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NonameがJ. Coleに対するアンサーソング“Song 33”をリリース

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今週リリースされたJ. Coleの新曲“Snow On Tha Bluff”がシーンを騒然とさせている。ジョージ・フロイドさんが警察によって暴力を受けた末に殺害された事件を契機に世界的な発展を見せた「Black Lives Matter」運動に触れた同曲の中には、シカゴのラッパーNonameに対するディスと思われるラインが含まれていた。ファンやChance The Rapper、Earl Sweatshirtを始めとするアーティストから批判が寄せられる中、昨日NonameがJ. Coleに対するアンサーソング“Song 33”をリリースした。

J. Coleが“Snow On Tha Bluff”の中で発したメッセージは、「BLM」の運動に対し自身が十分にコミットすることが出来ないという苦悩だった。さらにNonameが以前Twitterにて「人気ラッパーたちはBLMへのサポートをツイートしていない」と発言したことを受けて、「批判されても仕方ないと思ってる/有効な物を見た時は耳を傾ける/でも、あの女王の口調が俺を悩ませるんだ」「自分の信じることを既に信じている人に、俺がメッセージを説いて何になるんだ?」との内容を歌っている。これらのリリックが、Nonameに対するいわゆるトーンポリシングであるとの意見も上がっている。

これを受けて、Nonameは昨夜Madlibプロデュースのアンサーソング“Song 33”をドロップ。あくまでNonameらしい理知的なリリックでJ. Coleに対する反論と、黒人女性が受けている暴力についての自身の考えが歌われている。

Geniusの記事によれば“Song 33”でNonameは、先日Black Lives Matterの活動家である19歳の女性Oluwatoyin Salauさんが遺体で発見された事件について言及している。フックでは「One girl missin', another one go missin'」というリリックで黒人女性が受けている社会的に置かれている厳しい状況を示唆し、また2ヴァース目では「彼は世界が煙に包まれているときに、本当に私のことについて書こうと思った?」「ジョージが“息ができない”って言いながら母親に懇願してた時、あなたは私のことを書こうと思った?」と、J. Coleに対する反論を述べている。要するに、現在の状況の中で反人種差別を訴え発信してゆくのではなく、自身に対する批判をラップするという行為自体が不毛だということだろう。

続く3ヴァース目でも「トランスジェンダーの女性が殺されたのに、あなたが出来るのはこれだけ?/(中略)/みんなは警察を廃止することについて話してる/これが新しい世界秩序だから」と、フィラデルフィアでトランス女性Dominique Fellsさんが殺害された事件や、他にも黒人のトランスジェンダー人々が暴力を受けている事実に触れつつ、J. Coleに対する直接的な反論、あるいは啓蒙を試みたようにもとれるリリックを歌っている。

ビーフと呼べるような激しさを持つものではなく、異なる立場である二人による議論として捉えられるようなJ. ColeとNonameのやりとり。これをきっかけにリスナーたちがBlack Lives Matterについて考え、自身の知見を深めることが両者の望む所であるはずだ。

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