世界のシーンをリードするサウンドシステムのエンジニアが語るサウンドシステムカルチャーの本質

オーディエンスからの質問 - サウンドシステムで何を学んだか?

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - サウンドシステムってのは、仕事以上のもので、完全にライフスタイルだ。ファミリーみたいなものだよ。僕たちは一緒に働くと同時に一緒に遊んでいるんだ。たまにどうにもならないトラブルが起きてストレスを感じることもあるけど、一緒に働けばそれを発展させて改善させることが出来るんだよ。

そしてインターナショナルなコネクションが大事なんだ。ジャマイカで始まったカルチャーは今ではアンダーグランドパーティーとして世界に広まっていった。もちろんイギリスでは人種的な緊張関係もあるけど、サウンドシステムカルチャーを通じて僕たちはそこで共に遊び、働いてきたんだ。違法レイヴから始まったイギリスのアンダーグランドカルチャーは今ではクラブでも楽しまれる様になったね。そこでRogには色々と手助けされてきたよ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 2004年にPlastic Peopleのforward に行ってYoungstaとSkreamに出会った。その時は若かったけど、これまでに無いような音楽を聴いたね。マークアイレーションのIration Steppasのダンスに行った事はあったけど、そことは音が違ったんだよ。10年後にこうしてマーク・アイレーション、Mala、Mungo’sとの仕事へと導いてくれたね。Speakerlans.comのフォーラムで色んな人たちと話した事が、今ここで役立ってるんだよ。すべてはネットワークが大切なんだよ。俺はいろんな人たちから学んできたよ。

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - 毎年、いろんな場所からOUTLOOKにいろんなサウンドシステムが集まってくる。ここで俺はKyleからスピーカーを借りて、Kyleは僕からスピーカーを借りたし、多分また僕からKyleはスピーカーを借りるんでしょ?笑

とにかく、お互いスピーカーを貸したりしあって、皆んなで助けあって、ふざけあったりもしてるんだ。僕はここで皆んなとこういった話をできる事を嬉しいと思うよ。

オーディエンスからの質問 - すみません、Rogあなたはこれまでどれくらいのスピーカーをデザインしてきましたか?そして、そのデザインを完成させるのにどれくらいの時間がかかるんですか?

Rog Mogale (VOID Acoustics) - それは難しい質問だな。今まで多分100近くのスピーカーをデザインしてきたよ。中でも究極なのは、インキュバス、アークアレイとかになるかな。これらを作るにはすごく時間もかかったし、何度も何度も調整が必要だったよ。すぐにデザインできたのもあって、5、10分で出来たものもあったかな。夢で見て朝起きてすぐ書き起こしたものもあって、それは2、3日で完成したよ。

2002年にUKを離れて、チベットの国境付近、南のエリアに移動したんだ。なんでイングランドを出たかったって?あまりにも多くの人達が僕を知っていたし、皆んなが電話をしてくるから、それが僕には邪魔になってしまったんだ。今はマレーシアに移り住んでるけど、やっぱり自分の仕事に集中したかったし、朝起きて、この日中にはそれは完成させたいと思ったら、それにかなり近づけるんだよ。ところが、イングランドでそれをやると、3週間とかさ、滅茶苦茶に時間がかかるんだよ。僕は、自分にとって相応しい環境にすぐ行けるし、相応しい人々をすぐに探せるんだけど、残念ながら、それはUKじゃないんだよね。申し訳ないけど…。
でも、今は少し変わったよね。今はR&Dをイングランドに戻したりしてるし、イングランドは、これからが時期かなって思ってるよ。

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 他のスピーカーブランドは何千人ってくらいのスタッフを抱えてる会社もあるけど、VOIDは当初3人で、会社は10人に満たない少人数のファミリーでやってきた。これは文化的なことで、他の会社がやっている事とはまた違うんだよね。DIYシーンでは、スピーカーを運ぶ時に大きなトラックなんて借りる金がないから小さなバンを使ったりして運んでいるよね。DIYでは、こうして順応していく事が大事なんだよね。Mungo’sはどうしているの?Jeromeは後から入ってきたんだろ?

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - Mungo’s Hi fi Sound Systemに関しては、二人で始まって、今ではメンバーも増えてる。

僕らは今5人で仕事をしていて、仕事をお互い変えたりしながらやってるよ。グラスゴーでのサウンドシステムのプロモショーンやレーベルやショーにサウンドシステムを毎週出したり、沢山いろんなことをやっているね。今ではブランドみたいになってるけど、趣味とビジネスの境目というか、楽しんで、情熱を注ぐのはいいけど結局は家賃とか払わなきゃならないしね。でも、サウンドシステムに関しては皆んな見返りなしで力を注ぐよね。それがカルチャーの一つなのかもしれないけど、まあ組織みたいなのはやっぱり必要で、コマーシャルな事をする必要もないし、リアルな原理原則をしてきて、僕らは今、外に知られていてラッキーだと思うね。結局いろんな人に助けられてきたよ。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - コマーシャルな世界にだって助けはあると言えるぜ。でも、その助けを借りるには、金を払わなきゃならないんだよね。(笑) そこが大きな違いだよね。(笑)

ここでゲストMark Irationを紹介させて下さい。サウンドシステムカルチャーと言えば彼が一番だよ。

Mark Iration(Iration Steppas) - 1950年〜60年代、俺はまだ子供だった頃、あの時のサウンドシステムは、接着剤とか使ってたけど、今はより専門的になってとんでもないくらいその世界が変わったよね。昔は、シービーンっていう違法酒場やブルーズダンスっていうハウス・パーティと呼ばれるような違法レイヴにでっかいアンプとスピーカーが持ち込まれてた。けどスピーカーなんて100Wくらいしかなかったよ。

今ここにいる奴らは、テクノロジーを駆使してすごい音を作ってるんだ。正直、今は昔と比べてサウンドを作るのは、インターネットと一緒で情報を入力していくような感じがあって簡単になったんじゃないかな。そして、あの頃に比べて、今はいろんな部分で音が改善されただろ。

あの頃は、何か変えるだけでもすごく時間がかかったし、しかもなんでも滅茶苦茶に金がかかったよ。何年も何年も“授業料“が必要だったんだろ。

Rog Mogale (VOID Acoustics) - あなたは、今は簡単に音が作れるっていうけど、簡単に音を作っても結局そういう音は長続きしないと思うんだよね。

Mark Iration(Iration Steppas) - そうだよな。まずは、愛が必要で金銭的な忍耐も必要だな。時間をかけてどんな音を作るか考える必要がある。その音を凄いものにするってのは、コンプレッサーや、アンプも含め色んなものを、自分のスピーカーがどこまで鳴らせるか分からない限界値まで突っ込んで、コンプレッションドライバーもアンプも飛ばす必要があるだろ?そうでもしないと、どこが限界か分からないだろ?そういう所に金がかかるんだよ。

Jerome(Mungo's Hi Fi Sound System) - それが勉強する方法であり、僕らはまだ分かってないよ。サウンドシステムは武器みたいなもので、使うに適した使い方をしなきゃならないと思う。正しいメッセージを伝えなきゃいけない。間違った理由だと、どこにもメッセージやサウンドは届かない。サウンドシステムはすごく影響力があるわけだから、きちんとケアをしなければいけないんだよ。

Mark Iration(Iration Steppas) - たしかに、良くない方向に行くこともある…

Rog Mogale (VOID Acoustics) - というか、皆んな金を失うでしょ!僕はスピーカー作ってるやつで儲けてるやつなんて知らないよ。全てはレーベルと愛の為だ。ラインアレイとかコンピューター化してることに対して意見があったけど、何かトラブった時に(処置をして)スピーカーのグリルを付けたり、俺はそういうのが好きだし、というかそうあるべきなんじゃないの?

最高のテクノミュージックを作る奴ってのはリビングルームの床の真ん中で、アシッドやったり、コカインやって音を作ってて、綺麗なスタジオに行って音楽作ってる奴はクソみたい曲を作るだろ。そういう汚れた部分も必要なんじゃないかな。

確かに、コマーシャルなサイドでは、コンピュータ化されてラインアレイは大体シミュレーションできる様になってるけど、他のことに関しては、僕はRAWでラフな感じが絶対に必要だと思うな。

Mark Iration(Iration Steppas) - 何かヤバそうな時は、噛んだガムを使ってシステムを直してたこともあったぞ。それは結構ラフだろ?

Kyle Marriott(Neuron Pro Audio) - 俺たちは皆色んなミスから学んできてるよね。何か起きたら誰がそれをどう直すかとか、誰がバブルガムもってるのか、とか!とにかく、色んな状況に対応することが大事だよね。

Mark Iration(Iration Steppas) - 昔はワイヤーを歯で剥いてアンプの端子に繋いだんだよ。そしたら、若いヤツがいきなり電源入れちゃってさ、ボンって音がして、そん時に俺は歯がふっ飛んだよ!(笑)

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