性的暴行が告発されたR. Kelly、DV疑惑がかかっていた故XXXTentacion、複数の罪で逮捕された6ix9ineなど、ここ数年で問題を起こしたアーティストは枚挙に暇が無い。そんな彼らの楽曲を聴かないようにする、あるいは配信を停止するムーブメントが盛り上がりを見せているが、そのような動きに対してJ Coleが苦言を呈している。
XXLのインタビューに応えたJ. Coleは、ポリティカリーコレクトネスに基づいたいわゆる「キャンセルカルチャー」について、「怒りは理解できる。だから、俺は知らない。俺を、この世界にとって望ましくないと判断された人々に対して共感させるようなものがあったとしてもだ。俺たちは今、みんながすごい速さで何かをキャンセルできるような世界に生きてるだろ?でも同時に、人々は刑事法のシステムを批判してる。あれはキャンセルのシステムそのものだ。俺はどちらにもうんざりしてるんだ。“お前をどこかに投げ捨ててやる”って感じのものだから」と、一定の理解を示しつつも息苦しさを感じていると明かしている。続けて、「人を癒そうという気持ちはどこに行ったんだ?お前たちは同情や愛をいつ見せてくれるんだ?」と、断罪の方向にばかり先走る人々から思いやりの気持ちが欠けていることを指摘している。
「#MuteRKelly」運動が盛り上がる最中にR. Kellyを擁護したことで批判されたErykah Baduも「人々を癒したかった」と発言していたが、愛をもって人と接することに比べ何かを断罪することはあまりにも簡単すぎるのかもしれない。当然R. Kellyが犯した罪は決して許容されるべきものではないが、問題のあるアーティストに対する批判は往々にして本質的な部分を超え過熱してしまう向きがあることも確かだ。
日本でも罪を犯した人物の作品を巡った議論が交わされる今日この頃だが、安易に誰かを批判する前に問題の本質をよく見極め、冷静に物事に対処する姿勢が何よりも大切になっていくのかもしれない。