボ作『BINARY』。11月にリリースされた同作を記念して、ツアーが1月8日(月・祝)にブルーノート東京、1月10日(水)にビルボードライブ大阪、そして1月11日(木)に名古屋ブルーノートにて行われる。