【ライヴレポート】STUTS、BIM、RYO-Z 『BLACK BALL NIGHT』|約3時間のマジックアワー
7月に配信リリースされたSTUTS、BIM、RYO-Zのコラボ曲 “マジックアワー”。STUTSがプロデュースし、BIM、RYO-ZがUCC BLACK無糖とアルコールを合わせたドリンク「ブラックボール」をテーマに制作した異色のサマーチューンの抽選限定リリースイベント『BLACK BALL NIGHT』が、9月18日に渋谷WWW Xで開催された。
会場に到着すると、既に抽選に当選した観客がフロアに集まっていた。オープンDJを務めるのはDJ SARASA。Notorious B.I.G.やCraig Mackなどによる90年代のクラシックからGAGLE、Nujabes、Big Joeなど日本のアーティストの楽曲まで、ハードなブーンバップを中心とした選曲の早繋ぎでライブに向けたバイブスを徐々に温めてゆく。
そしていよいよBIMのバックDJを務めるVaVaが登場すると、あちこちから大きな歓声が。「BIM 93」の声とともにイントロが流れる、早くも会場の熱気は最高潮となった。そして満を辞してBIMが登場し、夕暮れを思わせるオレンジの照明の中、1曲目にSTUTSプロデュースの新曲“Veranda”を披露。BIMのコールアンドレスポンスの呼びかけによって会場が一気に一つとなった。曲が終わり「こんばんは、一ヶ月以上待たせてすみませんでした。今のはSTUTSくんのトラックなんですけど、シークレットパーティって言ったら言い過ぎ?受かった人しかいないんで、受かった分だけ楽しんで」と幸運な観客を祝福し、「夏終わってねーぞ!とか言ってベストとか着てるんだけど(笑)」というMCから“サンビーム”へ繋げてゆく。続けてパフォーマンスしたのはSIRUPとのコラボ曲“Slow Dance”。メロウなスロウジャムの連続に、会場全体が甘いムードに包まれた。「SIRUPくんと作った曲“Slow Dance”でした」と短いMCを挟み、続けて歌われたのは“Tissue”。フックの部分で大合唱が巻き起こる。“Starlight Travel”では夜空を思わせる美しい照明の中、ステージを縦横無尽に駆けるエネルギッシュなBIMの姿が印象的だった。
観客からのリアクションの大きさに呼応するように、BIMも「すげえ楽しいんだけどどうしよう。インスタあげてもいい?今日を保存したい」と感慨深い様子。「最近はライブであまり緊張しないんだけど、なぜか今日は緊張してて。でもなんか、知ってる顔ばかりで安心した。最後まで『BLACK BALL NIGHT』楽しめますでしょうか」と呼びかけた後、kZmとのコラボ曲“Dream Chaser”のヴァースを口ずさむと観客からは絶叫に近い歓声が。ライブではバックDJのVaVaがkZmのヴァースを歌い、長くツアーを共に回り多くのライブをこなした二人の阿吽の呼吸が垣間見えた。
盛り上がりの沸点を見せた会場を見渡したBIMは「男子校かと思った」と苦笑。「僕ら男子校出身なんで。イモが頑張ってWWW来たんですよ」と、学生時代からの友人であるVaVaとの思い出を語る。そして「俺ら仲良いよね。仲良い人のための曲です」というMCから“BUDDY”に繋げていった。PUNPEEによるフックの部分を大勢の観客が歌う様は、同曲の人気を改めて再認識させられる。曲が終わると、BIMは「今日は一緒に来た友達と仲良く帰ってください。俺とVaVaくん一回大喧嘩してるからね(笑)。みんなはそういう風にならないようにしてください」と語る。かつてはお互いにすれ違いってしまう時期を経験していた二人だが、今では「ド平日にこんな遊びたい奴が集まってるって最高じゃーん」と叫ぶVaVaをBIMが「変な話し方」とイジるなど、仲の良い様子を見せている。そして「でも、そのお陰でVaVaくんといい曲できたからね。行けます?みんな」と呼びかけ、“Bonita”がパフォーマンスされた。今やBIMの代表曲となった“Bonita”は、二人のエピソードを踏まえて聴くとよりエモーショナルなものとなる。観客も大いに盛り上がりつつ、感慨に浸るようにエネルギッシュなパフォーマンスを味わっていた。二人は最後に「VaVaちゃんに大きな拍手を」「BIMに大きな拍手を」と互いに賛辞を送り合い、BIMのパートは幕を閉じた。
続けてブースにSTUTSが登場。アルバム『Eutopia』のイントロが流れるとフロアはチルなムードに。そのまま“Summer Situation”へと移り、SP-404を使った巧みなエフェクトも織り交ぜつつ雰囲気を作り上げてゆく。「あっどうも、STUTSと申します。今日は涼しくなりがちな感じですけど、夏を思い出すようにやって行こうと思います」とのMCを挟み、同じく『Eutopia』からDaichi Yamamotoをフィーチャーした“Breeze”へ。タイトルの通り、夏の空気に涼しい風が吹き込むような気持ち良さが漂う。続けて“Paradise”、“Horizon”、“Daylight Avenue”とインスト曲をシームレスに畳みかけてゆく。STUTSが叩くMPCから鳴るキックやスネアの音は、WWW Xの解像度の高い音響で聴くと音一つ一つへの作り込みや心地よさが際立つ。ノンストップでのパフォーマンスに汗を流しつつも、観客からの反応の良さにSTUTSも笑顔を見せた。
続けてG Yamazawa、仙人掌、Maya Hatchをフィーチャーした“Ride”をじっくりと聴かせ、そしてPUNPEEとのコラボ曲であるアンセム“夜を使い果たして”のイントロが流れると割れんばかりの歓声が。大勢がスマートフォンを取り出し動画を撮り始め、大合唱が巻き起こった。曲が終わるとSTUTSは「この曲のMVはBIMくんとHeiyuuくんと作って、その繋がりでBIMくんと曲が出来てよかったです」と、“マジックアワー”でのBIMとのコラボの経緯を明かした。「もう一曲だけ一人でやって、その後にもいいことがあるので楽しんでいってください」と呟き、JJJをフィーチャーした“Changes”をパフォーマンスした。
自身のセットが終わり、STUTSが「今日は初めて“マジックアワー”という曲を3人でやっと披露できると思って、今からその二人を呼び込もうと思います…いや、二人のタイミングで」とBIM、RYO-Zの二人をステージに招く。再びBIM、そしてRYO-Zが登場。かねてよりRIP SLYMEへのリスペクトを公言してきたBIM、そして若い世代から刺激を受け進化し続けるRYO-Zが互いに「光栄です」と声をかけ合う。そしてついに、今回のイベントのテーマとなる“マジックアワー”がパフォーマンスされた。BIMとRYO-Zの息の合った掛け合い、そしてSTUTSによる夏らしさ溢れるビートに会場も沸き立つ。それはまるで、既に終わりかけた夏がもう一度我々の元にやってきたかのようだった。
曲が終わり、鳴り止まない拍手の中、BIMが「みなさん、あのRYO-Zがいます」と一言。RYO-Zも「やっと出来ましたね(笑)長かったね。こんなに平日の、こんなに涼しい時間になりましたけど、3人でやっと出来て嬉しいです」と、三人での“マジックアワー”ライブ初披露に興奮した様子を見せた。続く「ここから見るみんなの光景がまさに“マジックアワー”なんでね」とのキャリアを感じさせる小気味良いMCに、BIMも「MCってこうやるんだ…」と感心。その後も繰り広げられたSTUTS、BIM、RYO-Zの会話からは、レコーディングを通して生まれた結束のようなものも感じられた。
夏の終わりが惜しくなるようなグッドバイブスに満ちた『BLACK BALL NIGHT』。チルとエモーショナルが同居した、約3時間のマジックアワーであった。
Photo:関口佳代
Text:山本輝洋
INFO
公演 : BLACK BALL NIGHT supported by UCC BLACK無糖
日程 : 2019年9月18日(水)
会場 : WWW X
開場 / 開演 : 18:30
[出演者]
LIVE : STUTS, BIM, RYO-Z
DJ : DJ SARASA
UCC上島珈琲株式会社は、発売から25年を迎える「UCC BLACK無糖」の新しい飲用スタイル「ブラックボール」を広めるプロジェクトを進めている。 「ブラックボール」とは「UCC BLACK無糖」に自分の好きなお酒を組み合わせた飲み方。これまでの「缶コーヒー」としての飲用スタイルだけでなく、 アルコールとの意外な掛け合わせにより「UCC BLACK無糖」の新たな価値を生み出し、缶コーヒーに馴染みのなかった層にもファンを拡大している。